消費税を滞納したらどうなる?滞納してしまった場合の対応を解説

消費税の納期限は事業年度終了後翌日から2ヶ月以内になりますが、資金繰りの悪化で支払いが困難になることもあるでしょう。滞納したままではいずれ差し押さえを受けることになりますが、どう対応したら良いのでしょうか。今回は、消費税を滞納した場合の差し押さえまでの流れや、払えない場合に取れる対処法をご紹介します。

消費税は滞納してしまうことが多い税金

消費税は赤字であっても納税義務があるため、滞納が多い税金です。

国税庁「令和4年度租税滞納状況」によると、消費税の新規発生滞納額は3,630億円に達しています。これは、租税のなかで最大で、所得税や法人税よりも大きな額です。

消費税が滞納となりやすいのは、消費税が消費者から預かったものを納税する「間接税」であるため、納税意識が不足しがちになり、資金が確保されていないことが背景にあるでしょう。とくに赤字の企業の場合、企業の運転資金に流用してしまうことも多くあります。

消費税などの滞納がある場合、延滞金の加算や督促があるだけではありません。日本政策金融公庫からの融資が受けられなくなるため、事業へ影響もおよびます。また、滞納が続けば差し押さえになり、財産を処分されてしまうばかりか、取引先や従業員からの信用も失うことになるでしょう。

消費税を滞納したままだとどうなる?

消費税は本来、消費者から預かったお金を代わって納税するものです。そのため、税務署はほかの税金よりもやや強い姿勢で対応する傾向で、督促を経て差し押さえまで発展します。延滞発生から差し押さえまでの流れは以下のとおりです。

  1. 延滞税が発生する
  2. 税務署からの督促が来る
  3. 差し押さえのための財産調査が始まる
  4. 差押予告通知書が届く
  5. 差し押さえが実行される

延滞税が発生する

消費税を納税していないと、法定納期限の翌日から完納日までの延滞税が発生します。延滞税の税率は納期限の翌日より2ヶ月を境に変わるため、以下の(1)(2)を合計した額(100円未満切捨て)になります。

(1)納期限の翌日から2月を経過する日までの金額
納付すべき本税の額(1万円未満切捨て)×税率(a)×日数(納期限の翌日から完納の日または2月を経過する日)÷365(1円未満切り捨て)

(2)2月を経過する日の翌日から完納した日までの金額
納付すべき本税の額(1万円未満切捨て)×税率(b)×日数(2月を経過する日の翌日から完納した日)÷365(1円未満切り捨て)

(a)年7.3%と「延滞税特例基準割合+1.0%」のいずれか低い額
(b)年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い額

延滞税特例基準割合とは、「前々年10月〜前年9月の銀行新規短期貸出約定平均金利(各月平均)+ 1.0%」です。令和5年の場合、銀行新規短期貸出約定平均金利は0.4%であったので、(a)=2.4%、(b)=8.7%となります。

つまり、滞納期間が長くなると最大で年率14.6%もの延滞税が課せられることになってしまいます。

数字を入れるだけで計算できるサイトもあるので活用してみてください。

参考:国税庁「延滞税の計算方法

税務署からの督促が来る

消費税は、納期限を1日でも過ぎると滞納になります。

ただし、滞納後すぐに差し押さえされるわけでなく、まずは支払うように「督促」が行われます。督促状が会社に届くほか、督促の電話が入ります。管轄の税務署によっては訪問されることもあるようです。

督促は納期限から50日以内に実施することとなっており、一般的に2週間〜1ヶ月ほど経って実施されることが多いです。

差し押さえのための財産調査が始まる

差し押さえとは、所有する財産について売却や廃棄を禁止することをいいます。督促状の発送から10日経過すれば、税務署は財産を差し押さえることが可能です。

できるだけ差し押さえとならずに滞納を解消してもらうほうが良いため、差し押さえの前に、納税意思を確認する「催告」が行われるケースもあります。

差し押さえに際して、現金や預貯金口座・売掛金・不動産・保険など、様々な財産が調査されます。

差押予告通知書が届く

差し押さえが目前に迫ってくると、差押予告通知書が届きます。

差押予告通知書は、自発的に納税してもらうことを目的として発送されるものです。記載されている期限までに対処しなければ、差し押さえの実行となります。

差し押さえが実行される

督促や差押予告通知によってもなお納税されない場合は差し押さえとなります。

税金の差し押さえは裁判所を通さずに行うことが可能なため、予告期限を過ぎると速やかに実施されると考えて良いでしょう。

差し押さえは、換金性の高い資産から実施されます。差し押さえられた資産は、換価処分として金銭に変えられ、納税に充てられます。預貯金が差し押さえられると運転資金がなくなり経営に大きな支障が及びます。

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消費税を払えなくなったときの対処法

消費税を滞納すると、そのままではいずれ差し押さえを受けることになります。差し押さえはダメージが大きいため、何とかして避けたいのではないでしょうか。

消費税を払えなくなったときには税務署に相談することで、分割で支払い、差し押さえを避けられる猶予制度があるので、ぜひ活用しましょう。猶予制度を利用すれば、猶予中の延滞税も軽減されます。

下記で3つの対処法を解説します。

  1. 税務署に分割払いの交渉をする
  2. 救済制度を利用する
  3. 法人破産する

税務署に分割払いの交渉をする

消費税の支払いが困難な場合は、税務署に交渉すれば分割払いが認められることもあります。税務署長が職権で認めるため、職権による換価の猶予と呼ばれています。猶予の期間は通常1年間、最大2年まで延長可能です。

分割払いは、交渉すれば必ず認められるわけではありません。規定された手続きはありませんが、分割納付計画書の提出が求められるのが一般的です。なお、認められない場合の不服申し立てはできません。

救済制度を利用する

税務署との交渉によって受けられる可能性がある職権型の換価の猶予のほかにも、申請により認められる救済制度として、「換価の猶予」および「納税の猶予」があります。これらは適用条件や申請期限があるので、納期限後できるだけ早く税務署に相談しましょう。

換価の猶予

換価の猶予については申請による適用も可能です。申請の場合は職権による場合と異なり、以下の要件を満たす必要があります。

・事業の継続や生活の維持が困難である
・納税について誠実な意思がある
・納期限から6ヶ月以内に申請している
・すでに納税の猶予を受けた消費税ではないこと
・消費税以外に国税の納税がない
・納税額に相当する担保がある

申請による換価の猶予も期間は1年までで、最大2年まで延長可能です。

なお、期限を過ぎてしまった場合には、申請による換価の猶予は利用できません。税務署に事情を説明したうえで、猶予について交渉することになります。

納税の猶予

納税の猶予は、災害や病気、事業休廃止などが理由で税金の支払いが困難になった方や、修正申告の結果、支払いが難しくなった場合に申請できます。

納税の猶予も、期間は原則1年間、最大2年間です。

法人破産する

法人が破産すれば、法人格はなくなり、その法人の権利も義務も消滅します。

そのため、消費税に限らず全ての税金や債権の支払義務はなくなります。代表者が法人の滞納した税金を支払う義務もありません。

なお、合同会社・合資会社の無限責任社員については、残った会社の債務の弁済義務があるため、消費税についても納税義務が残ります。

まとめ

消費税を滞納した場合には、督促ののち支払いがなければ差し押さえとなります。また、納期限の翌日から延滞税が発生するため負担も大きく、安易に滞納すべきではありません。

消費税が払えない場合に差し押さえを回避するには、税務署に相談し換価の猶予や納税の猶予を受ける方法があります。そのままにせず、早めに対処を行いましょう。

滞納した消費税を完納したいものの資金が不足している、何とか資金を調達したいと検討している方は、PMGまでご相談ください。PMGでは、消費税などの税金を支払うために必要な資金を調達する方法に関する相談も受け付けております。まずはお気軽にご相談ください。

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