ファクタリングの経費の扱いは?勘定科目など会計処理をわかりやすく解説

ファクタリングを利用する場合、経費計上など会計処理の方法を理解しておきましょう。

個人事業主または法人のどちらがファクタリングを利用した場合でも、経費計上できる費用を把握できていなければ、無駄な税金を発生させて手元の資金を減らしてしまいます。

そこで、ファクタリングの経費処理の方法や、使用する勘定科目など会計処理を解説していきます。

ファクタリングの経費処理

ファクタリングは、売掛金を売却して資金化する方法のため、事業用資金の借入れと同じ経費計上で会計処理はしません。

融資を受けて資金調達した場合、以下の勘定科目で処理をします。

  • 借入金を1年以内で返済するなら「短期借入金」
  • 1年を超えて返済するなら「長期借入金」

契約の際に支払う振込手数料や収入印紙は、「租税公課」と「支払手数料」で経費計上し、返済で支払った利子は「支払利息」の勘定科目を使います。

ファクタリングも同様に会計処理が必要ではあるものの、普段はなじみのある勘定科目で仕訳を行うことになります。

ファクタリングの種類による経費処理の違い

ファクタリングの経費処理は、以下の契約方式の種類によって異なります。

  • 2社間ファクタリング 利用者とファクタリング会社の2社による契約方式
  • 3社間ファクタリング 利用者・ファクタリング会社・売掛先の3社による契約方式

契約方式によって経費処理が異なるのは、現金化された売掛金がどのように回収されるか、お金の流れに違いがあるからです。

現金化された売掛金がいつ入金されるのか、タイミングなど意識して経費処理を理解するようにしましょう。

2社間ファクタリングの経費処理方法

2社間ファクタリングは、以下の流れで手続が進みます。

  1. ファクタリング会社に申し込み
  2. ファクタリング会社による審査
  3. 利用者とファクタリング会社による契約締結
  4. 現金化された買取代金が利用者へ入金
  5. 売掛先から利用者に対し売掛金の支払い
  6. 利用者からファクタリング会社に対し回収した売掛金の支払い

この流れにおける経費処理のポイントは、買取代金が入金されるタイミングです。

売掛先が契約に関与しない手続となるため、ファクタリング会社によっては即日対応が可能な場合もあります。

そのため現金化された買取代金が、次の2つのどちらに該当するかによって経費の扱いや経理処理が異なります。

  1. 翌日以降に入金される場合の経理処理
  2. 即日入金される場合の経理処理

それぞれのどのような処理方法か説明していきます。

翌日以降に入金される場合の経理処理

ファクタリングにより現金化された買取代金が、契約当日ではなく翌日以降に入金される場合には次のような経理処理となります。

  1. 信用取引による売掛金発生時
  2. ファクタリング契約時
  3. 買取代金が入金されたとき
  4. 売掛先から売掛金を回収したとき
  5. ファクタリング会社に売掛金を支払ったとき

それぞれの経理処理や仕訳の立て方について説明していきます。

①信用取引による売掛金発生時

ファクタリングを利用するかは関係なく、商品やサービスの売買などで信用取引を行い請求書を発行したとき、次の仕訳を立てます。

借 方 貸 方
売掛金 100万円 売上 100万円

なお、ファクタリングを申し込んだときと審査が行われたときには、資産に何の動もないため特に処理は必要ありません。

②ファクタリング契約時

ファクタリング契約を結ぶと、保有する「売掛金」がファクタリング会社に移ります。

売掛金をファクタリング会社に譲渡しても、その買取代金を受け取っていなければ、入金まで「未収入金」で処理をします。

借 方 貸 方
未収入金 100万円 売掛金 100万円

③買取代金が入金されたとき

ファクタリング契約締結後は、ファクタリング会社から利用者に対し買取代金が支払われます。

このとき、ファクタリング会社に対し「売買手数料」を支払いますが、その際に用いる勘定科目は「売掛債権売却損」です。

たとえば売掛金100万円をファクタリング会社に譲渡し、一旦「未収入金」で計上したとします。

その後、買取代金が支払われたときに売買手数料5万円を差し引かれたケースでは、以下の仕訳を立てます。

借 方 貸 方
現金・預金  95万円 未収入金  100万円
売掛債権売却損  5万円

④売掛先から売掛金を回収したとき

2社間ファクタリングでは、売掛先から売掛金を回収するのは利用者です。

しかし回収した売掛金はすでにファクタリング会社に譲渡されているため、売掛先から入金があったときは「預り金」を使います。

借 方 貸 方
現金・預金 100万円 預り金 100万円

⑤ファクタリング会社に売掛金を支払ったとき

売掛先から売掛金を回収した後は、すみやかにファクタリング会社へ支払います。

その際にの仕訳は以下のとおりです。

借 方 貸 方
預り金 100万円 現金・預金 100万円

即日入金の処理方法

ファクタリングによる資金調達で、契約締結と入金が同じ日に行われるときには、次の2つの処理方法をまとめて行います。

  • ファクタリング契約締結時
  • 買取代金が入金されたとき

そのため以下の会計処理の流れとなります。

  1. 信用取引による売掛金発生時
  2. ファクタリング契約時
  3. 売掛先から売掛金を回収したとき
  4. ファクタリング会社に売掛金を支払ったとき

それぞれの仕訳の立て方について説明していきます。

①信用取引による売掛金発生時

先に述べた通り、ファクタリング利用に関係なく信用取引では次の仕訳を立てます。

借 方 貸 方
売掛金 100万円 売上 100万円

 ②ファクタリング契約時

ファクタリング会社とファクタリング契約を結んだ日に買取代金が支払われた場合、一旦「未収入金」で処理することは不要です。

そのため以下の仕訳で処理をします。

借 方 貸 方
普通預金  95万円 売掛金 100万円
売掛債権売却損  5万円

③売掛先から売掛金を回収したとき

2社間ファクタリングでは、利用者が売掛先から売掛金を回収します。

利用者がファクタリング会社の回収業務を代行するため、売掛先から売掛金の入金があったときは、「預り金」で以下の仕訳を立てます。

借 方 貸 方
現金・預金 100万円 預り金 100万円

④ファクタリング会社に売掛金を支払ったとき

売掛先から回収した売掛金は、すでにファクタリング会社に譲渡されている預り金です。

回収後はすみやかにファクタリング会社に支払い、以下の仕訳処理をします。

借 方 貸 方
預り金 100万円 現金・預金 100万円

3社間ファクタリングの経費処理

3社間ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社だけでなく、売掛先も契約に関与します。

そのため売掛先に対するファクタリング利用の通知や、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することについて承諾を得る手続が必要です。

2社間ファクタリングよりも手続が増える分、手間や時間がかかるものの、売買手数料は大きく引き下げることができます。

3社間ファクタリングでは、主に以下の流れで手続が進みます。

  1. ファクタリング会社へ申し込み
  2. ファクタリング会社による審査
  3. 売掛先に対する通知と承諾を得る手続
  4. ファクタリング契約締結
  5. 現金化された買取代金が利用者へ入金
  6. 売掛先からファクタリング会社に対し売掛金の支払い

3社間ファクタリングでは、売掛金の支払いは売掛先からファクタリング会社に直接行われます。

そのため次の2つの仕訳は必要ありません。

  • 売掛先から売掛金を回収したとき
  • ファクタリング会社に売掛金を支払ったとき

なお、3社間ファクタリングでも契約同日に買取代金が入金されるケースもあれば、後日入金される場合があり、それぞれ会計処理は異なります。

そこで、次の2つについてそれぞれ説明していきます。

  1. 翌日以降に入金される場合の会計処理
  2. 即日入金される場合の会計処理

翌日以降に入金される場合の会計処理

ファクタリングによる売掛金の買取代金が翌日以降に入金される場合には、次のような経理処理の流れとなります。

  1. 信用取引による売掛金発生時
  2. ファクタリング契約時
  3. 買取代金が入金されたとき

それぞれの処理方法や仕訳の立て方について説明していきます。

①信用取引による売掛金発生時

ファクタリング利用に関係なく、信用取引を行ったときには次の仕訳を立てます。

借 方 貸 方
売掛金 100万円 売上 100万円

なお、2社間ファクタリング同様、ファクタリング会社に対する申し込みや審査のタイミングにおいて、資産に動きがなく会計処理の必要もありません。

②ファクタリング契約時

ファクタリング会社と契約を結んだものの、買取代金は後日支払われるという場合は、入金までの間は「未収入金」で処理します。

借 方 貸 方
未収入金 100万円 売掛金 100万円

③買取代金が入金されたとき

ファクタリング契約締結後、ファクタリング会社から買取代金を受け取るときには「売買手数料」が差し引かれます。

売買手数料は「売掛債権売却損」の勘定科目で処理します。

たとえば売掛金100万円をファクタリング会社に譲渡し、5万円の売買手数料が差し引かれるときには次の仕訳を立てます。

借 方 貸 方
現金・預金  95万円 未収入金  100万円
売掛債権売却損  5万円

即日入金される場合の会計処理

ファクタリングの契約を締結した日に買取代金が入金された場合には、次の2つをまとめて処理できます。

  1. ファクタリング契約時
  2. 買取代金が入金されたとき

そのため会計処理は次の2つの流れとなります。

信用取引による売掛金発生時
ファクタリング契約時

それぞれの仕訳の立て方について説明します。

①信用取引による売掛金発生時

ファクタリング利用に関係なく、信用取引では次の仕訳を立てます。

借 方 貸 方
売掛金 100万円 売上 100万円

②ファクタリング契約時

ファクタリング契約と同日に買取代金が入金となる場合、入金まで「未収入金」で処理する必要はなく、以下の仕訳を立てます。

借 方 貸 方
普通預金 95万円 売掛金100万円
売掛債権売却損 5万円

ファクタリングにおける経費の扱い

ファクタリングで資金調達したときの経費の扱いは、主に次の2つをポイントとして押さえておくことが必要です。

  1. 売買手数料は「売掛債権売却損」で処理
  2. 会計期間をまたぐときの「期ズレ」に注意

それぞれのポイントについて説明していきます。

売買手数料は「売掛債権売却損」で処理

ファクタリングで資金調達するとき、ファクタリング会社に支払う売買手数料は、「売掛債権売却損」で経費計上できます。

売買手数料はファクタリング会社ごとに設定が異なるものの、次の2つのケースに分けることができると考えられます。

  • 諸経費をすべてまとめて売買手数料として請求するケース
  • 基本手数料・事務手続費用・審査費用・登記費用などそれぞれ請求するケース

ただ、すべての費用を売買手数料で一括請求するケースと、個別に請求するケース、どちらの場合も「売掛債権売却損」の勘定科目で処理します。

売掛債権売却損は、売掛債権を売却したことにより発生した損失です。

手形割引で使用する「割引料」や「雑損失」などの勘定科目を使っても特に問題はありません。

会計期間をまたぐときの「期ズレ」に注意

ファクタリングで資金調達したとき、注意したいのは買取代金が後日支払われるときに、会計期間をまたいでしまうケースです。

経費の処理は会計期間に基づくことが必要であるため、翌期に計上しなければならない経費を当期計上することは認められません。

そのため後日買取代金が入金され、会計期間をまたぐ場合、ファクタリング会社へ「売買手数料」を支払うことと「売掛債権売却損」で計上することのどちらも翌期の処理となります。

入金前に売掛債権売却損で処理すれば、法人税の節税につながるものの、意図的な「期ズレ」は粉飾の一種とされ厳しく確認されます。

「期ズレ」による粉飾リスクを避けるために、次の3つに注意してファクタリングを利用すると安心です。

  • 期ズレが発生しそうなタイミングでファクタリングを利用しない
  • 期ズレが発生しそうなタイミングでのファクタリング利用は2社間ファクタリングを利用する
  • 会計期間をまたぐときには会計ルールに基づいた経費処理で期ズレを防ぐ

「期ズレ」は粉飾扱いとなり、認められません。

後々のトラブルを防ぐためにも、正しい経費の扱いや会計処理を心掛けましょう。

まとめ

ファクタリングの経費の扱いや、仕訳の立て方はそれほど難しくありません。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングのどちらで契約するのか、いつ買取代金が入金されたかによって会計処理は異なります。

もし経費の扱いや会計処理方法で不安があるときには、資金を調達するときにファクタリング会社に相談することをおすすめします。