買掛金とは?未払金・未払費用との違いや会計処理方法をわかりやすく解説

買掛金とは、企業の営業活動で掛け取引により商品を仕入れたときの処理で使う勘定科目です。

商品や材料を仕入れたものの、まだ代金を支払っていないときに用いる勘定科目が買掛金であり、貸借対照表では負債に該当し仕入債務にも区分されます。

掛け取引とは後日代金を受け渡しする取引であり、購入側に代金の支払義務が発生しているときに買掛金を使います。

そこで、資金繰りを悪化させる要因の1つともいえる買掛金とはどのような勘定科目なのか、未払金や未払費用との違いや会計処理の方法について解説していきます。

買掛金とは

「買掛金」とは、商品やサービスの代金を後日支払う「掛け取引」があったときに使用する勘定科目です。

掛け取引のうち、買掛金が使われるのは「仕入れ」に関する「仕入債務」に対してで、たとえば次の掛け取引があったときといえます。

  • 販売目的で商品を仕入れたとき
  • 商品を製造する目的で材料を仕入れたとき

そのため買掛金が発生する掛け取引とは次のような特徴があります。

  • 1か月など一定期間をまとめて支払うため管理しやすい
  • 現金決済よりも大きな額の取引ができる
  • 販売側と購入側の信頼で成り立つ取引

買掛金は営業循環の中で発生する債務であり、支払期間が短期であることから、貸借対照表の左側「貸方」の「負債の部」の中でも「流動負債の部」に表示されます。

買掛金と反対の性質を持つ勘定科目が「売掛金」、同じように代金をまだ支払っていないときに用いる勘定科目に「未払金」や「未払費用」がありますが、この3つの勘定科目との違いを理解しておくとよりわかりやすいといえます。

そこで、次の3つについても理解を深めておきましょう。

  1. 売掛金とは
  2. 未払金とは
  3. 未払費用とは

それぞれ説明していきます。

売掛金とは

掛け取引で用いる勘定科目は「買掛金」以外に「売掛金」があります。

ただし売掛金は買掛金と違って、後払いで代金を受け取る権利が発生していることを意味する勘定科目です。

貸借対照表では「資産」の1つとされ、商品やサービスを販売し売上が発生したときに同時発生します。

買掛金は商品やサービスを購入したときに用いる勘定科目であるのに対し、売掛金は商品やサービスを販売したときに使用する勘定科目です。

なお、掛け取引による請求権は5年で消滅時効を迎えるため、回収し忘れないように注意してください。

未払金とは

「未払金」とは、営業活動以外で発生した支出があるものの、まだ支払っていないときに使用する勘定科目です。

支払期限が1年を超えると「長期未払金」に分類されます。
後日支払う義務が発生していることは買掛金と同じですが、仕入れに関して発生する支払義務ではありません。

未払金は、仕入にひもづかない一時的な取引の債務処理で用いる勘定科目であることが特徴です。

未払費用とは

「未払費用」とは、一定の契約に従い継続した役務・サービスを提供されているものの、その代金の未払い分に対し使用する勘定科目です。

たとえばガス・電気・水道代・地代家賃・保険料などで請求が発生しているものの、まだ払っていないときに使います。

後日支払う義務があることは買掛金や未払金と共通していますが、買掛金と未払金のどちらにも含まれず、継続した契約で発生する費用の未払い分に用いる勘定科目です。

決算をまたぐ場合には、決算日以前に発生した当期分の未払費用と、次期以降の未払費用に分けて当期分だけを計上することになるため注意しておいてください。

【無料ダウンロード】
資金繰りを見える化。資金繰り表テンプレート

もう資金繰りで悩まない!経営者・財務担当者のための資金繰り表テンプレート。財務管理を簡単にし、ビジネスの安定成長を目指しましょう。

いますぐダウンロード

買掛金の会計処理の流れと仕訳

買掛金は負債の1つとして扱われる勘定科目ですが、掛け取引があったときの会計処理の流れとしては次の5つです。

  1. 商品の注文・仕入れ
  2. 請求書の受け取り
  3. 商品代金の支払い
  4. 買掛金残高の確認
  5. その他の会計処理

それぞれの流れとその際の仕訳について説明していきます。

①商品の注文・仕入れ

買掛金は掛け取引により発生するため、仕入れ先に商品を「注文」し、「仕入れ」ます。

全額掛け取引による場合には、注文段階では商品引き渡しも代金支払いもないため会計処理は発生しません。

商品を仕入れ、商品が引き渡されたときに会計処理を行います。

「仕入れ」の段階と認識されるタイミングは、

  • 仕入れ先が出荷したとき
  • 商品を実際に受け取ったとき
  • 商品の検収が終わったとき

など、企業によって基準は異なります。

【仕訳例:仕入先から商品50万円分を掛け取引で仕入れた。】
借方 貸方
仕入  500,000 買掛金  500,000

②請求書の受け取り

仕入れた商品に対する「請求書」が仕入れ先から届いた段階での会計処理はありません。

③商品代金の支払い

買掛金として計上した仕入れ代金の未払分を支払い、支払った時点でその額分の買掛金は消滅します。

【仕訳例:掛け取引で発生した仕入代金の50万円を当座預金から支払った。】
借方 貸方
買掛金  500,000  当座預金  500,000

④買掛金残高の確認

仕入れ先に支払った仕入れ代金と仕訳の数値にミスがないか確認し、買掛金残高を確認します。

⑤その他の会計処理

通常の掛け取引の流れではなく、イレギュラーな事態が発生したときの会計処理として次の3つが挙げられます。

  1. 値引き・返品があったときの仕訳
  2. 約束手形を振り出したときの仕訳
  3. 売掛金と相殺したときの仕訳

それぞれの仕訳処理について解説していきます。

値引き・返品があったときの仕訳

仕入れた商品に汚れ・破損・数量不足などがあったときには、買掛金から返品や値引き分を減額します。

「仕入戻し」や「仕入値引」などの勘定科目を使って処理することもできますが、これらの勘定科目を使わないときには仕入と買掛金を相殺します。

【仕訳例:仕入れた商品のうち破損のあった商品2万円分を返品した。】
借方 貸方
買掛金  20,000  仕入  20,000

約束手形を振り出したときの仕訳

仕入れ代金の支払いに対し、現金や預金からの支払いではなく約束手形を振り出すことがあります。

【仕訳例:掛け取引で仕入れたときの代金50万円に対し約束手形を振り出した。】
借方 貸方
買掛金  500,000 支払手形  500,000

売掛金と相殺したときの仕訳

仕入れ先と売上先が同じ場合には、支払う必要のある買掛金と入金予定の売掛金を相殺できます。

ただし一方的に相殺できるわけではなく、あくまでも相手の同意を得ておくことが必要です。

この場合、買掛金と売掛金それぞれの残高から相殺金額を減額する会計処理が必要となります。

【仕訳例:仕入れ先であるA社には売掛金25万円も発生しているため、A社に承諾を得た上で買掛金のうち25万円を売掛金と相殺した。】
借方 貸方
買掛金  250,000 売掛金  250,000

買掛金残高の確認が重要な理由

買掛金が発生する掛け取引においては、適切に会計処理が行われているか定期的に買掛金残高を確認することが必要です。

その際には補助元帳の1つである「買掛金元帳」を使用します。

仕入れ先ごとの買掛金残高を管理するための補助簿であり、「仕入先元帳」とも呼ばれています。

支払い漏れがあれば仕入れ先からの信用を失うことになるため、それぞれの仕入れ先の買掛金残高や取引内容を確認するようにしましょう。

買掛金元帳を使った買掛金残高では、次のことを確認できます。

  • 買掛金の会計処理に漏れがないか
  • 会計処理の金額にミスがないか

いずれの場合でも、買掛金の発生と支払いに対する会計処理にミスがないか確認するためであり、適切な管理により資金繰りを悪化させないためでもあります。

また、自社や取引先の監査における残高確認に対応するためにも、買掛金残高を確認することは重要なことであるといえるでしょう。

買掛金の管理ポイント

買掛金は債務の1つであるため、適切に管理しなければ資金繰りを悪化させます。

適切な管理のポイントとしては「回転期間」や「回転率」などの指標を用いて行う方法が挙げられるため、次の つについて解説していきます。

  1. 買掛金の回転期間
  2. 買掛金の回転率

買掛金の回転期間

買掛金の「回転期間」とは、買掛金の支払いまでにかかった平均的な日数で、次の計算式で算出できます。

買掛金の回転期間(日数)=買掛金残高÷(売上原価÷365日)

数値が低い時には支払いが早く行われていることを意味し、高ければ支払いが遅いことがわかります。

買掛金は売上代金である売掛金を回収した後で支払うことが望ましいですが、回転期間が低ければ売掛金回収前に支払いが発生してしまい資金繰りは悪化しやすくなるでしょう。

そのため、資金繰りの観点から見れば、回転期間の数値は高いほうが有利であるといえるでしょう。

買掛金の回転率

買掛金の「回転率」は、仕入れ代金をどのくらい効率的に支払うことができているか示す割合で、次の計算式で算出できます。

買掛金の回転率=(売上原価÷買掛金残高)×100

この数値が高いほど支払いが早いことを意味しますが、反対に低ければ支払いまで時間がかかっている状況といえます。

資金繰りの観点から見れば、数値は低いほうが資金繰りに余裕があるといえますが、支払い状況の悪化で資金が足らずに先延ばしにしている場合は注意してください。

なお、買掛金だけでなく、支払手形などそのほかの仕入債務がある場合は、仕入債務の総額を使って分析することもあります。

まとめ

買掛金は貸借対照表の負債の部のうち流動負債に該当する勘定科目であり、仕入債務の1つです。

掛け取引で商品を仕入れたときの会計処理に用いることとなりますが、支払義務が発生していることを意味するため、適切に管理しなければ資金繰りを悪化させます。

買掛金元帳を用いて会計処理に問題がないか、支払いが遅れていないか確認することが必要となります。

また、売掛金が入金されるよりも先に買掛金の支払いが発生するため、入金と支払いのズレにより資金繰りを悪化させないように注意してください。

回転期間や回転率を用いて分析することも忘れないようにしましょう。