自社の口座が差し押さえられる!?対象と回避する方法を解説

税金、クレジットカード、住宅ローンなどの支払いが滞っている方は、差し押さえにあう可能性があります。差し押さえとは、債権者が未回収分の金額を徴収するために行う処置のことです。

住宅ローンに限らず、金融業者などからの借金を一定期間以上滞納している場合、裁判所が差し押さえで強制的に財産を取り立てることもあるため、注意しましょう。

今回は、差し押さえされる原因や対象物とともに、取り立てられたときの対処方法をご紹介します。

差し押さえされる主な原因

差し押さえされる場合は、債務者側になんらかの原因があり、裁判所から「強制的に財産を回収するしかない」と判断されています。

財産が差し押さえられる主な原因は、次の3つです。

  1. 借金返済の滞納
  2. 税金の滞納
  3. 養育費の未払い

借金返済の滞納

ひとつめは、借金の返済が滞っていることが原因です。銀行や消費者金融からの借入れのみならず、クレジットカードなどの支払いが滞納している場合も含みます。

金融機関などの民間企業が差し押さえを希望する場合、まず裁判所での手続きが必要です。そのため返済期限を1日や2日過ぎた程度で即座に差し押さえされるという心配はありません。気づいたときに早めに払ったり事情を離して返済を待ってもらったりと、しかるべき対処をとりましょう。

「何も言われないから」と放置していると、差し押さえできる状態となる滞納処分の手続きが進められます。

また、滞納処分にならずとも、延滞期間が長引けば長引くほど、延滞料金も加算されていきます。

税金の滞納

ふたつめの原因は、税金を滞納していることです。市民税や都道府県民税、固定資産税など、毎月あるいは毎年納めなくてはならない税金は、複数種類あげられます。給料からあらかじめ徴収されるものもありますが、なかには自ら支払い手続きを行わなくてはならない税金もあります。

税金の滞納が原因である場合、怖いのは借金返済とは差し押さえの手続きが異なることです。税務署職員や役所職員の職務軽減によって、裁判所の手続きなしで差し押さえできます。手続きが簡易的となる分、借金返済よりも早い段階で差し押さえされるおそれがあります。

養育費の未払い

3つ目の原因は養育費の未払いです。離婚や婚外子の認知にともない発生している養育費を、取り決めたとおりに支払っていない場合、差し押さえの対象となります。

厚生労働省が発表している資料によると、令和3年度(2021年度)の養育費の状況は「養育費を受けたことがない」と答えた母子家庭・父子家庭は以下のとおりでした。

  • 母子家庭:56.9%
  • 父子家庭:85.9%

出典:厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告

母子家庭では半数以上、父子家庭ではほとんどの方が養育費を受け取れていません。なんらかの都合で養育費が支払えない場合、相手になんの相談もしていなければ、差し押さえされる可能性があります。

養育費の未払いによる差し押さえを行うためには、債権者は「債務名義」と「送達証明書」を用意します。そのため数日程度の未払いでは差し押さえになることはありません。支払いが困難とわかった時点で、早めに相手へ相談しましょう。

差し押さえられるまでの流れ

差し押さえは、ある日突然にやってきて財産を没収することではありません。差し押さえに至るまでには、いくつかの段階を踏みます。

借金などの返済遅延が続いてから差し押さえが行われるまでの流れは、下記のとおりです。

  1. 債権者から債務者へ督促が行われる
  2. 債務の残額に対する一括請求書が発行される
  3. 裁判・支払督促の申し立てが行われる
  4. 裁判所によって仮執行宣言支払督促が確定される

最初は債権者(金融機関など)から直接、電話や郵便などで督促が行われます。即座に支払えば差し押さえには至りません。

督促を無視し続けていると、残額の一括請求書が届きます。借り入れたときの返済計画に関係なく、残額をすべて一括で支払うようにいわれます。裁判所とのやり取りを避けたい方は、一括請求書が届く段階までに対処しましょう。

一括請求書も無視していると、裁判への召喚や支払い督促が行われ、更に放置すると仮執行宣言支払督促すなわち差し押さえの実行となります。

差し押さえの対象となるものとは?

差し押さえといっても、家財のすべてを取り立てられるわけではありません。最低限、生活に必要と考えられるものや、コストや手続きの問題で現金化が困難なものなどは対象外です。

差し押さえが起こったときに対象となる代表的なものは、次のとおりです。

  1. 給与
  2. 預貯金
  3. 生命保険
  4. 不動産
  5. 動産(不動産以外の物、財産)

給与

確実に回収できる資産として、給与が差し押さえられます。税金等を差し引いた手取り金額のうち、4分の1(手取り44万円以下の場合)が取り立ての対象です。あるいは、手取り給与から33万円を差し引いた残額が差し押さえされます。

賞与や退職金、株式などの有価証券も、差し押さえの対象です。

預貯金

預貯金も現金化の手間がないうえ、確実に差し押さえられる資産として取り立てられます。給与と異なる点は、預貯金には残額に関係なく限度額が設定されていないことです。

仮に残額が多くても、反対に少なくても、差し押さえの限度額はありません。

生命保険

生命保険に関連する資産として、下記の現金が差し押さえ対象となります。

  • 解約返戻金
  • 配当金
  • 満期金

加えて、保険金請求権そのものも差し押さえの対象です。ただし、いざというときの備えではなく投資目的としての特性が強い場合、資産として差し押さえの対象となる可能性もあります。

不動産

土地や建物などの不動産は、資産として認められます。住居として使用している場合も、賃貸物件や親戚宅へ転居するなどの対処法があり、必ずしも生活にマイホームが必須とはいえません。そのため、差し押さえ対象としてあげられます。

例えば、住宅ローンを滞納した場合、借り入れ時の契約によって自宅の建物や土地が差し押さえられる可能性が高くなります。

動産(不動産以外の物、財産)

一部の動産も、生活必需品ではないと判断されるものは差し押さえの対象です。具体的には、自動車、バイク、貴金属、骨とう品などがあげられます。

動産は家財道具も含まれますが、すべてが差し押さえられることはありません。債務者が生活できなくなってしまうものは残されるので、取り立てられるといってもゲーム機など必ずしも必須とはいえない家財道具のみです。

差し押さえの対象外のものもある

基本的に、債務者の生活に支障が出るような差し押さえは、法律で禁じられています。 差し押さえの対象外として、次のものがあげられます。

  1. 66万円までの現金、家具や生活必需品など
  2. 生活保護給付金、厚生年金、国民年金など
  3. 家族や同居人の私物、賃貸の家など

66万円までの現金、家具や生活必需品など

最低限の生活を守るために、差し押さえ禁止動産が決められています。

  • 66万円までの現金
  • 生活に必要な家財道具
  • 3ヶ月分の食料・燃料
  • 業務に必要な道具や器具
  • 信仰や礼拝の対象

例えば、ゲームなど娯楽目的で使用しているパソコンは差し押さえられます。一方で、仕事用に購入したパソコンであれば、業務に必要な道具として取り立ての対象外です。

生活保護給付金、厚生年金、国民年金など

生活保護給付金、厚生年金、国民年金なども、生活に必要な資金として差し押さえの対象外となります。ただし、差し押さえられないのはあくまで手元にある分など、生活費として使用される範囲です。

給付された現金を預金口座へ預け入れておくと、生活費ではなく預貯金の扱いとなります。入金された時点で差し押さえの対象になり、取り立てられることがあるため注意しましょう。

家族や同居人の私物、賃貸の家など

同居している家族の資産は、差し押さえの対象外です。取り立てられるのは、あくまで借金の返済義務がある人物の資産のみです。

仮に夫婦のうち一方が取り立ての対象となった場合、配偶者が婚姻前から所有している財産は差し押さえられることはありません。

住んでいる家も賃貸物件であれば差し押さえの対象外です。賃貸物件はオーナーの持ち物であり、入居しているだけでは所有しているとはいえないためです。

差し押さえられたらどうしたら良い?

まずは差し押さえられないように、届いた支払督促や訴状に対応することが大切です。債権者から直接届いた場合は事情を話して支払いの猶予を設けてもらえないか、分割はできないか相談しましょう。

裁判所から送られてくる支払督促や訴状には、2週間以内に「異議申立書」を提出してしかるべき対処をします。

すぐに支払えない場合は、次の方法があげられます。

  1. 【立て直すなら】税務署をはじめ専門家に相談する
  2. 【諦めるなら】債務整理を行う

それぞれについて解説します。

【立て直すなら】税務署をはじめ専門家に相談する

滞納している税金の種類や事情によっては、支払いの負担を軽減できる場合があります。まずは税務署をはじめ、専門家に事情を相談してみましょう。

例えば、法人税の場合、税務署に相談すると分割での支払いに応じてくれます。きちんと相談の実績を残して支払う意思があることを証明しつつ、分割で納付していれば、急に差し押さえ処分となる心配はありません。

【諦めるなら】債務整理を行う

膨れ上がった借金を抱えている場合、「支払えないから」と返済を止めるのは危険です。差し押さえのリスクが高くなり、更に資産を減らしかねません。

どうしても返済できないときは、きちんとした手続きで負担を軽減させましょう。借金を正当に解決するための交渉や手続きとして、次の方法があげられます。

任意整理

多くの債務整理では、裁判所を介して行います。任意整理は他の方法と異なり、裁判所を通さずに債権者と直接交渉する方法です。実際には債務者本人ではなく、弁護士に交渉や手続きを依頼します。

交渉によって減額できるのは、主に将来発生する利息や遅延損害金です。利息や遅延損害金の支払いがなくなれば、確実に元本を返済できるようになります。

個人再生

民事再生法に則って、借金返済の負担を軽減してもらう方法です。個人再生を利用するためには、裁判所へ申し立てを行い、認めてもらう必要があります。

個人再生は返済総額を減らしたうえで、残った分を原則3年間で分割返済する方法です。返済計画や個人再生の手続きには、債権者の意見も反映されます。

個人再生を申し立てて認められれば、住宅を残しつつも借金を5分の1〜10分の1に減額できます。

自己破産

収入面や生活面の変化により、価値ある財産を売り払っても負債が解消できない場合、裁判所に申し立てを行い、認められれば自己破産できます。

自己破産は、財産の一部を清算して債権者へ配当する「破産手続き」と、それでも残った借金を免除してもらう「免責手続き」のふたつです。通常、自己破産といえば両方の手続きを行うことを指します。

まとめ

差し押さえされるのは、借金の未返済や税金の滞納が酷かったり、養育費をいっさい支払わなかったりと、相手から「強制的に回収するしかない」と判断されるケースです。

税金の場合、手続きを簡略化して差し押さえを実行できるため、問題を放置しているとある日突然に取り立てられかねません。

差し押さえのリスクがある方は、まず問題の解決はできないか検討しましょう。専門家へ相談することもおすすめです。

PMGでは、経営改善に関するサポートも行なっております。差し押さえのリスクに立たされている状況を何とかしたい方は、PMGまでご相談ください。

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