債権流動化とは、保有する売掛金・受取手形・電子記録債権・診療報酬債権などの債権を分離し、その債権が生み出すキャッシュ・フローを裏付けに資金調達することです。
掛けによる商取引で発生する売掛金も売掛債権の1つであり、債権流動化の対象といえますが、その手法として話題のファクタリングに関心を高める方も増えました。
しかし債権流動化やファクタリングに興味はあっても、いまさらどのような手法か聞けず、そもそもなぜおすすめなのかわからずに活用できないままの経営者も少なくありません。
そこで、債権流動化とは何か、その種類や選び方、そして手法の1つであるファクタリングがおすすめの理由について徹底解説していきます。
目次
債権流動化とは
「債権流動化」とは、保有する売掛金や手形などの売掛債権を、専門業者などに売却して決済期日到来前に現金化することです。
停滞させることなく、流して動かすことを流動化といいますが、売掛債権が入金される予定の期日まで待たずに前倒しで受け取ることといえるでしょう。
なお、第三者に債権を譲渡する方法だけでなく、たとえば債権を担保にして融資を受けることも流動化の手法に含まれます。
銀行借入や社債発行など負債を増やす資金調達の方法や、株式発行で資本増やすため、出資を受ける方法などは従来から活用されてきた伝統的な資金調達手段です。
近年では負債と資本を増やす方法に加えて、保有する金銭債権を売却することにより資金調達する債権流動化が調達手段の多様化においても注目されています。
特に信用力の高い売掛債権であれば、好条件での契約のもと、資金調達につながる可能性が高くなると考えられます。
債権流動化の種類
金銭債権を活用した資金調達の手段といえる債権流動化ですが、売掛債権を活用する方法は主に次の4種類に分けることができます。
- ファクタリング
- 手形割引
- 売掛債権担保融資(ABL)
- 売掛債権証券化
それぞれ説明します。
ファクタリング
「ファクタリング」とは、保有している売掛金をファクタリング会社に譲渡し、現金化することで資金を調達できる金融サービスです。
売掛債権の1つである売掛金を現金化する手法であるため、取引先に掛け取引による請求書を発行していれば利用できます。
次に説明する手形割引と似た手法といえるものの、大きな違いは期日に決済されなかったとき、その弁済責任を利用者が負わないことです。
ファクタリングの9つのメリット|利用すべきケースやデメリットも解説
手形割引
「手形割引」とは、売掛債権のうち受取手形を銀行や手形割引業者に売却し、現金化する金融サービスです。
万一期日に決済されず、不渡りになったときには利用者が弁済義務を負うことは留意しておく必要があります。
また、手形割引はファクタリングと異なり、融資として扱われるため、不渡りの際には手形額面額に利息を加えて返還することが必要です。
売掛債権担保融資(ABL)
「売掛債権担保融資(ABL)」とは、売掛債権を担保として金融機関から融資を受ける資金調達の方法です。
銀行融資であることに変わりはないものの、不動産などを担保として差し入れる必要がなく、債権流動化の中でも利用しやすい方法といえます。
ただしあくまでも借金であり、審査も通常の融資と同じ形式で実施されるため、資金調達まで一定の時間がかかります。
ABLとは?動産や売掛債権を担保とする融資のメリット・デメリットを解説
売掛債権証券化
「売掛債権証券化」とは、特別目的会社(SPV)に債権を譲渡し、投資家から資金を集める資金調達の方法です。
会社所有の売掛債権を特別目的会社に売ることで、買い取られた債権が証券化され、投資家へと売却されます。
少額債権では利用しにくいことや、手続が複雑でわかりにくいため、日本では大企業でさえもほとんど利用していない方法といえます。
債権流動化のメリット
債権流動化は、保有する売掛債権などを使う方法であり、一般的な銀行融資などによる資金調達と比べると次の6つのメリットがあるといえます。
- 審査のハードルが低い
- 借金を増やさない方法もある
- 決済期日を前倒しできる
- スピーディに資金調達できる
- オフバランス化につながる
- 資金調達手段を多様化できる
それぞれどのようなメリットがあるのか説明します。
審査のハードルが低い
債権流動化のメリットとして、銀行融資などよりも「審査」のハードルが低いことが挙げられます。
特に中小企業が銀行からお金を借りるときには、担保の差し入れや保証人などを求められることが一般的です。
しかし不動産など担保価値のある資産を所有していない場合や、保証人を付けることができない場合には融資を受けることができません。
その点、債権流動化のうち、ファクタリングなどはお金を借りる方法ではないため、審査でも売掛先の信用力が重視されるなど難易度は緩和されます。
銀行融資を受けることが難しい赤字決算や債務超過の企業でも、資金調達できる可能性は広がるでしょう。
借金を増やさない方法もある
債権流動化のメリットとして、「借金」を増やさない方法もあることが挙げられます。
たとえばファクタリングであれば、売掛金をファクタリング会社に売って現金化する方法であるため、商品券などを金券ショップで売る感覚で利用できます。
増えた手元の資金は負債ではなく、むしろ貸借対照表の肥大化を回避できる方法です。
決済期日を前倒しできる
債権流動化のメリットとして、本来の決済期日を「前倒し」できることが挙げられます。
決済日まで待てば取引先から代金が入金される場合でも、期日までの間に仕入れ代金や給与、借入金返済などに充てる資金が足らなくなることもあります。
このような場合でも、早期に決済日を前倒しした資金調達が可能となるため、資金繰りを改善させることができます。
スピーディに資金調達できる
債権流動化のメリットとして、銀行融資などよりも「スピーディ」に資金調達できることが挙げられます。
売掛債権担保融資は、銀行融資の1つであるためある程度審査も厳しく、スピーディに資金調達できるとは限りません。
手形割引も融資とみなされる手法ですが、数日中に資金調達できるでしょう。
最も早いのがファクタリングで、最短即日での資金調達が可能です。
オフバランス化につながる
債権流動化のメリットとして、貸借対照表上で資産や負債などの取引が記載されない「オフバランス化」につながることが挙げられます。
債権流動化による資金で借入金を返済すれば、資産と負債が同時に減少し、貸借対照表がスリム化されます。
負債が減少することは、企業資本の自己資本比率を増やし、会社の信頼度を高めることにもつながります。
さらに資産が減少することは、総資産利益率(ROA)を改善させ、少ない資産で多くの利益を得ることのできる企業として評価されます。
資金調達手段を多様化できる
債権流動化のメリットとして、銀行融資にとらわれず、資金調達手段を多様化できることが挙げられます。
資金調達方法の種類によっては、調達規模・コスト・手続などで様々な制限がある中、債権流動化においては譲渡債権のクレジットを活用した短期資金調達につながる方法です。
金融機関を過度に頼っている状況は、負債を増やし信頼度を低下させ、融資を得にくくする状況を作ることになりかねません。
中小企業は資金調達の方法を銀行融資に頼りがちといえる中で、資金調達の手段が増えることは、適切なタイミングでニーズに合った資金調達が可能となることを意味します。
債権流動化のデメリット
債権流動化による資金調達には様々なメリットがある反面、次の2つのデメリットには留意しておきましょう。
- 調達コストが高い
- 種類によって未回収リスクを負う
それぞれどのようなデメリットがあるのか説明します。
調達コストが高い
債権流動化のデメリットとして、資金調達コストが高めであることが挙げられます。
銀行融資で発生する利子は、契約条件によって異なるものの、年率1.5~3.0%程度を目安いとした金利で発生します。
それに対し、債権流動化の調達コストは、売掛債権の価値や契約方式によって変わるものの、以下の目安となっています。
売掛債権担保融資 | 年率1.0~15%程度 |
ファクタリング | 売掛金額面の1.0~20% |
手形割引 | 手形額面の 2.0~15% |
依頼業者などによっても幅があるため、まずは相見積もりを取得し、調達コストをできるだけ安く抑えることのできる業者を頼ったほうがよいでしょう。
ファクタリングでおすすめの会社とは?手数料が安く優良な業者の選び方
種類によって未回収リスクを負う
債権流動化のデメリットとして、選ぶ種類によって未回収リスクを負ってしまうことが挙げられます。
売掛債権担保融資と手形割引はお金を借りる方法であるため、資金調達後に決済されなければ利用者(債務者)が弁済義務を負います。
なお、ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に譲渡すると同時に、未回収リスクも移転されます。
そのため期日に売掛先から売掛金を回収できなくても、その責任を利用者が負うことはありません。
債権流動化の最適な選び方
債権流動化による資金調達においては、先に紹介した4つの種類の中から、資金ニーズに応じた方法を選択することが大切です。
そこで、次の資金ニーズに最適な債権流動化の種類をそれぞれ説明していきます。
- すぐにお金が必要な場合
- 時間に余裕がある場合
- 手形取引がある場合
すぐにお金が必要な場合
すぐにお金が必要であり、資金調達に時間をかけることができないのなら、ファクタリングまたは手形割引がおすすめです。
中小企業の場合、資金繰りにおいて期日までに必要な金額を準備しなければならないケースも少なくなりません。
売掛債権担保融資は手数料を安く抑えることはできても、銀行や信用保証協会による審査に時間がかかるため、一般的に2週間から1か月程度かかります。
しかし手形割引なら数日程度、ファクタリングなら最短即日での資金調達が可能です。
時間に余裕がある場合
資金調達する必要があるタイミングまで、ある程度時間に余裕があるのなら、売掛債権担保融資がおすすめです。
ファクタリングよりも手数料の安いため、調達コストを抑えた資金調達が可能となります。
銀行や信用保証協会の審査は時間もかかり、通常の借入れと同様の確認が行われるものの、その分利息などコストは下げることができます。
手形取引がある場合
取引先と手形取引があれば、手形割引を選択するとよいでしょう。
手形取引は、商品・サービスの提供の際に手形を受け取り、支払期日に送金された現金を受け取る流れになります。
手形割引は、融資とみなされるものの、売掛債権担保融より資金調達に時間がかかりません。
ただ、近年では手形取引が減少傾向にあるため、活用できる業種や建設業や製造業など一部に限定されています。
債権流動化はファクタリングがおすすめの理由
債権流動化は、保有する金銭債権を使った資金調達の方法です。
その中でも特に、個人事業主や中小企業が利用しやすいのが「ファクタリング」といえます。
ファクタリングがおすすめの理由として、具体的に次の4つが挙げられます。
- 最短即日入金される
- 貸し倒れリスクを切り離せる
- 借金が増えない
- オンラインとも相性がよい
それぞれ説明します。
債権流動化とファクタリングの違いは?メリットや種類をわかりやすく解説
最短即日入金される
債権流動化の手法のうち、ファクタリングがおすすめの理由として、最短即日入金されることが挙げられます。
その理由は、提出書類が簡素化されていることと、審査では売掛先の信用力が重視されることが挙げられます。
借入れの審査では、事業計画や財務状況など、様々な項目を細かくチェックするのに対し、ファクタリングの審査は買い取った売掛金が確実に現金化されるかが重要になります。
即日に売掛金を現金化できるなど、スピード感の高い資金調達が可能となるため、経営状態や財務状況に不安がある場合でも利用しやすいでしょう。
貸し倒れリスクを切り離せる
債権流動化の手法のうち、ファクタリングがおすすめの理由として、貸し倒れリスクを切り離せることが挙げられます。
ファクタリングで結ぶ契約は、買戻し権や償還請求権のない「ノンリコース契約」が一般的です。
そのため期日に売掛金が回収できなかった場合でも、その責任を利用者が負う必要はありません。
貸し倒れリスクの不安を抱えることなく、安心して資金調達することができます。
借金が増えない
債権流動化の手法のうち、ファクタリングがおすすめの理由として、借金が増えないことが挙げられます。
ファクタリングは売掛債権の売買で資金を調達する方法であるため、負債は増えません。
貸借対照表の肥大化を回避しつつ、オフバランス化による企業評価を向上も期待できる方法です。
オンラインとも相性がよい
債権流動化の手法のうち、ファクタリングがおすすめの理由として、オンラインとも相性が良いことが挙げられます。
近年、契約等においてオンライン上で手続を可能とするファクタリング会社も増えてきました。
売掛債権担保融資や手形割引は、銀行員や手形割引業者の担当者と対面で書類のやり取りや契約手続を進めることが必要です。
手間も時間もかかるのに対し、ファクタリングはオンラインで契約できるケースもあるため、窓口まで出向く手間や時間などを省くことができます。
まとめ
債権流動化による資金調達は、中小企業などが頼りがちな銀行からの借入れ以外の方法であり、調達方法の多様化にも役立つと考えられます。
不動産などを担保とする融資に依存しがちな環境は、過度に銀行を頼ることとなり、借金を増やし信用力も低下させます。
いずれ融資を受けることができない状況に追い込まれたとき、他の資金調達手段がなければ、手元の資金はショートし会社は倒産してしまうでしょう。
しかし、ファクタリングであれば、保有する売掛金があれば流動化させて資金を調達できます。
不動産など担保として差し入れる資産を持っていない企業や、赤字決算や債務超過、税金滞納で銀行融資の審査に通らない事業者でも活用しやすい債権流動化の方法です。
もしも資金調達の方法などで迷ったときなどは、債権流動化の手法のうちファクタリングを活用することをおすすめします。