ファクタリングは、中小企業にとってメリットの高い資金調達の方法です。
手元の資金が不足しないために、銀行融資で資金調達したくても、審査に通らず利用しにくい場合でも、ファクタリングならメリットを生かした資金調達ができます。
そこで、ファクタリングで資金調達するメリット・デメリットと、契約する業者を選びのポイントを解説します。
ファクタリングとは
「ファクタリング」とは、個人事業主や中小企業が保有する売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却し、本来の入金日を前倒しして受け取る資金調達のサービスです。
もともとは欧米で活用されているサービスですが、最近では中小企業を中心に、日本でも注目が集まっています。
売掛金は、商品やサービスを販売・提供した場合、その場で受け取らず約束の期日に支払ってもらう予定の売上代金です。
商取引では「掛け」による取引の後払い方式が一般的ですが、入金予定の期日までの資金不足もファクタリングを活用すればすぐに補うことができます。
ファクタリングが活用される理由
ファクタリングが資金調達に活用されるのは、中小企業の資金繰り問題を解決する方法にぴったりだからです。
掛けによる取引では、商品の納品やサービスの提供と同時にその代金は支払われません。
一旦は納品・提供を終え、後日請求書を発送し、指定の口座に入金してもらうという流れが一般的です。
しかし入金までの期日が長くなると、その間に資金不足に陥ってしまう恐れが高まります。
下請法では、元請事業者が行う下請事業者に対する支払いは納品から60日以内とされています。
しかし裏を返せば、商品を納品しても最長60日は入金がない可能性もあるこ戸を意味します。
この場合、ファクタリングを使うことで、60日間の期間を短縮し手元の資金を増やせます。
余裕資金などが十分ある大企業であれば、売掛金が入金されるまでの期日にお金が足らないということはないでしょう。
しかし資金力の低い中小企業などの場合、売掛金が入金されるまでの期日に様々な支払いが発生します。
銀行融資を受けるほどではない小口資金が必要な場合でも、ファクタリングならニーズに合った資金調達が可能であるため、中小企業で多く活用されるようになりました。
買取型と保証型の違い
中小企業にとってメリットの高い資金調達の方法であるファクタリングですが、次の2つのタイプがあります。
- 買取型
- 保証型
それぞれの特徴について説明していきます。
買取型
「買取型」のファクタリングとは、保有している売掛金に現金化したい企業向けのサービスです。
入金期日より前に売掛債権額面から手数料分を差し引いた金額を受け取ることができます。
一般的に資金調達を目的としたファクタリングといえるでしょう。
保証型
「保証型」のファクタリングとは、売掛金が未回収になったときや、売掛先の倒産で連鎖倒産してしまうことを防ぎたいときに活用したいサービスです。
もしも売掛先の倒産などで売掛金が回収できなくなったときでも、通常通り、売掛債権額が入金されるため万一の備えとして活用できます。
2つのファクタリングの仕組み
ファクタリングの仕組みは、ファクタリングで資金調達するときに契約にかかわる者の数で次の2つに分かれます。
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
それぞれのファクタリングの仕組みと特徴を理解し、適した方法を選ぶことが大切です。
2社間ファクタリング
「2社間ファクタリング」は、主に売掛先にファクタリングによる資金調達を知られたくない場合に活用するファクタリングで、中小企業の多くが希望する仕組みといえます。
契約を結ぶのは、利用者とファクタリング会社の2者のみですが、次のような流れで資金を調達できます。
- 利用者とファクタリング会社が契約を結ぶ
- 売掛債権額面から売買手数料を差し引いた残りが利用者に支払われる
- 利用者に対し、売掛先から売掛金の入金がある
- ファクタリング会社に対し、利用者から回収した売掛金を支払う
2社間ファクタリングで注意したいのは、売掛金を直接回収するのはファクタリング会社ではなく利用者であることです。
利用者はファクタリング会社に代行して売掛金を回収することになるため、入金後はすみやかにファクタリング会社への支払いが必要となります。
売掛先を除く2者で契約を結ぶ仕組みのため、売掛金が現金化されるまでのスピードがはやく、最短即日で完了するなどスピーディさが魅力です。
ただしファクタリング会社にはリスクの高い取引であるため、3社間ファクタリングよりも売買手数料が高めに設定されます。
3社間ファクタリング
「3社間ファクタリング」は、利用者とファクタリング会社だけでなく売掛先の契約にかかわることになるファクタリングのため、売掛金の回収もファクタリング会社が直接行います。
契約から完了までの流れは、主に次のとおりです。
- 売掛先に対し、ファクタリングを利用することの承諾を得る
- 利用者・ファクタリング会社・売掛先が契約を結ぶ
- 売掛債権額面から売買手数料を差し引いた残りが利用者に支払われる
- 売掛先からファクタリング会社に対し、売掛金が支払われる
3社間ファクタリングではファクタリング会社が直接売掛金を回収するため、利用者に回収を代行してもらう必要がありません。
回収を代行してもらうことで、利用者に回収代金を使い込まれてしまうリスクが高くなりますが、そのリスクがない契約のため売買手数料は低く設定されます。
ただし売掛先に対し、ファクタリングを利用することを通知され、承諾を得るという流れが必要であるため、手間にかかる時間分は調達が遅れてしまいます。
また、売掛先から資金繰りが悪化している企業だと懸念される可能性があり、その後の取引にも影響が及ぶ可能性があることは留意が必要です。
債権の種類によるファクタリングの分類
資金調達を目的としてファクタリングを活用する例は増えてしますが、近年ではさまざまなファクタリングサービスが展開されています。
主にファクタリング会社に譲渡する債権の種類によって分けられますが、次の3つが挙げられます。
- 一括ファクタリング
- 国際ファクタリング
- 診療・介護・調剤報酬ファクタリング
それぞれのファクタリングについて説明していきます。
一括ファクタリング
「一括ファクタリング」とは、売掛金の一括決済を実現させるサービスのことです。
ファクタリング会社が売掛金を一括で買い取り、利用者の口座に代金を振り込みます。
従来の「手形取引」に代わるサービスとして銀行からスタートしました。
ファクタリング会社が回収前の売掛債権を買い取ることにより、次のメリットを得ることができます。
- 資金調達による資金不足解消
- 貸し倒れリスクの回避
- 回収業務の効率化
ただし一括ファクタリングによるサービスを提供しているのは、ファクタリングを専門に行う独立系ファクタリング会社ではなく、メガバンクや地方銀行などです。
手数料も低めに設定されるため、手形の管理事務を効率化したいときなどに活用するとよい方法といえます。
国際ファクタリング
「国際ファクタリング」とは、輸出企業の売掛金管理や債権回収リスクをサポートすることを目的に、世界の金融機関が連携して行う回収サービスです。
海外企業との取引では「信用リスク」に懸念がありますが、そのリスクを軽減できます。
ただし取引には次の4者が関わることになります。
- 輸出業者
- 海外業者
- 国内ファクタリング会社
- 海外ファクタリング会社
連絡や手続に時間がかかることが多く、信用調査費や保証料、為替手数料などの諸費用なども発生してしまうため、コスト負担は重くなりがちであることは留意しておきましょう。
診療・介護・調剤報酬ファクタリング
「診療・介護・調剤報酬ファクタリング」とは、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会に請求しているそれぞれの報酬の債権を、ファクタリング会社に売却して現金化するファクタリングです。
医療機関などの場合、診療報酬を請求しても入金されるまでの日数として50日程度はかかります。
そのような場合に活用したいファクタリングですが、売掛先が公共機関となるため、信用力に高さから手数料も割安に設定されることがメリットです。
ファクタリングのメリット
ファクタリングはいろいろなメリットがあるサービスですが、一般的な資金調達方法としてなじみのある銀行融資にない魅力があります。
銀行融資よりもファクタリングで資金調達したほうがよい理由として、次の9つの「メリット」が関係しているといえるでしょう。
- 審査が柔軟で通りやすい
- 資金調達までのスピードがはやい
- 売掛先の倒産リスクを移転できる
- 決算書を汚さず手元の資金を増やせる
- 借金ではないため信用情報や決算書を汚さない
- 信用情報に影響せず担保や保証人も不要
- 返済負担を負わずに資金調達できる
- 節税効果が見込める
- 資産のオフバランス化が可能
それぞれのメリットについて説明していきます。
審査が柔軟で通りやすい
ファクタリング契約を結ぶ前には、ファクタリング会社による審査が行われますが、重視されるのは売掛先の信用力です。
融資審査では利用者の返済能力の有無が重要となるため、主に利用者の信用力が重視されます。
そのため赤字決算の場合や、税金など滞納していれば審査は通りにくくなりますが、ファクタリングなら審査に影響することはなく、柔軟な対応で進められます。
資金調達までのスピードがはやい
ファクタリングなら、最短即日で売掛金を現金化し、資金を調達することができます。
銀行や公的機関から融資を受けようとしても、申し込みから融資実行までに様々な書類を準備することとなり、審査にも時間がかかります。
審査も厳しく、融資まで至らないケースもありますが、ファクタリングでは売掛先の信用力をメインに審査が進められるため、現金化まで最短即日というスピードで資金調達できます。
売掛金回収まで待たず前倒しが可能
売掛先と約束した期日にならなければ売掛金の入金はありませんが、ファクタリングなら回収まで待たずに前倒しで回収できます。
売掛金は発生しても現金化まで一定の時間がかかり、売上は順調に伸びているのに手元の資金は不足しがちといったことも起こりがちです。
売掛金の回収前に資金ショートすれば、黒字倒産してしまうことになるでしょう。
このような場合、ファクタリングなら売掛金を前倒しで回収できるため、手元の資金に余裕を持たせることができます。
売掛先の倒産リスクを移転できる
ファクタリングでは売掛金という債権をファクタリング会社に譲渡しますが、同時に売掛先の倒産リスクも移転されます。
もしも売掛先が倒産し、売掛金が回収不能に陥ったとしても、その責任を利用者が負うことはないからです。
ファクタリングで資金調達することにより、売掛金の貸倒リスクを回避できることもメリットといえるでしょう。
決算書を汚さず手元の資金を増やせる
銀行から融資を受けて資金調達したときなどは、会計上、負債が増えてしまいます。
しかしファクタリングは借入れではないため、資産である売掛金が減少するだけで、負債を増やすことはありません。
決算書を汚すことなく、手元の資金を増やすことができることもファクタリングのメリットといえます。
信用情報に影響せず担保や保証人も不要
ファクタリングは融資を受けて資金調達する方法ではないため、信用情報に影響せず、担保や保証人も準備する必要がなく、売掛金の存在を証明できればよいだけともいえます。
返済負担を負わずに資金調達できる
借入れによる資金調達の方法を選ぶと、一時的に手元の資金は増えますが、返済負担を負うことになります。
しかしファクタリングは借入れではないため、返済義務はありません。
返済負担を負わずに資金調達できることもメリットといえるでしょう。
節税効果が見込める
ファクタリングで資金調達したときには、ファクタリング会社に「手数料」を支払いますが、この手数料は経費計上できるため節税効果も見込めます。
資産のオフバランス化が可能
貸借対照表から資産や負債を減少させることを「オフバランス化」といいます。
ファクタリングでは売掛金を減少させ、負債も増やさないため、オフバランス化を実現できます。
会社の評価では、少ない資産で大きな利益を上げることが優秀とされるため、オフバランス化により評価も向上させることが期待できるでしょう。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングのメリットは十分理解されたことでしょうが、メリットもあれば「デメリット」もあります。
主にファクタリングで資金調達するデメリットとして、次の5つが挙げられます。
- 売買手数料分は売掛金が目減りする
- 前倒しに過ぎない
- 売掛先の信用力が低ければ契約できない
- 調達できる資金は売掛債権の範囲にとどまる
- 売掛先との関係が悪化するリスクがある
それぞれのデメリットについて説明していきます。
売買手数料分は売掛金が目減りする
ファクタリングのデメリットとして、まず売買手数料分、売掛金が目減りしてしまうことが挙げられます。
売買手数料はファクタリング会社の審査によって決まりますが、売掛先の信用力など様々なリスクを考慮した上で決まります。
手元に残る金額を踏まえた上で、利用を検討したほうがよいといえます。
また、売買手数料分目減りするため、長期利用すると資金繰りは悪化してしまいます。
いつまで利用するか、事前に計画を立てた上で資金調達に活用しましょう。
前倒しに過ぎない
ファクタリングは売掛金を現金化する資金調達の方法ですが、将来入金される予定のお金を前倒しで受け取っているに過ぎないことも理解しておきましょう。
前倒しした分、将来の入金額は減少することとなり、一時的な資金の補填には使えても根本的な資金繰りの対策にはならないことは留意しておく必要があります。
売掛先の信用力が低ければ契約できない
ファクタリングで資金調達の源となるのは、保有する売掛金です。
そのため売掛先の業績が悪く、信用力が低いときには資金調達に活用できない場合もあります。
仮に売掛先が倒産し、売掛金が回収できなくなったときには、その損失をファクタリング会社が負うことになるからです。
ファクタリングで売却する売掛金は、できるだけ業績がよく信用力の高い売掛先のものがよいといえるでしょう。
調達できる資金は売掛債権の範囲にとどまる
ファクタリングで資金を調達できるのは、売却する売掛債権の額面額にとどまります。
売掛債権額面よりも高い金額の資金を調達することはできないため、多額の資金が必要なときは金額の大きな売掛金を保有していることが必要です。
売掛先との関係が悪化するリスクがある
2社間ファクタリングなら、売掛先に知られずにファクタリングを利用できます。
しかし3社間ファクタリングの場合、売掛先への通知や承諾を得ることが必要となるため、売掛先との交渉などを行うことになってしまいます。
売掛債権をファクタリング会社に譲渡することを知られるだけでなく、手続に参加してもらうことが必要です。
資金繰り悪化への懸念や手続の面倒さで、関係が悪化してしまうリスクもあるといえるでしょう。
もしも3社間ファクタリングを利用する場合、古くから取引をしているなど信頼関係が十分であり、ファクタリングに理解を示してくれる売掛先を選ぶことが必要です。
ファクタリングを活用するとよいケース
ファクタリングは中小企業にとってとても有効な資金調達の方法といえますが、特に次の5つのケースでは活用したほうがよいといえます。
- 銀行に融資を申し込んだけれど断られてしまったとき
- 赤字決算や税金の滞納があるため借入れによる資金調達は困難と考えられるとき
- 銀行融資を申し込みたいけれど差し入れる担保がなく保証人もいないとき
- 融資審査が終わるまで余裕はなく早急にお金を準備しなければならないとき
- 銀行融資で資金調達するほどではない小口資金が必要なとき
ファクタリングであれば、上記のどのニーズにも対応することができ、スムーズに資金を調達することができます。
ファクタリング会社選びのポイント
ファクタリングで資金調達するときには、売掛先を売却する相手となるファクタリング会社選びが重要です。
しかしファクタリング業界は法整備が十分ではなく、表向きはファクタリングを装うヤミ金融業者なども潜んでいる恐れもあります。
そのため被害に合わないためにも、必ず契約書の控えは受け取ることを前提に、次の5つのポイントを押さえたファクタリング会社選びをおすすめします。
- 売買手数料の妥当性
- 審査の柔軟さ
- 現金化までのスピード
- 利用範囲額の下限・上限の有無
- 債権譲渡登記の有無
それぞれのポイントを説明します。
売買手数料の妥当性
ファクタリングで資金調達すると、ファクタリング会社に対して売買手数料を支払うことになります。
その相場は次のとおりです。
- 2社間ファクタリングの相場…10~20%
- 3社間ファクタリングの相場…1~9%
審査により前後しますが、この一般的な相場を大きく上回る割合で売買手数料が発生する場合は注意が必要です。
また、売買手数料があまりにも安すぎるファクタリング会社を選ぶと、追加の費用などを請求され、余計なコストが発生する恐れもあるため注意してください。
審査の柔軟さ
審査が柔軟なファクタリング会社を選ばなければ、スムーズな資金調達にはつながりません。
ただし電話のみで、売掛金の存在すら確認せず契約可能というケースは悪徳業者である可能性が高いといえます。
柔軟な審査であることは選ぶポイントではあるものの、甘すぎる審査にも注意してください。
現金化までのスピード
ファクタリングを選ぶ方は、資金調達のスピードを重視していることが多いといえます。
そのため売掛金を売って現金化されるまで、数日かかる場合もあれば最短即日で入金可能とする会社など様々です。
どのくらいの時間がかかるか確認した上で、ファクタリング会社を選ぶようにしましょう。
利用範囲額の下限・上限の有無
ファクタリング会社によっては、買取可能とする売掛債権に下限や上限を設けていることがあります。
仮に下限を300万円とするファクタリング会社では、100万円の売掛債権を買い取ってもらうことはできません。
特に少額債権を資金調達に活用したいときは、売買手数料だけでなく利用範囲額を確認していくようにしましょう。
債権譲渡登記の有無
ファクタリングのうち、2社間ファクタリングでは「債権譲渡登記」を必須とするファクタリング会社もあります。
債権譲渡登記を行うと、誰でも情報を閲覧できるため、売掛債権をファクタリング会社に譲渡した事実を利害関係者に知られる恐れがあります。
手続にかかる費用も負担しなければならないため、債権譲渡登記を必要としないファクタリング会社を選んだほうが安心です。
まとめ
中小企業などの資金調達方法としてファクタリングが多く活用されるようになりました。
その理由は手元の現金を増やすまでのスピードや、審査の柔軟さなど様々なメリットがあるからです。
ファクタリングには銀行融資にはないメリットがたくさんある一方で、手数料が高めであることや悪徳業者が潜んでいるなど、デメリットもあります。
資金調達でファクタリングを活用するときには、メリット・デメリットを踏まえた上で信頼できるファクタリング会社を選ぶことが重要であると理解しておきましょう。