返済不要の資金調達方法とは?全6種のメリット・デメリットを解説

会社経営を続けるためには資金調達が欠かせませんが、できれば返済不要の資金を増やしたいと考えるものでしょう。

銀行から融資を受けて資金調達すれば、借りたお金に利子をつけて返済することが必要であるため、一時的に資金繰りは改善されても維持できるとは言い切れません。

しかし、返済不要の資金があれば、返済負担を気にすることなく事業に投じることができるでしょう。

そこで、会社経営のおける返済不要の資金調達方法6つについて、それぞれのメリット・dメリットも含めて解説していきます。

①ベンチャーキャピタルからの出資

返済不要の資金調達の方法の1つ目に、「ベンチャーキャピタル」から出資を受ける方法が挙げられます。

ベンチャーキャピタルとは、将来的に成長が期待できる未上場企業に資金を投じる投資会社を意味します。

投資した会社が成長し、上場したときに保有する株式や事業を売却することでリターンを得ることがベンチャーキャピタルの目的です。

そのため、事業が順調に進むための経営アドバイスなどサポートしてもらえる反面、経営に関与されることで自由な経営ができない可能性もあります。

ベンチャーキャピタルについて、次の2つをそれぞれ詳しく説明していきます。

  1. ベンチャーキャピタルのメリット
  2. ベンチャーキャピタルのデメリット

ベンチャーキャピタルのメリット

ベンチャーキャピタルのメリットとして、調達できる金額が億単位にのぼることが挙げられます。

他の資金調達方法と異なり、ベンチャーキャピタルが投じる資金は規模が大きく、さらに返済不要となるだけでなく人的保証や担保の差し入れも必要ありません。

出資を受けて財務状況が改善すれば、将来的に返済不要の資金調達にこだわることなく、たとえば銀行など金融機関から融資を受けることも容易になるでしょう。

ベンチャーキャピタルから提携先など紹介を受け、会社を成長させるノウハウなどもアドバイスしてもらうことにより、業績アップを期待することが可能です。

知名度の高いベンチャーキャピタルから出資を受けることができれば、ビジネスが評価されていると社会的に評価され、さらに事業拡大に向けた追加出資も期待できます。

ベンチャーキャピタルのデメリット

ベンチャーキャピタルのデメリットは、資金調達できる金額が大きくなるだけに、簡単に出資してもらえないことです。

将来的に事業が発展することが十分期待できるビジネスなどでなければ、ベンチャーキャピタルに認めてもらえず、出資してもらえません。

仮に業績悪化などで見込んだ結果を生まなかった場合、投資した資本を回収するため株式買取を求められる可能性もあります。

そのため事業を改善させようと必要以上に経営に干渉してくるなど、異なる経営方針を押し付けられたり自由な経営を奪われたりという可能性もあります。

②エンジェル投資家からの出資

返済不要の資金調達の方法の2つ目に、「エンジェル投資家」から出資を受ける方法が挙げられます。

エンジェル投資家とは、スタートアップ企業やベンチャー企業に資金を投じる個人投資家です。

もともと経営者だった方や実業家だった方が多く、いずれにしても返済不要の資金を調達できます。

ベンチャーキャピタル同様に、投資した企業が株式上場した後で、株式を売買してキャピタルゲインを得ることを目的としているケースもあれば、若手起業家を純粋に応援する理由で出資してくれるケースもあります。

出資額は数百万円から数千万円など、ベンチャーキャピタルよりも規模は小さいため、経営に深く関与しない傾向が見られるものの、中には関与してくるケースもあるため一概にはいえません。

エンジェル投資家について、次の2つをそれぞれ説明していきます。

  1. エンジェル投資家のメリット
  2. エンジェル投資家のデメリット

エンジェル投資家のメリット

エンジェル投資家のメリットは、出資するか決めるのは投資家個人であるため、決断スピードがはやいことです。

スムーズにエンジェル投資家と交渉が進めば、資金調達まで時間がかからない場合もあります。

また、もともと経営者だった方や実業家だった方が多いため、経営ノウハウや知識などのアドバイスをしてもらえます。

経営に関する悩みについて、良きアドバイザーとしてサポートしてもらえることはとても心強いといえるでしょう。

また、エンジェル投資家の豊富な人脈などを活かして、ビジネスパートナーなどを紹介してくれることもあります。

エンジェル投資家のデメリット

エンジェル投資家のデメリットとして、個人投資家であるため出資額が一定額に限られることが挙げられます。

ベンチャーキャピタルであれば数億円単位で出資してもらえることが期待できるのに対し、エンジェル投資家は数百万円や数千万円と、高額出資は期待できません。

そのためビジネス案や事業によっては、1人のエンジェル投資家だけでなく、複数の投資家に出資してもらうことが必要になるでしょう。

さらに経営に深く関与しないエンジェル投資家もいる中で、必要以上に干渉してくる場合もあります。

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③クラウドファンディングの利用

返済不要の資金調達の方法の3つ目に、「クラウドファンディング」を利用する方法が挙げられます。

クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の個人から資金を投じてもらう資金調達方法です。

ビジネス案やプロジェクト内容をインターネット上に公開し、応援したいと賛同した個人から少額の資金を集めます。

ただ、クラウドファンディングは資金を投じてくれた方に対し、リターンを提供することも必要となります。

リターンの方法は、

  • 商品やサービスを提供する「購入型」
  • リターンなしの「寄付型」
  • 業績に応じた配当金を渡す「株式投資型」
  • 成果と出資額に応じた配当金やサービスを提供する「ファンド型」

など種類がいろいろです。

クラウドファンディングについて、次の2つを説明していきます。

  1. クラウドファンディングのメリット
  2. クラウドファンディングのデメリット

クラウドファンディングのメリット

クラウドファンディングのメリットとして、不特定多数から少額出資を募る仕組みであるため、支援者が資金を投じやすいことが挙げられます。

また、支援者はリターンを受けることができるため、資金を投じても損に感じにくく、発案者も資金調達しやすいことがメリットです。

さらにインターネットを通じて幅広くビジネスや商品・サービスをアピールすることができるため、ユーザーの反応を確認したりファンをつくったりしやすいこともメリットといえるでしょう。

クラウドファンディングのデメリット

クラウドファンディングのデメリットとして、目標金額に到達しない可能性があることが挙げられます。

仮に目標金額に到達しなければ、集まった資金は返金されることとなり、資金調達につながりません。

目標金額に達しない場合でも受け取ることができる方式はあるものの、手数料やリターン提供が必要になるため、赤字になってしまうリスクもあります。

また、インターネット上にビジネス案やアイデアを公開することで、盗用されるリスクがあることもデメリットといえるでしょう。

④遊休資産の売却

返済不要の資金調達の方法の4つ目に、「遊休資産」を売却する方法が挙げられます。

使っていない資産や不要な資産を売ってお金に換え、運転資金に充てる方法であるため返済する必要はありません。

たとえば、

  • 付き合いで購入したゴルフ会員権や有価証券
  • 使用していない土地や工場
  • 機械設備や備品
  • 借地権

など、遊休資産として挙げられるでしょう。

遊休資産の売却について、それぞれ次の2つを説明していきます。

  1. 遊休資産売却のメリット
  2. 遊休資産売却のデメリット

遊休資産売却のメリット

遊休資産を売却するメリットとして、資産価値の範囲で資金調達できることが挙げられます。

市場価値の見込める資産を売れば、臨時で相当額の資金を調達できます。

さらに使わず放置している土地や工場など、所有しているだけで固定資産税や管理費がかかりますが、売却することで税負担や管理費用も削減できます。

そして遊休資産売却により、会社の安全性を図る指標である「自己資本比率」を改善できます。

自己資本が潤沢であり、返済義務のない資産を多く所有していれば自己資本比率は高くなります。

遊休資産や不良資産などを売り、運転資金を抑えれば会計上の総資本を圧縮できるため、自己資本比率は改善されます。

さらに含み損のある固定資産を売却すれば、売却損を計上できるため節税効果にもつながるでしょう。

遊休資産売却のデメリット

遊休資産売却のデメリットとして、買い手が見つかりにくいことがあげられます。

すぐに土地や工場など手放して現金化したくても、買い手がみつからなければ資金調達はできません。

株式売却においても、上場企業であれば買い手がみつかりやすい反面、業績が悪化している会社の未公開株などは、買い手がなかなかみつからない可能性が高いといえます。

⑤ファクタリングの利用

返済不要の資金調達の方法の5つ目に、「ファクタリング」の利用が挙げられます。

ファクタリングとは、保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、現金化する資金調達の方法です。

お金を借りる資金調達の方法ではないため、返済不要の資金を調達できます。

遊休資産を売却することでも資金を調達できますが、ファクタリングでは資産のうち「売掛債権」が売却の対象となります。

販売した商品やサービスの代金のうち、まだ回収しておらず売掛金として計上している債権を売却します。

ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類があり、売掛先を関与させず契約できるのは「2社間ファクタリング」です。

ファクタリングについて、次の2つを説明していきます。

  1. ファクタリングのメリット
  2. ファクタリングのデメリット

ファクタリングのメリット

ファクタリングのメリットとして、審査のハードルが低く、最短即日資金調達できることが挙げられます。

銀行融資の場合、審査では借入れを申し込んだ会社の信用力が重視されますが、ファクタリングの審査で重視されるのは売掛先の信用力です。

赤字経営や債務超過を理由に、銀行融資を受けることができない会社でも、信用力の高い売掛金を売却するのであれば、審査に通る可能性は高いといえます。

また、売掛先が関与しない2社間ファクタリングであれば、手続が簡素化されるため最短即日で資金調達できます。

さらにファクタリング利用後に売掛先が倒産し、売掛金を回収できなくなったとしても、その責任を利用者が負う必要がないため、売掛金未回収リスクをファクタリング会社に移転できることもメリットです。

ファクタリングのデメリット

ファクタリングのデメリットとして、手数料が銀行融資より割高になることが挙げられます。

ファクタリングは借入れではないため、利子は発生しませんがファクタリング会社に支払う手数料が必要です。

売掛先が契約に関与しない2社間ファクタリングの場合、売掛金は一旦、利用者を介して回収することになります。

そのため利用者が使い込んでしまうリスクがあることや、売掛先に売掛金発生の確認ができないことなどを理由に、手数料は割高に設定されます。

3社間ファクタリングであれば、売掛先からファクタリング会社に直接売掛金が支払われるため、手数料を安く抑えることは可能ですが、売掛先に対するファクタリング利用の説明と承諾を得ることが必要です。

資金調達まで時間がかかることになり、売掛先にも資金繰りが悪化している危ない企業ではないかと懸念されるリスクもあります。

ファクタリングでスムーズに資金調達したいのであれば、2社間ファクタリングでもできるだけ手数料を安く設定してくれるファクタリング会社を選ぶことが重要です。

⑥補助金・助成金を受ける

返済不要の資金調達の方法の6つ目に、「補助金」「助成金」を受ける方法が挙げられます。

補助金は、国や自治体の目指す姿に合わせていろいろな分野で募集を行い、事業者の取り組みを支援するため資金の一部を給付する仕組みです。

助成金は、特定の活動や事業支援を目的として、審査など手続を経て支給されるお金であり、まとまった資金を無償で受け取ることができます。

どちらも新たな活動の立ち上げや事業展開に向けて、有効な財源として使うことが可能です。

補助金・助成金で調達した資金は返済不要ですが、助成金は一定条件を満たすことでほぼ受け取ることが可能になるのに対し、補助金は政策を推進する上でもっともよい提案に限り受け取ることができると考えておきましょう。

補助金・助成金について、メリット・デメリットをそれぞれ説明していきます。

  1. 補助金・助成金のメリット
  2. 補助金・助成金のデメリット

補助金・助成金のメリット

補助金・助成金のメリットとして、支援として受け取ることができる金額が大きいことが挙げられます。

ただ、補助金は予算の範囲や支給件数に制限があり、公募方法によっては先着順や抽選になるため、申請しても支給されない可能性があります。

しかし助成金は、支給要件を満たしていれば制限なく支給されるケースが多く、申請しやすいこともメリットです。

使い道も決められていないため事業の運転資金として活用できます。

補助金の場合は、受給が決定したことでビジネスや技術力などが評価された証明となり、モチベーションを上げることにもつながるでしょう。

補助金・助成金のデメリット

補助金・助成金のデメリットとして、どちらも審査に数か月かかることが挙げられます。

すぐに資金調達したいときには不向きの方法であり、特に補助金は公募期間も短いため、常に新しい情報を入手し、期限に注意が必要になります。

また、どちらも補助の目的や対象などが細かく設定されているため、条件に合わないと申請できず、仮に申請したとしても審査にはとおりません。

補助金の場合、事業計画書の作成や提出までに時間がかかることや、専門家に相談しながら採択してもらいやすい内容で作ることもポイントになります。

いずれも後払いで支給されるため、かかった経費など一時的に立て替えなければならず、事前に別の方法で資金調達することも必要になることはデメリットといえるでしょう。

まとめ

資金調達するときに返済不要の方法を選ぶとき、銀行融資と異なるデメリットもあることは留意しておきましょう。

紹介した方法は、いずれも返済を必要としない方法であり、資金繰りの悩みを抱えている起業家や経営者が検討できる方法です。

ただし中小企業の場合、どの返済不要の資金調達方法でも利用しやすいわけではありません。

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家に出資してもらうことの難易度は高くなるため、ハードルの低いファクタリングなど活用しやすいものを選ぶことをおすすめします。