代表取締役は株式会社を代表する最高責任者です。
法律上の役職として扱われていますが、他にも社長や取締役など呼称が異なるケースも見られます。
代表取締役は会社の指揮をとる役職であるのに対し、社長は法律上の役職ではないなど、違いはいろいろです。
そこで、代表取締役について、代表取締役社長や取締役との違いや役割・権限などわかりやすく解説していきます。
目次
代表取締役とは
「代表取締役」とは株式会社の代表者としての権限を有する取締役のことです。
会社法により、以下のとおり定義されています。
会社法第349条 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。 2.前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。 3.株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。 4.代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。 |
業務執行や契約締結の権限がある最高責任者ですが、代表取締役が会社の社長であるとは限らない点には注意が必要です。
代表取締役について、以下の5つを説明していきます。
- 役割
- 任期
- 人数
- 報酬
- 権限
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役割
代表取締役は、業務の執行や会社を代表する立場としての契約締結などの最高責任者としての「役割」を担います。
株主総会や取締役会で決まったことを執行する業務執行権を有するものの、会社の意思を独断で決定する権限はありません。
ただし事業計画・資金調達・営業活動など、取締役会から委任された事項の意思決定はできます。
そのため代表取締役は、以下の権限を実行することといえるでしょう。
- 代表権限
- 執行権限
- その他権限
それぞれ説明していきます。
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代表権限
代表取締役の行為は、会社の行為として認識される「代表権限」権を有します。
会社の代表として裁判に関する行為の実行に関する権限についても会社法に定められているため、訴訟の提起や訴訟代理人の選定なども可能です。
執行権限
取締役会設置会社の場合、代表取締役は会社の業務執行を担当します。
非取締役会設置会社では、原則、代表取締役を含む取締役が業務執を担当することになります。
以上のことから、代表取締役は業務を執行する「業務執行権」を有しており、株主総会や取締役会で決められた事項を執行します。
ただし代表取締役には会社の意思を決定する権限はないため、取締役会から委任された事項に対する意思決定に留まると理解しておきましょう。
その他権限
代表取締役は、他にも以下の業務における権限を有します。
- 株主総会や取締役の議事録
- 株主名簿の作成
- 財務諸表や事業報告書の作成・提出
- 株券への署名 など
ただしすべてを代表取締役が行うことは困難であるため、業務執行権の行使においては別途取締役を業務担当者として設置することが可能です。
任期
代表取締役に限らず、取締役の「任期」は原則2年です。
非公開会社の任期は最長10年とされており、同じ役員が継続して取締役を務めることも少なくありません。
この場合においても、10年に1度は役員変更登記を行うことが必要です。
人数
代表取締役の「人数」に特に決まりはありません。
会社法では取締役設置会社の取締役人数を3名以上と規定しています。
しかし代表取締役については、人数の規定がないため1名でも複数名でも問題ありません。
実際、大企業では機動的な会社経営や業務負担の軽減のため、複数の代表取締役を選定し、複数で業務執行を担当できる体制を構築しています。
ただし複数の代表取締役の間で意見の対立したときには、調整が困難になる恐れもあると理解しておくことが必要です。
報酬
代表取締役に限らず、取締役の「報酬」の総額は、会社法で定款もしくは株主総会の決議で決定し、個別の額については取締役会の決議で決定しされると規定されています。
報酬総額の決定権限は、取締役会に委譲されません。
取締役会で報酬総額を決定できてしまえば、本人たちが高額な報酬を設定する恐れがあるからです。
そのため報酬総額は株主総会の決議事項とされているものの、個別の額は取締役会で決定されます。
高額な報酬を設定されるリスクは完全に排除できないと考えられているため、2021年3月の会社法改正により、大会社における個別報酬は株式総会の決議で決定方針を定めることとされています。
代表取締役とその他役職名との違い
代表取締役とその他役職名は、会社法により定めの有無に違いがあります。
まず、代表取締役は会社法で定められているのに対し、会長・社長・CEOなどは会社法では定められていない一般的な呼称です。
そこで、代表取締役と以下の役職名との違いについて、それぞれ説明していきます。
- 会長との違い
- 代表取締役社長との違い
- 取締役との違い
- 執行役との違い
- CEOとの違い
会長との違い
「会長」は取締役会を統括する役職といえますが、会社法による定めのない一般的な呼称です。
一方で代表取締役は、対外的な権限を示す会社法上の役職とされていることに違いがあります。
会社経営における会長は、一般的に社長よりも立場が上の役職といった扱いです。
- 会社の方針・戦略の監督
- 外部との交渉
- 取締役会に対する報告・意見の提出
- 議決のまとめ役
など、経営戦略を決定する上で重要な役割を担う立場とされています。
そのため社長の役職を退いた方が就任する役職として設けられていることが多いといえるでしょう。
代表取締役社長との違い
「社長」も会社法による定めのない一般的な呼称であるのに対し、代表取締役は対外的な権限を示す会社法上の役職とされています。
「代表取締役社長」は、会社法上の役割である代表取締役と、一般的な呼称である社長を組み合わせた肩書です。
たとえば複数名の代表取締役が存在する場合には、序列や役割を区別するための肩書としているケースも見られます。
取締役との違い
「取締役」は、会社の業務執行に関する意思決定を担う役職であり、代表取締役は取締役の中から選定される役職です。
会社法により規定された会社における責任者であり、代表取締役は取締役の中から選定される役職といえます。
取締役が1名のみであれば、その取締役が代表取締役になります。
執行役との違い
「執行役」は、指名委員会等設置会社のみ取締役会で選任することとされている役職です。
会社法上の役員ではないものの、取締役会から委任されて取締役会の権限とされる業務執行の決定・執行を行います。
代表取締役は会社法上の役職であるのに対し、執行役員は会社法上における定義はなく、会社内での一般的な役職とされていることに違いがあります。
CEOとの違い
「CEO」も、会社法による定義のある役職ではなく一般呼称という扱いであるのに対し、代表取締役は会社法上で定められた会社の最高責任者であることに違いがあります。
アメリカの法律による肩書であるCEOは、「Chief Executive Officer」の頭文字の略称です。
日本では会長・社長などと同様に、法律で規定されている役職ではありません。
アメリカの法律では、CEOが最高経営責任者、COOを最高執行責任者として分けています。
しかし日本では、CEOとCOOの役割を1人が兼任するケースが多いといえるでしょう。
代表取締役の選定方法
代表取締役の選定方法は、以下のとおり取締役会の設置の有無により異なります。
- 取締役会設置会社
- 取締役会非設置会社
それぞれの代表取締役の選定方法について説明していきます。
取締役会設置会社
取締役会設置会社では、取締役会で代表取締役を選任します。
取締役会の設置においては、取締役3名以上・監査役または会計参与1名以上の、合計4名以上の役員が必要です。
取締役会非設置会社
取締役会未設置会社の場合、代表取締役は任意で選任します。
以下のいずれかの方法で、取締役の中から代表取締役を選びます。
- 定款に定める
- 定款の定めに基づく取締役を互選する
- 株主総会で決議する
代表取締役の欠格事由
代表取締役は取締役の中から選ぶことが必要とさえているため、取締役でなければ代表取締役にはなれません。
また、会社法により、以下の欠格事由に該当する場合には、取締役になることはできないとされています。
- 法人
- 成年被後見人または被保佐人
- 金融商品取引法・民事再生法・外国倒産処理手続の承認援助に関する法律・会社更生法・破産法における一定の罪を犯し刑に処せられ、執行後2年を経過していない者
- 上記以外の法令違反で禁錮以上の刑に処せられ、執行が終わっていない者(執行猶予中以外)
なお、代表取締役や取締役は、年齢に関する制限はないため、未成年者なども代表取締役になることはできます。
しかし法人登記の印鑑登録は15歳未満では不可とされているため、代表取締役になれる年齢は15歳以上と考えられるでしょう。
まとめ
代表取締役は会社法で定められている株式会社における最高責任者です。
取締役会を設置していない会社では、代表取締役の選任は任意とされています。
ただし対外的に誰が代表者なのか明確にするため、代表取締役を選んでいるケースもあるといえるでしょう。
取締役の中から選ぶことが必要とされているため、取締役が1人の会社はその役員が代表取締役になります。
代表取締役と代表取締役社長やその他の役職との違いや役割・権限などを理解した上で、役職の設定や名刺などへの記載をしてください。