リース会計基準とはリース取引や会計所における基準ですが、改正されることが見込まれています。
ただしリース会計基準の改正はあくまでも予定であり、具体的な時期などが明確に決まっているわけではありません。
2026年や2027年改正が濃厚とされるリース会計基準ですが、いずれにしても数年先の変更について、準備しておく必要があります。
そこで、リース会計基準について、予定されている2027年改正における変更点や必要な準備を解説していきます。
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目次
リース会計基準とは
「リース会計基準」とは、ファイナンスリースやオペレーティングリースなどのリース取引や、会計処理に関して定めた基準です。
リース期間中に契約解除できないリースをファイナンスリースといいますが、分かりやすく説明すると、借手がリース物件の取得価格や諸経費のほぼ全額をリース料として負担するリースといえます。
それに対しオペレーティングリースとは、ファイナンスリースに含まれないリース取引です。
リース取引の種類 | 概要 |
ファイナンスリース(所有権移転) | ・リース期間中に契約解除できない ・リース契約のコストは借主がリース料として負担する(フルペイアウト) ・所有権が借手へ移転すると認められる |
ファイナンスリース(所有権移転外) | ・所有権移転のファイナンスリースに含まれないファイナンスリース取引 |
オペレーティングリース | ・ファイナンスリースに含まれないリース取引 |
上記のリース取引の会計処理を行うときのルールとされるのがリース会計基準です。
リース会計基準が見直しされるきっかけとなったのは、国際会計基準審議会が国際的なルールを定めた財務報告基準の「IFRS」とされています。
日本では、これまで国際基準と異なる独自ルールでの基準を採用してきました。
しかし、商取引のグローバル化が進み、国内での独自ルールでは対応しにくい環境となり、国際的な基準に近づけることが必要になったといえます。
そこで、リース取引を含むさまざまな会計処理に関して、国際的なルールを定めた財務報告基準といえるIFRSを目安とした会計基準の見直しが検討されるようになりました。
新リース会計基準とは
従来までの日本独自のルールではなく、国際的な基準に近づけた新しい基準が「新リース会計基準」です。
新リース会計基準への見直しと改正は、明確にいつからなのか確定していません。
当初は企業や個人から案に関するコメントを募集した結果を反映させ、最終化を進めて2026年度改正が予定されていました。
しかし今回の改正は企業によって実務に与える影響が大きいと想定されるため、準備期間を最低3年は設けることが必要という意見もあり、2027年度以降になるともされているようです。
適用される時期
日本の会計基準を決めている企業会計基準委員会(ASBJ)は、新リース会計基準の適用時期に関して、2027年度以降になる見通しとしています。
リース取引は、たとえば店舗などを借りて使用することであり、資産と負債に計上することを求める内容で当初は2026年度から適用することを見込んでいました。
しかし小売業などは新たなリース基準の採用における影響が大きいため、異論が噴出したことで2024年3月までに基準づくりを終える目途が立たなくなったようです。
そもそもリース取引は、資産を所有せずに不動産や設備などを使用できることがメリットといえます。
ただ、新リース会計基準では、原則、すべてのリース取引に関して貸借対照表に計上することを柱としています。
投資家が企業経営の実態を正確に把握しやすくすることを狙いとしており、すでにIFRSや米国会計基準では計上を義務づけているため、不動産の賃貸借取引なども対象に含まれる予定です。
現在、日本の会計基準を採用している3000社を超える上場企業も対象となるため、新リース会計基準により約1400社以上で総資産が増加することが見込まれています。
そのため店舗をリースで利用している小売業などは、新リース会計基準によりリース取引の貸借対照表への計上で資産と負債が急激に膨らみ、総資産利益率(ROA)など財務指標が悪化することを懸念しています。
基準改正の理由
そもそも従来までのリース会計基準が改正される一番の目的として、IFRSなど国際的な会計基準と日本の会計基準では、差が生じていることが挙げられます。
それにより、海外投資家やアナリストが日本の決算書を見たとき、正しい分析ができず投資判断に悪影響を与えています。
海外の投資家が投資しにくい環境を改善させるためにも、アメリカなどの採用している国際的な基準にあわせて、新たな会計基準を取り入れる動きが高まったといえるでしょう。
なお、従来までも日本独自の会計基準は、海外の会計基準の大きな変動に合わせて改正される動きがあったため、新たな会計基準の導入で今後の見直しにおいてもスムーズな対応になるとも考えられます。
改正部分と変更ポイント
新リース会計基準の改正部分と重要な変更ポイントは、オペレーティングリース取引の対象物を資産として計上し、リース料は負債として計上することです。
現在のリース会計基準では、オペレーティングリース取引の対象物は賃貸料、リース料はリース料で計上します。
しかし新リース会計基準が採用されると、賃貸借契約やリース契約を使用権資産、リース債務として貸借対照表に計上しなければなりません。
すべてのリース契約が資産・負債への計上が必要というわけではなく、以下に該当する重要性に乏しいとされる取引は、これまでどおり賃借料やリース料で計上してもよいとされています。
- 事業内容と照らしたときに重要性が乏しく、リース契約1件あたりのリース料が300万円以下の取引
- リース対象資産の価値が新品のおおよそ5000米ドル以下の取引
この場合、従来までのリース会計基準か、新リース会計基準のいずれかを選択し、採用した基準を使い続けることが必要です。
資産と負債を計上するときにもさまざまな変数があり、変数の更新による会計処理も必要となるため注意してください。
リース会計基準改正による影響
リース会計基準改正により、新リース会計基準が採用されることで特に影響が大きいのは、本社・支社・営業所・店舗など賃借で利用しているケースです。
賃借料で費用計上すれば問題なかった取引も、リース会計基準の改正後は、固定資産と負債に計上しなければなりません。
リース会計基準が改正されるのは、国際基準との整合性を図ることを目的としています。
ビジネスの国際化が進み、海外との協調性を保つことが求められる時代となったため、会計基準においても独自の物差しで判断することが難しくなったといえます。
日本企業の財務諸表評価も国内だけでなく、海外とも共通の物差しで判断できる環境にすることが必要になったと考えられるでしょう。
しかし、リース取引を賃貸借取引として処理してきた日本では、資産や負債へ計上しなければならないことへの変更で、事務的負担が重くなると予想されます。
決算のときにも、従来までは必要のなかった開示書類を作成しなければなりません。
さらに改正による影響は、会計・経理部門だけにとどまらず、資産や負債が増えることによる自己資本比率の低下で、企業価値や金融機関の与信などに影響を及ぼす可能性もあります。
そのため新リース会計基準が適用される前に、膨大な作業の準備を検討しなければならないと留意しておきましょう。
改正までに必要な準備
2026年度または2027年度のいずれかに新リース会計基準が採用される可能性が高いといえます。
具体的にいつ改正されるのか決まってはいないものの、いずれにしてもあと数年の間に適用されることを見込み、事前の準備が必要です。
特に経理処理の負担が重くなることを前提とした対応が必要といえますが、次の3つに関する準備を進めておきましょう。
- 現状の把握
- 影響の分析
- 方針の検討
それぞれどのような準備が必要なのか説明していきます。
現状の把握
リース会計基準の改正に向けて、まずできることは現状を把握することです。
新リース会計基準が採用されれば、原則、すべてのリース取引を貸借対照表の資産・負債として計上する会計処理に統一されます。
不動産賃貸借取引などもリース取引と見なされる可能性があるため、既存の取引で対象になる可能性がある契約などを洗い出し、リストアップしておくとよいでしょう。
影響の分析
リース会計基準の改正に向けて、オンバランスによる会計処理の対象が必要となったとき、経理処理に及ぶ影響も分析しておきましょう。
新リース会計基準の採用後は、リース取引に関する会計処理が複雑化することが予想されます。
仕訳の方法も現状の3~4倍へ増えることが想定されるため、経理担当者の処理能力が不足している場合、会計処理能力の高い人員を新たに採用する必要が出てくる可能性もあります。
方針の検討
リース会計基準の改正に向けて、現状把握とどの程度の影響があるのか分析をした結果をもとにして、今後の方針も検討しておきましょう。
現在の業務の流れや人員では、対応できない可能性もあります。
キャパシティを超えることが予想される場合、業務の振り分けや新規の人員採用等、何らかの策を講じておくことが必要です。
主に検討しておきたい対策として、次の4つが挙げられます。
- 人員の増強
- 業務の見直し
- システムの導入
- トライアル期間の設定
新リース会計基準の適用後に慌てることのないように段階的な準備が必要となるため、それぞれ何をするべきか確認しておきましょう。
人員の増強
リース会計基準の改正によって、現場がキャパシティを超えると予想される場合、人員の増強を検討しましょう。
会計処理の知識や経験の豊富な人員を採用することや、派遣社員の投入など、経理担当の作業が増えたときに対応できる環境を整備しておくことが必要です。
業務の見直し
リース会計基準の改正によって、現場がキャパシティを超えると予想される場合、業務設計を見直すようにしましょう。
経理担当者が1件ずつ入力していた伝票処理などは、クラウド会計ソフトなど導入すると業務を効率化できます。
そもそも業務設計が整備されていなければ、どれほど優秀な人材を採用しても、対応しきれなくなるおそれがあります。
業務フローを見直すことで、ヒューマンエラー防止にもつなげることができるでしょう。
システムの導入
リース会計基準の改正によって、現場がキャパシティを超えると予想される場合、システムの導入についても検討しましょう。
必要な機能や業務フローに適したオペレーションを可能とするツールを選ぶことが必要となるため、新リース会計基準に適した業務設計の構築と設計実現を可能とするシステム選定が基本となります。
システムを決めたら見積もりや導入におけるスケジュールを決定し、実際に新リース会計基準が採用される前に、操作などにも慣れておくことも必要です。
トライアル期間の設定
リース会計基準の改正による現場のキャパシティを超える対策としてシステムを導入するのなら、一定のトライアル期間を設けましょう。
実際に現場の経理担当者がオペレーションに慣れ、支障なく業務ができるようになるまで、一定の期間が必要です。
使い慣れていない状態では、新リース会計基準を採用した後、多くのトラブルを発生させてしまうことになりかねません。
従来までのシステムと異なる新システムの導入は、経理担当者にとっても負担になります。
そのためトライアル期間を設け、経理担当者の意見を吸い上げつつ、業務をしやすい環境へと見直し・整備することが必要といえるでしょう。
実際に新リース会計基準が採用された後に向けたトレーニングを重ね、必要に応じて業務マニュアルなどの策定や改訂も検討しましょう。
まとめ
リース会計基準は国際的な会計基準であるIFRSに即したものへと変更されることが予定されています。
これまで独自の会計基準を採用してきた日本でも、国際的な基準にルール変更することに関しては、長年に渡り議論が重ねられてきました。
国際化が進む社会やビジネスにおいて、新リース会計基準への移行は避けられないことともいえるでしょう。
ただし新リース会計基準が採用されることで、現場の経理担当者の負担は大きくなることも予想されます。
経理処理の大幅な負担増が懸念される事案ともいえるため、将来的な移行を想定した準備を早めに進めておくことも必要です。