固定資産税は経費にできる?計上可能な租税公課の種類と仕訳方法を解説

固定資産税は土地や建物など所有していれば納める必要がありますが、事業用の資産であれば経費として計上できます。

他にも租税公課と呼ばれる費用の中には、固定資産税以外にも経費として計上できる支払いがたくさんあります。

そこで、固定資産税など経費として計上できる租税公課の種類と、仕訳処理の方法について解説していきます。

固定資産税とは

 

「固定資産税」とは、土地や建物など固定資産を所有しているとき課される税金です。

不動産以外にも、10万円以上の備品や機器も固定資産に含まれるため、取得原価20万円未満で3年一括償却した資産以外は固定資産税を納める必要があります。

ただし土地や建物など不動産は「固定資産税」、不動産以外の備品や設備などは「償却資産税」と呼び方が異なります。

土地や建物に対する固定資産税と区別するために呼び方を分けているものの、償却資産税も固定資産税と同じです。

固定資産税について、さらに詳しく次の2つを解説していきます。

  1. 納税の時期
  2. 申告の有無

納税の時期

固定資産税は、毎年4月上旬に納税通知書が送付され、決められた税額を次の4回などで分けて支払います。

  • 4月・9月・12月・翌年2月
  • 4月・7月・9月・翌年1月

自治体によって、それぞれの期日は異なります。

なお、1年分をまとめて一括納付することもできます。

申告の有無

固定資産税は、納税義務者本人が税務署などに出向いて申告する所得税などと異なり、申告は不要です。

土地や建物を所有したときに所有権の登記を済ませているため、その情報から誰が不動産など所有しているのか自治体が把握できています。

そのため、自治体ごとで設定された固定資産税評価額(課税標準額)に対して適用される所定の税率で税額が決まり、その内容が1月1日現在の所有者に通知されるという仕組みです。

ただし設備や備品などに対する償却資産税は、自治体で所有の有無を確認できないため、申告が必要となっています。

固定資産の取得や売却は投資キャッシュフローで確認を

経費とは

「経費」とは、事業を行う上でかかる費用です。

個人事業主や法人などが事業を営むため支払った費用であり、所得税法上では「必要経費」と呼ばれます。

個人事業主と法人のどちらの場合でも、土地や建物、備品や設備などの固定資産を事業で使用していれば、それらの固定資産に対する固定資産税は経費として計上できます。

個人事業主で自宅を事務所として兼用している場合は、納めた固定資産税の全額ではなく、事業用と自宅用のそれぞれで使用している割合で按分し、事業分のみを経費として扱うことが可能です。

たとえば床面積で事業用部分の割合から計算する方法と、自宅で事業を営む日数や時間で計算する方法などがあります。

固定資産税に限らず、プライベート分と事業分が混在している経費については、合理的な基準によって分ける「家事按分」により計算するようにしてください。

租税公課とは

「租税公課」とは、次の2つの公的負担金を合わせた「勘定科目」です。

  • 租税(国に治める国税や地方公共団体に納める地方税などの税金)
  • 公課(国や地方公共団体に支払う手数料・罰金・会費など税金以外の負担金)

固定資産税も租税公課の1つであり、事業用資産に対する税金であれば、経費として計上できます。

ただし租税公課は、すべてが経費として計上できるわけではなく、中には経費として認められないものがあるため注意が必要です。

経費計上できる租税公課の種類

租税公課として扱われる費用の中には、経費として計上できない税金や公的負担金があります。

たとえば所得税・法人税・贈与税・都道府県民税・市町村税などは租税ではあるものの、租税公課の勘定科目で書類する費用には含まれません。

法律違反したときや税金を滞納したときに支払う加算税・加算金・延滞税・罰金なども、租税公課には含まれない費用です。

経費として計上できる租税公課は、以下のとおりです。

事業税 年間所得が290万円を超える個人事業主と事業を営む法人に課する地方税
地方法人特別税 都道府県が法人事業税と併せて賦課・徴収する国税
固定資産税・償却資産税 土地や家屋など不動産に課する地方税と、設備などの償却資産に課する地方税
都市計画税 都市計画事業または土地区画整理事業などに充てる目的で課する地方税
自動車税 自動車を保有していると課税される地方税
不動産取得税 土地や建物など不動産を取得したときに課税される地方税
登録免許税 商業登記や不動産登記などで納める国税
印紙税 契約書や金銭の受取書(領収書)など特定文書で納める国税
利子税 期日までに納税できない場合に税務署に申告し、延長が認められたときにその期間に応じて課せられる税金

それぞれの税金について詳しく説明していきます。

事業税

経費として計上できる租税公課として、「事業税」が挙げられます。

事業税は、その年中の確定分を損益計算書の利益計算で経費として扱うことができ、税務上も支払ったときに経費として認められます。

なお、事業を廃止年分に対して課税される事業税は、課税見込額を廃止年分の必要経費にすることも認められています。

相続については被相続人(亡くなった方)の相続開始年分の準確定申告で、見込計上することはできませんが、事業承継した相続人の必要経費として扱うことはできます。

地方法人特別税

経費として計上できる租税公課として、「地方法人特別税」が挙げられます。

地方法人特別税は、法人事業税の所得割額または収入割額の標準税率相当額に課される税金です。

事業税と同じく、損益計算書の利益計算で経費として扱うことができ、税務上も支払ったときに経費として認められます。

固定資産税・償却資産税

経費として計上できる租税公課として、「固定資産税」と「償却資産税」が挙げられます。

土地や建物など不動産を所有していると課される税金が固定資産税であり、設備や備品などの固定資産に対する税金が償却資産税です。

固定資産税は、毎年4~6月ごろになると、所有者に納税通知書が届き、年4回または一括での納付が可能とされています。

次の計算式で算出された金額が、固定資産税の額です。

固定資産税額=課税標準×1.4%(標準税率)

課税標準とは、各自治体が保管している固定資産課税台帳に登録されている価額です。

市区町村ごとに決定する標準税率を、課税標準にかけて固定資産税額を算出します。

また、1.4%が標準税率とされているものの、負担調整の特例などで調整されていることもあります。

償却資産税は、土地や建物以外の固定資産に課される税金です。

個人事業主がプライベート用と事業用で兼用している資産について、不動産同様に按分した分に対する税額を経費として計上します。

都市計画税

経費として計上できる租税公課として、「都市計画税」が挙げられます。

市街化区域内の土地や建物を所有していると、固定資産税だけでなく都市計画税も課されます。

固定資産税の納税通知書に合算されるため、都市計画税のみを納めることはありません。

都市計画税=固定資産税評価額×税率(制限税率0.3%)

個人事業主が自宅兼事務所として使用している不動産については、事業用で使用している部分の割合によって按分した金額を経費とすることができます。

自動車税

経費として計上できる租税公課として、「自動車税」が挙げられます。

個人事業主が自家用車を事業用としても使っている場合には、事業で使用している割合分の税額のみを経費として計上します。

また、自動車を新規登録したときや車検の際に支払う自動車重量税も同様です。

不動産取得税

経費として計上できる租税公課として、「不動産取得税」が挙げられます。

不動産取得税は、土地や建物を取得するときにかかる税金であり、増築・改築なども含み登記の有無も関係ありません。

固定資産税と同じく、事業で使用する割合分の税金は、経費として計上できます。

登録免許税

経費として計上できる租税公課として、「登録免許税」が挙げられます。

登録免許税は、会社の商業登記や不動産登記などで課される税金です。

事業運営のための会社関連の登記や、事業用不動産の登記でかかる登録免許税については、経費として計上できます。

印紙税

経費として計上できる租税公課として、「印紙税」が挙げられます。

経費として計上するのは印紙を購入したときであり、「租税公課」の勘定科目を使います。

未使用の印紙を買い置きするときには、「貯蔵品」など資産科目で一旦計上しておくことが必要になります。

利子税

経費として計上できる租税公課として、「利子税」が挙げられます。

所得税を「延納」したときの利子税のうち、事業所得・不動産所得・山林所得に対する分は経費として計上できます。

なお、延納ではなく延滞したときの延滞税は、経費として計上できません。

固定資産税を経費計上する場合の注意点

 

個人事業主と法人のどちらの場合でも、事業のために所有している土地や建物、設備や備品などに対する固定資産税(償却資産税)は、経費として計上できます。

ただし土地や建物など自宅兼事務所で使用している場合、次の2つのケースにおいて注意しましょう。

  1. 本人所有の自宅兼事務所の場合
  2. 本人以外が所有の自宅兼事務所の場合

それぞれ説明していきます。

本人所有の自宅兼事務所の場合

自宅兼事務所で使用している不動産が本人所有の場合は、事業で使用している面積割合などで按分した固定資産税額分のみを経費とします。

本人以外が所有の自宅兼事務所の場合

自宅兼事務所で使用している不動産が、たとえば配偶者や親族など本人以外の所有の場合は、生計を共にする相手の資産化によって判断が異なります。

生計を共にしている相手の資産の場合、たとえ共有名義でなくても、事業で使用した割合分を経費に計上できます。

しかし生計を共にしていない相手の資産の場合、個人事業主が事業使用分の固定資産税相当額を所有者に支払っている以外は、仮に同居中であっても経費にはできません。

不動産売却による固定資産税の負担割合

固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産など固定資産を所有している者に対して課税されます。

納税通知書は課税年度の4月1日から翌3月31日までが対象となるため、たとえば不動産を年の途中で売却すると所有者は変わるものの、対象年度の固定資産税は前所有者に課税されたままです。

この場合、次の2つの方法で対処することが必要となります。

  1. 日割り計算により負担割合を決める
  2. 起算日をいつにするか決める

それぞれの対処法について説明します。

日割り計算により負担割合を決める

年の途中で所有者が変わってしまった場合の固定資産税は、365日で日割り計算で精算することが一般的です。

不動産引き渡し日以降の税額を日割り計算し、買主が売主にその分を負担することで精算できます。

起算日をいつにするか決める

365日の日割り計算では、どの日を365日の1日目(起算日)にするのかによって、売主と買主の負担する割合が変わります。

起算日については、法的なルールが設けられているわけではないものの、1月1日または4月1日にすることが多いようです。

固定資産税の仕訳方法

固定資産税の仕訳処理は、主に次の2つのケースで行うことになります。

  1. 固定資産税の支払日の仕訳処理
  2. 賦課決定日の仕訳処理

固定資産税が10万円の場合で、上記2つのケースで処理した場合の仕訳を説明していきます。

固定資産税の支払日の仕訳処理

固定資産税を支払ったときの仕訳処理は以下のとおりです。

例:固定資産税10万円のうち4分の1である2万5千円を現金で納めた日の仕訳処理
借方 貸方
租税公課 25,000円 現金 25,000円

なお、固定資産税は一括でまとめて納付することもできるため、その場合の仕訳は以下のとおりです。

例:固定資産税10万円を現金で一括納付した日の仕訳処理
借方 貸方
租税公課 100,000円 現金 100,000円

賦課決定日の仕訳処理

賦課決定日に仕訳を行う場合、まず固定資産税の金額が確定した日に、未払金としてその金額を貸方に計上します。

「まだ払っていないお金が発生=負債(未払金)が増加」という処理です。

例:固定資産税10万円が確定した日の仕訳処理
借方 貸方
租税公課 100,000円 未払金 100,000円

借方に租税公課、貸方に未払金を計上した後は固定資産税を実際に支払った日に、支払い金額に応じて「未払金を借方計上=負債(未払金)の減少」という処理を進めていきます。

例:未払い分の固定資産税10万円のうち、4分の1である2万5千円を現金で納めた日の仕訳処理
借方 貸方
未払金 25,000円 現金 25,000円

まとめ

事業用として使っている資産に対する固定資産税は、経費として扱うことができます。

ただし法人税や所得税、住民税など、所得に対して課税される税金は経費として計上できません。

個人事業主の場合、自宅兼事務所として家を使っていることも少なくありませんが、誰が所有者かによって経費として計上できるかなど変わってきます。

仕訳処理の方法なども、どのタイミングで行うかによって内容が異なるため注意してください。