商業登記とは?目的や流れ・必要書類や手続方法についてわかりやすく解説

商業登記とは、会社に関する事項を法務局で登記し、公示する制度です。

会社登記とも呼ばれており、会社設立のおいては必ず行うことが必要となります。

そこで、商業登記について、行う目的や手続の流れ、必要書類や方法をわかりやすく解説します。

商業登記とは

「商業登記」とは、株式会社や持分会社などの法人に関する事項を、法務局に登記して公示する制度です。

商法や会社法など法律で、会社が登記しなければならないと定められた事項を登記します。

たとええば会社の商号・取締役名・所在地・資本金・会社の目的などを商業登記簿へ記載し、一般に公示されます。

誰でも閲覧可能となる情報のため、商取引における信頼性の担保につながります。

「登記」とは、行政の仕組みの1つで、個人や法人の不動産などの財産上の権利・義務を公に示します。

公開された登記簿という帳簿に記載する制度が登記であり、会社設立においても必ず法務局で登記申請が必要です。

なお、「商業登記」は会社設立以外にも、本店移転・役員変更・商号変更・目的変更・増資・株式分割など、会社の状況や情報に変更があったときに行います。

重要な変更があれば「登記」が必要となるため、商業登記の意味が存在するといえます。

商業登記の目的

商業登記を行うのは、法律上、会社を成立させることが目的です。

登記後に発行される「登記事項証明書」が、会社経営におけるいろいろな手続などで必要になることも関係します。

法人口座開設の際にも、会社の登記事項証明書や印鑑証明書などが確認されます。

銀行など金融機関から融資を受けたいときや、国の補助金申請、許認可や入札手続などでも登記事項証明書を添付することが必要です。

取引先との規模の大きな契約を結ぶときや、新規取引開始の際にも登記事項証明書を求められることがあります。

登記事項証明書で公示されている重要事項は、その後の取引が円滑できるか判断する上での重要情報であることが提出を求められる理由です。

信頼できる会社か知りたいとき、役立つのが商業登記により登録された情報といえます。

商業登記により登録された情報は法務局で管理され、手数料を払って請求すればほしい会社の情報を誰でも閲覧できます。

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商業登記までの流れ

商業登記までの流れとして、主に次の4つの手続が必要です。

  1. 会社の設立方法の決定
  2. 定款作成・認証
  3. 資本金の払い込み
  4. 登記の申請

それぞれ説明します。

会社の設立方法の決定

会社を立ち上げるには、設立方法を決定することが必要です。

設立方法には、以下の2つがあります。

  • 発起設立
  • 募集設立

発起設立は、会社設立に際して発行株式の全部を発起人が引き受けます。

募集設立は、発行する株式の一部を発起人が引き受け、残りは引受人を募集します。

一般的に選ばれている設立方法は発起設立です。

定款作成・認証

「定款」とは、会社の根本規則であり、プロフィールともいえます。

記載する事項として、以下が挙げられます。

  • 絶対的記載事項
  • 相対的記載事項
  • 任意的記載事項

上記のうち、「絶対的記載事項」は必ず記載しなければならない事項であり、次の項目のことです。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価値又はその最低額
  • 発起人氏名または名称・住所

絶対的記載事項が記載されていなければ定款自体「無効」となるため注意してください。

また、株式会社は公証人の定款認証を受けなければ、その効力は生じません。

資本金の払い込み

資本金(出資金)は、次の流れで払い込みを行います。

①払い込み預金口座の決定

払い込み預金口座を決定することが必要ですが、会社設立前のため発起人の個人口座を利用します。

会社を設立した後は、個人口座に振り込んだお金を、会社の法人口座に振り替えなければなりません。

②出資金の振り込み

出資金の払い込みは、あくまでも「振込」により行います。

個人口座にすでに残高がある場合でも、一旦は引き出し振り込むようにし、振込履歴が確認できるようにしましょう。

③「払い込みがあったことを証する書面」の作成

振込完了後は、振り込んだ通帳を出資金の払い込んだ証明に使います。

振込履歴部分の写しを「払い込みがあったことを証する書面」として作成し、登記申請の際に添付することが必要です。

登記の申請

上記の手順後、法務局で商業登記を申請しますが、申請した日が会社の「設立年月日」となります。

商業登記の必要書類

商業登記で必要になる書類は、会社の種類や状況などで変わるものの、基本的には次の書類が必要です。

  1. 登記申請書
  2. 印紙納付台紙
  3. 印鑑届出書(会社実印登録用)
  4. 定款
  5. 就任承諾書
  6. 印鑑証明書(設立時取締役個人のもの)
  7. 資本金の払込証明書(通帳の写し)

それぞれの書類について説明します。

登記申請書

「登記申請書」の書式は、法務省の公式サイトからダウンロードするか、法務局の窓口で直接入手することが可能です。

印紙納付台紙

登録免許税相当額の収入印紙を貼る「印紙納付台紙」に、領収証書または収入印紙を貼り付けておきますが、A4タテの白紙でも代用できます。

登録免許税は現金納付し、金融機関から領収証書を受けて台紙に貼付したものを法務局に提出します。

収入印紙を貼り付けるときには、用紙の右側に寄せて貼り付けていき、割印はしません。

印鑑届出書(会社実印登録用)

会社の実印を登録するために「印鑑届出書」が必要です。

個人にも実印はありますが、法人でも実印が必要となるため、印鑑を作成しておく準備も必要になります。

定款

会社設立を申請するときには、会社の「定款」を添付します。

定款は、以下の3通が必要です。

  • 定款認証のため公証役場提出用
  • 登記申請のための法務局提出用
  • 会社の保管用

就任承諾書

登記申請の添付資料には、設立するときの監査役・取締役・代表取締役を選定したことを証する書面が必要です。

印鑑証明書(設立時取締役個人のもの)

設立したときの取締役個人の印鑑証明書も必要になります。

印鑑証明書とは、市役所などに登録されている実印であることを証明する書類です。

印鑑証明書の有効期限は3か月間のため、有効期限切れになっていないか確認しておきましょう。

資本金の払込証明書(通帳の写し)

出資金を振り込んだ通帳の写しを、払込証明書として作成し、申請書類として添付します。

以上の書類を作成し、法務局で申請することによって、審査を経た後に登記事項証明書を発行できるようになります。

商業登記の手続

商業登記の手続は、次の3つの方法で行うことができます。

  1. 法務局に出向く
  2. 郵送で送る
  3. インターネットを使う

それぞれの方法について説明していきます。

法務局に出向く

商業登記の手続は、直接、法務局へ出向いて行うことができます。

法務局の職員に申請書類を手渡しし、不備の有無など確認してもらうことができるのはメリットです。

ただし法務局は利用者が多いため、混雑する時間帯や期間には順番待ちに時間がかかります。

また、相談したくても受け付けてもらえない可能性もあります。

申請書類の確認も、提出時にはあくまで事務手続の一環として行うため、申請者に寄り添うアドバイスは提供してもらいにくいことは留意しておきましょう。

郵送で送る

商業登記は、郵送で書類を送り手続することもできます。

法務局まで出向くことが難しいときには、郵送を使えるため大変便利です。

ただし郵送による申請の場合、会社設立日は申請書類が法務局に届いて申請が受理された日になるため、ポスト投函日ではないことに注意してください。

また、郵送で登記申請後に、登記識別情報交付や原本還付書類を返還してもらうには、必要な額の郵便切手を同封することも必要です。

インターネットを使う

商業登記をインターネットで行う方法ですが、ネット上で手続できるためとても楽で便利です。

ただし法務省が提供する申請用総合ソフトを使った申請となるため、あらかじめ公証人の認証を受けた電子証明書の取得が必要になります。

法務局に出向くことなく、スムーズに登記申請を完結できることはメリットです。

しかし専用のソフトウェアの購入や、マイナンバー登録などの手間がかかることはデメリットといえます。

また、方法の種類に限らず、申請手続の内容に不備があれば、登記官から修正を指示されます。

修正は登記官の指示に従い、所定の手続を行うものの、不備や修正が多すぎれば取り下げの指示を受けることもあるため注意しましょう。

修正が終わり、2週間程度経過した後、登記が完了します。

まとめ

商業登記とは、会社経営をスタートする上で最初に行わなければならない手続といえます。

登記申請までには準備が必要であり、時間・手間・費用も発生します。

申請内容が適切でないときや記入ミス・漏れなどがあれば修正するように求められるため注意しましょう。

また、会社設立後は、手元の資金にも注意してください。

会社は赤字であることだけを理由に倒産することはありませんが、資金が枯渇すれば潰れてしまうからです。

商業登記で会社を設立し、円滑で健全な経営を続けるためにも、資金ショートさせない資金管理を心掛けましょう。