【2023年】建築業向けの助成金・補助金一覧|各支援内容を解説

建築業が資金調達するときに活用したいのが助成金や補助金ですが、どちらも国や地方自治体の政策に沿って事業を行う事業者に対して支給されます。

助成金と補助金は要件を満たし申請すれば返還する必要がない資金を調達できるため、建築業でも上手に活用したい制度といえますが、特に補助金は採択されなければ資金調達につながりません。

ただ、スモールビジネスであることが多い建築業だからこそ、事業拡大や設備投資などで必要となる資金の悩みを助成金や補助金で解決していきましょう。

そこで、建築業向けの助成金や補助金にはどのような制度があるのか、支援の内容についてそれぞれ解説していきます。

助成金とは

「助成金」とは、国の政策目標に沿って労働環境改善などに取り組んでいる事業者に支給される資金です。

主に次のような労働環境改善や雇用対策、人材育成などの支援に向けた制度が多く、働き方改革が推進される中で活用しやすいことが特徴といえます。

  • 雇用維持
  • 新規・中途雇用の促進
  • 人材育成
  • Uターン・Iターン・Jターン雇用の促進
  • 障害者雇用の定着支援
  • 就業規則の改善
  • 介護・育児休暇の取得推進

主な管轄は厚生労働省で、助成対象は人材雇用や能力開発で必要な次の経費などです。

  • 賃金・労務管理・人事評価
  • 就業規則・労働契約書作成・締結
  • 外部講師に対する謝金など教育訓練関連費用
  • 生産性向上に向けた機械設備費

受け取ることができる金額は数十万円から100万円程度であるものの、年間通して受け付けしているためているため、申請のタイミングを逃すことがないというメリットがあります。

補助金とは

「補助金」とは、国の政策目標に沿って事業を行う事業者に支給する資金であり、主に新規事業・起業促進・研究開発などの事業資金を支援する制度です。

伝統産業の支援・ロボット開発・経済産業分野での研究開発・地域振興などに向けて必要な資金の一部を補助しており、管轄は経済産業省やその管轄の独立行政法人などとなっています。

ただ、他の省庁や自治体、民間団体などが業界独自の補助金制度を設けていることもあるため、建築業界向けの制度をうまく活用するとよいでしょう。

補助金で支給される金額は数百万円以上や数億円規模など多額であることが多く、支援対象となる諸経費の適用範囲も広めです。

事業実施で支払った設備費用・広告宣伝費・外注費・人件費などの一部を支援してくれるため、建築業でも要件を満たすのであれば申請しておきたい制度といえます。

ただ、通年募集しているわけではなく、特定の時期に1週間から1か月などの公募期間に限定されています。

そのため要件を満たす補助金の公募開始前に申請準備を進め、募集開始のタイミングですぐに申請できるようにしておくことが必要です。

また、補助金は申請すれば資金調達できるわけではなく、厳しい審査を通過し採択されることが必要になります。

たとえ手間をかけて申請書類を作成・申請しても、採択されなければ補助金を受け取ることはできず、申請が遅れて途中で予算を満たせば受付中止になる可能性もあることは留意しておきましょう。

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建築業向けの補助金

補助金を使って資金調達できれば、多額の資金を設備投資や事業開発に使うことができます。

建築業が活用できる補助金は、業界にこだわらずスモールビジネス向けの2つの制度と、建築業だからこそ活用しやすい3つの制度に以下のとおり分けられます。

  1. 事業再構築補助金
  2. IT導入補助金
  3. 住宅エコリフォーム推進事業
  4. 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業
  5. 人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業

それぞれの補助金について説明していきます。

事業再構築補助金

事業再構築補助金」は、ポストコロナ時代で経済社会が変化することに対応するための制度で、以下のように思い切って事業を再構築する事業者に対する支援を行います。

  • 新分野展開
  • 業態転換
  • 事業・業種転換
  • 事業再編など

取り組みを通じて事業規模を拡大したり新事業開始したりなどの事業再構築に向けた高い意欲を持つ事業者を支援する制度で、予算総額1兆円・支給金額上限も1億円など多額の資金調達に向いているといえます。

事業再構築補助金は複数の枠が設けられており、枠ごとに補助金額の上限や補助率は次のとおり異なります。

成長枠(対象:成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者) ・中小企業 補助率2分の1 補助上限額2千万円~7千万円(従業員規模により上限額は異なる)
・中堅企業 補助率3分の1  補助上限額2千万円~7千万円(従業員規模により上限額は異なる)
グリーン成長枠(対象:グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者) ・中小企業(エントリー) 補助率2分の1 補助上限額4千万円~8千万円(従業員規模により上限額は異なる)
・中小企業(スタンダート) 補助率2分の1 補助上限額1億円
・中堅企業(エントリー) 補助率3分の1 補助上限額1億円
・中堅企業(スタンダート) 補助率3分の1 補助上限額1.5億円
卒業促進枠(対象:成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して中小企業等から中堅企業等に成長する事業者) ・中小企業 補助率2分の1 補助上限額は成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限に準じる
・中堅企業 補助率3分の1 補助上限額は成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限に準じる
大規模賃金引上促進枠(対象:成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して大規模な賃上げに取り組む事業者) ・中小企業 補助率2分の1 補助上限額3千万円
・中堅企業 補助率3分の1 補助上限額3千万円
産業構造転換枠(対象:国内市場の縮小等の産業構造の変化等により事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者) ・中小企業 補助率3分の2 補助上限額2千万円~7千万円(従業員規模により上限額は異なる)
・中堅企業 補助率2分の1 補助上限額2千万円~7千万円(従業員規模により上限額は異なる)
物価高騰対策・回復再生応援枠(対象:コロナや物価高等により依然として業況が厳しい事業者) ・中小企業 補助率3分の2 補助上限額1千万円~3千万円(従業員規模により上限額は異なる)
・中堅企業 補助率2分の1 補助上限額1千万円~3千万円(従業員規模により上限額は異なる)
最低賃金枠(対象:最低賃金の引上げの影響を受けその原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等)

・中小企業 補助率4分の3 補助上限額500万円~1.5千万円(従業員規模により上限額は異なる)
・中堅企業 補助率3分の2 補助上限額500万円~1.5千万円(従業員規模により上限額は異なる)

サプライチェーン強靭化枠(対象:海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化および地域産業活性化に取り組む事業者) ・中小企業 補助率2分の1 補助上限額5億円
・中堅企業 補助率3分の1 補助上限額5億円

IT導入補助金

IT導入補助金2023」とは、生産性向上に向けてITツールを導入する場合に活用できる制度で、かかった経費の一部が補助されます。

デジタル化や自動化はどの産業でも進んでいますが、導入により働き方改革促進や労働環境改善が可能となり、生産性や従業員の賃金を向上することにつながります。

ただ、デジタル機器などは高額であるため、手元に資金がなければ取り入れることはできませんが、「IT導入補助金2023」を活用すると安心して導入できます。

2023年8月1日以降の「IT導入補助金2023」の内容は以下のとおりです。

通常枠(A・B類型)(対象:業務のデジタル化を目的としたソフトウェアやシステムの導入) ・A類型 補助率2分の1以内 補助額5万円~150万円未満
・B類型 補助率2分の1以内 補助額150万円~450万円以内
デジタル化基盤導入枠・複数社連携IT導入類型(対象:会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトに補助対象を特化し、複数の中小企業・小規模事業者が連携しITツールを導入し生産性向上を図る取り組みへ対応) ・ソフトウェア等 補助率4分の3以内 補助額下限なし~50万円以内
         補助率3分の2以内 補助額50万円~350万円以内
・ハードウェア 補助率2分の1以内 補助額30万円以内
※ 複数社連携IT導入類型の場合には、補助対象が「基盤導入経費」に加えて「消費動向等分析経費」と「参画事業者の取りまとめに係る事務費・専門家費」までに拡大
セキュリティ対策推進枠(対象:サイバーインシデントを防止するセキュリティ対策強化支援) ・補助率 サービス利用料の2分の1以内 補助額5万円~100万円以内
商流一括インボイス対応類型(対象:インボイス制度に対応し受発注機能を有するITツール導入、取引関係における受注者である中小企業・小規模事業者等に対して当該ITツールを無償で利用させる場合) ・中小企業・小規模事業者等 補助率3分の2以内 補助額下限なし~350万円以内
・その他の事業者等 補助率2分の1以内 補助額下限なし~350万円以内

住宅エコリフォーム推進事業

住宅エコリフォーム推進事業」とは、住宅ストック省エネ化推進に向けて、住宅をZEHレベルの高い省エネ性能に改修する省エネ診断・省エネ設計等・省エネ改修(建替えを含む)のうち、令和5年4月1日以降の契約で事業者登録後に工事着手したものが対象となる制度です。

省エネ診断の補助率は3分の1、省エネ設計等・省エネ改修(建替えを含む)補助限度額は1戸あたり350,000円(補助対象費用の40%を限度)となっています。

事業者登録の受付期間は、令和5年4月28日~令和5年12月15日までです。

住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業

住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業」とは、スマートウェルネス住宅推進事業の1つであり、住宅に困窮する子育て世帯や高齢者世帯などの住宅確保要配慮者が増えることへ対応することを目的としています。

民間賃貸住宅や空き家を活用し、住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅の登録制度など新たな住宅セーフティネット制度の創設に合わせて、緊急的に供給促進を目指します。

住宅確保要配慮者専用賃貸住宅の整備に係る事業について、予算の範囲内で整備にかかった費用の一部が補助されます。

なお、募集期間は令和5年4月4日~令和6年2月16日17時までとなっています。

人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業

人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」とは、人生100年時代で高齢者・障害者・子育て世帯なども安心して暮らすことのできる住環境整備を目的とした事業です。

ライフステージに応じて居住ニーズは変わるため、変化に対応するモデル的な取り組みを行う民間事業者から、先導性が認められた事業について支援します。

補助率は、建設工事費(建設・取得)10分の1・改修工事費3分の2・技術の検証費3分の2などです。
補助される上限額は、課題設定型・事業者提案型・支援付き住宅型が案件ごとに3億円、事業育成型は案件ごとに500万円となっています。

建築業向けの助成金

助成金は通年に渡り申請でき、要件を満たせばほぼ支給されるため難易度は比較的低めです。

建築業が活用したい助成金は、主に厚生労働省管轄の次の2つ制度で、建設事業主や建設事業主団体等が雇用改善や技能向上を図る取り組みを行った際に支給される内容が多いといえます。

  1. トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)
  2. 人材確保等支援助成金

それぞれの助成金について説明していきます。

トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)

トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)」とは、35歳未満の若年者や女性を建設技能労働者として一定期間試行雇用する際に活用できる制度です。

人材確保等支援助成金

「人材確保等支援助成金」とは、魅力ある職場づくりに向けた取り組みを行う事業者や事業協同組合などを支援する制度ですが、建築業向けの人材確保等支援助成金は以下の5つです。

  1. 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
  2. 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
  3. 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
  4. 建設労働者認定訓練コース
  5. 建設労働者技能実習コース

それぞれの人材確保等支援助成金について説明します。

建設キャリアアップシステム等普及促進コース

建設キャリアアップシステム等普及促進コース」では、建設事業主団体の実施する以下の事業に対する助成を行います。

中小構成員等に対し、建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者登録・技能者登録・能力評価(レベル判定)・見える化評価の登録に関する費用の全部または一部
中小構成員等を対象にCCUSの事業者登録・技能者登録・能力評価・見える化評価の事務手続
中小構成員等におけるCCUSの就業履歴蓄積に係るカードリーダーなど各種機器やアプリなどのソフトウェア導入

助成される金額は、中小建設事業主団体が支給対象経費の3分の2、中小建設事業主団体以外の建設事業主団体が支給対象経費の2分の1です。

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)」では、以下に該当する建設事業者を助成します。

①被災三県に所在する作業員宿舎・作業員施設・賃貸住宅を賃借した中小建設事業主
②自ら施工管理する建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借した中小元方建設事業主
③認定訓練の実施に必要な施設や設備の設置又は整備を行った広域的職業訓練を実施する職業訓練法人

それぞれ助成される金額は以下のとおりです。

①支給対象経費の3分の2
②支給対象経費の5分の3(賃金要件が認められる場合4分の3)
③支給対象経費の2分の1

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)」では、以下に該当する建設事業者を助成します。

①若年および女性労働者の入職や定着を図ることを目的とする事業を行った建設事業主または建設事業主団体
②建設工事における作業についての訓練を推進する活動を行った広域的職業訓練を実施する職業訓練法人

それぞれ助成される金額は以下のとおりです。

①中小建設事業主…支給対象経費の5分の3(賃金要件が認められる場合4分の3)
中小建設事業主以外の建設事業主…支給対象経費の20分の9(賃金要件が認められる場合5分の3)
※雇用管理研修等を受講させた場合には最長6日間で1人あたり日額8,550円加算
中小建設事業主団体…支給対象経費の3分の2
中小建設事業主団体以外の建設事業主団体…支給対象経費の2分の1

②支給対象経費の3分の2

建設労働者認定訓練コース

建設労働者認定訓練コース」では、以下に該当する建設事業者を助成します。

①認定訓練を行い広域団体認定訓練助成金の支給等を受けた中小建設事業主または中小建設事業主団体
②雇用する建設労働者に有給で認定訓練を受講させ人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の支給決定を受けた中小建設事業主

建設労働者技能実習コース

建設労働者技能実習コース」では、雇用する建設労働者に対し、有給で技能向上に向けた実習を受講させた建設事業主または建設事業主団体に対し助成を行っています。

まとめ

建築業向けの助成金や補助金は、どちらも返還する必要のない資金を調達することができる制度です。

雇用や人材育成には助成金、事業資金としては補助金を活用するとよいですが、補助金の場合は申請しても採択されなければ資金を受け取ることはできません。

公募期間も限定されているため、常に最新情報を入手するようにし、資金調達の機会を逃さないように注意しましょう。