融資で保証人なしは可能?経営者の個人保証を不要とする制度4つを紹介

「融資で保証人なしの制度を利用できれば…」
「お金を借りたいけれど経営者の個人保証を求められた」

など、中小企業や小規模事業者の経営者が金融機関から融資を受けるとき、連帯保証人として経営者個人の保証を求められることが一般的です。

会社が融資を受けるときに保証してしまうと、万一倒産したときには経営者も破産することになるため、連帯保証なしでの借入れを希望するものでしょう。

実際、連帯保証なしで融資を受ける事例も少しずつ増えているため、経営者による連帯保証なしで借入れできる制度について紹介していきます。

融資で経営者保証が求められる理由

中小企業や小規模事業者が銀行から融資を受けるとき、経営者の連帯保証人を求められることが一般的です。

なぜ経営者保証が求められるのか、その理由は次の3つと考えられます。

  • 会社と経営者を一体として評価している
  • 経営者に規律付けするため
  • 信用を補完するため

中小企業は大企業のように決算書に関する透明性や客観性も低く、会社と経営者の資産の線引きなどもできていないことがあります。

そのため信用補完のために、金融機関では中小企業などが融資を受ける際には、経営者が人的保証することを求めることがほとんどといえます。

しかし保証人なしではなく、経営者保証を前提に融資を受けてしまうと、会社が返済できなくなったときには経営者個人が返済義務を負います。

非常に重い責任を背負うことになるため、経営者による思い切った事業展開の妨げになることや、事業承継に支障をきたす要因になっていると考えられています。

融資における経営者保証の動き

中小企業などが融資を受けるときの経営者保証は、思い切った事業展開や早期の事業再生を防げる要因になっており、活力を阻害することも指摘されています。

平成26年2月からは、「経営者保証に関するガイドライン」が公表され運用が開始されたものの、あくまでも関係者が自発的に尊重・遵守するものであり、法的な拘束力はありません。

ただ、ガイドラインに沿った場合、次の経営状況の中小企業であれば、経営者が保証なしで融資を受けることができると考えられます。

  • 法人と経営者の関係を明確に区分・分離すること(役員報酬・賞与・配当・経営者貸付など法人と経営者間の資金のやりとりを社会通念上適切な範囲を超えないようにするなど)
  • 財務基盤を強化すること(財務状況や業績改善を通じた返済能力向上に取り組むなど)
  • 経営の透明性を図ること(事業計画・業績見通しなどの情報を正確・丁寧に説明し、変動が起きたときの自主的な金融機関への報告など適時適切な情報開示)

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保証人なしの融資制度

銀行独自の責任で、担保や保証人なしで融資を受けることができるプロパー融資のハードルは高いといえます。

ただ、中小企業でも、次の4つの融資制度であれば保証人なしでお金を借りることが可能です。

  1. 経営者保証改革プログラムの保証
  2. 日本政策金融公庫の融資
  3. 地方自治体の制度融資
  4. 民間金融機関による経営者保証なし融資

それぞれの保証人なしの融資制度について解説していきます。

経営者保証改革プログラムの保証

保証人なしで融資を受けることができる制度の1つ目は、「経営者保証改革プログラムの保証」です。

「経営者保証に関するガイドライン」の運用開始から活用促進が推進されていたものの、経営者保証に依存しない融資が浸透しているとはいえない状況が続いていました。

そこで、経営者保証に依存することなく融資を受けることができるように、金融庁が経済産業省・財務省と連携して「経営者保証改革プログラム」を策定しています。

民間金融機関による融資について、監督指針の改正により保証を徴求するときの手続を厳格化し、安易な個人保証に依存した融資の抑制につなげるとしています。

さらに「経営者保証ガイドラインの浸透・定着に向けた取組方針」の作成・公表の要請を通して、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた意識改革を進めるようです。

なお、創業の際に保証人なしで融資を受けたいときに活用できる「スタートアップ創出促進保証」は、保証限度額3,500万円となっています。

保証対象者は以下のとおりです。

  • 創業予定者
  • 分社化予定者
  • 創業後5年未満の法人
  • 分社化後5年未満の法人
  • 創業後5年未満の法人成り企業

なお、創業計画書の提出が必要であることと、申込受付時点で税務申告1期未終了の創業者は創業資金総額の10分の1以上の自己資金を有していることが必要です。

日本政策金融公庫の融資

保証人なしで融資を受けることができる制度の2つ目は、「日本政策金融公庫の融資」です。

日本政策金融公庫では保証人に依存しない次の5つの貸し付け制度を推進しています。

  1. 新創業融資制度
  2. 小規模事業者経営改善資金(マル経融資)
  3. 挑戦支援資本強化特別貸付
  4. 経営者保証免除特例制度
  5. 生活衛生改善貸付

それぞれの保証人なしの融資制度について解説していきます。

新創業融資制度

創業支援のために無担保・無保証人で利用できるのが「新創業融資制度」です。

新しく事業を開始するときや、事業開始後に必要である設備資金や運転資金を担保や保証人なしで融資限度額3,000万円(運転資金1,500万円)まで借りることができます。

ただし創業者または事業開始後税務申告を2期終えていないこと、創業者や税務申告を1期終えていない方は創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金を有していることが必要です。

先に紹介した「スタートアップ創出促進保証」制度と合わせた場合、6,500万円まで無担保・保証人なしで借りることができます。

小規模事業者経営改善資金(マル経融資)

商工会議所や商工会などから経営指導を受けている小規模事業者が無担保・保証人なしで経営改善に必要な資金を借りることができる制度が「小規模事業者経営改善資金(マル経融資)」です。

商工会・商工会議所・都道府県商工会連合会の経営指導と推薦を受けた商工業者(小規模事業者)が対象で、融資限度額は2,000万円までを無担保・無保証人で借りることができます。

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」の資金供給を通じて、創業・新事業展開・海外展開・事業再生などに取り組む方の財務体質強化や、民間金融機関・ベンチャーキャピタルなどから資金を円滑に調達するための資金供給制度が「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」です。

地域経済活性化に係る事業を行い、税務申告を1期以上終えているときには所得税など滞納していない事業者で、次のいずれかの融資制度の対象であることが必要となります。

  • 新規開業資金
  • 新事業活動促進資金
  • 海外展開・事業再編資金
  • 事業承継・集約・活性化支援資金
  • 企業再建資金

上記の融資制度に定める設備資金および運転資金を、無担保・保証人なしで別枠により、融資限度額7,200万円まで借りることができます。

経営者保証免除特例制度

「経営者保証に関するガイドライン」に対応する制度とされている「経営者保証免除特例制度」では、経営者保証を不要とする融資を希望される場合に利用できます。

ただし以下の要件など満たすことが必要です。

  • 法人と代表者の方の一体性が解消されていることが確認できること
  • 税務申告を2期以上実施していること
  • 減価償却前経常利益が直近2期連続赤字ではなく直近決算で債務超過ではないこと

生活衛生改善貸付

生活衛生関係の事業を営む小規模事業者で、経営改善のための資金を無担保・保証人なしで借りたいとき利用できる制度が「生活衛生改善貸付」で、融資限度額2,000万円まで借りることができます。

ただし生活衛生同業組合長の推薦を受けることや、常時使用する従業員数が5人(旅館業及び興行場営業は20人)以下の会社または個人であることが必要とされています。

地方公共団体の制度融資

保証人なしで融資を受けることができる制度の3つ目は、「地方公共団体の制度融資」です。

都道府県や区市町村が銀行などの通常の融資よりも、低金利でお金を借りやすくする制度として設けており、中小企業の経営安定化・創業支援・産業振興等地域経済発展を目的としています。

自治体で借入条件に適合しているか確認し、面接などを経て内容に問題がなければ、金融機関に紹介状を発行してくれます。

金融機関が紹介状を受け取り、信用保証協会の保証を得ることができる場合には、審査を経て融資を実行する仕組みです。

自治体から発行される紹介状は、金融機関に融資実行を強制するものではないものの、前向きに審査をしてもらえることがメリットといえます。

金利も低く、長期で安定した資金調達が可能となることや、自治体によって利子の一部を負担してくれることも魅力といえるでしょう。

ただし制度によっては中小企業診断士等の専門家と面談することが必要になり、融資を受けるまで時間がかかります。

自治体・銀行・信用保証協会の3者が関係することで、手続に時間がかかることは留意しておき、早めの相談・申し込みが必要です。

自治体によって内容も千差万別となっており、申し込みに関係する書類を自治体で受け取る場合や、金融機関で可能な場合など様々といえます。

そのため制度融資を利用するときには、自治体や取引金融機関に事前に確認したほうが安心です。

民間金融機関による経営者保証なし融資

保証人なしで融資を受けることができる制度の4つ目は、「民間金融機関による経営者保証なし融資」です。

金融庁の民間金融機関に対する「監督指針」も改正され、2023年4月1日から適用されました。

そのため民間金融機関にも、経営者保証を求める手続の厳格化により、安易に経営者保証に依存しないことや、事業者などが納得できる説明の具体化が求められます。

金融機関が経営者などと個人保証契約を結ぶときには、保証契約の必要性について事業者・保証人に具体的に次の内容を説明すること、結果を記録することが求められるようになりました。

  • 保証契約で補完しなければならない不十分な部分
  • 保証契約の変更・解除の可能性を高める改善部分

無保証融資件数と有保証融資で適切な説明を行い、記録した件数100%を目指すこと、経営者保証に依存しない新たな融資手法の検討も求められています。

2023年4月1日からは民間金融機関が経営者に個人保証を求める場合、保証契約の必要性などを個別具体的に説明することが求められているため、もし説明がないときには上記の内容について詳しく確認するようにしましょう。

今後の保証人なし融資の創設予定

平成26年2月からは、「経営者保証に関するガイドライン」が公表され運用が開始されたものの、法的な強制力はなく特に大きな効果が見られたわけではありません。

そのため令和4年12月23日には、経済産業省および金融庁より、経営者保証なしの融資を強く促進するための「経営者保証改革プログラム」が公表されました。

今後の保証人なし融資の創設予定としては、要件を満たすことで保証料上乗せ負担などにより経営者保証を解除できる信用保証制度が2024年4月以降に創設されます。

経営者保証の解除を選ぶことができる信用保証制度に加えプロパー借換保証の創設も予定されていますが、流動資産担保融資(ABL)保証については2024年4月から経営者保証が廃止される予定です。

まとめ

中小企業や小規模事業者の経営者が金融機関から融資を受けるときには、経営者保証を求められることが一般的ですが、保証人なしでお金を借りることを実現させましょう。

もしも経営者保証のもとで融資を受けてしまうと、会社が万一倒産したときには経営者も破産することになります。

リスクを背負った状態では、思い切った経営判断もできず、事業を承継したいと考える後継者候補もあらわれにくくなるなど事業継続における不具合が発生する可能性もあります。

実際、連帯保証なしで融資を受ける事例も少しずつ増えており、紹介した制度を活用して保証人なしで融資を受けている経営者も少なくありません。

また、中小企業は資金調達において銀行融資に依存する傾向が高いといえますが、ファクタリングなどお金を借りない方法もあります。

保証人なしで融資を受ける際にも、融資実行までの間のつなぎ資金として利用できる方法であるため、ファクタリングによる資金調達方法の多様化をおすすめします。