「利息制限法」とは、金利に上限を設け制限することにより、お金を借りる利用者を高金利から守るための法律です。
貸金業者が自由に金利を設定できてしまうと、高い金利の中でお金を借りなければならない利用者が、借金に借金を重ねる自転車操業で苦しむことになりかねません。
実際、かつては貸金業者が設定する「グレーゾーン金利」などで多くの利用者が借金苦という状態に陥りました。
しかし現在、グレーゾーン金利も廃止され、一定の範囲までしかお金を借りることはできなくなっています。
そこで、利息制限法とはどのような法律なのか、その上限金利や計算方法について解説していきます。
目次
利息制限法とは
「利息制限法」とは、「金銭貸借契約」に基づきお金を貸す債権者を規制するための法律で、借金の利息に限度を決めて債務者を守る法律ともいえます。
金銭の貸し借りでは借りる利用者側が経済的弱者となりがちなため、その弱みにつけ込んで元本をはるかに超える返済を求める悪徳な業者も実際に存在します。
たとえ金利が高いとわかっていても、今すぐお金が必要という状況では借りる以外の選択肢がないため、貸す側も高金利で貸し付けるといったことが過去には行われていました。
しかし、高金利での過剰な貸し付けや過酷な取り立てが行われたことで、返済に苦しむ多重債務者が増え、大きな社会問題になったといえます。
そこで制定されたのが利息制限法であり、経済的弱者の立場である利用者を保護するため、金銭の貸し付けにおいて設定される金利に上限などが定められています。
利息制限法による上限金利を超えて金銭を貸し付けたとしても、超えた分の利息は無効となり元金の返済に充てられることになります。
利息制限法の上限金利
利息制限法の上限金利は、借入金額に応じて年15~20%となっていますが、具体的には以下のとおりです。
- 元本金額が10万円未満の上限金利 → 年20%
- 元本金額が10万円以上から100万円未満の上限金利 → 年18%
- 元本金額が100万円以上の上限金利 → 年15%
上限金利を超えた利息を支払ったとしても無効として扱われることとなり、そもそも返済する必要はありません。
なお、返済が遅れてしまったときにはその賠償金として「遅延損害金」が発生しますが、遅延損害金についても以下のとおり上限が定められています。
- 元本金額が10万円未満の遅延損害金 → 年29.2%
- 元本金額が10万円以上100万円未満の遅延損害金 → 年26.28%
- 元本金額が100万円以上の遅延損害金 → 年21.9%
利息の計算方法
利息を計算する場合、以下の計算式で算出できます。
利息額=元金×利率×借入期間
ただし分割返済では、元金は毎回の返済で減少していくため、次の計算式で算出することになります。
利息額=借入残高×利率×借入期間
出資法との違い
お金の貸し借りに関連する法律は、利息制限法以外にも金銭貸借や金利について定めた「出資法」があります。
出資法では主に次について禁止しています。
- 「必ず儲かる」などとうたい出資金を集める行為
- 預金や積立金などの名目で不特定多数から資金を預かる行為
- 高金利や高額な手数料の設定
出資法では、金銭の貸し付けを行う業者に対し、年20%を超える金利設定は禁止としており、違反した場合には5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金・またはこれを併科としています。
グレーゾーン金利とは
実は利息制限法と出資法の上限金利は、以前までは異なっており、改正前までの出資法の上限金利は年29.2%でした。
この2つの法律の上限金利の差が「グレーゾーン金利」であり、この金利帯で貸し付けを行っても、行政処分の対象にはなっても刑事罰の対象にはならなかったといえます。
そこで多くの貸金業者は、このグレーゾーン金利による貸し付けを行っていたのですが、法改正により出資法の上限金利が20%に引き下げられ、グレーゾーン金利も撤廃されています。
グレーゾーン金利による借金で返済していた利息は、払いすぎた利息として無効となり、すでに支払っている分も返してもらうように求める「過払い金返還請求」が可能です。
上限金利を超えた貸し付けへの処分
貸金業者は、利息制限法に基づいた貸し付け額に応じて、先に述べたとおり15~20%の上限金利を守った貸し付けを行わなければなりません。
もしも利息制限法の上限金利を超えて金利を設定しても、超過した部分は無効となるだけでなく、その貸金業者は行政処分の対象となります。
また、出資法の上限金利は20%とされているため、この割合を超えて金利を設定すると、刑事罰の対象になります。
お金の貸し借りによる取引では、返済するときには契約金利に応じた利息と遅延損害金を上乗せして支払います。
それぞれ、次の3つに分けて詳しく説明していきます。
- 超過利息は返還
- みなし利息とは
- 行政処分の対象
超過利息は返還
先に述べたとおり、上限金利を超えた金利設定による利息が発生し、仮に支払ったとしてもその利息は払う必要のなかったお金です。
超過利息を受け取った貸金業者は「不当利得」を得たことになるため、利用者には債権者に対し返してもらうように求める権利が発生します。
取引中に何らかの形式で互いに合意していたとしても、不当利得である以上は返さなくてはならない・返してもらうべきであるといえます。
たとえば事前に「元本に充当しない」と合意していたとしても、債権者はその合意に関わらず残債へ充当するか、返金に対応しなくてはなりません。
仮に「謝礼」や「迷惑料」など、利用者が感謝や謝罪の想いを金銭としてあらわし、その名目で支払われた金銭だとしても、お金の貸し借りの取引が存在する以上はすべて「利息」として支払ったものとみなされることになります。
そのため、契約上の合意に基づいた超過利息と同様に返還の対象として扱われます。
一見、正当で合理的な支払いだと感じる場合でも、本来は返してもらうべき費用もあるため、「みなし利息」にも注意して取引を確認してみましょう。
みなし利息とは
「みなし利息」とは、利息以外の名目で徴収する手数料や諸経費のことです。
出資法では、礼金・割引料・手数料・調査料など、どのような名目であったとしても、金銭の貸し付けに関し債権者が受け取る元本以外の金銭は、すべて利息とみなし、それらを含め29.2%以下の金利による契約が必要と定めています。
以前は商工ローンなどでお金を借りると、利息とは別で「礼金」や「保証金」などの名目で金銭の支払いを求められていました。
最近では少なくなりましたが、みなし利息分を含め制限されている金利の範囲内に入っていなければすべて違法です。
なお、みなし利息にも例外があり、次の2つは該当しません。
- 契約締結および債務の弁済費用
- 債務者の要請による債権者が行う事務費用
たとえば、契約書作成費用・印紙代・返済金の送金手数料・登記抹消費用などはみなし利息に含まないといえます。
行政処分の対象
上限金利を上回る取引があり、利息を支払っても無効として扱われますが、違法した業者gは営業が制限される行政処分の対象となります。
主に、次の3つの処分となり、社会的な信用を失うことになれば、再度貸金業者として営むことが厳しくなる可能性も出てくるでしょう。
- 業務改善命令
- 業務停止命令
- 登録取消し
それぞれ説明していきます。
①業務改善命令
「業務改善命令」では、業務停止など厳しい措置を予告し、超過金利を速やかに是正するように促していきます。
②業務停止命令
原則、業務改善命令と同時に発出される「業務停止命令」では、超過利息が是正されるまで営業を取りやめさせることとなります。
③登録取消し
「登録取消し」では、貸金業者の登録を抹消し、営業再開を事実上不可能にする処分です。
処罰の対象
「出資法」の正式名称は、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」であることからもわかるとおり、出資法と利息制限法の大きな違いは上限を超えた金利で刑事罰の対象になるかです。
取締りに関する法律であるため、出資法には罰則が規定されており、違反すれば処罰されてしまいます。
業として金銭を貸し付けるときの上限金利は年20%であり、これを超える割合による利息の契約をすれば、次の処罰の対象です。
- 5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金
- またはその両方
なお、出資法には「業として」ではなく、1度の実高利で貸した場合の条文も規定されています。
この場合の上限金利は年109.5%(うるう年は109.8%)となっており、違反すれば5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
さらに業として行う者が年109.5%(うるう年は109.8%)を超えた著しい高金利で貸し付けを行った場合には、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、またはその両方が科されると重い罰則が定められています。
過払い金返還請求とは
過去にグレーゾーン金利の時代にお金を借りており、利息を支払いすぎているときには「過払い金」が発生している可能性が高く、返還請求できます。
2010年(平成22年)6月18日に貸金業法が改正され完全に施行されたため、出資法の上限金利は20%になりグレーゾーン金利は撤廃されています。
しかし法律改正により過去の取引の金利まで利息制限法の範囲に変更されるわけではないため、2010年(平成22年)6月17日以前の取引により発生した過払い金は返還してもらうことが必要となります。
出資法や貸金業法が改正されてグレーゾーン金利が撤廃された2010年以前の借り入れでは過払い金が発生している可能性が高いですが、そのためには現在の統一された金利で計算し直す「引き直し計算」を行うことが必要です。
引き直し計算で過払い金を支払っていたことが判明すれば返還されることになりますが、過払い金の時効は最後に借入・返済をした日から10年なので、早めの手続が必要といえます。
まとめ
利息制限法はお金を借りる利用者を保護することを目的として法律であり、上限金利を設け暴利による貸し付けが行われないように制限しています。
過去には出資法と上限金利が異なっていたためグレーゾーン金利を発生させることとなり、多重債務が社会問題となっていましたが、払いすぎている利息があれば返還請求もできます。
ただし時効もあるため、早めの手続が必要といえるでしょう。