契約書の割印とは?ルールや適した印章の種類・訂正したいときの対処法を紹介

契約書の割印とは、複数の文書にまたがって印鑑を押すことです。

複数部の契約書を作成するときに、各部を互いに重ね合わせた部分に印鑑を押します。

契約書以外にも領収書などでも割印をしますが、原本と控えに関連性があることや、同じ内容であることを証明するために行います。

そこで、契約書の割印について、ルールや適した印章の種類、訂正したいときや押し忘れたときの対処法を紹介します。

契約書の割印とは

黒板に書かれた資料とアイコン

契約書の割印とは、2部以上作成する契約書をまたぐように印鑑を押すことです。

主に契約書の原本と控え、または正本と副本などで割印をすることが多いといえます。

契約当事者の人数分の契約書を用意する場合、すべてが同じ内容であることを証明するためにそれぞれの契約書にまたがって押印します。

割印について、以下の2つを説明します。

  1. 目的
  2. 効果

目的

割印の「目的」は、文書が改ざんされたりコピーされたりすることを防ぐことです。

文書が同一または関連していることを証明するために割印をします。

そのため、仮に複数枚の契約書を作成し、当事者それぞれが1部ずつ保管する場合などにおいても、すべてが同じ内容の契約書であることを証明できます。

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効果

割印は、契約書類の一方的な改ざんや複製などを防げる効果があります。

たとえば割印をした二通の同じ契約書のうち、いずれか一方が改ざんされたとしても、もう一方の契約書と内容が異なれば改ざんされたと証明できます。

割印そのものに法的効果はないものの、契約内容を巡るトラブルが生じたときには、契約を締結したときの内容が正しいものであることを証明する効果はあるといえます。

割印とその他印鑑を押す行為の違い

契約書などの文書に印鑑を押す行為は、割印以外にもいろいろあります。

そこで、割印とその他印鑑を押す行為の違いについて、以下に分けて説明します。

  1. 割印
  2. 契印
  3. 捨印
  4. 消印
  5. 捺印
  6. 止印

割印

「割印」とは、契約書など2部以上の文書が同じであることを証明するため、書類の改ざんを防ぐためにすべての契約書にまたがって印鑑を押すことです。

複数の書類にまたがって印鑑を押すため、一方の書類のみを見れば、印影の一部分のみしか押されていない状態となります。

ただし他の書類の印影と合わせると、1つの印影を作るため、つながりのある文書であると証明できます。

契印

「契印」とは、複数のページに渡る契約書などの書類が1つの文書であることを証明するため、ページ間や袋とじ部分に印鑑を押すことです。

途中のページの差し替えや抜き取りを防止できるため、結果的に改ざんを防げます。

捨印

「捨印」とは、契約書などの文書で訂正しなければならない部分が生じたときを鑑みて、事前に訂正印となる印鑑を欄外に押しておくことです。

契約書の内容変更においては、訂正箇所ごとに二重線を引き、訂正印を押して修正します。

修正が必要なたびに訂正印が必要となるため、時間や手間を省くために欄外に捨印を押しておくケースもあるようです。

ただし捨印による訂正印の効果は、文書の内容ではなく誤字・脱字などの軽微な誤記に限定されているため、内容を書き換えられるわけではありません。

消印

「消印」とは、収入印紙と台紙にまたがり印鑑を押すことです。

収入印紙が使用済みであることを示すために印鑑を押しますが、他にも消印を押すことで印紙税を納めたことになるとされています。

そのため収入印紙の流用・再使用を防ぐことと、貼った印紙で印紙税を納付することの2つの目的があるといえます。

捺印

「捺印」とは、自筆の署名とともに印鑑を押すことです。

「署名捺印」を省略した言葉であり、印鑑を押す行為といえますが、署名を求めない「押印」よりも署名がある「捺印」のほうが法的証明力は高いと考えられます。

捺印は、契約書・銀行書類・稟議書・決裁書・発注書・発注請書など幅広い書類で行われています。

止印

「止印」とは、契約書などの文書の末尾の余白に、印鑑を押すことです。

文書内容の終了を示す意味で押しますが、契約書の内容を不正に書き足されることを防ぐためといえます。

止印は署名捺印(または記名押印)で使った印鑑と同じ印鑑を押しますが、文字にかぶらないように注意してください。

なお、止印を押さなくても、手書きで「以下余白」と記載すれば同じ効力を得ることはできます

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契約書の割印に関するルール

契約書と印鑑

契約書の割印は、順番などに特に決まりはありませんが、正しい押し方とされる慣例について以下に分けて説明します。

  1. 契約書と控え
  2. 3枚の契約書に割印を押す場合
  3. 領収書と控え

契約書と控え

契約書の原本と控えがある場合は、原本が上、控えを下に、2つの文書をまたぐように割印を押します

原本に残る印影は下半分、控えは上半分の印影が残ります。

割印は文書上部の白紙部分に押しますが、複数人の割印が必要な場合や、上部に押すスペースがないときは、横の空白を利用しても問題ありません。

3枚の契約書に割印を押す場合

契約書原本と、控え2部の合計3部を作成するときは、すべての文書に割印が必要となるため、まずは原本と1通目の控えを割印し、その後に1通目の控えと2通目の控えで割印をします。

また、割印専用の縦長判子を使用すれば、一度に3部にまたがり割印をすることもできます

領収書と控え

領収書と控えの割印は、2つに関連性を持たせて金額が一致することを証明するために行います。

そのため領収書原本が控えから切り離される場所に割印を押してください。

また、領収書に収入印紙を貼るときには消印が必要です。

消印を押すことで、領収書と収入印紙が対応したものであると証明できます。

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契約書の割印に使用する印鑑

契約書に割印をするとき、使用する印鑑(印章)選びに迷ったときは、以下の3つを参考にするとよいでしょう。

  1. 種類
  2. サイズ
  3. 書体

それぞれ説明します。

種類

契約書の割印で使用する印鑑(印章)は、捺印で使ったものでなくても問題ありません。

たとえば個人が契約するときの契約印には実印を使い、割印用には認印を使うこともあります。

法人は割印専用の印鑑を作成する場合もあり、たとえば法人名の末尾に「◯◯之割印」などの文言を入れて作ることが多いようです。

特に3枚に渡る割印では、割印専用の縦長の印鑑があれば、押しやすいといえるでしょう。

サイズ

契約書の割印で使う印鑑のうち、法人などが使う割印専用の縦長タイプのものであれば、以下大きさになります。

  • 12.0mm×30.0mm
  • 13.5mm×33.0mm
  • 15.0mm×36.0mm

サイズによって入れることのできる文字数は異なるため、改行が必要な長めの名称のときや、全体の文字数が多くなるときは15×36mmの印鑑を作成するとよいでしょう。

書体

契約書の割印に使う印鑑の書体は、特に決まりはありません。

ただし契約書に使用することが多いため、複製しにくく風格のある書体を採用したほうがよいといえます。

そのため、篆書体または古印体がおすすめです。

「篆書体」は、印鑑で使用する書体のうち、実印に用いることが多いといえます。

日本銀行発行の紙幣にも使用されているため、現代文字と異なる偽造のしにくさや、文字が印鑑枠に多く接するため落としても欠けにくいといった特徴があります。

もう1つの「古印体」は、丸みのある字体が特徴の書体で、線の太さが均一でないことが特徴です。

複製しにくく、実印や銀行印など用いりやすい書体といえます。

契約書の割印を訂正・忘れたときの対処法

契約書の署名と捺印

契約書の割印を正しく押すことができなかったときや、うっかり押し忘れてしまったときの対処法を、以下の2つに分けて説明します。

  1. 割印を訂正したい場合
  2. 割印を忘れた場合

割印を訂正したい場合

契約書の割印がうまくできず、訂正したいときには、別の場所に押し直しましょう

朱肉が薄かったときなど、重ねて印鑑を押してしまうと、印影がずれるため割印の役割を果たすことができなくなります。

失敗した割印に二重線を引く必要はないため、別の空白部分に再度印鑑を押して割印をしてください

割印を忘れた場合

契約書に割印を押し忘れたときでも、契約印や署名があれば法的効力には影響ありません。

後で割印をしても問題ありませんが、すでに取引先へ控えなどを渡しているときには、必ず同じ内容か確認をした上で割印をするようにしてください。

まとめ

割印は、2部以上の契約書など、文書の作成において同一の内容であることを証明するために行います。

複数の契約書にまたがって印鑑を押すことであり、当事者の一方に都合のよい契約内容へと改ざんされることを防ぐために必要です。

手元に契約書の原本があったとしても、割印がなければ控えを改ざんされてしまう恐れがあります。

不利な内容への改ざんを防ぐためにも、必ず割印を行うようにしてください。