契約書のドラフトとは?作成方法と修正できない場合の対処法を解説

契約書のドラフトは、正式に契約書の内容を決める前の下書き段階のことです。

最終契約書を作るまでの準備において、当事者で合意した内容を明確にするためにもドラフトを作成しましょう。

そこで、契約書のドラフトについて、作成や内容を変更する方法と、修正できない場合の対処法などを解説します。

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契約書のドラフトとは

契約書のアイコン

契約書のドラフトとは、英語の「draft」のことであり、「草稿」や「下書き」という意味で最終契約書の内容を決める前段階の下書きです。

最終契約書は法的な効力を持つため、文書として作成し、当事者双方が合意した内容を明確化するためにも必要なことといえます。

ドラフトを作成することで、契約の基本的な枠組みや条項の設計が可能となります。

契約を締結するときの内容の大枠は、当事者同士で口頭による議論し合意したとしても、細かい内容はドラフト作成により確認しながら文言を修正していくことが一般的です。

修正の過程において、口頭による議論の段階では気がつかなかった問題を見つけることができます。

改善するべき部分があれば、再度当事者間で協議を行い、契約条項に反映することが必要になります。

契約書のドラフト作成の必要性

契約書のドラフトを作成する目的は、当事者間での認識の食い違いを防ぐためです。

口頭のみでの契約も可能ではあるものの、認識の違いがある場合や、曖昧な点があれば後でトラブルが起こる恐れもあります。

そのため契約書の下書きといえるドラフトを作成する段階で、条項の詳細を検討し、当事者間で共有して合意する内容を明確化することが必要です。

ドラフトを確認することで問題点を未然に見つけ出し、修正する機会を得ることもできるでしょう。

最終的な契約書に至る前段階で、当事者の意見をすり合わせてトラブルのリスクを低減させるためにも、ドラフト作成は必要です。

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契約書のドラフト作成のメリット

修正するビジネスマン

契約書のドラフトを作成するメリットは、主に次の4つです。

  1. コミュニケーションが明確になる
  2. 間違いのない契約書を作れる
  3. 交渉で大幅に内容を変更できる
  4. 契約プロセスが効率化される

それぞれ説明します。

コミュニケーションが明確になる

契約書のドラフトを作成すれば、当事者間のコミュニケーションが明確になることがメリットです。

最終的な契約を成立させるときに、当事者双方の意思が反映されていることを確保する上でも、ドラフト作成は大切といえます。

それぞれの条項について細かく記述し、当事者で合意を形成する過程で、誤解や曖昧ことを明確にできます。

間違いのない契約書を作れる

契約書のドラフトを作成することで、前もって契約内容を確認できるため、間違いのない契約書を作れることがメリットです。

認識の相違や記載ミスなどがないか、複数でドラフトを確認すれば、未然の発見や防止につながります。

製本した後に間違いを見つけた後に修正すると、手間と時間がかかるため、修正不要の最終契約書を作る上でもドラフト作成が必要です。

交渉で大幅に内容を変更できる

契約書のドラフトを作成することで、たたき台として交渉を行い、内容を大幅に変更できることもメリットです。

何らかの事情で内容の変更が必要になったときは、大枠での合意を変更し大幅に契約を変えることもあります。

製本前のドラフト段階であれば容易に修正できるため、大幅に内容を変更することもできます。

契約プロセスが効率化される

契約書のドラフトを作成することで、最終契約書を作成することへのプロセスが効率化されることがメリットです。

先に最終契約書に盛り込む内容を下書きとして取り決めることができるため、後のステップでかかる時間と労力を大幅に削減することができます。

契約書のドラフト作成の方法

契約書のドラフトは、主に以下の流れで作成します。

  1. 目的と範囲を明確にする
  2. 基本条項を決める
  3. 条項の草案を作成する
  4. レビュー・修正をする
  5. 合意を形成する

それぞれの方法を説明します。

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目的と範囲を明確にする

契約書のドラフトは、まず、契約の目的と範囲を明確にすることが必要です。

何のための契約書作成か、目的は指針となる重要なポイントといえます。

範囲も明確にすれば、ドラフト作成段階で何をカバーするべきか整理でき、余計な内容なども削除しやすくなります。

基本条項を決める

契約書のドラフトの目的と範囲を明確にした後は、文書に含める基本条項をリストアップしていきましょう。

当事者の氏名・住所・契約期間・報酬・支払方法・解約条件・秘密保持義務などの契約締結において必要な項目をリストアップし、ドラフトの骨組みを作ることが必要です。

条項の草案を作成する

契約書に含める基本条項をリストアップした後は、それぞれの条項の草案を作成します。

当事者双方の権利と義務を、平等に保護できる契約書を作成できるように、契約の性質に応じた条項の草案を作成しましょう。

ただし法的に効力を保てる契約書の作成においては、法律の専門的知識のある専門家に相談することも必要となります。

レビュー・修正をする

初稿完成後はドラフトをレビューし、改善するべき部分や足りていない箇所を修正します。

契約に関係する当事者だけでなく、法律の専門家などの第三者のレビューを、貴重なフィードバックとして手直ししましょう。

合意を形成する

修正後に当事者間で合意を形成しましょう。

手直しした内容で納得のできない部分については、さらに修正が必要になることもあります。

最終的な内容として当事者双方が合意できるまで、何度でも見直しを行いましょう。

契約書のドラフト修正の方法

パソコンを持つ男性

契約書のドラフトを修正する方法は、主に以下の4つです。

  1. 変更履歴を活用する
  2. コメント機能を活用する
  3. 上書きする
  4. 追記する

それぞれ説明します。

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変更履歴を活用する

契約書のドラフトを修正するとき、書式がWordであれば変更履歴機能を活用しましょう。

Wordはバージョンによって操作が異なるものの、一般的には以下の方法で変更履歴機能を使うことができます。

  1. Wordで契約書のドラフトを作成
  2. 相手に渡す前に「校閲」タブをクリック
  3. 「変更履歴の記録」項目の「オフ」を「オン」に変更

「変更履歴の記録」を「オン」に変更した場合、以降の文字追加や削除の部分は、文字の色が変わります。

そのため相手が修正依頼箇所を変更した場合、変更箇所の色が変わるため、どこを手直ししたのかすぐに確認できます。

修正箇所に問題がなければ、「校閲」タブの「承諾」をクリックすると、修正した箇所が本文として確定します。

修正部分の受け入れができないときは、「元に戻す」をクリックすれば元の文書へ戻すことができます。

コメント機能を活用する

契約書のドラフトを修正するときは、コメント機能を活用することもできます。

変更履歴機能を使うと修正がしやすいといえるものの、当事者それぞれが修正を加えればもとはどのような文書だったのかわからなくなってしまいます。

この場合、コメント機能を使うこともできますが、一般的な使用方法は以下のとおりです。

  1. 「校閲」タブをクリック
  2. コメントを入れたい箇所で「新しいコメント」をクリック
  3. 右側に表示されたコメント欄に修正依頼内容を入力

コメント内容を受け入れられる場合は、契約書のドラフトに反映し、再度確認を依頼します。

受け入れができないときは、コメントの下に理由を記載して送り返します。

上書きする

契約書のドラフトで、相手が修正した内容について受け入れられない部分があれば、上書き・修正するとよいでしょう。

それにより、常に最新状態になるため読みやすい条項となり、内容も確認しやすくなります。

ただし相手の修正した内容が上書きで消えてしまうため、どのように修正したかわからなくならないように、修正したドラフトを別名で保存しておけば修正の過程を把握できます。

追記する

契約書のドラフトの相手が修正した内容を確認し、受け入れられない部分について、上書き修正すると相手の入力した内容が消えてしまいます。

そのため相手の修正箇所は手直しせず、追記することで修正内容を残すこともできます。

追記することで双方の修正内容や意見が表示されるため、やり取りの記録を残せます。

ただし記載される情報が増えるため、内容がわかりにくくなってしまいます。

契約書のドラフト修正ができない場合の対処法

契約書のドラフトを受け取ったものの、ファイルを開くと次の状態により修正できない場合もあります。

  1. ロックがかかっている場合
  2. PDF形式の場合

この場合、どのように対処すればよいかそれぞれ説明します。

ロックがかかっている場合

受け取った契約書のドラフトにロックがかかっていると、内容の修正ができません。

ロックがかけられている理由は、内容を勝手に変更されてしまうことを避けるためです。

また、会社の方針で編集不可に設定して送ることをルールづけている場合もあります。

いずれの場合でも修正ができないため、修正したい箇所がある旨を伝え、どのように対処すればよいか確認してください。

もしくは受け取ったドラフトを一旦プリントアウトし、手書きで修正または追記し、PDF化して送ると方法など検討しましょう。

PDF形式の場合

受け取った契約書のドラフトがPDF形式の場合、容易に修正しやすいWordなどのデータ形式で再度送ってもらえないか相談しましょう。

もしくはPDFのコメント機能を使い、修正提案などを入力して修正を依頼します。

修正のフローに関しては、相手と前もって確認しておくことが必要です。

契約書のドラフト修正のポイント

パソコン作業をするビジネスマン

契約書のドラフトを受け取った後は、内容を確認して必要に応じた修正や交渉が必要です。

修正におけるポイントとして、以下の3つが挙げられます。

  1. 変更履歴は残す
  2. コメント機能を活用する
  3. 必要に応じて微調整を加える

それぞれ説明します。

変更履歴は残す

契約書のドラフト修正において、変更履歴を残すことがポイントです。

たとえばWord形式によるドラフトは、変更履歴の文字が別の色で表示されるため、どこが修正箇所か確認しやすくなります。

どこをどのように修正したのか記録や履歴を残すことは、今後の取引での参考にもなるため、ノウハウの蓄積においても変更履歴は残したほうがよいでしょう。

コメント機能を活用する

契約書のドラフト修正において、コメント機能を活用することがポイントです。

修正を求める理由や、どのように手直しを希望するのか記載でき、交渉しやすいことがメリットといえます。

コメントを残せば修正の経緯も記録でき、別の担当者が見たときにも事情を把握しやすくなります。

必要に応じて微調整を加える

契約書のドラフト修正において、必要に応じて微調整を加えることがポイントです。

最終契約書作成に向けて重要な条項をすべて盛り込んでいるか、正確かつ明瞭に記述されているかなど確認しましょう。

また、誤解を招く表現の有無などもチェックしてください。

ドラフトの段階で当事者の合意内容が適切に反映されていることが確認できれば、最終レビューを行います。

必要に応じて最後の微調整を加えることや、法的な拘束力を持つ最終契約書につなげるために同意表明・具体的な契約対象・義務を課す条項などが含まれているか再度確認が必要です。

まとめ

契約書のドラフトを作成することで、契約の基本的な枠組みや条項の設計ができます。

契約締結の内容の大枠は、当事者同士で口頭の議論による合意をしたとしても、細かい内容はドラフト作成で確認しながら文言修正を行います。

修正の過程で口頭による議論段階では気がつかなかった問題を見つけることができ、製本前に手直しできるため時間や費用もかかりません。

契約書のドラフトを作成し、最終契約書へと移行させる過程は、ビジネス取引において成功の鍵になると考えられます。

ドラフトの修正方法や最終段階への移行プロセスなどを理解しておくことで、当事者間の誤解を未然に防ぎ、合意内容を正確に反映させることのできる最終契約書をつくることができるでしょう。

法的に効力のある最終契約書の作成においては、専門的な法律の知識が必要になる場合もあるため、独自に判断せず専門家などを頼ること必要です。