個人事業主や中小企業の資金調達方法として注目されている「ファクタリング」ですが、悪徳業者が横行し、脅迫など過度な取り立てを行うケースが存在します。
詐欺まがいの取引や脅しによる取り立てなど、ファクタリングを装い金銭を貸し付けようとするヤミ金融業者が関係しているといえますが、実際にあった取り立て方法や悪徳業者に騙されないためのポイントを解説します。
目次
ファクタリングの取り立てには「貸金業法」が適用されない
貸金業法は貸金契約に基づいて行われる取り立てに対して適用される法律です。貸金契約とは、消費者金融やローン会社からお金を借りる場合の契約のことを指します。
また、貸金業務を行う場合には貸金業の登録が必要です。貸金業法に違反すると、業務停止などの処分を受ける可能性があるため、貸金業者はあまり厳しい取り立てはできません。
しかし、ファクタリングは貸金契約ではなく、債権譲渡契約に該当します。そのため、貸金業法は適用されません。ファクタリング会社は基本的に「自由な取り立て」が可能です。
ファクタリング会社によっては、消費者金融やローン会社と違って厳しい取り立てを行っているところもあります。
悪質な違法業者の勧誘手口
表向きはファクタリングを装う悪質な違法業者の勧誘手口は、例えば次のような方法の利用です。
- 電話
- チラシ
- ダイレクトメール
違法業者の勧誘被害が多いのは主に地方の利用者で、首都圏の違法業者が地方の利用者に法外な金利で金銭を貸し付け、厳しい取り立てを行うなどです。
上記の方法で、
「低金利ですぐに現金化」
「ブラックでもOK」
「簡単手続で即日入金」
など、お金に困った経営者の心理をつく言葉を言葉巧みにならべてきます。
自己破産者や多重債務者などがターゲットになりやすく、まずは3~5万円など小口による資金が渡されます。
その後、支払期日になると、
「元金は据え置いて利息だけ支払ってもらえばよい」
と持ち掛け、あっという間に請求額が雪だるま式に膨れ上がる仕組みです。
7~10日間など支払期日までが短いことが特徴で、法外な金利による利息を請求されるため、たとえ短期間でも利息負担は大きくなります。
期日に支払いできない利用者に対し、今度は別の業者の利用を勧められることもありますが、この業者も違法業者で同じように法外な金利による利息を請求してきます。
また、契約の際にはファクタリングでは必要のない、家族や親族の連絡先を訪ねてくことも特徴です。
一般的なファクタリング会社の取り立て方法
まず、一般的なファクタリングの取り立てはどのようなものなのか把握しておく必要があります。優良なファクタリング会社であれば、基本的に貸金業法で禁止されている方法での取り立ては行いません。悪徳業者との違いを知っておきましょう。
ここではファクタリング会社の取り立て方法を4つに分けて紹介します。
- 誰から回収すべきかを調査
- 利用者に任意で支払いを求める
- 支払催促または訴訟を起こす
- 強制執行に着手する
1.誰から回収すべきかを調査
利用者がファクタリング会社に弁済しない場合に、その原因によって回収すべき相手が異なります。
利用者が他の用途に使い込んでしまった場合には回収する相手は利用者です。しかし、第三債務者が利用者に売掛金を支払わないために弁済できないのであれば、回収する相手は第三債務者になります。
この場合、ファクタリング会社は利用者の言い分を一方的に信じるのではなく、事実関係を確認するため調査を行うのが一般的です。
2.利用者に任意で支払いを求める
第三債務者がきちんと売掛金を利用者に対して支払っているにもかかわらず、利用者が弁済しないのであれば債務不履行です。債務不履行に陥った際に、ファクタリング会社は利用者に対して任意での支払いを求めます。
初期段階では、電話をかけたりメールを送ったりするケースが多いです。この際、威圧的な態度をとることはありません。
電話やメールだけの取り立てでは支払ってもらえないと判断した場合、郵便物を送付して支払いを求めます。それでも支払ってもらえないと、内容証明郵便を送付します。
内容証明郵便そのものに法的効力はありません。しかし、内容証明郵便を送った記録が郵便局に残り、後々法的手段に出る際に証拠として使用できます。
3.支払催促または訴訟を起こす
任意の支払いを求めても利用者が応じない場合には法的手続に踏み切ります。支払督促を行ってから、訴訟を起こすケースが多いです。
支払督促とは裁判所を通じて書類を送付し、相手の資産を差し押さえ可能な状態にする手続のことです。
ただし、2週間以内に相手が異議申し立てをした場合には、差し押さえできず、訴訟に移ることになります。
また、相手が財産を隠すおそれがある場合などには、訴訟の判決が出る前の段階で仮差し押さえをすることもあります。
4.強制執行に着手する
訴訟で判決が出ても、利用者が支払いをしない場合には「強制執行」の手続に入ります。財産を差し押さえて、強制的に弁済させる手続のことです。
差し押さえられる財産は主に銀行口座の預金・不動産・保険など金銭的価値のある財産です。預金の場合には残高が強制的に弁済に充てられます。不動産や保険などは現金化された上で弁済に充てられる仕組みです。
ファクタリングを装う悪質業者の取り立て方法
ファクタリングを装う悪質業者を利用してしまうと、手数料ではなく利息が発生することとなり、その金利も法外な設定のため資金繰りはかなり悪化してしまいます。
そして期日に支払いができないと、どのような手を使っても支払うように厳しい取り立てをしてきますが、主に次のような方法を使ってきます。
- 精神的に追い詰める
- しつこく電話してくる
- 営業所などに押しかけてくる
- 深夜や早朝に電話してくる
- 家族に嫌がらせをする
- 周辺へ暴露する
- 勝手に商品を引き揚げる
- 様々な嫌がらせをする
これらの中には金融庁などが注意喚起している取り立て方法も含まれるため、事前にどのような方法か知っておくと安心です。
①精神的に追い詰める
表向きファクタリングを装う悪質業者は、少しでも支払いが遅れれば脅迫といえる内容の電話を利用者個人の携帯だけでなく勤務先や親兄弟など親族にまでかけ、精神的に追い詰めてきます。
利用者を精神的に追い詰めることで、支払いをしないことが悪いことのように思いこませ、無理をしてでも払わそうとします。
②しつこく電話してくる
支払いが少しでも遅れれば、利用者個人の携帯や事務所へしつこく電話してきます。
その回数も一般的なしつこさではなく、例えば1日に100回以上など苦痛を感じさせるレベルです。
③営業所などに押しかけてくる
電話ではなく、直接事務所や工場、店舗などに押しかけて支払いを求めたり騒いだりなど、仕事場だけでなく周辺住民にも迷惑になる行為をしてきます。
④深夜や早朝に電話してくる
事務所や店舗だけでなく、利用者個人の自宅に電話をかけてきますが、その時間帯も早朝や深夜など寝静まってるときです。
⑤家族に嫌がらせをする
契約を結ぶときに親族の連絡先も尋ねられるため、代わりに支払うように親兄弟や親族に電話をかけてくることもあります。
⑥周辺へ暴露する
わざと周辺に聞こえるように、
「金を返せ!」
と大声で騒ぐ行為や、同様の内容が記載された立て看板を立てたりチラシを配ったりなど暴露しようとします。
⑦勝手に商品を引き揚げる
支払いができないならその分、在庫商品を差し出すように要求し、敷地に勝手に入り引き揚げるケースも見られます。
⑧様々な嫌がらせをする
支払いをするよう次のような様々な嫌がらせをしてきます。
- 救急車や消防車を呼ばれる
- 宅配ピザを注文される
- 汚物を送り付けられる
- 家族の安全を脅かす内容をほのめかされる
悪質業者の特徴と見分けるポイント
ファクタリングを装い金銭を貸し付けてくる悪質業者に騙されないためには、優良で信頼できるファクタリング会社との見極めが重要となります。
正規のファクタリング会社と悪質業者を見分けるために次の6つを悪質業者の特徴として押さえておきましょう。
- 相場を大きく下回る手数料
- 審査なしで契約可能
- 契約段階で手数料を積み増す
- 存在しない費用の追加
- ジャンプの提案
- 恐喝まがいの取り立て
それぞれ説明していきます。
①相場を大きく下回る手数料
提案された手数料が、一般的な相場を上回るほど高いときは注意してください。同様に安すぎる手数料にも注意が必要です。
2社間ファクタリングの手数料相場は10~20%ですが、ファクタリング会社のリスクやコストを考慮して設定する場合、5%程度で設定されることはありません。
しかし2社間ファクタリングなのに5%程度の手数料など破格値といえる割合を提案してくる場合には、追加費用や他の部分で利益を出すことを前提としている可能性がありますので注意しましょう。
②審査なしで契約可能
ファクタリングの申し込みを受けたファクタリング会社は、売却する売掛金が期日に遅れず支払われるか、売掛先の信用力を重視した審査を行います。
もしも売掛金が期日に支払われなかった場合、損失を被ることになるのはファクタリング会社だからです。
しかし書類提出や情報提供など求められず、審査なしで契約できるという場合、高金利で高額の返済を要求するヤミ金融業者である可能性が高いと考えられます。
③契約段階で手数料を積み増す
見積もり段階で手数料を提示され、納得の上で契約するつもりが、契約段階に手数料を積み増しされたときには悪質業者と疑いましょう。
審査という名目だけで売掛先の信用力は確認せず、見積もり段階では良心的な手数料を提示し、契約の段階になっていろいろな理由をつけ手数料を積み増しするケースです。
例えば、次のような理由で積み増しを求められます。
- 初回利用
- 即日振込
- 売掛先の信用力不足
④存在しない費用の追加
悪質業者の場合、本来のファクタリングには存在しない保証料や手付金など架空の費用を請求するケースもあるため注意してください。
⑤ジャンプの提案
悪質業者の中には、「分割」による売掛金の支払いや、「ジャンプ」による返済を提案してくることがあります。
「支払いが厳しいなら分けて支払っても問題ありませんよ」
「手数料(利息)だけ払ってくれれば売掛金(元金)は据え置きでもいいですよ」
など、無理な要求をしてこないことに優しさを感じることもあるかもしれません。
しかし分割による支払いをすれば、売買ではなく融資とみなされるため、貸金業登録をしていない業者からの提案はヤミ金融業者と見抜くことができます。
また、支払いを待つ代わりに手数料のみ支払う「ジャンプ」では、据え置く分、手数料が上乗せされてしまい莫大な金額まで膨れ上がります。
資金不足を解消できなくなることはもちろん、資金繰りは悪化し続けてしまい、健全経営とはほど遠い状況になるため十分に注意してください。
⑥恐喝まがいの取り立て
もしも期日に支払いができないと、激しい言葉で恐喝するなどの取り立て行為をしてくるのが悪質業者です。
利用者本人だけでなく、会社の従業員や家族などを巻き込み、売掛先にも債権譲渡の事実を伝えると脅してくるため、悪質業者と契約しないことが大切といえます。
違法となる取り立て行為
表向きファクタリングを装う悪質業者は、貸金業登録をせずに金銭を貸し付けるヤミ金融業者です。
ファクタリング業界は法整備が十分といえず、貸金ではないため貸金業法も適用されません。
そのため売掛債権の買い取りと偽り、甘い手口で資金不足に困っている経営者を誘い、査収的には悪質な取り立て行為に及んできます。
しかしたとえ貸金業法が適用されなくても、次のような取り立て行為を行うとそれぞれ次の罪に問われます。
暴力をふるう行為 | 暴行罪・傷害罪 |
脅す行為 | 脅迫罪・強要罪・恐喝罪 |
周辺に分かるように嫌がらせをする行為 | 名誉棄損罪 |
勝手に敷地内へ侵入する行為 | 建造物侵入罪 |
出ていくように促したのに居座り続ける行為 | 不退去罪 |
勝手に商品を引き揚げる行為 | 窃盗罪 |
もしもこのような取り立て行為を受けたときには、すぐに警察に連絡し、弁護士など専門家にも相談してみることをおススメします。
悪質な取り立て被害の相談先
ファクタリング会社と思って安心して契約したのに、資金調達後に悪質業者であることが分かったなど、気がつかず利用してしまい被害に遭うケースも見られます。
期日に支払いができず、悪質な取り立て被害に困っているのなら、次のような相談先に相談しましょう。
- 警察
- 金融庁 金融サービス利用者相談室
- 日本資金業協会 資金業相談・紛争解決センター
- 消費生活センター
- 弁護士事務所
それぞれの相談先について説明していきます。
①警察
悪質な取り立てに遭った場合、被害の相談先はまずは「警察」です。
詐欺被害に遭ったときの窓口として「#9110」ダイヤルを設けており、無料で相談することができます。
ただし解決させるまで時間がかかることや、支払ったお金を取り戻すことまでは期待できません。
また、警察に被害届を出す場合にも、実際に被害を受けた証拠や加害者の情報が必要となります。
特にファクタリングを装う被害では、商取引が関係するため民事としての扱いとなり、積極的に動いてもらえないことがあることは留意しておいてください。
②金融庁 金融サービス利用者相談室
金融庁は金融サービスを扱う業者を監督する役所です。そのため、金融サービスの利用に伴ってトラブルに遭った人を対象に相談を受け付けています。相談窓口が設置されており、電話やメールなどで気軽に相談可能です。
匿名での相談もできるため、個人情報を知られず相談したい方におすすめです。
③日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター
日本貸金業協会は貸金業の運営を管理する目的で設立された組織です。貸金業者と利用者との間でトラブルが起こったときに相談できるように、「貸金業相談・紛争解決センター」を設置しています。
貸金業の知識を持ったプロに無料で相談可能です。
④消費者生活センター
警察以外で悪質な取り立て行為による被害を相談する場所として、「消費者生活センター」が挙げられます。
消費者生活センターも「188」ダイヤルによる相談窓口を設けていることや、もともと商品やサービスなど消費生活全般の苦情や問い合わせを受け付けている機関のため、警察よりも親身に相談に応じてもらいやすいといえるでしょう。
専門相談員が適切にアドバイスしてくれるため、まだ契約していないタイミングで怪しさを感じるときなどは、先に消費生活センターに相談すると安心です。
ただし消費者生活センターだけを頼っても、被害に遭ったお金を取り戻せる可能性は低いといえます。
消費生活センターには捜査権限がないため、問題そのものをセンターに解決してもらうのではなく、この先どのように行動すればよいか解決策や助言が欲しいときに相談するとよいでしょう。
⑤弁護士事務所
警察や消費生活センターは公共機関ですが、弁護士が経営していたり勤務していたりする民間の「弁護士事務所」に仕事を依頼すると、被害を受けた利用者の代理人として悪質業者と直接交渉してもらうことができます。
ただし弁護士や弁護士事務所も得意とする分野が異なるため、詐欺被害などが得意な弁護士のいる事務所を選びましょう。
違法な催促を止めることや、払いすぎた利息である過払い金を返還してもらうように要求することなども、利用者に代わってすべて手続してもらえます。
仮に悪質業者が要求に応じないときには、銀行口座を凍結させるなどダメージを与えることもできるだけでなく、法定で争う場合でも安心です。
騙し取られたお金を本気で取り戻したいときや、恐喝まがいの取り立てに苦しんでいるときには、弁護士を味方につけることで安心できるでしょう。
ただし弁護士事務所に相談・依頼すると費用が発生するため、問題解決に向けた資金の準備が必要となることは留意しておいてください。
まとめ
ファクタリング業界は貸金業法の規制が及ばず法規制も十分ではないため、表向きファクタリング会社を装う悪質なヤミ金融業者などが横行しています。
ファクタリングと称しながら売掛金を担保に金銭を貸し付けようとするヤミ金融業者に騙されてしまうと、資金調達の方法として活用されるはずだったファクタリングではなくなってしまいます。
もしもファクタリングを利用してみたいけれど、違法業者と契約してしまい過度な取り立てに遭うのではないか心配…という場合には、高い実績と評判を誇るファクタリング会社に相談しましょう。
ニーズに合った資金調達方法の提案を受けることによって、スムーズに手元の資金を増やすことにつなげることができます。