掛け取引で商品やサービスを販売・提供した場合、その場で代金を受け取るのではなく、後日請求書を発行して回収を行います。この代金を受け取る権利を売掛債権といい、会計処理上では売掛金という勘定科目で処理を行います。
ただ、代金の未回収分を会計処理する場合、売掛金ではなく未収金という勘定科目を使う場合もあります。売掛金と未収金では具体的に何が異なるのでしょうか。
今回は、未収金と売掛金の違いや、未収金の回収方法について解説します。
目次
未収金とは
未収金とは正式名称を「未収入金」といい、本業で取り扱っている商品やサービス以外のものを売却して、代金が未回収のものを指します。本業の営業取引によって生じた「売掛金」以外の債権も未収金に該当します。
現時点では現金化されていないものの、将来的には現預金での回収が見込まれているものが未収金に該当すると考えておきましょう。
未収金と混同されがちなものとして「売掛金」と「未収収益」があります。未収金とそれぞれの違いについて下記で解説します。
- 売掛金との違い
- 未収収益との違い
売掛金との違い
日本では企業間取引において、前払いや現金による取引ではなく、後払いとなる掛取引を行うことが一般的です。その際に発生するのが売掛金です。
未収金は主たる営業取引以外で発生する代金であるのに対して、売掛金は主たる営業取引で発生する点が異なります。
未収収益との違い
未収収益とは主たる営業取引以外の取引において、役務(サービス)を提供することで発生する代金です。主たる営業取引で役務(サービス)を提供した場合には、売掛金が発生します。
そのため、未収収益と売掛金は計上の対象や勘定科目が異なります。
未収金の回収方法
未収金を回収しないまま放置すると、企業としては大きな損失を被る結果になってしまいます。未収金の回収は以下の流れで行います。
- 内容証明郵便を送付する
- 訪問して直接交渉する
- 訪問して直接交渉する
- 法的手段をとる
下記でそれぞれについて紹介します。
内容証明郵便を送付する
未収金を回収する方法として、最もオーソドックスなのが内容証明郵便の送付です。内容証明郵便とは、日本郵便がいつ、どのような内容なものを、誰から誰へ送ったかを明らかにできる制度のことです。
内容証明郵便を利用すれば、消滅時効を一時的に中断させることができます。相手に対して心理的なプレッシャーも与えられるため、未収金を回収できる可能性は高いです。弁護士名義で内容証明郵便を送付すれば、より効果は強くなるでしょう。
一方で、内容証明郵便には法的な拘束力はありません。そのため、相手によっては回収に応じてもらえない可能性もあります。一通出すのに1,300円程度の費用がかかるため、コストパフォーマンスも良くありません。
訪問して直接交渉する
実際に訪問をして、交渉をするのも1つの方法です。労力こそかかってしまいますが、相手の心を動かし、回収に応じてもらえる可能性は高いといえるでしょう。
一方で、アポなしで訪問をしたり、頻繁に訪問したりすると、相手に不快感を与えてしまいます。営業妨害や不退去罪などで罪に問われてしまう可能性もあります。訪問をする場合は、適正と思われる範囲内で行うようにしましょう。
法的手段をとる
法的手段によって未収金を回収することも可能です。具体的には以下のような法的手段によって回収が可能です。
- 公正証書
- 支払督促
- 民事調停
- 少額訴訟
それぞれの手段について解説します。
公正証書
公正証書とは公証人が作成する公文書であり、債務者の実印付きの委任状や印鑑証明などがあれば、公証人役場で作成可能です。公正証書を作成すれば、記載のある内容に従って、支払いが行われます。
しかし、相手が公正証書の作成に応じない可能性もあるため注意しなければいけません。
支払督促
支払督促とは裁判所から相手に対して、金銭の支払いを命じる督促状を送付してもらえる制度のことです。裁判所に出向く必要はなく、書類審査のみで手続は行われるため、比較的実施しやすいです。
督促状を送付したにも関わらず、支払いが行われない場合は「仮執行宣言付支払督促」によって、強制執行の申し立ても可能です。
民事調停
民事調停とは調停委員会によって双方の主張を確認し、和解の成立を目指す手続です。手続が容易で円満な解決ができるというメリットがあります。一方で、和解の内容次第では、希望している代金の回収ができないかもしれません。
少額訴訟
少額訴訟とは、60万円以下の金銭を請求する際に利用できる裁判のことです。裁判であるため、違法性が認められれば回収できる可能性は高いでしょう。一方で、分割払いや支払い猶予、遅延損害金免除などの判決が下されるかもしれません。
売掛金においては時効の成立に注意が必要
売掛金や未収金などの債権には時効が設定されており、一定期間をすぎると代金の回収ができなくなります。そのため、先ほど紹介した方法で、代金の回収を速やかに行わなければいけません。
現在の法律では、売掛金は商取引により発生する債権ですので5年で時効が成立してしまいます。ただ、この5年という年数は商法によるものであり、それ民法で5年より短い時効期間が定められている場合は、さらに短い期間で時効を迎えることになってしまうのです。
民法では職業別に短期消滅時効の規定があり、たとえば診療報酬債権や工事請負業者の工事代金債権などは3年、製作代金やデザイン作成料、学習塾などの月謝は2年、飲食店などの料金は1年で時効となります。
売掛金の未回収を発生させない方法
売掛金が時効で回収できなくなる前に、未回収分を発生させない必要があります。
未回収の売掛金が発生する理由には「売掛先の経営状況が悪化している」「倒産している」などが考えられます。他にも商品やサービスの内容に納得していないため支払うことはできても拒否をしている場合もあるかもしれません。
未回収の売掛金の発生には請求書が届いていない、売掛先の入金ミスなど様々な可能性が考えられます。そのため、どの売掛先にいくら売掛金が発生しているのか、期日にしっかり入金されているかなど、取引先ごとの管理が重要です。
以下の3つを踏まえつつ、売掛金の未回収を発生させないようにしましょう。
- 売掛金管理台帳の作成
- 与信管理も重要
- ファクタリングで先に現金化
売掛金管理台帳の作成
売掛金管理台帳を作成し管理を徹底させ、もし入金に遅れが生じている場合には早めにその理由を確認し、入金を促しましょう。
与信管理も重要
売掛先ごとに資金面で苦労していないか、財務や経営状況などの情報を常に入手し、現在の取引量や金額で問題ないか、与信管理も行うことが重要です。
もし売掛先の信用力が低下していると判断できる場合には、売掛金の未回収を発生させないためにも取引量を制限したり、前払いや現金取引のみ可能にするといった対応も必要となります。
特にはじめて取引を行う取引先の場合は、少額からの取引に抑えていた方が安心です。
ファクタリングで先に現金化
売掛金の未回収リスクを回避するために、専門業者に売掛債権を売却して期日よりも前に現金化するファクタリングの利用も検討してみましょう。
1か月や2か月経たないと入金されない代金を、利用にかかる手数料を差し引いた上で前倒しによる受け取りが可能です。
まとめ
未収金とは営業取引以外で発生する未回収の代金です。掛け取引で発生する売掛金とは、性質が大きく異なります。
売掛金も未収金も放置していると、時効によって回収が困難になってしまいます。そのため、売掛先ごとにしっかりと管理を行って、未回収分を発生しないようにしましょう。