法人向けの資金調達方法とは?金額の規模やスピード重視で選びたい手段を紹介

法人の資金調達は、主に銀行融資への依存傾向が高いといわれています。

しかし、資金調達の方法によって増やせる金額や入金までのスピードは異なるため、手段ごとの特徴を理解した上で有効活用するべきです。

そこで、法人向けの資金調達方法について、金額規模やスピード重視で選びたい手段に分けて紹介します。

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法人向けの資金調達方法:金額規模重視

法人向けの資金調達方法のうち、「金額規模」を重視した場合で選びたい手段は、以下の5つです。

  1. 融資
  2. 社債
  3. 出資
  4. 補助金
  5. 助成金

会社経営をしていれば、新規事業や事業拡大、設備投資などにおいて多額の資金が必要になるタイミングはやってきます。

その際に選びたい手段といえますが、それぞれ説明します。

融資

法人の資金調達方法のうち、最も一般的といえるのが金融機関から「融資」を受けることです。

金融機関は主に以下の2種類があり、どちらを選ぶかによって金額や調達までのスピードなど異なります。

  1. 政府系金融機関
  2. 民間銀行

それぞれ説明します。

政府系金融機関

政府系金融機関とは、日本国内の経済発展や中小企業の活動支援などの目的を達成するために、政府によって設立された銀行です。

預金機能はなく、主に中小企業などに低金利で積極的に貸し付けを行うために運営されています。

中小企業などの法人が関わることの多い政府系金融機関は、主に次の2つです。

日本政策金融公庫 (国民生活事業)個人事業主・小規模事業者がメインターゲットで、一般貸付の融資上限額は4,800万円
(中小企業事業)中小企業から中堅企業までがメインターゲットで、融資上限額は制度によるものの7億2千万円程度
商工中金 政府と組合の共同出資により設立されており、中小企業から中堅企業までをメインターゲットで、億単位の融資も見込めるものの組合員になる必要あり

民間銀行

民間銀行は、主に以下の種類に分類されます。

都市銀行 全国や海外に広く支店がある大規模な普通銀行で、資力が充分にあり中堅企業から大手企業をメインターゲットとして数千万円~数十億円の融資を可能とする銀行
地方銀行 多くの中小企業や中堅企業へ融資を行う地域密着型の普通銀行。融資上限額は地方銀行によるが億単位の融資を可能とするケースもある
信用金庫 会員出資の非営利法人で、融資上限額は信用金庫によって異なる。なお、会員の出資が財源となるため億単位の融資は難しいことが多い

さらに民間銀行から融資を受ける場合、主に次の3種類の方法があります。

  • プロパー融資(銀行独自の責任で行われる貸し付け)
  • 信用保証協会保証付き融資(信用保証協会の保証のもとで行われる貸し付け)
  • 証書貸付(借用証書を差し入れた上で行われる貸し付け)

他にも不動産担保付き融資等、種類はいくつかあります。

ただ、担保や保証人なしでお金を借りることは、信用力などが認められ銀行から高い評価を得ていなければ難しいといえます。

まずは保証付きの融資で実績を作ることが必要です。

社債

社債とは、会社が事業資金を調達することを目的に発行する債券であり、投資家から資金を集められます。

株式発行と異なるのは、期間利息を支払うことや、満期に元本を返済しなければならない仕組みであることです。

返済義務を負う形式の資金調達といえますが、種類によっては無担保で発行できます。

そのため銀行から融資を受けたいけれど不動産など担保に差し入れる資産を持っていない法人なども、社債なら選択しやすいといえます。

社債には、次の2つの種類があります。

  1. 公募債
  2. 私募債

それぞれ説明します。

株式と社債の違いとは?種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説

公募債

公募債とは、不特定多数の投資家を対象として発行する債券です。

債券の募集形態の1つが「公募」であり、公開市場で50人以上の投資家に向けて新たな有価証券を売り出します。

購入を呼び掛け、購入してくれた投資家に対し、満期までに利子を支払って満期到来の際には一括返済することが必要です。

なお、公募債は「有価証券届出書」または「有価証券通知書」の提出することが必要となります。

私募債

私募債とは、有価証券を発行し、少数の投資家へ直接引き受けてもらうことで資金を調達できる社債です。

主に購入を呼び掛ける相手は、50人未満の縁故者や会社関係者など限定した投資家です。

そのため公募債であれば提出しなければならない「有価証券届出書」や「有価証券通知書」は必要ありません。

中小企業では金融機関や信用保証協会などが償還保証する「銀行保証付(銀行引受)私募債」や「信用保証協会保証付私募債」が主流ですが、私募債の発行金額は1億円までと限定されます。

出資

法人の資金調達方法として、融資の次に多く利用されているのが「出資」してもらう方法です。

返済不要の資金を調達できるため、お金を借りて返済義務を負うよりも、より自由度の高いお金を増やせます。

出資による資金調達方法は、主に次の3つです。

  1. ベンチャーキャピタル
  2. エンジェル投資家
  3. クラウドファンディング

それぞれ説明します。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルとは、未上場の新興企業に対し、資金を投じる投資会社です。

投資会社が先に株式を購入し、上場後に売ってキャピタルゲインを獲得することを目的に、出資してくれます。

積極的な投資活動を行ってくるため、多額の資金調達が可能となることや、上場できる可能性も広がります。

しかしベンチャーキャピタルに投資したいと思わせる事業などでなければ、出資を受けることは難しいでしょう。

出資してもらった場合でも、企業価値を向上させるために経営コンサルティングなど実施し、経営自体にも関与してくる場合があります。

自由な経営を求めている場合、ベンチャーキャピタルの経営方針に従うことに不満を感じる可能性があるため、メリットとデメリットを踏まえた上での慎重な選択が必要です。

エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、起業したばかりのスタートアップ企業などを対象に、資金を投じる個人投資家です。

もともと実業家や経営者だった方が多く、資金面やスムーズな経営に向けてサポートしてくれることも期待できます。

ただしベンチャーキャピタルと同じく、上場後の売却益を目的としたエンジェル投資家もいます。

純粋に起業家を応援したいと考える個人投資家でなければ、経営に関与される可能性があるため、相性等を見た上で選ぶことが必要です。

エンジェル投資家とは?出資してもらうメリット・デメリットや探し方を解説

クラウドファンディング

「クラウドファンディング」とは、インターネットを通して不特定多数の個人から、少額の資金を集める仕組みです。

ネット上に公開されたビジネスやアイデアを見て、賛同した方や魅力的だと感じた方が資金を投じます。

寄付や購入など、いろいろな形態で資金が供与される方法であり、以下のとおり様々な形での応援方法があります。

  • 購入型
  • 寄付型
  • 融資型
  • ファンド型
  • 投資型
  • ふるさと納税型

いずれの方法でも個人から資金を募るため、少額を投資する賛同者が増えることで多額の資金調達につながるでしょう。

法人の場合、個人よりも信用力が高いため、より資金を集めやすいと考えられます。

他社にない独自の魅力あふれる商品やサービス、ビジネスなどを提示すれば、多くの賛同者から共感を得て多額の資金を集めやすくなります。

クラウドファンディングとは?やり方やメリット・デメリットを簡単に解説

補助金

法人の資金調達方法で、出資と同じく返済不要の資金を集めるのなら、「補助金」を申請する方法も選べます。

中小企業が選びやすい補助金制度は、主に次の3つです。

  1. ものづくり補助金
  2. IT導入補助金
  3. 事業再構築補助金

それぞれ簡単に説明します。

詳しくはリンク先の公式ホームぺージなどの情報を確認してください。

ものづくり補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、「ものづくり補助金」と呼ばれている補助金制度であり、中小企業の働き方改革や賃上げやインボイス導入を支援する目的で創設されています。

最新で設備を投入する上での製造プロセスを改善することや、設備投資で競争力を強化するなど、主に中小企業の設備投資に役立てられている制度です。

ものづくり補助金の募集枠は以下の5つであり、それぞれ要件や補助される額等異なります。

  • 通常枠
  • デジタル枠
  • グローバル市場開拓枠
  • グリーン枠
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠

詳しくは中小企業庁の「ものづくり補助金総合サイト」から確認することをおすすめします。

IT導入補助金

IT導入補助金2025」とは、中小企業の働き方改革促進・労働環境改善・生産性向上などに向けたIT機器・ITツール導入において活用できる補助金制度です。

中小企業の労働生産性向上などを目的とした制度であり、たとえば勤怠管理ソフト導入や会計ソフト導入、ECサイト構築などに活用できます。

枠ごとに補助対象や補助額等異なるため、詳しくは中小企業庁の「IT導入補助金2025」を参考にしてください。

事業再構築補助金

事業再構築補助金」とは、事業者が経済社会変化に対応するために設けられた補助金制度です。

新分野展開・業態転換・事業または業種転換など、思い切った事業の再構築を行う事業者を支援する制度といえます。

詳しくは中小企業庁の「事業再構築補助金」サイトを確認しましょう。

助成金

法人の資金調達方法で、補助金と同じく返済不要の資金を集めるのなら、「助成金」の申請も可能です。

補助金は要件を満たし申請をしても、採択されなければ資金調達につながりません。

それに対し助成金は、要件を満たし申請をすれば資金を調達できることがメリットです。

ただし補助金・助成金どちらも、後払いにより資金を調達できる方法であるため、実際に係る費用については一時的に立て替えが必要となります。

中小企業が選びやすい助成金は、主に次の2つです。

  1. 人材確保支援等助成金
  2. 人材開発支援助成金

それぞれ説明します。

人材確保支援等助成金

人材確保等支援助成金」とは、魅力ある職場づくりへ取り組む事業者を支援するための助成金制度です。

最終的な目標は、雇用創出を図ることと人材確保・定着とされていますが、コースごとに助成金額等異なるため詳しくは厚生労働省の「人材確保等支援助成金のご案内」を確認してください。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金」とは、事業者が労働者に職務関連の専門的知識・技能を習得させるための職業訓練を実施した際、かかった訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を支援する助成金制度です。

従業員の人材育成やスキルアップに活用できる助成金制度といえますが、複数のコースに分かれているため、詳しくは厚生労働省の「人材開発支援助成金」を確認してください。

法人向けの資金調達方法:スピード重視

法人が資金調達するとき、必要額が億単位など大きくなればなるほど、実際に調達できるまでの時間は長くなりがちです。

今日明日にでも資金を調達しなければならない切羽詰まった状況の中で、手元の資金を増やすのならスピード重視の資金調達方法を選択することが必要といえます。

法人向けの資金調達方法のうち、スピードを重視するなら以下の4つの方法から選択しましょう。

  1. ファクタリング
  2. ビジネスローン
  3. 手形割引
  4. 当座貸越

それぞれ説明します。

ファクタリング

ファクタリングとは、商取引で発生した売掛債権を、ファクタリング会社に売って現金化することにより資金を調達できるサービスです。

ファクタリングはお金を借りる方法でないため、審査では売掛債権(売掛先)の信用力が重視されます。

そのため銀行融資の審査に通らない企業や、赤字経営や債務超過の会社でも、申し込みは可能です。

早ければ即日現金化が可能であるなど、スピード感を持った資金調達が可能となります。

ただし売買手数料が発生することと、調達額は売掛金額までに留まることなどは注意が必要です。

ファクタリングとは?仕組みや売買手数料の決まり方を分かりやすく解説

ビジネスローン

ビジネスローンとは、一般的な銀行融資では審査に通らず、資金調達しにくい中小企業や小規模事業者に向けて作られた金融商品です。

審査はスコアリングシステムが活用されており、AIによる判断でスムーズに結果が出ます。

借入希望の企業と、過去に貸し付けた企業のデータを照合し、事業内容や信用情報など評価して融資可否・限度額・金利などを判断する仕組みです。

提出しなければならない必要書類も簡素化されているため、スムーズに資金調達したいときに選びやすいといえます。

ただしビジネスローンは金利が高く、繰り返し長期利用すれば資金繰りが悪化するため、一時的な利用に留めておくことが必要です。

即日融資の法人向けローンとは?ビジネスローンのメリット・デメリットを解説

手形割引

手形割引とは、期日が到来していない受取手形を銀行または手形割引業者に売却し、現金化することで資金を調達する方法です。

手形は本来、期日にならなければ入金されない仕組みであるものの、手形割引を使えば前倒しで現金化できます。

ファクタリングと似た手法といえますが、手形割引は融資として扱われます。

万一、売った手形が決済されずに不渡りになれば、その手形を買い戻さなければなりません。

貸し倒れリスクまで移転できる方法ではないことを理解の上、利用する必要があります。

ファクタリングと手形割引の違いは?それぞれの活用メリット・デメリットを徹底解説

当座貸越

当座貸越とは、あらかじめ設定していた極度額の範囲で、都度審査をせずに繰り返し借入・返済できる金融商品のことです。

金融機関に申し込み、審査を経た上で事前に当座貸越契約を締結しておくことが必要となります。

とても便利な資金調達方法であるものの、金融機関にとっては都度審査しない貸し倒れリスクの高い金融商品です。

そのため通常融資より金利が高めに設定され、契約も1年契約となり、更新の際に再度審査を受けなければなりません。

事業用の当座貸越は、主に以下の2種類に分けられます。

  1. 専用当座貸越
  2. 一般当座貸越

それぞれ簡単に説明します。

専用当座貸越

「専用当座貸越」とは、融資専用口座を作成して融資額の範囲において、自由に借入・返済が可能になる契約です。

キャッシュカードや借入請求書で、借入れ分を自由に引き出せます。

一般当座貸越

「一般当座貸越」は、当座預金口座と連動していることが特徴です。

当座預金残高を超えた引き出しや引き落としがあったとき、融資額の枠内で自動的に借り入れができます。

買掛金支払いの引き落としで預金口座の残高が不足していた場合でも、自動的に不足分が補われるため、不渡りリスク回避にはつながります。

まとめ

法人の資金調達方法は、金融機関からの借入以外にも複数の方法があります。

多額の資金調達においては、融資・出資・補助金・助成金などの方法を選択することが必要です。

しかし、会社経営でありがちなすぐに資金が必要という場面において、多岐に渡る書類の準備や審査完了までの流れを待っていれば、とても間に合いません。

このような場合、スピード重視の資金調達方法として、ファクタリングや手形割引、当座貸越やビジネスローンも選択肢として考えることができます。

どの方法でもコストが発生し、書類を準備することが必要であることを加味しつつ、自社に合った資金調達方法を選択してください。

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