債務超過とは?原因や赤字との違いについてわかりやすく解説

債務超過とは、貸借対照表の純資産がマイナスの状態であることです。

すぐにでも倒産してしまいそうな危ない会社のイメージが強いものの、実際には倒産を意味する言葉ではありません。

ただ、債務超過の状態が続くことで、将来的に倒産するリスクは高くなるともいえます。

そこで、債務超過とはどのような状態なのか、原因や赤字との違いについて解説します。

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債務超過とは

「債務超過」とは、貸借対照表の純資産がマイナスの状態であることを意味しており、借入金や買掛金などの負債額が現金や売掛金などの資産額を上回っている状態です。

在庫として保管している商品や事務所の設備などすべて売り払いお金に換えたとしても、今の借金や固定費支払いなどを賄いきれない状態ともいえます。

そのため債務超過が続けば、いずれは資産のすべてを売ってお金に換えても借金を返済できず、事業を続けることはできなくなり会社は倒産してしまうでしょう。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、債務超過に陥ってしまう企業が急激に増えたといえます。

ただし決算書を見れば負債よりも資産が多く、純資産がプラスを示す資産超過の状態であるのに、実態は債務超過という「実質債務超過」のケースもあるため注意してください。

「実質債務超過」であると考えられるのは次のようなケースです。

  • 回収不能の売掛債権が多い
  • 経営者に対する貸付金が多額にあるものの返済見込みが低い
  • 土地の時価が大幅に下落したことで含み損を抱えており、実態時価純資産がマイナス状態

資産と負債を時価評価したときに時価純資産がマイナスになる場合は実質債務超過であると判断できます。

債務超過の原因

会社が債務超過に陥る理由として、主に次の3つが挙げられます。

  1. 赤字続きである
  2. 評価損が発生している
  3. 特別損失を計上している

赤字続きである

債務超過に陥ってしまう原因で最も多いのは赤字経営が続くことです。

赤字経営が続けば、現預金など資産が減少するため、資産よりも負債が多い状態となり債務超過に陥ります。

評価損が発生している

資産の簿価と時価の差額で評価損が発生している場合も、債務超過に陥る原因となります。

たとえば所有している投資有価証券などが購入したときよりも価値が下がっているときなどは、債務超過に陥る可能性が高くなってしまいます。

特別損失を計上している

自然災害の発生や新型コロナウイルス感染症による影響など、突発的で発生が予測できなかったことが要因となり、債務超過に陥ることもあります。

たとえば豪雨災害などによる損失や、休業による損失など、臨時的に出費がかさむことで特別損失を計上することが必要となれば債務超過に陥ってしまいます。

債務超過と倒産リスク

債務超過に陥ってしまうのは、以下が原因です。

  • 赤字経営
  • 投資失敗による投資額の未回
  • 特別損失計上

ただ、債務超過が直接、倒産に結びつくとも言い切れません。

その理由として、次のことが挙げられます。

  • 負債には1年以上支払い猶予がある固定負債も含まれている
  • 流動資産に余裕がある場合には直近の支払いは滞らない
  • 開業したばかりであれば、初期投資による一時的な債務超過状態と考えられる

債務超過が続けばいずれ倒産するリスクは高くなりますが、債務超過に陥ったから即倒産するわけではありません。

企業が倒産してしまう直接の原因はキャッシュフローの悪化であり、手元の資金が枯渇しなければ倒産することはないといえます。

ただし早めに債務超過を解消しなければ、倒産してしまうことは時間の問題とも考えられるため、早期解消を目指しましょう。

債務超過のデメリット

会社が債務超過の状態に陥ることには、次のようなデメリットがあります。

  1. 銀行から融資を受けにくくなる
  2. 取引先から取引継続を懸念される
  3. 上場企業は上場廃止リスクが高まる

それぞれ説明します。

銀行から融資を受けにくくなる

債務超過に陥れば、経営管理が不十分な危ない会社と認識されます。

そのため銀行から融資を受けて資金を調達したくても、新たな借入れは難しくなります。

また、投資家に出資してもらうこともできません。

資金調達が厳しくなれば、新たな設備投資や新規事業参入は困難となります。

売上や利益率は落ち、今よりもさらにキャッシュフローは悪化してしまい倒産リスクは上がるでしょう。

取引先から取引継続を懸念される

債務超過に陥れば、信用力の低い会社と認識されるため、新規で取引先を獲得することは困難となるでしょう。

また、既存の取引先とも取引継続を懸念され、取引量の制限や決済方法の変更を提示されたり取引が停止されたりする恐れもあります。

上場企業は上場廃止リスクが高まる

上場企業の場合、日本取引所グループ(JPX)の上場廃止基準である「債務超過が1年以上続くこと」に該当すれば上場が廃止されてしまうため、経営戦略上で債務超過に陥らないことが重要です。

債務超過と赤字経営の違い

債務超過に陥ることを防ぐためには赤字経営を回避することが必要であり、キャッシュフローを悪化させないように注意することも求められます。

黒字でも倒産することはあるため、債務超過に陥らないように注意しつつ、資金繰りにも目を配りましょう。

債務超過と赤字経営の違いとして、まず「赤字」とは単年度の収益が費用を下回った状態でです。

負債が資産を上回っているのではなく、負債の一部である支出が資産の一部である収入を上回っています。

一時的な赤字なら、利益剰余金により純資産を増やしているときやキャッシュフローの適切な管理があれば乗り切れます。

長期に渡り赤字経営が続いているときや、損失が莫大なときには、負債が資産を上回り債務超過に陥る恐れが高いと考えられます。

黒字倒産に直結する資金ショートとは

会社が倒産してしまうリスクを高めるのは「資金ショート」であり、手元にある現金が不足し、枯渇すればたとえ黒字で倒産します。

赤字状態が続けば資金ショートを引き起こしやすくなりますが、債務超過と資金ショートの大きな違いは緊急性です。

資金ショートすれば、借入金の返済に充てるお金がなく、期日に支払いできません。

仕入れ代金や税金などの支払いもできなくなるため、倒産に直結する可能性が高いといえます。

なお、資金ショートする主な原因として、次のことが挙げられます。

  • 赤字経営続きである
  • 税金や返済に関して十分に認識できていない
  • 掛金と買掛金のバランスが崩れている
  • 借入金の返済期日まで短く本業の儲けより返済額が大きい
  • 売掛金の入金サイトより買掛金の支払いサイトが短い
  • 売掛金や受取手形ばかり増え現金化されていない

黒字倒産を防ぐには、手元の資金を増やすことが必要です。

債務超過の判断方法

現在、債務超過に陥っているか判断するには貸借対照表を確認しましょう。

債務超過か見分ける方法は主に次の2つです。

  1. 財務諸表による判断方法
  2. 実態貸借対照表作成による判断方法

それぞれ説明します。

財務諸表による判断方法

債務超過か見分けたいなら、貸借対照表の資産から負債を差し引いた数値を確認する方法があります。

債務超過ではない 資産合計-負債合計=資産>負債
債務超過である 資産合計-負債合計=負債>資産

ただし現金化できない資産を多く保有していることで、実際には経営難に陥っているケースもあります。

純資産の減りを確認したときに負債を純資産から支払っていれば、実質的には債務超過と判断できます。

実態貸借対照表作成による判断方法

資産として含まれているものの中には、実質回収できないものや価値が低下したものなどもあるはずです。

目に見えないマイナスを見つけるために、「実態貸借対照表」を作成しましょう。

実態貸借対照表は、今の時点での適切な資産額を割り出し、貸借対照表の数値を実態に即した数値へ修正した貸借対照表です。

修正方法は、資産と負債それぞれ次のとおりとなります。

資産の修正方法
  • 売掛金・貸付金・未収入金は、回収不能状態や長年回収できていないものは差し引く
  • 棚卸資産は架空在庫や不良在庫を差し引く
  • 仮払金・繰延資産は資産性のないものを差し引く
  • 土地は時価に修正する
  • 建物は減価償却した額に修正する
  • 投資有価証券は時価に修正する
負債の修正方法
  • 役員未払金・役員借入金は純資産とみなし差し引く
  • 退職給付引当金は積み立て不足額を負債へ計上する
  • 保証債務は保証人としての債務発生分を金額分負債へ計上する

債務超過の解消方法

すでに債務超過に陥っている場合、その状態が続けばいずれ倒産する可能性を高めます。

そのため現在の状況から抜け出すことが必要となりますが、債務超過を解消する方法として次の4つが挙げられます。

  1. 増資する
  2. 経営者借入金を債務免除する
  3. DESで負債を資本に切り替える
  4. 資産を売却する

それぞれ説明します。

増資する

中小企業が債務超過を解消したいとき、もっとも簡単な方法として「増資」することが挙げられます。

経営者や創業者一族などが債務超過を解消できる第三者割当増資を引き受けることで解消できますが、即効性はあっても根本的な赤字経営解消にはなりません。

株主構成や経営権などにも影響するため、慎重な判断が求められます。

経営者借入金を債務免除する

経営者から会社が借りているお金があるときには、経営者が会社に対する債権を放棄する債務免除した分だけ債務超過は解消できます。

ただし債務免除すると、会社はその分の利益を得たとみなされるため、得た利益には法人税が課税されることを踏まえた上で判断してください。

DESで負債を資本に切り替える

負債を資本に切り替える「DES(Debt Equity Swap)」も債務超過を解消する方法として挙げられます。

金融機関などの債権者が債務超過した会社の株式を取得し、債権を株式へ振り替えます。

その資金で借入金を返済すれば債務超過を解消することができ、資産を得ることで信用も向上します。

ただし上場企業など信用力が高い企業でなければ実行は難しい方法といえるため、中小企業での検討は現実的といえません。

資産を売却する

土地や有価証券など、含み益を抱えている資産があるときには、売却による売却益計上で債務超過を解消できます。

車両や機械など減価償却資産も、償却後の簿価となっていることが多く、売却すれば売却益が発生します。

売却により事業を継続できなくなると困るため、資産のうち売掛金を売却し現金化するファクタリングなどの検討をおすすめします。

まとめ

債務超過とは会社の負債総額が資産総額を超えている財務状況であり、赤字とは費用が収益を超えている状態です。

赤字が続けば債務超過に陥る可能性は高くなるものの、すぐに倒産するわけではありません。

ただ、信用の低下などで資金調達が厳しくなり、経営状況をさらに悪化させてしまいます。

債務超過を解消するには、定期的な貸借対照表の確認と健全な経営体制へ整備することは欠かせません。

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