ファクタリングと債権回収会社の違いとは?対象の債権や目的を徹底比較

ファクタリング会社と債権回収会社(サービサー)は、どちらも債権譲渡を伴うことは共通しています。

しかし扱う債権の種類や目的、提供されるサービスなどが異なるため、混同しないように注意が必要です。

ニーズに合ったサービスの選択が求められるため、ファクタリングと債権回収会社の違いについて、扱う債権や目的などを徹底比較していきます。

債権回収会社(サービサー)とは

「債権回収会社(サービサー)」とは、不良債権の処理を促すために制定された「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」による法人です。

期限を過ぎたのに代金が振り込まれないまま、焦げ付いた売掛金を譲り受け、管理・回収を行う民間の債権管理回収専門事業者です。

もともと債権回収を業務として依頼され、担当できるのは弁護士のみでした。

しかしサービサー法の施行で法務大臣から営業許可を得た民間の債権回収専門会社でも業務を担当できるようになっています。

自力で回収できなくなった債権を代理で請求するため、対象となる利用者は銀行や消費者金融、カード会社などの法人です。

また、法務大臣から許可を受けるためには、次の要件を満たすことが必要とされています。

  • 資本金5億円以上の株式会社
  • 常務に従事する取締役1名以上に弁護士が含まれている
  • 暴力団員などの関与がない

そのため多くは金融会社の関連企業が運営しており、投資銀行または投資ファンド系・政府系・ノンバンク系・独立系・不動産業系などの債権回収会社も存在しています。

債権回収会社の特徴

債権回収会社が担当する業務は、サービサー法による厳格な規制のもとで行うことが必要です。

法令遵守と適正な回収が義務づけられており、監督官庁の法務省からも定期検査・調査を受けることが求められています。

定期的に業務実績報告を行うことも義務化されており、不良債権の回収を専門的に扱う会社として適切な運営が必須となっていることが特徴です。

さらに債権回収会社の特徴を詳しく知るために、次の4つについて理解を深めておきましょう。

  1. 債権回収会社を利用する目的
  2. 債権回収会社の利用者
  3. 取り扱う債権の種類
  4. 債権回収会社の費用

それぞれ詳しく説明していきます。

債権回収会社を利用する目的

債権回収会社を利用する目的は、すでに期限を過ぎているのに振り込まれることがなく、焦げ付いた状態の売掛金を回収することです。

不良債権化した売掛債権を債権回収会社に譲渡することで、自力では回収できなくなった債権を代理で請求してもらうことができます。

いつまで待っても入金されない債権の回収業務にとらわれていては、本業に専念することもできません。

また、すでに返済能力のない売掛先に対し、粘り強く請求を続け回収を図るよりは、債権回収会社に売却し不良債権を処理したほうが業務効率化にもつながります。

債権回収会社に債権を売って回収を図るというよりは、不良債権を処理することを目的とすると考えればわかりやすいといえます。

債権回収会社の利用者

債権回収会社が引き受ける不良債権の多くは貸付債権やクレジット債権です。

金融界者は金銭を貸し付けることや立て替えることをサービスとして提供していますが、返済されない債権が発生することは日常茶飯事といえます。

そのため、債権回収会社に不良債権回収を依頼するのは、金融機関や貸金業者、クレジット会社などが大部分を占めています。

金融会社以外の一般企業も債権回収会社の利用対象ではあるものの、大手の債権回収会社では利用者を金融会社に限定している場合もあるようです。

取り扱う債権の種類

債権回収会社で取り扱う債権の種類は、法律で定められている「特定金融債権」のうち不良債権化した債権です。

利用者が自力回収できなくなった債権を代理で回収する業務を担当するため、債権回収会社が取り扱うことのできる債権は次のようにサービサー法で限定されています。

  • 銀行などの金融機関・貸金業者の有する(有していた)貸付債権など
  • リース・クレジット債権など
  • 特定目的会社(SPC)が流動化対象資産として有する金銭債権など
  • 法的倒産手続中の方が有する金銭債権など
  • 保証会社・金融機関などが有する求償債権など
  • その他政令指定で定める特定金銭債権

そのため債権回収会社の取り扱う債権の種類は、以下のとおりです。

  • すでに期日を過ぎて回収困難に陥っている売掛債権
  • 貸付先が返済不能状態に陥り回収できなくなった貸付債権やクレジット債権

また、債権回収会社に不良債権を売却することによいり、不良債権は税務上の損金計上できるため無税償却することもできます。

債権回収会社の費用

債権回収会社の買取金額は、債権額面金額の2~3%程度まで引き下げられます。

たとえば売掛債権1000万円分を2%で買い取る債権回収会社に売却すると、受け取ることができる金額は20万円です。

債権額面金額よりも極めて少ない金額の受け取りとなるものの、すでに回収困難となった不良債権が対象となります。

債権回収会社のリスクコントロールのために設定される金額と認識しておきましょう。

不良債権を買い取った債権回収会社は、債務者と交渉して大幅に債権を圧縮するなど、回収していきます。

仮に債務者に対し債権額面金額10%程度で交渉したとしても、先の例では100万円を回収できるため、80万円を売上とすることができます。

ファクタリング会社とは

「ファクタリング会社」とは、個人事業主や企業が保有している「売掛金」を買い取り、売買手数料を受け取って現金化する会社です。

利用者が受け取る金額は、ファクタリング会社に支払う売買手数料を差し引いた金額となり、本来の売掛債権額面より少なくなります。

しかし最短で即日現金化が可能なファクタリング会社もあるため、すぐに資金を調達しなければならないニーズに対応しやすいサービスとして注目されています。

ファクタリング会社は、ファクタリングサービスを専門に提供する専門業者だけではありません。

銀行傘下の子会社などがサービスを提供しているケースや、消費者金融など貸金業者が運営するファクタリング会社もあります。

どのグループにも属さない独立系のファクタリング専門業者などは、コンサルティングなど経営全般の支援も行うなど充実したサービスを提供しています。

なお、通常のファクタリングでは入金額や入金期日が決まった「確定債権」でなければ買い取りはされないものの、最近では将来債権も対象とするケースもあるようです。

入金期日の過ぎた債権は対象ではないため、回収できなくなった売掛金を持ち込んでも契約はできないと理解しておいてください。

ファクタリングの特徴

ファクタリングとは、売掛債権買取業務のことです。

まずは利用者の売掛金を買い取るため、売掛先の信用調査を行います。

買取可能と判断した場合は、ファクタリング会社独自の判断で売掛金を買い取り、貸し倒れリスクを引き受けます。

そのため資金調達目的だけでなく、貸し倒れリスクを回避する方法として利用できるサービスとも考えられます。

さらに特徴を知るため、次の4つの理解を深めていきましょう。

  1. ファクタリングを利用する目的
  2. ファクタリングの利用者
  3. 取り扱う債権の種類
  4. ファクタリングの売買手数料

それぞれ詳しく説明します。

ファクタリングを利用する目的

ファクタリングを利用する目的として、その多くが資金調達です。

また、次のような理由でも利用されています。

  • 資金繰り改善
  • 債権管理の軽減
  • オフバランス化

もっとも多い資金調達を目的とした利用では、早期に手元の資金を確保できるため、資金不足の悩みを解消させることができます。

ファクタリングの審査は、売掛先の信用力を重視した内容となるため、難易度は低めです。

赤字経営や債務超過でリスケジュール中という場合でも、申し込みできます。

自社の信用力が低下しており、銀行融資の審査に通らないという場合に、利用しやすいことがメリットです。

また、売掛先から入金のある期日まで待たずに売掛金を回収できるため、資金繰りを改善できます。

売掛金を減らし現金を増やすことで、会社の評価を高めるオフバランス化にも効果が期待できれば、財務内容の改善を改善させることも可能です。

ファクタリングの利用者

ファクタリング利用のほとんどは、資金調達を目的としています。

そのためファクタリングの利用者は、資金繰りに問題を抱えている個人事業主や中小企業です。

銀行融資を受けにくい個人事業主や中小企業の場合、資金の調達方法は限られます。

借りやすいビジネスローンなどを利用すると、負債を増やしてしまうため決算書の見た目が悪化することも懸念されます。

しかしファクタリングなら借金を増やさないため、安心して利用できます。

取り扱う債権の種類

ファクタリングで取り扱われる債権の種類は、入金額と入金日の決まった支払期日前の「確定債権」に限られます。

すでに売掛先に対する請求書を発行しており、入金を待っている状態の売掛債権が対象であるため、期日を過ぎても回収できていない売掛債権は対象にはなりません。

なお、法改正により将来的に発生する「将来債権」も譲渡可能となったため、将来債権を専門とするファクタリング会社もあるようです。

また、売掛先との契約において債権の譲渡を禁止する特約が付されている場合でも、法改正により譲渡は認められることとなりました。

しかし多くのファクタリング会社では、後々のトラブルを防ぐために買取対象から外していることが多いので注意しましょう。

ファクタリングの売買手数料

ファクタリングの売買手数料は、次の2つの契約形態によって異なります。

  • 2社間ファクタリング 利用者とファクタリング会社の2社で契約する形態
  • 3社間ファクタリング 利用者とファクタリング会社だけでなく売掛先も契約に関与する形態

2社間ファクタリングの売買手数料の相場は10~20%であり、買取額は売掛債権額面の8~9割となります。

これは、売掛先が契約に関与せず、ファクタリングにより債権が譲渡されることも伝えないからです。

売掛先にファクタリングで資金を調達することを知られると、資金繰りが悪化している企業ではないかと勘繰られてしまう可能性があります。

中小企業の場合、売掛先が余計な不安を感じ、その後の取引に影響が及ぶことを懸念する傾向が高いため、多くが2社間ファクタリングを選びます。

ただ、売掛先が関与しない手続となるため、売掛金の回収は利用者が行い、その後ファクタリング会社に渡す流れとなります。

もしも回収した売掛金を使い込まれれば、ファクタリング会社は大きな損失を被ることとなるため、そのリスクの代償として手数料は割高に設定されます。

もう一方の3社間ファクタリングであれば売掛先が契約に関与します。

売掛金の支払いも直接ファクタリング会社に行われるため、売買手数料の相場は1~9%と割安です。

ファクタリング会社と債権回収会社の違い

ファクタリング会社と債権回収会社のどちらに相談した場合でも、企業にとって煩わしい売掛金の管理や回収などの業務から解放されやすくなります。

また、貸し倒れリスクを回避する方法としても使えるといえますが、ファクタリング会社と債権回収会社には次の4つの違いがあるといえるでしょう。

  1. 利用目的の違い
  2. 対象となる利用者の違い
  3. 取り扱う債権の違い
  4. コストの違い

それぞれの違いを説明します。

利用目的の違い

ファクタリングは主に資金調達を目的とした利用が多いのに対し、債権回収会社は回収不能となった焦げ付いた売掛債権の処理で利用されることが違いといえます。

ファクタリングと債権回収会社の使い分けで迷ったときには、以下を参考にしてください。

  • 支払期日前の売掛金を前倒ししたいときにはファクタリング
  • 支払期日を過ぎて回収できない売掛金を現金化したいなら債権回収会社

対象となる利用者の違い

ファクタリングの主な利用者は、銀行から融資を受けにくい個人事業主や中小企業などです。

一方の債権回収会社を利用するのは、銀行や消費者金融、カード会社など金融会社となります。

特定事業者である場合など特別なケースを除いて、個人で債権回収会社は利用できないため注意してください。

取り扱う債権の違い

ファクタリングで取り扱われる債権は、入金額と入金期日の確定した回収前の売掛債権です。

もう一方の債権回収会社は、取り扱いが認められている特定金銭債権のうち、すでに支払期日が過ぎてしまった不良債権です。

ファクタリングで売掛債権を売却後、売掛先から売掛金を回収できなくなったとしても、利用者はその責任を負うことはありません。

未回収となる前にファクタリング会社に売れば、貸し倒れリスク回避につなげることはできます。

ただしすでに未期日を過ぎて回収できていない売掛債権は対象にはならないため注意してください。

コストの違い

ファクタリングの場合、2社間ファクタリングは10~20%、3社間ファクタリングは1~9%が売買手数料の相場です。

たとえば100万円の売掛金を15%の売買手数料で売却した場合、受け取ることのできる金額は85万円となります。

もう一方の債権回収会社の場合、債権額面の2~3%で買い取ることとなり、実質かかる費用は額面金額の97~98%と高額です。

仮に100万円の売掛金を3%の買取金額で売却すれば、受け取ることのできる金額は3万円と少額となるでしょう。

どちらもリスクの高さに考慮したコストとなるため、目的やニーズに応じたサービスを選ぶことが大切です。

まとめ

ファクタリング会社と債権回収会社は、債権回収など共通する業務はあるものの、その目的や方法はまったく異なるといえます。

すでに期日が過ぎている不良債権化した債権は、ファクタリング会社では買い取りを行っておらず債権回収会社でしか対応できません。

反対に債権回収会社は、回収困難に陥った特定金銭債権が買い取りの対象です。

期日前の売掛債権を買い取ってもらい現金化するサービスは、ファクタリング会社でなければ対応できないといえます。

ファクタリング会社と債権回収会社が提供するサービスの違いを理解した上で、どちらが自社の課題に適しているサービスか見極め利用しましょう。