売上原価とは?意味や売上高との違い・計算方法をわかりやすく解説

「売上原価」とは、損益計算書の「費用の部」に計上され、販売した商品にかかわるすべての費用のことです。

具体的に売上原価とは何を意味し売上高と何が違うのか、説明できる方はそれほど多いとはいえません。

そこで、売上原価の意味や売上高との違い、どのように計算するのかその方法についてわかりやすく解説していきます。

売上原価とは

売上原価とは、売れた商品の仕入れや製造に直接かかった費用のことです。

売れた商品の費用であり、売れ残りの商品の費用は含まれません。

粗利(売上総利益)を算出するために用いられますが、粗利は次の計算式で算出できます。

 

粗利(売上総利益) =  売上 - 売上原価

 

さらに売上高に占める売上原価の構成比率を「売上原価率」といいます。

 

売上原価率 = 売上原価 ÷ 売上高 × 100

 

売上原価率が高ければ高いほど、売上高のうちコストが占める割合が多いため利益が出にくいビジネスといえます。

反対に低ければ低いほど、コストを抑えて利益を生むことができる収益性の高いビジネスと考えられるでしょう。

売上原価について、次の2つの違いを説明します。

  1. 売上原価と売上高の違い
  2. 売上原価と製造原価の違い

売上原価と売上高の違い

「売上高」とは、商品やサービスを販売・提供することによって稼いだ金額の合計です。

営業活動から発生する一定期間の収益であり、損益計算書の一番上に表示されます。

本業で稼いだ金額の総額ともいえるため、大きければ大きいほど業績が伸びていると判断できます。

なお、以下の記事では「売上高」に関して解説しています。

合わせてご覧ください。

売上高の意味とは?利益との違いと最低必要額となる損益分岐点について解説

売上原価と製造原価の違い

「製造原価」とは、商品を製造する過程で発生した費用の合計であり、原材料だけでなく設備費用や製造に関わる人件費なども含まれます。

具体的には以下の費用です。

  • 石油や繊維など製造のための材料
  • 製造にかかわった労働者の賃金
  • 製造機器のメンテナンス費用
  • 倉庫の光熱費・賃貸費用

製造原価は製造にかかった原価の合計で計算するのに対し、売上原価は期首の在庫金額と当期仕入高を合計して期末の在庫高を差し引きます。

売上原価と製造原価の違いは計算の対象であるといえますが、自社で製造した製品を販売するときには製造原価も売上原価に含まれます。

売上原価の内訳

「売上原価」とは、販売した商品にかかった費用全般といえますが、内訳として次の費用などが含まれます。

  • 商品の仕入原価
  • 製造するためにかかった材料費
  • 製造に関する従業員の人件費・外注費
  • 製造に使用した機械の費用・減価償却費
  • 製造で発生した水道光熱費
  • その他製造に関わる諸経費

たとえばケーキ製造の工場を例に挙げると、以下の費用が売上原価に含まれます。

  • 果物・小麦粉・卵・生クリームなどの材料費
  • 職人の賃金
  • 生地を混ぜるための攪拌器の費用
  • 攪拌器を動かすために必要な電気代
  • 生地を入れるための容器
  • ケーキを焼くときのガス代
  • ケーキを包むフィルム
  • ケーキを入れる容器

売上原価の計算方法

「売上原価」は「売上総利益」を計算するときに必要です。

次の計算式で求めることができます。

 

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高

 

次に「売上総利益」は以下の計算式で算出できます。

 

売上総利益 = 売上 - 売上原価

 

売上総利益は売上に対して直接かかった費用である売上原価を計算し、売上高から売上原価を差し引くことで求められます。

売上原価が小さいほど売上総利益は大きくなり、会社の利益も増えます。

売上原価の仕訳

売上原価を計算する上で、商品に関わる取引について仕訳処理が必要です。

代表的な仕訳の方法として、次の4つが挙げられます。

  1. 三分法
  2. 売上原価対立法
  3. 分記法
  4. 総記法

それぞれ説明します。

三分法

三分法とは、以下の要素で仕訳をする方法です。

  • 仕入(費用)
  • 売上(収益)
  • 繰越商品(資産)

期中に仕入れた商品を「仕入」で処理し、販売した商品は「売上」で計上します。

決算整理のときは、在庫商品を「繰越商品」で処理し、売上原価を算出することが必要です。

三分法は、日々の記帳と決済処理が簡易的であるため、最も広く使われている仕訳方法といえます。

売上原価対立法

「売上原価対立法」とは、商品売買を次の3つの勘定科目で仕訳する方法です。

  • 商品
  • 売上
  • 売上原価

仕入れた商品は「商品」で処理し、販売した商品の原価を「売上原価」に振り替えて売上代金は「売上」を計上します。

決済処理が不要であり、売上原価を常に把握することができることがメリットですが、他の仕訳方法よりも処理が煩雑になることがデメリットです。

分記法

「分記法」とは、商品売買を次の2つの勘定科目で仕訳処理する方法です。

  • 商品
  • 商品売買益

期中に仕入れた商品を「商品」で計上し、販売したときに商品と売価の差額を「商品売買益」で収益計上します。

「商品」と「仕入原価」の数値は一致することとなるため、取引ごとの仕入原価と売買益、現在の粗利を把握しやすいことがメリットです。

その反面、取引ごとに記帳しなければならないため、手間がかかることがデメリットといえます。

総記法

「総記法」では、商品を仕入れたときと販売したとき、どちらも「商品」の勘定科目を使います。

原価と売価が混ざる仕訳処理を行うため、決算整理前の残高試算表では「商品」は貸方残高にも借方残高にもなるといえ、必ず決算整理が必要です。

「商品」だけで処理するため記帳方法は最も簡易的ですが、期中に経営成績や財政状況の把握はできず、ほとんど使用されない方法といえます。

業種ごとの売上原価の考え方

営業形態により売上原価にどのような費目が含まれるのか、その金額は変わってきます。

そこで、次の4つの業種の売上原価の考え方について確認しておきましょう。

  1. 製造業
  2. 小売業
  3. 飲食業
  4. サービス業

それぞれ詳しく説明します。

製造業

「製造業」とは原材料など加工することで製品を生産・提供する業種のため、原材料に手を加え原料を加工することが工程に含まれます。

工場では製品を製造し、完成した製品を別の会社に卸すという場合には、売上原価でなく「製造原価」を計上します。

具体的には、次の製造に関わる費用が製造原価として計上されます。

  • 仕入れた原材料の原価
  • 製造に直接かかわる労働者の人件費・外注費
  • 工場で使用する機械の減価償却費
  • 製造にかかる水道光熱費

製造原価は次の計算式で算出できます。

 

製造原価 = 期首製品棚卸高 + 当期製品製造原価 - 期末製品棚卸高

 

工場で製造した製品を販売することまで行う場合には、工場で完成した「製品」が販売段階で「商品」に変わります。

この場合、売上原価を把握する前に製造原価を計算しますが、製品が製造されるときの原価と販売するまで(売上まで)の商品にかかった原価は区別します。

小売業

「小売業」とは仕入れから販売までを行う業種のため、売上原価として計上する費用は商品の仕入れ原価がメインです。

基本的に製造工程が発生しないため、製造業と比較すると売上原価として計上する範囲は狭くなります。

しかし広告宣伝費や事務員・販売員の人件費など、販売管理費として計上される範囲は広くなる傾向が見られます。

飲食業

「飲食業」では、提供する料理の材料費や飲料などの仕入原価が主に売上原価となります。

調理後に発生した廃棄食材や売れ残り食品なども、売上原価に含まれます。

人件費は製造に関わるスタッフの給料を売上原価とするか、売上に連動していないコストとして販売管理費にするか決めることが必要です。

一般的な考え方としては、調理や接客するスタッフの給料や水道光熱費は売上原価に含まず、材料のみで売上原価とします。

商品ではなく材料それぞれに対し、次の計算式で算出した数値を合計して全体の売上原価を計算します。

 

売上原価 = 期首材料棚卸高 + 当期材料仕入高 - 期末材料棚卸高

 

サービス業

「サービス」業は、顧客の要求にこたえることが仕事であり、実物を商品として取り扱っていないため製造や仕入れなどのコストはほとんど発生しません。

たとえば美容業などの場合には、仕入れた商品を店舗で販売するケースもあります。

しかしサービス業では、他社の人員を使ってサービスを提供する外注費を、主な売上原価の費目とします。

事務処理の費用や外注手配など、サービスを提供するための管理を行う従業員の人件費は販売管理費で計上するため、他業種より売上原価が少なめです。

広告宣伝業やコンサルタント業などの場合、技術やノウハウなどの情報を提供することで収入を得ます。

商品や製造のための材料を仕入れることも加工する過程もありません。

売上から差し引く売上原価が少ないため、売上総利益は大きくなる反面、販売費や一般管理費など間接的な費用も大きくなると理解しておきましょう。

まとめ

「売上原価」とは、売れた商品に直接かかった費用の合計であり、言い換えれば売上を上げるために直接要した費用といえます。

損益計算書で直接かかった費用を差し引き、まずは粗利(売上総利益)を求める理由は、商品や製品がニーズに対応できているか能力を見極めることが必要だからです。

仕訳方法や売上原価と製造原価の違いなど、業種によって使い分けが必要になります。

事務作業で迷いが出る場合はあるものの、大切なのは売上原価を正しく知り経営分析に役立てることです。

仕入価格が適正か、製造や販売にコストがかかりすぎていないか、しっかりと見極めて手元の資金不足に陥ることにない管理を行いましょう。

資金不足に陥り、万一、枯渇することがあれば会社はたちまち倒産します。

もしも資金不足でショートしそうなときには、売掛金を使った資金調達方法であるファクタリングも検討してください。