ファクタリングを資金調達に活用したいけれど、請求書なしでは対応してもらえないのではないかと不安を感じる経営者もいることでしょう。
「工事期間が長く工事が完成していないので請求書類は発行できない」
といったケースや、
「悪天候に加えトラブル発生による検収の遅れでまだ請求書なしの状態」
など、ファクタリングの申し込みをしたくても肝心の資料がそろわないこともあります。
ファクタリングは売掛金を現金化する資金調達の方法なので、売掛債権が発生していることを証明するために請求書が必要です。
ただし請求書なしで申し込みできないとは限りません。
そこで、請求書なしでもファクタリングは利用できるのか、売掛金の存在を証明する方法を解説します。
ファクタリングで請求書が必要な理由
ファクタリングを利用するためには「売掛金(売掛債権)」を保有していることが前提となります。
そのとき、目に見えない資産である売掛金の存在を証明するための書類が「請求書」です。
請求書は、商品やサービスを販売したとき、その対価を代金として受け取るために発行します。
仮に請求書を発行していなくても、売掛金が発生していないとは限りません。
請求書なしでファクタリングを資金調達に活用したい場合は、請求書に代わる書類を提出すれば審査を受けることができます。
ファクタリングの必要書類
ファクタリングで資金調達するとき、ファクタリング会社ごとに提出を求められる「書類」は異なります。
ただ、売掛金の保有が前提となる資金調達の方法のため、必要書類には「売掛金の存在を証明できる書類」が必ず含まれると考えられます。
一般的にファクタリング会社から「必要書類」として提出を求められるのは、次の8つの書類です。
- 商業登記簿謄本
- 身分証明書
- 決算書または確定申告書
- 印鑑証明書
- 取引銀行口座の通帳
- 請求書・発注書・納品書・個別契約書など
- 売掛先との基本契約書
- 税金・社会保険などの書類
それぞれの書類を説明していきます。
商業登記簿謄本
会社法の規定で「商人に関する取引上重要な一定の事項」が記載されているもの「商業登記簿謄本」は、法人の身分証明書として代用できる書類です。
法人がファクタリングを利用する場合、商業登記簿謄本(登記事項証明書)により、会社の存在を証明することが必要となります。
身分証明書
ファクタリングは法人だけでなく個人事業主でも利用できますが、個人・法人問わず代表者の「身分証明書」が必要です。
免許証・パスポート・マイナンバーカード・住民基本台帳カードなど、ファクタリング会社に求められた身分証明書を提示できるようにしておきましょう。
決算書または確定申告書
法人の場合は「決算書」、個人事業主なら「確定申告書」が、それぞれ直近2~3年分必要です。
ただし決算月から3か月~半年以上経過している場合、直近の試算表などを提出するように求められることもあります。
創業や独立したばかりで決算書や確定申告を提出できないときにも、ファクタリング会社によっては柔軟に対応してくれることがあるため、相談してみるとよいでしょう。
印鑑証明書
ファクタリング会社とファクタリング契約を結ぶとき、契約書に署名と実印での押印が必要です。
実印を押印するときには、印鑑が実印であることを証明するための「印鑑証明書」が必要となるため、準備しておきましょう。
取引銀行口座の通帳
取引銀行の「口座通帳」があれば、お金の入出金の履歴が記載されるため、売掛先と継続した取引があることや、毎月売掛金が期日内に入金されていることを確認してもらえます。
また、ファクタリング利用者の財務状況などもある程度確認できるため、指定期間分の通帳履歴の写しなどを提出するように求められます。
請求書・発注書・納品書・個別契約書など
請求書・発注書・納品書・個別契約書など、売掛先との間で「売掛金が発生していることを証明する書類」が必要です。
ファクタリング会社は、上記の書類から利用者と売掛先の取引内容や、売掛金の債権額と入金予定の期日などを確認しています。
売掛先との取引基本契約書
長年に渡り売掛先と継続した取引があり、互いの慣習などで請求書や納品書などは発行していないという場合には、売掛先との「取引基本契約書」を提出しましょう。
取引基本契約書により売掛先との契約締結や、売掛金の存在が確認できれば、請求書なしでもファクタリングで資金調達できる可能性は高くなります。
税金・社会保険などの書類
ファクタリングで必要になる書類に、「納税証明書」や「納付済証」など提出するようにファクタリング会社から求められることもあります。
たとえ税金滞納などがあった場合でも、ファクタリングの利用は可能です。
ただし、過剰な滞納がある場合、税務署から差押えなど強制執行の対象となることがあります。
ファクタリング利用後に口座に入金された売掛金が差押さえられてしまう可能性も否定できません。
売掛金が差押さえにより回収できなくなることは、ファクタリング会社に大きな損失となってしまいます。
ファクタリングは、税金滞納・赤字決算・債務超過などで利用できる資金調達の方法ですが、状況次第では審査に影響すると理解しておきましょう。
請求書なしでファクタリングを利用する方法
請求書なしの場合、ファクタリングで資金調達したくても、売掛金の存在が証明できなければ審査を受けられません。
そこで、請求書なしでファクタリングを利用する場合には、請求書に代わる以下の書類で代用できないか相談してみましょう。
- 取引基本契約書
- 納品書
- 銀行口座通帳
- 請求書以外の複数書類
それぞれの対処法について説明していきます。
取引基本契約書
発注者が同じ取引先と何度も反復した継続的取引を行う場合、取引で共通する基本的な取り決めを定める契約書が「基本契約書」です。
個別取引の契約でも、取引基本契約書に基づいた注文書や請書を取り交わすことなどで、取引が簡易に成立します。
そのため売掛先と交わした取引基本契約書があれば、継続する取引の存在や支払日など、ファクタリング契約で必要となる情報を確認することができるため、請求書なしでも対応してもらいやすくなります。
納品書
請求書なしでも商品を納品した事実を証明する「納品書」があれば、取引した内容や金額が確認できるため、売掛金の存在を証明する資料として認めてもらえる可能性もあるでしょう。
ただし納品書だけで対応してもらえるとは限らないため、ファクタリング会社に併せて準備しなければならない資料など確認しておくようにしてください。
銀行口座通帳
売掛先と継続した取引が記録されている銀行の「口座通帳」があれば、過去の取引実績は証明できます。
ただし通帳のみで今、売掛金が発生していることを証明することは難しいため、他の資料と併せて提出することで認めてもらえる場合もあります。
請求書以外の複数書類
ファクタリング会社に提出しなければならない書類が多いほど、売掛金が存在していることを証明しやすくなります。
請求書なしでファクタリングを利用したいときには、できるだけ多くの資料を提出し、売掛金が発生していることを証明しましょう。
請求書なしでのファクタリング会社選びのポイント
請求書なしでファクタリングを利用する場合、柔軟に対応してくれるファクタリング会社選びが必要といえます。
そこで、請求書なしでのファクタリング会社選びでは、次の3つのポイントを押さえた上で選択するとよいでしょう。
- 書類の数
- 書類の取得レベル
- オンラインでの書類提出
それぞれ説明します。
書類の数
ファクタリング会社から提出を求められる書類の数は少ないほど、集める手間と時間を省くことができ、手軽にファクタリングを利用しやすくなります。
書類の取得レベル
準備しなければならない書類を取得したくても、わざわざ取り寄せが必要だったり一定日数かかったりする文書が多いと、資金調達まで時間がかかってしまうため注意しましょう。
オンラインでの書類提出
準備した書類をファクタリング会社に提出する方法が対面に限定されている場合、窓口まで出向く移動コストや時間がかかります。
郵送であれば移動コストはかかりませんが、送料などの費用や一定の時間が発生します。
しかしオンライン対応が可能なら、コストも時間もかけずにすぐに提出できます。
一刻を争う資金繰りでファクタリングを活用する場合、オンラインで完結できるファクタリング会社を選んだほうが安心です。
まとめ
ファクタリングを資金調達で活用するときに、請求書は売掛金の存在を証明する重要な書類です。
請求書なしではファクタリング利用ができないわけではないものの、代用できる書類の種類などはファクタリング会社によって異なります。
また、請求書を提出できる場合でも、他の書類提出を求められることもあるため、請求書があれば他の書類は不要というわけでもありません。
請求書のある・なしに関わらず、ファクタリングを利用するときにはファクタリング会社にまずは相談することをおすすめします。