中小企業の経営者が自社の財務状況を確認するとき、財務諸表などを見ても読むことができないといったケースはめずらしくありません。
財務諸表は正しく活用することで経営分析や戦略の策定に役立ていることができ、中小企業にとって必要な様々な状況判断の手助けになってくれます。
そこで、中小企業の経営者が様々なタイミングで状況判断するために、最低限押さえておきたい財務諸表の読み方をお伝えします。
目次
財務諸表とは決算書のこと
財務諸表とは一般的に決算書を意味しますが、
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
の財務三表で構成されます。
財務諸表の主な用途は、
- 株主・債権者・出資者・取引先に対して財政状態と経営成績を報告
- 融資や出資を受けるときの与信審査
- 取引先の信用調査
- 法人税の申告
- 自社の経営分析
などですが、中小企業の場合は「自社の経営分析」が盲点となっていることが多いといえます。
毎年決算期に作成しますが、「企業の通信簿」といえるものなので、状況判断や分析にしっかり活用していくべきです。
経営成績である「損益計算書」
年間の収益や、収益を出すためにかかった費用を一覧にし、最終的な利益や損失を明確にしたものが損益計算書です。
中小企業を含め、日本の企業は7割以上赤字経営しているといわれており、当期純利益が10%を超えている企業は多くありません。
ただし利益が出ていた場合でも、あくまでも決算時点での数字であることを認識し、過去の損益計算書や貸借対照表を読み解いて照合した判断が必要です。
集めた資本を確認できる「貸借対照表」
企業の創業からの資産と負債、そして資産から負債を差し引いた純資産がどのくらいあるかをあらわしたものが貸借対照表なので、集めた資本をどのような使い道で使ったか示すといえます。
負債よりも資産が多ければ収支のバランスがとれていると判断でき、純資産が増えていれば経営が安定していると判断できます。
ただ、ベンチャー企業などは固定資産を保有しないことも多いため、設立してまだ時間がたっていない企業の状況を見極めるなら、売掛金や買掛金の残高などもポイントとして押さえておくことが必要です。
キャッシュフロー計算書
どのくらいの現金が流入し、反対にどれだけの現金が流出したかを示すのがキャッシュフロー計算書です。
- 本業におけるお金の流れは営業キャッシュフロー
- 投資活動の内容は投資キャッシュフロー
- 借入や返済などによるお金の流れは財務キャッシュフロー
でそれぞれ確認できます。
企業の活動状況や、何に投資しどのような資本戦略で企業を成長させていくのかなど、様々な重要判断で必要な資料となります。
株式未公開企業であれば作成・提出は義務化されていませんが、中小企業でも状況を知る上で作成しておきたい書類です。
3つのキャッシュフローでは、
- 営業キャッシュフロー=+なら本業が順調
- 投資キャッシュフロー=資産売却に積極的なら+、設備投資が減れば−になる
- 財務キャッシュフロー=資金調達すれば+、返済が進んでいけば−になる
といった表示がされます。
本業でどのくらい儲かっているか確認するときには営業キャッシュフローを見ればよいといえます。
本業が赤字の場合において、投資キャッシュフローや財務活動キャッシュフローは黒字という場合、あまりよい状況ではないと考えがちですが必ずしもそうではありません。
ただ、本業が赤字の状況が続いていると、いずれ資金繰りは厳しい状況へと追い込まれる可能性も高くなりますので注意が必要です。
営業・投資・財務という3つのキャッシュフローから、それぞれの活動が適切か、経営戦略と整合性がとれているかを見極めることが必要といえるでしょう。