雇用に関係する助成金は、一定の条件を満たして申請すれば、多くの場合受け取れます。
助成金は返済義務のないお金を調達できるため、人を雇用するときや人材を育てたいときにはうまく活用するとよいでしょう。
主に雇用関連の助成金は、公共職業安定所(ハローワーク)を通じて申請しますが、制度の種類を知っておくとより活用しやすくなります。
そこで、雇用関連の助成金について、種類や申請の条件、手続の流れをわかりやすく解説します。
中小企業経営者向け!

目次
雇用関連の助成金とは
雇用関連の助成金とは、新たに人材を採用する上で活用できる制度や、雇用環境を整備する際に支給される制度のことです。
種類が多いことや要件に該当し、申請すれば基本的に支給されるものの後払いで支払われるため、一旦は立て替えが必要になります。
ただ、人材不足が深刻化している業界が多いため、できるだけ多くの人手を確保する上でもうまく活用したい制度といえます。
雇用関連の助成金の利用条件
雇用関連の助成金は、国(厚生労働省)から支給されるため、以下の要件すべてを満たすことが必要です。
- 雇用保険の適用事業所である
- 審査に協力する
- 期限までに申請する
- 法令違反がない
それぞれ説明します。
雇用保険の適用事業所である
雇用関連の助成金を申請する場合、雇用保険の適用事業所であることが必要です。
支給される助成金の財源は、雇用保険や労災保険などの労働保険であるため、雇用保険へ加入し適用事業所と認められていることが必要になります。
なお、労働保険は労働者を1人でも雇えば原則、適用される制度です。
ただし1週間の所定労働時間が20時間以上であることや、31日以上雇用の見込みがある労働者でなければなりません。
該当する場合は、正社員でなくパートやアルバイト雇用の場合でも加入が必要であるため、ハローワークにて雇用保険の加入手続を行いましょう。
審査に協力する
雇用関連の助成金を申請する場合、労働局の実施する調査に協力することが必要になります。
審査の主な内容は、以下のとおりです。
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労働局が、調査や書類の提出を求めることがあるため、その場合は応じて協力するようにしましょう。
上記を踏まえて、次のすべての要件を満たすことが必要です。
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期限までに申請する
雇用関連の助成金を申請する場合、決められた期限までに申請手続を行うことが必要です。
助成金の申請期限は、主に以下の2つです。
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どちらも申請期限を過ぎれば受理されることはないため、遅れず手続をしましょう。
法令違反がない
雇用関連の助成金を申請する場合、労働基準法などの労働法を遵守し、法令違反がないことが必要です。
法令違反や労働保険料の未納、過去に不正受給したことがある場合は助成金の申請ができない恐れがあります。
雇用関連の助成金の種類
厚生労働省による雇用関連の助成金を活用すれば、雇用安定・職場環境改善・仕事と家庭の両立支援・従業員の能力向上などに役立ちます。
補助金と同様に返済義務のない資金を、要件を満たし期限までに申請することでほぼ受給できます。
たとえば、新規雇用・雇用維持・職業訓練・雇用環境整備が主な対象です。
申請を可能とする雇用関連の助成金には、以下の種類があります。
- 雇用調整助成金
- 産業雇用安定助成金
- 早期再就職支援助成金
- トライアル雇用助成金
- 地域雇用開発助成金
- 人材確保支援助成金
- 通年雇用助成金
- 65歳超雇用推進助成金
- 高年齢労働者処遇改善促進助成金
- キャリアアップ助成金
- 両立支援等助成金
- 人材開発支援助成金
- 障害者作業施設設置等助成金
- 障害者福祉施設設置等助成金
- 重度障害者等通勤対策助成金
- 障害者能力開発助成金
- 特定求職者雇用開発助成金
- 業務改善助成金
- 受動喫煙防止対策助成金
それぞれ簡単に紹介します。
雇用調整助成金
「雇用調整助成金」とは、休業・教育訓練・出向などを通じつつ、従業員の雇用を維持する場合に申請できる制度です。
景気変動や産業構造の変化、その他の経済上の理由で事業を縮小しなければならなくなった事業主が、一時的に休業・教育訓練・出向などによる雇用調整を実施し、雇用を維持したときに助成されます。
産業雇用安定助成金
「産業雇用安定助成金」とは、景気変動や産業構造の変化、その他の経済上の理由で事業を縮小しなければならなくなった事業主が、生産性向上に資する取り組みを行うための人材受け入れを支援する制度です。
早期再就職支援助成金
「早期再就職支援助成金」とは、事業規模の縮小などで離職することになった労働者に対する支援を行った事業者に助成金が支給される制度です。
事業規模の縮小等により離職を余儀なくされる労働者等に対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇の付与や再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施した事業主に、助成金が支給されます。
トライアル雇用助成金
「トライアル雇用助成金」とは、仕事の経験が不足していることを理由に就職できない方を、無期雇用契約に移行することを前提として雇い入れる事業主を支援する制度です。
一定期間試行雇用(トライアル雇用)で求職者を雇い入れる事業主に助成金が支払われます。
地域雇用開発助成金
「地域雇用開発助成金」とは、雇用機会の特に不足する地域の事業主が行う事業所の設置・整備と地域居住の求職者の雇用について助成する制度です。
設置整備費用と対象労働者の増加数に応じた助成金が支給されますが、1年毎に最大3回まで支払われます。
人材確保支援助成金
「人材確保等支援助成金」とは、魅力ある職場づくりに向けて労働環境向上を図る事業主や事業協同組合等を支援する制度です。
通年雇用助成金
「通年雇用助成金」とは、北海道・東北地方など(積雪または寒冷の度が高い地域)の事業主が、冬期間に離職を余儀なくされる季節労働者を通年雇用したときに助成される制度です。
65歳超雇用推進助成金
「65歳超雇用推進助成金」とは、高年齢者が能力のある限り働くことができるように、定年年齢の引き上げや雇用管理制度の整備などを行った事業主を助成する制度です。
高年齢労働者処遇改善促進助成金
「高年齢労働者処遇改善促進助成金」とは、雇用形態に関係なく公正な待遇を確保するために、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇改善に向けて就業規則等の定め、高年齢労働者の賃金規定を増額改定する事業主を助成する制度です。
キャリアアップ助成金
「キャリアアップ助成金」とは、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者などの非正規雇用の労働者の企業内におけるキャリアアップを促進するために、正社員化や処遇改善の取り組みを行った事業主を助成する制度です。
両立支援等助成金
「両立支援等助成金」とは、仕事と家庭の両立が可能な環境作りへ取り組む事業主を支援する制度です。
育児休業や介護休業の取得促進などのコースがあります。
人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」とは、雇用する労働者に職務関連の専門的な知識・技能を習得させる職業訓練等を計画実施したとき、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
障害者作業施設設置等助成金
「障害者作業施設設置等助成金」とは、障害者を常用労働者で新規雇用または継続雇用する事業主が、障害を克服し作業を容易にできる配慮のための施設や設備の改造・整備を行うときに費用の一部を助成する制度です。
障害者福祉施設設置等助成金
「障害者福祉施設設置等助成金」とは、障害者を雇用する事業主または事業主の加入する事業主団体が、障害のある労働者の福祉増進を図るための保健施設・給食施設などの福祉施設の設置・整備を行うときの費用の一部を助成する制度です。
重度障害者等通勤対策助成金
「重度障害者等通勤対策助成金」とは、重度身体障害者・知的障害者・精神障害者・通勤困難な身体障害者を、新規雇用または継続雇用する事業主を助成する制度です。
また、重度障害者等を雇用する事業主が加入する事業主団体が、障害者の通勤を容易にする措置を行うときにかかった費用の一部も助成の対象となります。
障害者能力開発助成金
「障害者能力開発助成金」とは、障害者の能力開発事業を行う施設または設備設置・整備等を行う場合や、能力開発訓練事業を運営するときにかかった費用の一部を助成します。
特定求職者雇用開発助成金
「特定求職者雇用開発助成金」とは、就職困難な方を雇い入れる事業主を助成する制度です。
業務改善助成金
「業務改善助成金」とは、生産性向上に向けて機械設備・コンサルティング導入・人材育成・教育訓練などの設備投資等を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上へ引き上げた場合に助成する制度です。
生産性向上に資する設備投資等でかかった費用に、一定の助成率をかけた金額と助成上限額を比較し、いずれか安い方の金額が助成金額になります。
【最新】令和7年度「業務改善助成金」とは?手続の流れや注意点を徹底解説
受動喫煙防止対策助成金
「受動喫煙防止対策助成金」とは、中小企業の事業主が受動喫煙を防止するための施設・設備を整備することに助成する制度です。
事業場の受動喫煙防止対策の推進を目的としている制度といえます。
ただし、申請額が予算に達すると申請期日より前に申請を締め切られるため、早期に申請することをおすすめします。
助成金申請の流れ
助成金を申請する場合、以下の手順で手続の流れを進めることが必要です。
- 助成金を選ぶ
- 計画を策定する
- 計画書を提出する
- 取り組みを実施する
- 申請する
それぞれ説明します。
1.助成金を選ぶ
助成金の申請において、まずは経営方針・事業活動に適した制度を選びましょう。
種類が豊富に用意されているため、どのような問題を抱えており、解決させたいかによって選択する助成金は変わってきます。
問題解決につながり、申請要件を満たすことができる制度を選び、有効に活用しましょう。
2.計画を策定する
どの制度に申請するか選択した後は、要件を満たす上で必要な取り組みについて、実施計画を策定しましょう。
なお、就業規則などの整備や変更が必要な場合は、適切に無理なく運用できるか検討することも必要です。
3.計画書を提出する
申請において必要とされる実施計画を策定したら、計画書にまとめて所定の機関に提出します。
書式や添付書類は、制度によって決められている内容に従いましょう。
4.取り組みを実施する
計画書の内容に沿って、実際に取り組みを実施しましょう。
提出した内容どおりの実施をしていないのに助成金を受け取れば、不正受給になってしまう恐れがあります。
そのため内容を変更したい場合は、期限内に変更届を提出するなどの方法で対応できるか、確認することが必要です。
5.申請する
計画内容に沿って実際に取り組みを行った後は、助成金を支給してもらうための申請を行います。
フォーマットを使用して申請書類を作成し、添付書類も併せて用意しましょう。
申請後、計画通りに取り組みが実施されているか審査が行われ、無事に通過できれば助成金が支給されます。
まとめ
雇用関係の助成金は、人・モノ・金・情報・知財など、会社経営や事業運営において欠かせない経営資源の1つである「人」を確保する上で活用できる制度です。
会社の成長や事業拡大において、必要な人材を増やさなければならないとき、資金面で大きなサポートになります。
ただし雇用関係の助成金は種類が多いため、解決したい問題や満たすことのできる要件などを確認した上で、適切な制度を選択しましょう。
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