銀行融資では、必要書類として複数の書類を提出するように求められます。
ただ、新規事業や事業拡大、設備投資に運転資金など、銀行融資を受ける理由は様々で、必要書類も資金調達の目的によって異なります。
いずれにしても銀行からお金を借りる際には審査に通過することが必要であるため、提出を求められた書類についても抜かりなく揃えることが必要です。
そこで、銀行融資に必要な書類の種類と、申し込みから融資が実行されるまでの流れについて解説していきます。書類作成のポイントや提出が遅れるリスクも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
銀行融資とは
銀行融資とは、銀行からお金を借りることですが、一般個人や事業者など借入れを希望する人や団体は様々です。
銀行にも都市銀行・地方銀行・信用金庫・信用組合・ネット銀行など種類があり、審査のハードルも異なります。
事業者向けの銀行融資の場合は多額の融資を受けることが可能となるケースが多いうえ、金利も低いため真っ先に選ばれる資金調達方法といえます。
銀行融資の審査が通らない理由9選|審査基準と落ちないための対処法
【法人・個人】銀行融資の必要書類の種類
銀行融資の必要書類は、借入れを申し込むのが個人事業者なのか、それとも法人なのかによって異なる部分はあります。
また、どの銀行から融資を受けるか、金融商品によっても違いがあるといえるでしょう。
ただ、共通している必要書類もあり、基本的に必要書類として提出を求められることが多いのは次の11個です。
- 借入申込書
- 決算書
- 試算表
- 資金使途明細
- 事業計画書
- 資金繰り表
- 銀行取引一覧表
- 納税証明書
- 印鑑証明書
- 履歴事項全部証明書
- 本人確認書類
それぞれどのような書類が必要なのか説明していきます。
1.借入申込書
銀行融資の必要書類の種類として、「借入申込書」が挙げられます。
直接、融資を受けたい銀行の窓口で受け取ることができますが、すべての項目に記載することが必要です。
記載に不備や不足があれば提出しなおすように求められるため、記載方法がわからないときなどは銀行担当者に問い合わせるとよいでしょう。
2.決算書
銀行融資の必要書類の種類として、「決算書」が挙げられます。
財務・経営状況を知る上で必要となる書類であり、損益計算書からは事業の利益など、貸借対照表は経営成績を確認しています。
たとえば貸借対照表で負債が多い場合でも、損益計算書で利益が出ていて黒字なら、返済能力はあると見なされ審査に通る可能性はあります。
3.試算表
銀行融資の必要書類の種類として、「試算表」が挙げられます。
試算表は月次で作成されるため、直近の財務状況を知る上で必要となる書類であり、事業年度ごとの年次決算と違って毎月の損益状況や財政状況を確認できます。
4.資金使途明細
銀行融資の必要書類の種類として、「資金使途明細」が挙げられます。
資金使途明細とは、融資を受けて調達した資金を何に使うのか、使用目的が記載された資料です。
銀行からお金を借りる目的は様々で、必要書類は申込者の状況などによっても異なりますが、たとえば次のような書類提出を別途求められることがあります。
- 設備投資で融資を受ける場合…設備購入時の見積書
- 開業の賃貸物件契約で融資を受ける場合…事務所・店舗の賃貸契約書
また、資金の流れを把握する上で次の書類を求められます。
- 建設業が受注状況の報告が必要な場合…工事概況説明書
- 運転資金の借入れで資金繰り計画の確認が必要な場合…資金繰り表
5.事業計画書
銀行融資の必要書類の種類として、「事業計画書」が挙げられます。
事業計画書は、経営計画書とも呼ばれる書類で、会社が目標を達成するまでの道筋を計画的に示した書類です。
銀行融資を受けるにあたり、調達した資金をもとに中長期で会社をどのように経営していくのかまとめることが必要となります。
事業契約書を作成する際の手順として、次の項目について現状を洗い出すことが必要です。
- 経営理念や将来的なビジョンの見直し
- 内部・外部それぞれの環境の分析
- 実績の振り返り
- 経営課題の洗い出し
現在から過去の事業内容を見直したうえで、次の具体的な事業に関する行動計画を練っていきましょう。
- 経営課題の解決策
- 営業・財務それぞれの戦略
- 将来的な市場の動向
- 財務状況の推測
- 予測キャッシュフロー
洗い出した現状から分析した結果を、具体的に戦略として計画書にまとめていく流れです。
また、開業する際の事業計画については、創業時に特化した「創業計画書」を作成するとよいでしょう。
6.資金繰り表
銀行融資の必要書類の種類として、「資金繰り表」が挙げられます。
事業資金の主な使途は、設備資金と運転資金に分けることができますが、設備投資で必要な場合には見積書などの書類を提出することで資金使途を証明できます。
それに対し運転資金の場合、事業を進めていく上で必要となるお金であるため、見積書をはじめとする書類では細かいところまで準備しにくいといえます。
しかし、借りたお金を何に使うのか、資金使途を示すことができなければ審査は厳しいものになると予想されます。
そこで、一定の区分・科目に基づいて一定期間のお金の流れを分類・集計した資金繰り表を作成することで、収支の動きや現金過不足の実態などが把握できます。
融資を受けて調達した資金がどのように使用されるのか、資金繰り表により具体的に示すことができるでしょう。
7.銀行取引一覧表
銀行融資の必要書類の種類として、「銀行取引一覧表」が挙げられます。
銀行取引一覧表とは銀行取引明細表とも呼ばれる書類で、取引のある銀行や取引状況を確認するための資料であり、以下の項目が記されます。
- 銀行名
- 借入金(短期・長期・割手)
- 預金残高(定期・当座)
- 預金率
どの銀行とどのくらいの額をどのような形で取引しているのか確認できるため、これから融資を受けようとする銀行以外との情報を提示することに、抵抗を感じることもあるでしょう。
ただ、銀行取引明細表を提出しても、決算書などで返済能力の高さを示すことができれば問題視されるわけではありません。
抵抗があるからと虚偽の報告をすると、信用を低下させ融資を受けることはできなくなるため、特に借入状況などは正直に記載することが大切です。
8.納税証明書
銀行融資の必要書類の種類として、「納税証明書」が挙げられます。
納税証明書とは、確定申告した後の所得額や納税額、未納がないかを証明する書類であり、税務署で次の方法により取得できます。
- 税務署窓口に出向く
- 郵送で請求する
- インターネットで取得する
国税庁のホームページに、インターネットによる取得方法や具体的な手続などが公開されているため確認するとよいでしょう。
なお、税金の未納分があれば納税証明書は発行されないため、納税証明書が提出できなければ問題を抱えていると判断され、銀行から融資を受けることは難しくなってしまいます。
9.印鑑証明書
銀行融資の必要書類の種類として、「印鑑証明書」が挙げられます。
印鑑証明書は、正式名称を印鑑登録証明書といい、実印として登録された印鑑が本物であることを証明する書類であり、実印を押印する場合にはセットで提出を求められる書類です。
銀行融資をはじめとする重要な取引においては契約書に実印を押すことになるため、印鑑証明書も同時に提出が必要です。
なお、会社の印鑑証明書は全国の法務局で取得できます。
10.履歴事項全部証明書
銀行融資の必要書類の種類として、「履歴事項全部証明書」が挙げられます。
履歴事項全部証明書とは会社の登記簿謄本として使用される書類で、登記された会社の情報を確認するための書類です。
今現在の会社の情報以外に、請求日の3年前に属する日の1月1日以降に抹消・変更された情報の履歴について、以下の内容が記載されています。
- 会社法人番号
- 商号・原因年月日・登記年月日
- 本店所在地・原因年月日・登記年月日
- 公告をする方法
- 会社設立年月日
- 目的(事業内容)
- 発行可能株式総数
- 発行済株式の総数並びに種類及び数
会社の登記簿謄本を提出するように求められた場合、多くの場合にはこの「履歴事項全部証明書」を提出します。
なお、履歴事項全部証明書は全国の法務局で交付申請でき、法務局のホームページにも各都道府県の法務局の案内があります。
交付申請書は法務局の窓口にもあり、法務局のホームページからダウンロードして使うこともできます。
11.本人確認書類
銀行融資の必要書類の種類として、「本人確認書類」が挙げられます。
個人事業主の場合、運転免許証をはじめとする身分を証明するための書類の提出を求められます。以下を本人確認書類として使用することができます。
- 運転免許証
- 運転経歴証明書(2012年4月1日以降交付のもの)
- 旅券(パスポート)
- マイナンバーカード
- 在留カード・特別永住者証明書
- 官公庁が顔写真を貼付した各種福祉手帳(身体障害者手帳など)
- 官公庁から発行・発給された書類で、その官公庁が顔写真を貼付したもの(本人から提示された場合などに限る)
上記のものがない場合、たとえば健康保険証や個人番号通知カードでも代用できる場合はありますが、顔写真がついていないので複数の本人確認書類の提示を求められることを理解しておきましょう。
必要書類の不備によって生じるリスク
銀行融資を申し込むと、必要書類の提出期限が指定されます。個人事業者や中小企業の場合は審査が厳しく、断られることもめずらしくありません。記載ミスや記載漏れなどで再提出を求められるケースもあるため、必要書類は期限までに抜かりなく揃えておくことが大切です。
提出する必要書類に不備があると、次のリスクが生じます。
- 融資を受ける金融機関からの信用を失う
- 事業資金の調達が遅れる
融資を受ける金融機関からの信用を失う
銀行では多くの企業から融資の申し込みを受け付けていて、担当者は1件ずつスケジュールを組み、順番に手続きを進めています。1社から書類が期限内に提出されないとスケジュールが遅滞し、業務全般に支障がでかねません。
また、いい加減な書類や記載ミスが多い書類が提出されると、是正に手間や時間がかかります。提出遅れや書類の不備は担当者に多大な負担をかけ、銀行からの信頼が失われる原因のひとつです。
「約束を守らない企業」と評価されたり、経営者としての能力が疑われたりするため、後々の取引において大きなマイナスになるリスクがあります。
なお、銀行融資の審査に通らない原因については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
銀行融資の審査が通らない理由9選|審査基準と落ちないための対処法
事業資金の調達が遅れる
期限内に書類の提出が間に合わなかったり、不備で再提出をしたりしていると、審査が遅延する可能性があります。融資は担当の支店だけでなく本店の審査も必要で、スケジュールどおりのタイミングを逃すと決済に1~2週間かかるのもざらです。
特に、信用保証協会の保証がついた融資は時間がかかり、融資が遅れて自分の事業に支障が生じることがあります。
銀行融資の流れ
銀行融資は、申し込みから融資実行まで次の6つの流れで手続が進みます。
- 申し込み
- 必要書類の提出
- 面談
- 審査
- 契約
- 融資実行
それぞれの流れと手続について説明します。
Step1.申し込み
銀行融資の流れとして、まずは申し込みが必要です。
融資を受ける銀行を決めているなら、日ごろから付き合いのある銀行担当者に相談するか、直接銀行窓口で申し込むこともできます。
また、銀行の商品によってはオンラインによる申し込みもできるため、ニーズに応じて申し込むとよいでしょう。
また、事前に相談しておけば融資の条件や承認された事業者の傾向、用意しておきたい資料などを把握しておくことができます。
Step2.必要書類の提出
銀行融資の流れとして、申し込みの後は必要書類の提出が必要です。
申し込み後に銀行から提出するように求められた書類を揃えることが必要ですが、作成や準備には時間がかかることもあります。
漏れや不備があると審査に時間がかかることになるため、提示された期日までに提出できるように事前の準備も必要です。
Step3.面談
銀行融資の流れとして、銀行の融資担当者との面談があります。
融資担当者との面談では、借りたお金を何に使うのか、どのように返済するのかなどを聞かれます。
また、書類上では判断できない経営者の人物像なども見られるため、返済する意思を伝えられるようにしておきましょう。
事業計画書の内容について質問されても回答できるように、事前準備をして面談に臨むことを心掛けてください。
Step4.審査
銀行融資の流れとして、提出した書類や融資担当者との面談を参考とした審査が行われます。
また、融資の可否以外にも融資可能額・金利・返済期間などの条件についても審議されることになりますが、銀行融資の審査は時間がかかります。
プロパー融資では1か月、ビジネスローンでも1週間程度はかかるため、すぐに資金を調達できるわけではありません。
Step5.契約
銀行融資の流れとして、審査で返済能力に問題なく信頼できると判断されたら契約を結ぶことになります。
審査で問題なしと判断された場合、通過の通知と契約手続の案内が届きます。
その後、複数の契約書を提出し、内容などに不備がなければ契約締結となります。
Step6.融資実行
銀行融資の流れとして、無事契約を締結した後は、銀行口座に借入れたお金が入金されます。
なお、融資実行後は返済もスタートするため、返済計画に沿って遅れることなく返済すれば、銀行との実績を積めて信頼度がアップします。
次の追加融資も期待できるため、遅れずに返済を続けることが大切です。
銀行融資の必要書類を作成するポイント
銀行に提出する書類は、融資の可否を判断する材料です。書き方や作り方次第では審査に通りにくくなるため、良質な書類を作成する必要があります。
ここでは下記の書類を作成するときのポイントを解説します。
- 【決算書】漏れなく記載する
- 【事業計画書】内容を充実させる
【決算書】漏れなく記載する
決算書は、銀行が企業の経営状態や財務情報を知るために必ず確認する重要書類です。経営実態を反映した、漏れのない書類作成を心掛けましょう。
貸借対照表では、負債が会社資産を上回る債務超過の状態になっていないか確認が必要です。損益計算書では売上総利益、営業利益、経常利益の数値をチェックしてください。経常利益が黒字になっていれば、利息を支払っていても経営状態は安定していると判断されるため、当期純利益が一時的な赤字でも大きな問題にはなりません。
経営状態を良く見せようと架空売上や架空在庫を計上したり、減価償却費の計上を省いたりするのは厳禁です。架空計上が発覚すると銀行からの信用が一気に失われます。
【事業計画書】内容を充実させる
事業計画書では、企業の将来性が判断されます。希望する融資額の根拠にもなる書面なので、収益を上げるために資金をどう運用していくかをわかりやすく、かつ具体的に記載しましょう。収支計画も組み込み、根拠を示せる事業計画書を作るのが理想です。
あわせて返済計画も盛り込み、「返済ができる会社」を証明する必要もあります。リスクも織り込んで、実現可能で銀行を納得させられる計画を立ててください。
まとめ
銀行融資は中小企業の多くが資金調達の方法として利用しますが、消費者金融のビジネスローンと異なり、審査は一般的に厳しいです。
特に中小企業の場合、担保の差し入れが条件となることが多く、最初に伝えられた必要書類を提出した後にさらに追加で別途書類を求められることもめずらしくありません。
ただ、銀行融資にもプロパー融資や信用保証付融資、ビジネスローンなど種類があるため、それぞれ提出する書類や審査の難易度は異なります。
いずれにしても目的に応じた金融商品を選ぶ必要があるうえ、即日融資が実行されるわけではないため、時間に余裕のある申し込みを心掛けてください。