新型コロナで税金を滞納した場合の対処法とは?住民税と法人税に分けて解説

新型コロナウイルス感染症が流行したことで、手元にお金がなく税金を滞納してしまったケースは少なくありません。

コロナ禍を抜けたといわれる今でも、税金の納税資金がなく、滞納状態から抜けられないという場合もあるでしょう。

しかしたとえコロナ禍による厳しい状況だったとしても、何の対処もせずに税金を滞納したままの状態が続けば、回収のためにいずれ財産を差し押さえられてしまいます。

そこで、新型コロナで税金を滞納した場合にはどうすればよいのか、住民税と法人税の2つの税金滞納について解説していきます。

税金滞納の時効

税金を滞納している場合、いずれ「時効」により請求されなくなるのでは…と考える方もいることでしょう。

確かに国税を例にすると、国の徴収する権利は法定納期限から5年行使しなければ時効で消滅するとされており、時効は存在します。

住民税や固定資産税など地方税についても、法定納期限翌日から5年間行使しなければ請求する権利は消滅するとされています。

ただ、実務上は税金が時効で消滅するとは考えにくいといえるでしょう。

たとえば個人間の借金などの場合、請求しないままの状態などが続き、一定期間経過すれば時効で返済義務は消滅する可能性もあるでしょう。

しかし税金の場合には、滞納があった段階で税務署や役所から納税者に対し督促状が送付されます。

督促状を送っても何の連絡もなく、納付もなければ財産を差し押さえるための手続へと移行するため、それらの手続によって時効成立に必要な消滅時効期間は停止し成立に至りません。

実際、税金を滞納している滞納者がいる状態で、税務署や役所が放置することはありえず、必ず何らかの方法で回収しようと手続を行います。

そのため税金滞納のまま支払いができないのであれば、時効成立まで待つのではなくまずは税務署や役所に相談することが必要です。

新型コロナ特例の徴収猶予制度とは

世界的に流行した新型コロナウイルスの影響を受け、売上が激減したり収入が減ったりという法人や個人は少なくありません。

そのため個人と法人、どちらの住民税についても新型コロナウイルス感染症の影響を受けて納税が厳しいのであれば、徴収猶予してもらえる特例が設けられていました。

この新型コロナの徴収猶予の特例により、住民税の納付を最大1年遅らせることが可能となりましたが、もともと住民税は一時納付困難と認められれば納税の猶予が認められています。

ただ、納税の猶予では原則として、担保を提供することや延滞金の支払いが発生します。

それに対し新型コロナの徴収猶予の特例の場合には、条件として一時納付困難な状況だけでなく新型コロナの影響で収入が激減したことなどが必要であるものの、担保は不要で延滞金の支払いも必要ないとされていました。

また、新型コロナウイルス感染症の影響で、通常営業できない企業なども少なくなかったため、住民税だけでなく法人税や法人住民税などについての申告猶予も認められています。

ただし住民税の徴収猶予についてはコロナ感染で緊急事態を受けた限定的な措置だったため、対象となるのは2020年2月1日から2021年1月31日に納期限の到来する住民税とされており、すでに特例措置としては終了しました。

住民税を滞納している場合の解決法

新型コロナウイルス感染拡大の影響により住民税を滞納している場合、一時的に新型コロナの徴収猶予など特例措置が設けられていたものの、現在は終了しています。

しかし現在でも税金を滞納したままで、納めることが難しい状況は変わらないというケースも少なくなりません。

そこで、住民税を滞納している場合には次の4つの方法を検討することが必要です。

  1. 市町村へ相談
  2. 猶予制度の申請
  3. 分納納付の提案
  4. 資金調達する

それぞれどのような方法か説明していきます。

市町村へ相談

住民税など税金を滞納している場合には、問題解決に向けて市町村に「相談」することが必要です。

市町村から督促状が届いているのにも関わらず、何の連絡もせずに滞納したままでは、催告されいずれは財産を差し押さえられてしまいます。

もし住民税を納めることが難しい場合でも、できる限りはやめに役所の窓口に相談し、滞納を解消したい意思はあっても厳しい状況であることを伝えることが必要です。

その際、今の財務状況などを具体的に説明できる書類なども持参すると、スムーズに相談が進みます。

猶予制度の申請

住民税を滞納している場合には、問題解決に向けて「猶予制度」を申請することを検討しましょう。

経済的に困窮状態にある場合、納付の猶予制度を利用できないか役所に相談することで、一定期間は税金納付を猶予してもらえます。

猶予制度には次の2つがあるため、それぞれの内容を理解しておくことが必要です。

  1. 徴収の猶予
  2. 換価の猶予

それぞれの制度について説明します。

徴収の猶予

徴収の猶予は、特定の事情がある場合に限り、1年以内で税金を納める計画を作成することで徴収猶予を認めてもらう制度です。

徴収猶予が認められた期間の延滞金は、全部または一部が免除されますが、どのようなケースでも認められるわけではなく次のようなケースに限られます。

  • 災害
  • 盗難
  • 納税者または家族の病気・負傷
  • 事業の廃止・休止
  • 事業に著しい損失が発生した場合
  • 本来の納付期限から1年以上経過後に修正申告などで納付税額が確定した場合

換価の猶予

換価の猶予は、税金を一括納付すると事業継続や生活維持が困難になる場合に、1年以内の期間に限り財産差し押さえや処分を猶予してもらう制度です。

税金滞納で財産を差し押さえられることを防ぐためにも、換価の猶予を申請することは必要といえます。

分納納付の提案

住民税を滞納している場合には、問題解決に向けて「分納納付」を提案しましょう。

換価の猶予で財産の差し押さえを待ってもらう間、滞納している税金を分割で納めてもよいか相談してみましょう。

本来であれば、税金の滞納分は一括で支払うことが必要です。

しかし一括での支払いが難しいものの、分割なら支払うことができるのなら、分割納付で少しずつでも納めることにより、納税の意思を示すこともできます。

分割納付が認められた場合には、それぞれの期限に遅れることなく納め続けることで、財産を差し押さえられることはなくなるでしょう。

資金調達する

住民税を納めることが厳しい場合には、「資金調達」で手元のお金を増やし、納税資金を確保しましょう。

資金を銀行融資などで借りることができなから、住民税を納めることができないという場合もあるでしょう。

銀行や日本政策金融金庫などから融資を受ける場合には、審査で税金滞納が発覚すれば断られる可能性が高いといえます。

この場合、別の方法で資金を調達することを検討することをおすすめしますが、資金調達方法については法人税滞納の解決方法で後述します。

法人税を滞納している場合の解決法

税金は個人の住民税だけでなく、法人の納めなければならない法人税もあります。

企業が法人税の申告・納税をせずに放置していれば、いずれ財産を差し押さえられてしまうリスクも高まり、社会的な信用もなくすことになるでしょう。

そこで法人税を納めることが厳しい場合には、次の4つの解決方法を検討しましょう。

  1. 源泉所得税と消費税納付を優先する
  2. 税務署に相談する
  3. 顧問税理士や商工会議所に相談する
  4. 資金調達する

それぞれどのような方法か説明していきます。

源泉所得税と消費税納付を優先する

法人税を納めることが厳しい場合には、源泉所得税と消費税納付を優先しましょう。

法人が納めなければならない税金は、法人税・消費税・事業税・固定資産税・源泉所得税などいろいろあります。

この中で消費税は取引先や消費者から、源泉所得税は従業員から預かっておくお金であるため、仮に差し押さえられたときには納付困難に陥ると考えられます。

そのため源泉徴収税と消費税は先に納めるなど、優先して支払っておきたい税金といえるでしょう。

税務署に相談する

法人税を納めることが厳しい場合には、税務署に相談しましょう。

税務署に換価の猶予や納税の猶予など相談し、申請できれば一時的に滞納した税金を一括で納める必要はなくなります。

新型コロナウイルス感染症の影響で法人税を納めることが厳しい企業も少なくないため、まずは相談することが必要です。

顧問税理士や商工会議所に相談する

法人税を納めることが厳しい場合には、顧問税理士や商工会議所に相談しましょう。

企業の顧問となっている税理士がいる場合には、適切なアドバイスをしてもらうことで、今後の解決法を検討することができます。

顧問税理士がいない場合でも、商工会議所の無料相談などを活用することで、今後どうすればよいかアドバイスしてもらえます。

税金以外に借金など負債も増えており、すでに債務超過などで悩んでいる場合には、税理士ではなく弁護士などの専門家にも債務整理を含めた相談が必要になる場合もあるでしょう。

事業を存続させつつ滞納問題を解決するのか、法人破産を視野にいれるべきか専門家の意見も参考にした上で検討が必要です。

資金調達する

法人税を納めることが厳しい場合には、手元の資金を増やすことを目的とした資金調達を行いましょう。

手元に納税資金があれば、法人税の滞納で悩むことはなくなります。

ただ、銀行や日本政策金融金庫などから融資を受ける場合、審査で税金滞納を理由に断られる可能性が高いといえます。

この場合、次の2つの方法であれば税金滞納は関係なく資金調達できます。

  1. リースバック
  2. ファクタリング

それぞれどのような資金調達方法か説明していきます。

リースバック

法人税を納める資金を調達するのなら、リースバックの活用を検討しましょう。

リースバックは、不動産を売って現金化することによる資金調達の方法で、売却後も引き続き売った不動産を利用できることが特徴です。

所有権は買主に移転されますが、リース契約を同時に結び、毎月賃料を支払うことで引き続き利用可能になります。

事業用の工場や事務所などの不動産を売ってしまうと、その後の事業に影響を及ぼすことになりますが、リースバックであれば資金調達後の事業に支障をきたすことはありません。

また、通常の不動産売却では買主を見つけるまで時間がかかる場合もあるといえますが、リースバックなら不動産会社が購入者であるためすぐに一括で現金化してもらえます。

これまでなかった賃料は毎月発生することになるものの、法人税の納税資金をスムーズに調達しやすい方法であることや、バランスシートスリム化にもつながるため安全性指標を上げることもできます。

オフバランス化で安全性の指標を上げれば、銀行の格付け評価も高くなり、いずれ銀行融資など受けやすくなるでしょう。

不動産の維持管理コストの削減にもつながるため、いろいろなメリットを生むこともできると考えられます。

ファクタリング

法人税の納税資金を準備するためにも、ファクタリングをうまく活用しましょう。

ファクタリングは、企業などの保有する売掛金をファクタリング会社へ売却することで、現金化し資金調達につなげるサービスです。

本来であれば、発生した売掛金は1~2か月待たなければ、売掛先から入金されません。

しかしファクタリングを利用すれば、最短即日で現金化できるなどスムーズな資金調達が可能です。

ファクタリング会社が行う審査でも、重視するのは売掛先の信用力であり、利用者の税金滞納や債務超過などを理由に断られることはないのも魅力といえます。

リースバックと同じく、オフバランス化できる方法であるため、活用することで財務状況や資金繰り改善につながり、格付け評価向上にもつながります。

まとめ

新型コロナウイルス感染症が流行したことで、住民税や法人税などの税金を納めることが厳しく、滞納してしまった個人や法人は少なくありません。

一時期は新型コロナ用の特例措置として、徴収猶予などの制度もありましたが、現在では終了しています。

ただ、徴収猶予の制度は従来から存在しており、新型コロナ用ではなくても申請できます。

税金を滞納したまま放置すれば、いずれは財産を差し押さえられることになり、事業継続は難しくなります。

役所や税務署に相談することや、手元の資金を増やし納税資金を確保するための方法などを活用することで、税金滞納問題を解決することができるでしょう。