会社経営には資金が欠かせませんが、資金を調達する方法や必要な金額について明確にできることは多くありません。
しかし円滑な経営において様々なことを加味した上で資金調達方法やその金額を決めることが必要です。
その際に重要になるのが「ファイナンス」ですが、会社経営におけるファイナンスの目的や会計との違いについて解説していきます。
目次
ファイナンスとは
「ファイナンス」は英語で「finance」と表記され、資金・金融・融資・財源・財政・財政学などの意味があります。
会社経営におけるファイナンスとは、資金調達や調達したお金の利用、収益の分配などを意味します。
会社を成長させるためには収益をあげなければなりません。
実現に向けて設備投資や人材雇用などが必要となりますが、いずれも資金が必要です。
資金を調達するためには銀行から融資を受けたり投資してもらったり、他にもクラウドファンディングや資産売却など様々な方法がありますが、それらの方法を示す言葉がファイナンスといえるでしょう。
ファイナンスと会計の違い
ファイナンスと会計が同じだと考える方は少なくないようですが、実際には異なります。
まず、ファイナンスは資金調達やその運用など今後の動きについてのプロセスであるのに対し、会計は運営した結果の整理です。
そのためファイナンスと会計には次の3つの違いがあるといえます。
- 時間軸の違い
- 目的の違い
- 意思決定の関与の違い
それぞれ説明していきます。
時間軸の違い
ファイナンスと会計の違いとして、まず「時間軸」が異なることが挙げられます。
ファイナンスは将来生み出すことが予測されるキャッシュフローが対象です。そのため時間軸は「将来」であるのに対し、会計では結果をあらわすため現在を含む「過去」が対象となります。
また、ファイナンスは企業がどのような方法で資金を調達して運用するかを検討する経営学の1つといえ、財務を意味します。
価値を評価し価格を付ける知識や技法もファイナンスに含まれるでしょう。
しかし会計は、商品やサービスを販売・提供することによる売上から、それまでに支払った費用を引いた利益を扱います。
目的の違い
ファイナンスと会計の違いとして、「目的」が異なることも挙げられます。
ファイナンスの目的は企業価値を最大化することであり、資金提供者である銀行などの債権者と株主にとっての価値を意味します。
しかし会計の目的は、現状や過去の状況を把握することと、事業の結果を外部に報告することです。
意思決定の関与の違い
ファイナンスと会計の違いとして、「意思決定」の関与が異なることも挙げられます。
ファイナンスでは、実際のお金の動きを把握し将来の意思決定を行うことが多いですが、会計では現預金の動きではなく収益や費用を把握します。
そのため会計の知識だけでファイナンスの意思決定に関与することは難しいといえるでしょう。
ファイナンスの種類
企業経営におけるファイナンスには資金を調達する手段としての意味もありますが、お金が必要な理由やタイミング、用途や金額に応じて慎重にどの方法を選ぶか検討することが必要です。
一般的に資金調達の方法として利用されているのは銀行から融資を受けることですが、お金が必要なときにすべて借入れで済ませることが得策とはいえません。
主にファイナンスには次の3つの種類があります。
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
- アセットファイナンス
それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、どの方法が最適か検討し、選択するようにしましょう。
①デットファイナンス
「デットファイナンス」とは、銀行から融資を受けたり社債を発行したりなど、外部から資金を借入れることで調達する方法です。
銀行など金融機関と契約を交わし、お金を借りた後はその資金を事業運営に充て、返済期日までに元金と利息を返します。
社債とは、会社が発行する債券のことです。
投資家から資金を提供してもらうための借用書に似た証券であり、満期には額面金額が投資家に払い戻されます。
発生する利息や購入価格と額面との差額で利益を狙う投資家などから資金を借入れる方法と理解するとわかりやすいでしょう。
また、有価証券のため譲渡しやすいことも特徴です。
デットファイナンスを資金調達の方法として選ぶときには、次の2つを理解しておきましょう。
- デットファイナンスのメリット
- デットファイナンスのデメリット
それぞれ説明していきます。
デットファイナンスのメリット
デットファイナンスのメリットは、資金提供者である金融機関などが経営に干渉することがなく、外部から制限されることがないことです。
資金調達後も、経営者として決めた事業方針で会社を経営できます。
デットファイナンスのデメリット
デットファイナンスのデメリットは、返済負担を負うことです。
借入れたお金は返済期日までに元金と利息を合わせて返すことが必要です。
一定額の利息を支払うことで、その負担が重くなれば資金繰りが悪化しやすくなることもデメリットといえるでしょう。
②エクイティファイナンス
「エクイティファイナンス」とは、新株発行など資本を増やして資金を調達する方法です。
「エクイティ」とは株式資本や自己資本のことを指しています。
具体的には次のような方法が挙げられます。
- 公募(時価発行増資) 時価に近い価格による新株発行で資本を増やす
- 株主割当増資 既存株主に対し、保有株数に応じた新株発行の割り当ての権利を与える方法
- 第三者割当増資 特定関係にある第三者に割り当ての権利を与える方法
- 転換社債型新株予約権付社債 新株予約権が付与され、一定価格で発行する企業株式に転換可能な社債を発行する方法
いずれもデットファイナンスのように負債ではなく「自己資本」を増加させる資金調達方法のため、対外的な印象を落とすことがありません。
エクイティファイナンスを資金調達の方法として選ぶときには、次の2つを理解しておきましょう。
- エクイティファイナンスのメリット
- エクイティファイナンスのデメリット
それぞれ説明していきます。
エクイティファイナンスのメリット
エクイティファイナンスのメリットは、返済義務を負わない資金を調達できることです。
デットファイナンスのように、元金と利息の返済に追われることなく、調達した資金は自由に使うことができます。
また、資本を増やす方法のため財務体質が強化できることも期待できるでしょう。
自己資本率が高まれば、銀行・投資家・取引先からの評価も上がり、将来的に資金を有利に調達しやすくなると考えられます。
エクイティファイナンスのデメリット
エクイティファイナンスのデメリットとして、新株発行により増えた株式分、一株の価値が薄まることです。
株主割当以外のエクイティファイナンスを選ぶなら、既存の株主から理解を得ることも必要となります。
株式は株主総会の議決権が備わるため、株式の保有割合によっては経営権を揺るがされる可能性もあり、経営に関与されることや支配権を握られてしまうリスクについても留意しておくことが必要です。
また、出資者は配当を求める傾向にあるため、株式発行では株価上昇や配当にも気を使うことが必要となることは理解しておきましょう。
③アセットファイナンス
「アセットファイナンス」とは、保有する資産をもとにして資金を調達する方法です。
「アセット」とは資産のことを指しています。
自社が保有する資産が将来生み出すキャッシュフローをもとにした資金調達の方法であり、たとえば土地や建物などの固定資産などを売却することが挙げられるでしょう。
対象となる資産には、
- 不動産などの固定資産
- 車両などの動産
- 有価証券や売掛金などの流動資産
- 商標権・特許などの知的資産
などが挙げられます。
流動資産の売掛金で資金を調達することができるのか、疑問に感じる方もいるでしょうが、最近では売掛金という債権を売却し現金化する「ファクタリング」は中小企業で多く利用されるようになりました。
売掛金は売掛債権という資産であり、アセットファイナンスの1つであることを知っておくと安心です。
アセットファイナンスを資金調達の方法として選ぶときには、次の2つを理解しておきましょう。
- アセットファイナンスのメリット
- アセットファイナンスのデメリット
それぞれ説明していきます。
アセットファイナンスのメリット
アセットファイナンスのメリットは、借金を増やすことなく資金を調達できることです。
対象となる資産には、固定資産や流動資産があり、たとえば土地や建物などは固定資産、有売掛債権や棚卸在庫などは流動資産に分けられます。
不動産など固定資産を流動化するときには。特別目的会社(SPC)に譲渡して証券化すれば資金調達をスムーズに行うことができます。
売掛債権はファクタリング会社に譲渡することで、早ければ即日現金化できるなどスピーディな資金調達が可能となることがメリットといえるでしょう。
保有する資産の信用力で資金調達できることや返済の必要がないこと、資産売却による財務内容が改善されることもメリットといえます。
アセットファイナンスのデメリット
アセットファイナンスのデメリットとして、資産の信用力に依存した資金調達になることや、調達できる金額が資産価値の範囲に留まることが挙げられます。
価値や信用力が低い資産では、想定していた金額を調達できない可能性があり、場合によっては資金調達につながらないこともあります。
まとめ
ファイナンスとは資金を指す意味として使用されることが多い言葉ですが、会社経営におけるファイナンスおいては調達や配分まで考えることが必要となります。
会社経営におけるファイナンスの種類には、デットファイナンス・エクイティファイナンス・アセットファイナンスなどがありますが、どの方法がもっとも適しているか現状把握なども重要です。
なぜ・いつまでに・どのくらいの資金を調達し、何に使用するのか、その資金を使いどのような状況を見込んでいるのかまで加味した上で、適切なファイナンスを選ぶようにしましょう。