ゼロゼロ融資の返済が厳しい。借り換え保証で負担軽減を図る方法を解説

コロナ禍前より売上が一定以上落ち込んだ事業者を対象に、実質的に無利子・無担保で融資する「ゼロゼロ融資」が政府主導で行われました。

コロナ禍を経て多くの事業者が返済期限を迎えるなか、返済状況が厳しい事業者も多いです。ゼロゼロ融資の返済を一時的に乗り越える方法として借り換えがあります。

今回は、ゼロゼロ融資の返済に困ったときの借り換えの制度や手続きの流れなどを解説します。

ゼロゼロ融資の返済が厳しい場合の借換保証の利用を検討

新型コロナウイルスで影響を受けた中小事業者を支援するために実施されたのが、2020年3月にスタートした「ゼロゼロ融資」といわれる実質無利子・無担保の制度です。

一定の要件を満たすことで最長3年間の利子相当額が都道府県より助成される制度で、多くの事業者の利用がありました。

当初は政府系金融機関に限った実施でしたが、制度の利用を申し込む事業者が多かったことから、段階的に民間金融機関の実施に拡大し、2022年9月に新規貸付が終了しています。

ゼロゼロ融資の返済はいつから?

ゼロゼロ融資は、10年以内、うち据置期間5年以内の融資期間で融資を受けられる制度ですが、実際の融資額や融資期間は事業者の状況などで異なります。

制度開始から、すでに返済開始時期を迎える事業者も出てきました。ゼロゼロ融資は政府系金融機関によるものと民間金融機関によるものがありますが、日本政策金融公庫の返済開始時期についてはすでにピークが到来しています。

日本政策金融公庫より遅れて開始された民間金融機関の返済開始時期もピークを迎える予定です。2023年7月から2024年4月ごろがピークと推定されています。

出典:経済産業省「事務局説明資料2023年6月29日 中小企業庁金融課

新たに創設されたコロナ借換保証とは

ゼロゼロ融資を受けた多くの中小事業者が返済開始時期を迎えるなか、物価高などの影響で当初の予定どおりの返済が難しい事業者も出てきました。

事業者の返済負担への対応に加え、事業者の実態に応じた支援をするために創設されたのが「民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための補償制度」です。通称、コロナ借換保証といいます。

一定の要件を満たす事業者が、金融機関から新規融資を受けることで、通常よりも大幅に少ない信用保証料でゼロゼロ融資の返済負担を軽減できるようにした制度です。

まず、コロナ借換保証を利用することで、返済条件の見直しが可能になります。当初のゼロゼロ融資の元本返済額の減額が受け入れられれば、毎月の借入金返済の負担が減少して資金繰りを良くすることができるでしょう。

さらに、コロナ借換保証には最大5年の据置期間が設けられていることから、返済を将来に繰り延べることもできます。先に資金繰りの改善に注力して、財政基盤が整ったあとに返済を選択することも可能です。

また、ゼロゼロ融資では最大6,000万円だった保証限度額が、コロナ借換保証では1億円に拡大されました。経営状況が悪化している事業者が、追加融資により事業の立て直しを図ることもできるでしょう。

出典:中小企業庁「民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)を開始します。

【ゼロゼロ融資】コロナ借換保証を利用するための要件

コロナ借換保証を利用するには、経営行動計画書の作成と金融機関の伴走支援を受けられることが必須条件です。加えて、以下のいずれかに該当する必要があります。

1.セーフティネット4号の認定を受けること
2.セーフティネット5号の認定を受けること
3.売上が一定以上減少していること
4.売上高総利益率と営業利益率が一定以上減少していること

それぞれの要件について簡単に説明いたします。

セーフティネット4・5号の認定

セーフティネット4号は、新型コロナウイルス感染症など突発的災害で売上高が減少した中小事業者を対象とした制度です。指定の災害の発生により、前年同月よりも売上高が20%以上落ち込んでいる事業者などが対象となります。

セーフティネット5号は、全国的に業況悪化が見られる業種の中小企業者を対象とした制度です。指定業種で、前年同期と比べて直近3ヶ月の売上高などが5%以上落ち込んでいる事業者などが対象になります。

それぞれの詳しい要件は、以下、中小企業庁のサイトをご確認ください。

出典:中小企業庁「セーフティネット保証制度(4号:突発的災害(自然災害等))
出典:中小企業庁「セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種(全国的))

売上高と売上高総利益率・営業利益率の減少

直近1ヶ月の売上高、または売上高総利益率と営業利益率が前月同月と比べ5%以上減少している場合も、要件を満たす事業者になります。

売上高総利益率とは、売上総利益(売上高-売上原価)が売上高のうちに占める割合いのことをいいます。営業利益率とは、売上高に対する本業の利益の割合のことです。

売上高総利益率と営業利益率を基準にする場合は、直近2年分との決算書との比較も認められます。(前々期決算より前期決算で5%以上減少しているなど)

【無料ダウンロード】
9つの資金調達方法を紹介

9つの資金調達方法のメリットデメリットから申請方法、さらに審査落ちした時の対処法までをまとめた経営者必見のガイドブックです。

いますぐダウンロード

ゼロゼロ融資の借り換えの手続き

ゼロゼロ融資からの借り換えはどのような手順で進めていくのでしょうか。コロナ借換保証利用の流れを紹介します。

経営行動計画書を作成する

コロナ借換保証を利用するための条件となっている経営行動計画書を作成します。経営行動計画書とは、事業者が課題を解決して業績を改善するための計画を書類にしたものです。

経営行動計画書には、以下の内容を記載します。

・現状認識(事業の外部環境や経営状況、事業が抱える課題)
・財務分析(売上増加率や営業利益率などの数値)
・計画終了時の将来目標
・具体的なアクションプラン(課題解決のための行動計画と目標値)
・収支計画と返済計画

経営行動計画書をはじめとした必要書類の準備ができたら、金融機関に申し込みを行う流れです。

なお、経営行動計画書の様式とサンプル(記載例)は中小企業庁の公式サイトで確認できますので、参考にしてみてください。

出典:中小企業庁「民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)を開始します。

金融機関が認定申請・保証審査などを行う

事業者の申込内容をもとに、金融機関による与信審査が行われます。金融機関の与信審査とは、資料などから融資に適した事業者かどうか判断することです。

与信審査に通過すると、金融機関から自治体へのセーフティネット保証の認定申請、金融機関から信用保証協会への保証審査依頼が行われます。

信用保証協会は、事業者が資金を円滑に調達できるよう支援をする公的な機関です。保証審査では、事業者の業績や返済能力などを鑑みて信用保証協会が保証人となるのにふさわしい事業者かどうかを判断します。

融資と伴走支援が実施される

保証審査などで問題がなければ、融資が実行されます。コロナ借換保証は経営行動計画書の目標を達成するための金融機関の伴走支援が条件です。返済まで、計画書の進捗などを金融機関と共有しながら業績改善に努めていきます。

なお、経営行動計画書に沿って事業の再構築を図るには、計画の実行可能性が重要です。金融機関と対話をして作成を進めていくなかで、見た目の良い計画書の作成に力を入れるのではなく、事業の継続や発展を考えて実現できる内容に落とし込むようにしましょう。

まとめ

ゼロゼロ融資の返済期限開始が近づき悩んでいる事業者、あるいはすでにゼロゼロ融資の返済が始まって事業に支障が出ている事業者もあるでしょう。

ゼロゼロ融資の返済が難しい場合は、毎月の返済負担を軽減して将来へ返済を繰り延べできるコロナ借換保証を利用するのもひとつの方法です。

なお、コロナ借換保証を利用するには一定の要件を満たす必要があるほか、経営行動計画書の作成などの準備が必要になります。また、民間の金融機関との対話も必要です。

ゼロゼロ融資の借り換えについてお悩みの方は、PMGまでご相談ください。借り換えに関してだけでなく、ゼロゼロ融資の返済に向けて包括的にサポートいたします。

また、返済が始まっていない方に対しても、返済に向けた準備に関するサポートを提供しております。些細な点でも不明なことがありましたら、お気軽にPMGまでご相談ください。

ご相談窓口