回収サイトとは?長さの目安や短期化する方法をわかりやすく解説

回収サイトとは、未入金の売上代金が実際に手元に入金されるまでの期間です。

商品やサービスを掛取引で販売し、売上を計上したことで発生した売掛金を回収するまでの長さをあらわします。

そのため回収サイトが長期化すると、手元の現金が増えずに資金繰りが悪化してしまいます。

そこで、回収サイトについて、長さの目安や短期化する方法をわかりやすく解説していきます。

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売掛金の回収サイトとは?企業経営に及ぼす影響と適切なサイトの決め方

回収サイトとは

「回収サイト」とは、商品を納品またはサービスを提供したことによる代金が支払われるまでの期間です。

「サイト」とは「sight」のことであり、「決済期限」を意味しています。

たとえば「回収サイト90日」という場合には、商品を販売した代金が入金されるのは90日後になります。

回収サイトに関する理解を深めるため、次の4つを解説していきます。

  1. 一般的な長さ
  2. 計算方法
  3. 業界ごとの目安
  4. 支払いサイトとの違い

一般的な長さ

回収サイトの一般的な長さは、主に次の2つです。

  1. 30日サイト
  2. 60日サイト

それぞれの回収サイトについて説明していきます。

請求書が月末締め翌月末払いが一般的?メリットのある支払いサイトの設定を

30日サイト

「30日サイト」では、月末締め・翌月未払いで支払いが行われます。

最も代表的といえるサイトであり、月末に1か月分の売上をまとめた請求書を発行し、翌月末までに入金してもらいます。

60日サイト

「60日サイト」では、月末締め・翌々月末払いで支払いが行われます。

月末に1か月分の売上をまとめた請求書を発行し、翌々月末までに入金してもらう流れです。

60日サイトでは最大3か月は売上代金が入金されないため、売り手側の資金繰りに余裕がないときなど、資金繰り悪化による資金ショートが懸念されます。

反対に代金を支払う買い手側は、資金準備に余裕を持つことができるため、資金繰りが安定しやすいといえます。

計算方法

回収サイトは、以下の計算式で算出できます。

回転月数=売掛債権(受取手形・売掛金)÷平均月商

平均月商とは、損益計算書の売上高を12か月で割って計算した、1か月の平均売上です。

業界ごとの目安

売掛金の回収サイトは、業界などで以下のとおり、適切といえる目安が異なります。

  • 建設業 3.5か月
  • 卸売業 2.4か月
  • 小売業 0.9か月
  • 介護業 2.5か月

業界ごとに慣習などルールに違いがあるため、たとえば建設業は3.5か月が目安となっているものの、半年や1年という回収サイトの場合もあります。

しかし介護業の場合、どの介護サービス事業者でも回収サイトは2.5か月です。

これは、提供した介護サービスに対する介護報酬を、国民健康保険団体連合会(国保連)に請求してから入金されるまでの長さがおおよそ2.5か月だからといえます。

介護業のように回収サイトが一定している業界を除いて、取引先との取り決めで入金までの長さは決まります。

新規で契約を結ぶ当初の取り決めが重要であり、回収サイトを長くし過ぎないように注意が必要といえるでしょう。

支払いサイトとの違い

回収サイトではなく、「支払サイト」という言葉は、買い手側から見た売上代金を支払うまでの長さです。

回収サイトは売掛債権を回収するまでの期間であるのに対し、支払いサイトは買掛債務を支払うまで猶予されている期間といえます。

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理想的な回収サイト

回収サイトが長期化すると、手元の現金が増えにくくなるため資金繰りは悪化します。

しかし代金を支払う側にとっては、できるだけ長く設定されているほうが支払いを先延ばしにできるため資金繰りが安定するでしょう。

そこで、次の2つの理想的な回収サイトをそれぞれ説明していきます。

  1. 売り手側
  2. 買い手側

売り手側

売り手側にとって理想的な回収サイトは、15~30日が目安といえます。

商品やサービスを販売した後に発生する売掛金は、回収しなければ債権のままであり、利益も確定させることができません。

そのためできる限り短い回収サイトが望ましいため、15〜30日を目安に設定することが望ましいといえるでしょう。

買い手側

買い手側にとって理想的な支払いサイト(回収サイト)は、60日以内での設定といえます。

購入した商品やサービスの代金の支払いは、できるだけ長く引き延ばすことで、余裕を持って支払い準備できます。

手元の資金を長く残しつつ、支払いに充てる資金の準備をしやすくなるため、資金繰りも安定します。

なお、下請代金支払遅延等防止法では、下請代金の支払い期日は60日以内に定めなければならないとされています。

親事業者の不公正な取引を規制し、下請事業者の利益を保護するための法律であるため、下請代金については60日以内で支払いサイトを決めることが必要です。

回収サイトを短くするメリット

回収サイトは、商品を販売後に代金が入金されるまでの長さであるため、短くすることで次の2つのメリットがあるといえます。

  1. 資金繰りが安定する
  2. 売上拡大につながる

それぞれのメリットについて説明します。

資金繰りが安定する

回収サイトを短くするメリットは、資金繰りが安定することです。

売掛金を回収するまでの期間が短くなれば手元の資金に余裕ができるため、毎月の固定費の支払い以外にも、急な出費にも対応しやすくなります。

売上拡大につながる

回収サイトを短くすることで、売上拡大につながるといったメリットもあります。

早く手元に資金が入る流れをつくることで、仕入を増やしたり宣伝費に充てたりなど攻めの経営ができるようになり、売上も拡大しやすくなると考えられます。

回収サイトを短くするデメリット

回収サイトを短くすることで手元の現金が増えるまでの時間が早くなるため、資金繰りが安定することはメリットです。

しかし次の2つのデメリットには留意しておきましょう。

  1. 迅速な事務作業が必要
  2. 取引単価や量が不利になる

それぞれのデメリットについて説明していきます。

迅速な事務作業が必要

回収サイトが短くなると、請求書を発行するまでの期間も短縮されるなど、迅速な事務作業を求められることはデメリットです。

万一請求書を取引先に渡し忘れてしまえば、翌月の処理に回されてしまい、本来の期日に売掛金が入金されなくなる可能性もあります。

回収サイトを短くする場合には、迅速な事務処理に対応できる準備も必要といえます。

取引単価や量が不利になる

回収サイトが短くなると、不利な取引単価や取引量で契約しなければならない可能性があります。

早めの回収サイトを希望すれば、買い手側は買掛債務を早期で支払わなければなりません。

そのため、短期の回収サイトを設定する代わりに、取引単価や取引量については、買い手側の有利な条件で契約することなどが求められます。

回収サイトを長くするメリット

回収サイトを長くするメリットは、有利な条件で契約する交渉の材料にできることです。

本来、売掛金を回収するまでの期間は、短いほうが安心といえます。

しかし買い手側には有利となる回収サイトの長期設定の代わりに、取引単価の上乗せや取引量の増加などを交渉し、公平な契約を結ぶことも必要です。

なお、一度取り決めた回収サイトは、後で変更しにくいといえます。

取引単価や取引量などの条件は希望どおりでも、回収サイトを長くし過ぎてしまうと、資金ショートするリスクを高めます。

無理のない範囲で交渉し、双方納得のもとで契約するようにしてください。

回収サイトを長くするデメリット

回収サイトを長くすれば、手元の現金が増えるまで時間がかかるため、次の2つのデメリットに注意が必要になります。

  1. 資金繰りが悪化する
  2. 黒字倒産リスクが高まる

それぞれのデメリットについて説明していきます。

資金繰りが悪化する

回収サイトを長めに設定することで、資金繰りは悪化しやすくなります。

売掛金が入金されるまでの期間が回収サイトであるため、長く設定されれば手元の現金が増えにくくなってしまうでしょう。

余裕資金のある状態でなければ、別途、資金調達が必要になるなど工面に困る可能性もあります。

回収サイトを長くすればするほど、キャッシュフローは悪化し、資金ショートによる倒産リスクは高くなると留意しておくべきです。

黒字倒産リスクが高まる

回収サイトを長めに設定すると、黒字倒産のリスクが高くなるといえます。

売掛金が入金されるまでの期間が長くなれば、資金ショートによる倒産リスクは高まります。

倒産するリスクは、たとえ利益が出ている黒字のときでも同じです。

売上は先に計上され、業績は右肩上がりで利益も出ていても、手元にお金がなければ支払いができずに倒産してしまいます。

固定費や仕入れ代金の支払いや、借入金の返済は、すべて売掛金が入金される前に行う必要があります。

長く設定された回収サイトにより、お金が入らない状態が長期化すれば、支払いばかりが重なるため黒字倒産リスクは上がることになるでしょう。

回収サイトを短期化する方法

回収サイトはできるだけ短いほうが、資金繰りが安定しやすくなります。

そこで、回収サイトを短期化するために、次の3つの方法を検討しましょう。

  1. 売掛先と交渉する
  2. 手形割引を利用する
  3. ファクタリングを活用する

それぞれどのような方法か説明していきます。

売掛先と交渉する

回収サイトを短期化するためには、売掛先との交渉が必要です。

ただし、取引締結後の申し出になるため、単なる持ちかけでは承諾を得られない可能性があります。

互いに納得できる契約の見直しが必要となるため、取引単価や取引量など、売掛先が納得してくれる条件のもとで回収サイトを短くできないか交渉してみましょう。

なお、売掛先に回収サイトを短くしてほしいと申し出ることで、資金繰り悪化などを懸念される可能性はあります。

この場合、ファクタリングであれば売掛先に知られることなく、回収サイトを短期化できるため、検討してみることをおすすめします。

ファクタリングについては、後で詳しく説明していきます。

ファクタリングの利用方法とは?仕組みと注意点について簡単に解説

手形割引を利用する

回収サイトを短期化する方法として、手形取引が挙げられます。

手形は、本来であれば記載された期日にならなければ現金化されず、入金まで数か月待たなければなりません。

しかし手形割引なら、保有する手形を支払期日前に手形割引専門業者などに売却することで現金化できます。

便利なサービスである反面、実質融資とみなされることや、手数料を差し引かれます。

手形額面の満額は受け取ることができないなど、理解した上で活用することが必要です。

ファクタリングと手形割引の違いは?それぞれの活用メリットを徹底解説

ファクタリングを活用する

回収サイトを短期化する方法として、ファクタリングが挙げられます。

ファクタリングとは、保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、現金化するサービスです。

売掛金を前倒しで現金に換えることができるため、回収サイトが長期化している債権を早く回収したいときに適しています。

手形割引と似た手法であるものの、ファクタリングは融資ではありません。

売掛金を現金化した後で売掛先が倒産しても、債権の貸し倒れに対する責任はファクタリング会社が負うからです。

審査でも売掛金の信用力が重視されるため、ファクタリング会社で実施する審査の仕組みをうまく利用することで、売掛先の与信管理に活用することもできます。

ファクタリングとは?仕組み・手数料・違法性についてわかりやすく図解

まとめ

回収サイトとは、売掛金が入金されるまでの期間の長さです。

商品やサービスを販売した後、入金されるまで長い時間がかかれば、手元の現金が増えにくく資金ショートするリスクが高まります。

回収サイトによって資金繰りは大きく左右されることになるため、できるだけ短く設定したほうが余裕を持った経営をできるようになるといえます。

しかし買い手側である売掛先にとっては、買掛債務を支払うまでの期間が短くなることで、急いで資金準備しなければならないなど好ましい状態といえなくなります。

そのため回収サイトの短期化を売掛先に交渉する際には、相手にとって有利な取引となる条件を代わりに提示するなど、双方納得できる契約の見直しを検討しましょう。

なお、売掛先に交渉しなくても、ファクタリングを利用すれば回収サイトを短期化できます。

手元の資金を不足させないためにも、ファクタリングもうまく活用した資金繰りをおすすめします。