リース会計基準とは?2027年改正における変更点や必要な準備を解説

リース会計基準とはリース取引や会計所における基準は、改正が予定されています。

そのため2027年に新たに適用されるリース会計基準に向けた準備も必要です。

そこで、リース会計基準について、2027年改正における変更点や必要な準備を解説します。

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リース会計基準とは

「リース会計基準」とは、ファイナンスリースやオペレーティングリースなどのリース取引や、会計処理に関して定めた基準です。

リース期間中に契約解除できないリースがファイナンスリースといえます。

借手が、リース物件の取得価格や諸経費のほぼ全額を、リース料として負担します。

それに対しオペレーティングリースは、ファイナンスリースに含まれないリース取引です。

リース取引の種類 概要
ファイナンスリース(所有権移転)
  • リース期間中に契約解除できない
  • リース契約のコストは借主がリース料として負担する(フルペイアウト)
  • 所有権が借手へ移転すると認められる
ファイナンスリース(所有権移転外)
  • 所有権移転のファイナンスリースに含まれないファイナンスリース取引
オペレーティングリース
  • ファイナンスリースに含まれないリース取引

上記のリース取引の会計処理を行うときのルールとされるのがリース会計基準です。

リース会計基準が見直しされるきっかけとなったのは、国際会計基準審議会が国際的なルールを定めた財務報告基準の「IFRS」とされています。

日本では、これまで国際基準と異なる独自ルールでの基準を採用してきました。

しかし、商取引のグローバル化が進み、国内での独自ルールでは対応しにくい環境となり、国際的な基準に近づけることが必要になったといえます。

そこで、リース取引を含むさまざまな会計処理に関して、国際的ルールを定めた財務報告基準といえるIFRSを目安に会計基準の見直しが検討されるようになりました。

新リース会計基準とは

従来までの日本独自のルールではなく、国際的な基準に近づけた新しい基準が「新リース会計基準」です。

2027年4月1日以降の事業年度から、新リース会計基準の適用が開始されます。

適用される時期

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2024年9月13日に、2027年4月1日以降の事業年度から新リース会計基準の適用開始を公表しました。

既存のリース契約の全体像を把握し、財務諸表への影響額を試算することが必要です。

新リース会計基準では、原則、すべてのリース取引に関して貸借対照表に計上することを柱としています。

投資家が企業経営の実態を正確に把握しやすくすることを狙いとしており、約1400社以上で総資産が増加することが見込まれます。

リース店舗利用の小売業などは、新リース会計基準によるリース取引の貸借対照表への計上で資産と負債が急激に膨らみ、総資産利益率(ROA)を悪化させる恐れがあります。

基準改正の理由

リース会計基準が改正される理由は、IFRSなど国際的な会計基準と日本の会計基準では、差が生じているからです。

それにより、海外投資家やアナリストが日本の決算書を見たとき、正しい分析ができず投資判断に悪影響を与えています。

海外の投資家の投資環境を改善させるために、アメリカなどの採用している国際的な基準にあわせた新会計基準導入の動きが高まったといえます。

改正部分と変更ポイント

新リース会計基準の改正部分と重要な変更ポイントは、オペレーティングリース取引の対象物を資産として計上し、リース料は負債として計上することです。

現在のリース会計基準では、オペレーティングリース取引の対象物は賃貸料、リース料はリース料で計上します。

しかし新リース会計基準が採用されると、賃貸借契約やリース契約を使用権資産、リース債務として貸借対照表に計上しなければなりません。

すべてのリース契約が資産・負債への計上が必要というわけではなく、以下に該当する重要性に乏しい取引は、従来どおり賃借料やリース料で計上できます。

  • 事業内容と照らしたときに重要性が乏しく、リース契約1件あたりのリース料が300万円以下の取引
  • リース対象資産の価値が新品のおおよそ5000米ドル以下の取引

この場合、従来までのリース会計基準か、新リース会計基準のいずれかを選択し、採用した基準を使い続けることが必要です。

資産と負債を計上するときにもさまざまな変数があり、変数の更新による会計処理も必要となるため注意してください。

リース会計基準改正による影響

リース会計基準改正により、新リース会計基準が採用されることで特に影響が大きいのは、本社・支社・営業所・店舗など賃借で利用しているケースです。

賃借料で費用計上すれば問題なかった取引も、リース会計基準の改正後は、固定資産と負債に計上しなければなりません。

リース会計基準が改正されるのは、国際基準との整合性を図ることを目的としています。

ビジネスの国際化が進み、海外との協調性を保つことが求められる時代となったため、会計基準も独自の物差しでの判断が難しくなりました。

日本企業の財務諸表評価も国内だけでなく、海外とも共通の物差しで判断できる環境にすることが必要になったと考えられます。

資産や負債へ計上しなければならないことへの変更で、事務的負担が重くなると予想されます。

決算においても、従来までは必要のなかった開示書類を作成しなければなりません。

改正による影響は会計・経理部門だけにとどまらず、自己資本比率の低下が企業価値や金融機関の与信に影響するとも考えられます。

新リース会計基準が適用される前に、膨大な作業の準備を検討しましょう。

改正までに必要な準備

新リース基準の適用までに、次の3つに関する準備を進めておきましょう。

  1. 現状の把握
  2. 影響の分析
  3. 方針の検討

それぞれ説明していきます。

現状の把握

新リース会計基準が採用されれば、原則、すべてのリース取引を貸借対照表の資産・負債として計上する会計処理に統一されます。

既存の取引で対象になる可能性がある契約などを洗い出し、リストアップしておきましょう。

影響の分析

リース会計基準の改正に向けて、オンバランスによる会計処理の対象が必要となったとき、経理処理に及ぶ影響も分析しましょう。

新リース会計基準の採用後は、リース取引に関する会計処理が複雑化することが予想されます。

仕訳の方法も現状の3~4倍へ増えることが想定されるため、経理担当者の処理能力が不足している場合、会計処理能力の高い人員の採用も必要になります。

方針の検討

リース会計基準の改正に向けて、現状把握とどの程度の影響があるのか分析をした結果をもとにして、今後の方針も検討しましょう。

現在の業務の流れや人員では、対応できない可能性もあります。

キャパシティを超えることが予想される場合、業務の振り分けや新規の人員採用等、以下の策を講じておくことが必要です。

  1. 人員の増強
  2. 業務の見直し
  3. システムの導入
  4. トライアル期間の設定

それぞれ説明します。

人員の増強

リース会計基準の改正によって、現場がキャパシティを超えると予想される場合、人員の増強を検討しましょう。

会計処理の知識や経験の豊富な人員を採用することや、派遣社員の投入など、作業が増えたときに対応できる環境の整備が必要です。

業務の見直し

リース会計基準の改正によって、現場がキャパシティを超えると予想される場合、業務設計を見直すようにしましょう。

経理担当者が1件ずつ入力していた伝票処理などは、クラウド会計ソフトなど導入すると業務を効率化できます。

そもそも業務設計が整備されていなければ、どれほど優秀な人材を採用しても、対応しきれません。

業務フローを見直すことで、ヒューマンエラー防止にもつなげることができます。

システムの導入

リース会計基準の改正によって、現場がキャパシティを超えると予想される場合、システムの導入についても検討しましょう。

必要な機能や業務フローに適したオペレーションを可能とするツールを選ぶことが必要です。

新リース会計基準に適した業務設計の構築と、設計実現を可能とするシステム選定が基本となります。

システムを決めたら見積もりや導入におけるスケジュールを決定し、操作などにも慣れておくことが必要です。

トライアル期間の設定

リース会計基準の改正による現場のキャパシティを超える対策としてシステムを導入するのなら、一定のトライアル期間を設けましょう。

実際に現場の経理担当者がオペレーションに慣れ、支障なく業務ができるようになるまで、一定の期間が必要です。

使い慣れていない状態では、新リース会計基準を採用した後、多くのトラブルを発生させてしまうことになりかねません。

従来までのシステムと異なる新システムの導入は、経理担当者にとっても負担になります。

そのためトライアル期間を設け、経理担当者の意見を吸い上げつつ、業務をしやすい環境へと見直し・整備することが必要です。

実際に新リース会計基準が採用された後に向けたトレーニングを重ね、必要に応じて業務マニュアルなどの策定や改訂も検討しましょう。

まとめ

リース会計基準は国際的な会計基準であるIFRSに即したものへと変更されることが予定されています。

国際化が進む社会やビジネスにおいて、新リース会計基準への移行は避けられないことともいえるでしょう。

ただし新リース会計基準が採用されることで、現場の経理担当者の負担は大きくなることも予想されます。

経理処理の大幅な負担増が懸念される事案ともいえるため、将来的な移行を想定した準備を早めに進めておくことも必要です。

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