契約書作成のポイントとは?目的や契約方法の種類・流れを解説

契約書の作成は、一部のケースを除いて義務化されているわけではありません。

口頭のみの約束でも契約は成立しますが、契約書を作成しておくことでスムーズに取引が進み、トラブルを未然に防ぐことができます。

契約書作成に活用できるひな形など参考にするよいといえますが、法的に意味のない文書に仕上げないためにも、作るときのポイントや流れを吐くしておきましょう。

そこで、契約書の種類や作成のポイント、作る目的と流れを解説します。

契約書とは

 

契約書と印鑑

「契約書」とは、取引を行う当事者間で合意した内容を文書にまとめた書面です。

どのような内容や条項で合意したのか後で確認することや、法令遵守・コンプライアンス意識の向上のためにも契約書作成は大切なことといえます。

透明性のアピールにつながるため、顧客や取引先から信頼を獲得することにもつながります。

契約書の作成について、以下の2つを説明します。

  1. 目的
  2. 作成者

なお、契約書の書き方やポイントについては、以下の記事を参考にしてください。

契約書とは?法的な効力や流れ・書き方とポイントをわかりやすく解説

目的

契約は口頭でも成立するものの、書面化した契約書を作成する目的は主に以下の3つです。

  1. 取引をスムーズに進めるため
  2. トラブルを防ぐため
  3. コンプライアンス遵守のため

それぞれ説明します。

取引をスムーズに進めるため

契約書の作成は、取引をスムーズに進めるために必要です。

口頭のみの契約では、細かく取り決めたルールや約束ごとを後で確認することはできませんが、契約書があれば内容の把握や確認ができます。

記載された内容を遂行すればよいため、円滑な取引につながるといえます。

トラブルを防ぐため

契約書の作成は、当事者間のトラブルを防ぐため上でも必要です。

問題が発生したとき、契約内容が確認できる文書があれば、トラブルが拡大してしまう恐れがあります。

当事者間での意見や認識に食い違いを生じさせないために、契約書を作成し内容を文書として残すことが大切です。

コンプライアンス遵守のため

契約書の作成は、コンプライアンス遵守のためにも必要です。

取り決めた条項を目で見てわかるようにしておくことで、社内コンプライアンス意識を高めることにつながります。

クリーンな企業であることが重要視されているため、利害関係者へ透明性をアピールする材料にもなるでしょう。

作成者

契約書の作成は、取引する当事者です。

たとえば売買契約を結ぶ場合、売主と買主が当事者となるため、どちらが作成しても問題ありません。

仮に売主が契約書を作成したときは、買主が内容を精査し気になる条項などについて修正依頼や交渉を行い、内容を決定します。

当事者の双方が納得した上で契約を締結しましょう。

契約方法の種類

契約

契約方法の種類は以下の4つです。

  1. 口頭契約
  2. 書面契約
  3. 電子契約
  4. 公正証書

それぞれ説明します。

口頭契約

「口頭契約」とは、契約内容を書面化せずに、言葉のみの口約束で結ぶ契約です。

民法では、一部の契約を除き、当事者の意思表示が合致すれば契約書作成などによる書面化がなくても契約は成立するとされています。

ただし口頭契約でも当事者間で合意がなければ成立しません。

後で本当に合意したのか、そもそもどのような取り決めをしたのか確認できるように、契約内容を書面化した契約書を作成しておくことが望ましいといえます。

書面契約

「書面契約」とは、印刷や製本で紙媒体の契約書を作成し、すべての当事者が署名・押印して契約を結ぶ契約方法です。

どのような内容で契約を結んだのか文書化するため、明確にできることがメリットといえます。

次に説明する電子契約とは、契約した証拠の形式が紙またはデータであるかの違いがあります。

書面契約では、本人の直筆署名と印鑑押印で本人性を担保するのに対し、電子契約ではインターネット上で電子署名やタイムスタンプを付与して当事者による合意を示します。

電子契約

「電子契約」とは、電磁的記録で契約書を作成し、締結する契約です。

PDFファイルなどの電子データを使って契約書を作成し、すべての当事者が電子署名やタイムスタンプを付与するなどの方法で合意を示し、契約を結びます。

当事者の対面や郵送などの必要がないため、遠方などで対面の契約が難しい場合でも、手間やコストはかけずに契約を締結できます。

公正証書

「公正証書」とは、個人または法人からの嘱託によって、公務員である公証人が権限に基づき作成する公文書です。

公文書とは、国や地方公共団体機関、公務員などが職務として作成する文書のため、強い形式的証明力が働きます。

公証人の作成した公正証書は、公正の効力が生じるため反証がなければ完全な証拠として使えます。

公正証書は、不動産売買・金銭の貸借・遺言・離婚における養育費または慰謝料など法律行為に関する取り決めを行うときであれば作成できます。

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契約書作成の流れ

名刺交換

契約書を作成する場合には、主に以下の5つの流れで手続を進めていきます。

  1. 内容の確認
  2. ドラフトの作成
  3. 内容の確定・製本
  4. 署名・押印・収入印紙の貼付
  5. 郵送・保管

1.内容の確認

契約書を作成するときは、当事者間でどのような取引で契約を結ぶのか、内容を確認してください。

契約条項として盛り込む内容や合意内容を、当事者間で入念に確認しておくことが必要です。

また、契約事項に別途定めておくべき内容の有無なども事前に確認しておきましょう。

2.ドラフトの作成

契約内容を当事者間で確認した後は、ドラフトを作成します。

ドラフトは、契約書を仕上げる前段階の下書きであり、当事者で合意した内容を明確にでいるため、枠組みや条項などの取り決めにつながります。

具体的な表現や細部を詰め、当事者の一方が納得できず、修正箇所があればその理由を付した上で修正案を提案しましょう。

なお、契約書のドラフトに関しては以下の記事を参考にしてください。

契約書のドラフトとは?作成方法と修正できない場合の対処法を解説

3.内容の確定・製本

契約書のドラフトの修正が完了したら、文章に表記のゆれや条ズレなどがないか確認と校正を行い、契約内容を確定させて当事者の人数分の契約書作成に向けた製本をします。

4.署名・押印・収入印紙の貼付

契約書を製本後、すべての当事者で調印します。

紙媒体の契約書は当事者の署名と押印を直接行いますが、法人が当事者の場合は印字された名称箇所に印鑑を押すことが一般的です。

電子契約書では電子契約サービスなどを通じた電子署名やタイムスタンプ付与で契約を結びます。

5.郵送・保管

契約書の調印後は、すべての当事者がそれぞれ控えを保管します。

たとえば当事者が2名の場合、一方が署名・押印した契約書2部をもう片方の当事者へ郵送します。

郵送された契約書を受け取った当事者は、2部それぞれの署名・押印し、1部をもう一方の当事者へ返送し、互いに1部ずつ保管してください。

なお、電子契約書では電子帳簿保存法に従った保存が必要です。

契約書作成におけるポイント

協力するビジネスマン

契約書作成におけるポイントは以下の10個です。

  1. 当事者間で内容を決める
  2. ひな形をそのまま使わない
  3. リスクをカバーできる内容で作成する
  4. 法律に基づいて作成する
  5. 権利・義務を記載する
  6. 業界用語を使用しない
  7. 曖昧な表現は避ける
  8. 数値など具体的に記す
  9. 印紙貼付の必要性を確認する
  10. 割印をする

それぞれ説明します。

なお、契約書の作成方法やひな形については、以下の記事を参考にしてください。

契約書の作成方法とは?雛形を使った書き方のコツわかりやすく解説

当事者間で内容を決める

契約書を作成するときは、必ず取引を行う当事者間で内容を決めましょう。

片方の当事者が一方的に決めた契約内容では、契約書作成に関与しなかった当事者に不利な内容や条項が盛り込まれている恐れがあります。

内容を確認せずに署名・押印をしてしまい、契約締結すると合意したことになるため、後で不利な条項について不満や主張をしても通りません。

よい取引につなげるためにも、契約書の内容は必ず当事者間で決めるようにしてください。

ひな形をそのまま使わない

契約書の作成において、インターネット上でダウンロードできるひな形をそのまま使わないようにしてください。

ひな形は一般的な契約形式の内容であるため、取引に合わないものを流用してしまうと、トラブルを起こす恐れがあります。

条項の見直しや必要に応じた編集が必要であるため、ひな形をそのまま使用しないでください。

【契約書の書き方】構成と具体例をテンプレートでわかりやすく解説

リスクをカバーできる内容で作成する

契約書を作成するときは、取引を行う上で発生するリスクをカバーできる内容を記載しましょう。

たとえば売買契約の場合、売主と買主はそれぞれ以下のリスクをカバーする目的意識で契約書を作成することが大切です。

売主のリスク
  • 代金の未回収が発生する
  • 商品不良でクレームや過大な請求をされる
  • 仕入れが間に合わず納品できなくなる
  • 輸送中に商品が破損する
買主のリスク
  • 納期が遅れる
  • 商品不良があっても対応されない
  • 代金前払い後に商品が届かない
  • 商品の知的財産侵害で損害賠償請求を受ける
  • 商品供給が打ち切られる
  • 商品の仕様が変更される
  • 顧客先で商品の不良が発覚し賠償請求を受ける

法律に基づいて作成する

契約書を作成するときは、法律に基づいて作成しましょう。

関連する法律や判例をリサーチし、記載する法律用語は法的な定義で使用することが必要です。

たとえば売買契約書の作成では民法や商法の売買についてのルールを調べておくこと、請負契約書の作成においては民法上の請負に関するルールを確認しておくことが必要といえます。

権利・義務を記載する

契約書を作成するときは、当事者の権利と義務を常に意識することが必要です。

そのため契約条項は、どの当事者の権利と義務について定める内容か意識して決めることが必要といえます。

そのため契約条項に主語がなく、どの当事者の権利または義務に関する記載か明確でない書き方などは、契約書として適切といえないため注意しましょう。

業界用語を使用しない

契約書を作成するときは、業界用語や社内用語など、一部の関係者でなければ理解できない用語の使用は避けましょう。

第三者でも理解できる正式名称で記載しておかなければ、訴訟になった時の証拠書類として使えません。

また、省略した言葉を使ってしまうと、正しい意図が伝わらず、異なる意味で捉えられてしまう恐れもあるため注意しましょう。

曖昧な表現は避ける

契約書を作成するときは、曖昧な表現は避けて明確に内容を記載しましょう。

いろいろな意味に捉えられる表現で記載すると、共通認識と解釈していたはずが実際には異なっており、裁判などで不利になる恐れもあるため注意してください。

数値など具体的に記す

契約書を作成するときは、できる限り数値などを具体的に記しましょう。

たとえば日付・期限・報酬・数量・重要などは数値で明確に記載しておくことが必要です。

印紙貼付の必要性を確認する

契約書を作成するときは、収入印紙の貼付の必要性を確認しましょう。

印紙税法上の課税文書に該当する書類は収入印紙が必要です。

契約書が課税文書に該当する場合でも、記載の内容によっては収入印紙が不要の場合もあります。

ただし文書の種類や記載された契約金額で必要と判断される場合は、収入印紙を貼って消印をすることが必要です。

収入印紙の必要性の確認と、必要であれば適切な額の収入印紙を貼付・消印を行ってください。

なお、収入印紙が必要な契約書については、以下の記事を参考にすることをおすすめします。

収入印紙が必要な契約書とは?種類や金額・貼る上でのルールを解説

割印をする

契約書を作成したとき、複数の部数に印影がまたぐように割印をします。

原本と控えがすべて同じ内容であることを証明するために行いますが、契約書の不正な改ざんや複製などを防ぐために必要です。

割印そのものに法的効果はありません。

ただし契約内容を巡るトラブルが起こったときは、契約締結の内容が正しいものと証明する効果はあります。

なお、契約書の割印のルールについては、以下の記事を参考にしてください。

契約書の割印とは?ルールや適した印章の種類・訂正したいときの対処法を紹介

まとめ

契約書の作成は、当事者間で契約締結したことを証明するために必要です。

口頭でも契約は成立するものの、後で契約内容を確認するときや、訴訟になったときの証拠書類を残す意味でも必要といえます。

ルールや決まりごとの多い契約は、抜けや漏れを防ぐために曖昧な表現や省略などはせず、法的効力の認められる内容で作成することが必要です。

契約書は一部の契約を除き作成が義務付けられているわけではないものの、トラブルが起こったときのためにも正しい記載方法で作っておきましょう。