契約書とは?法的な効力や流れ・書き方とポイントをわかりやすく解説

契約書とは、当事者間で契約が結ばれたことを証明するための書面です。

一部の場合を除いては、必ずしも作成が義務付けられているわけではなく、実際には口約束であっても契約は成立します。

しかし、契約書を作成しておけば、後でどのような内容で契約を締結したのか確認でき、万一トラブルが起こったときにも契約内容を証明した上で問題解決へ進めます。

特にルールや決まりごとの多い契約においては、抜けや漏れを防ぐためにも契約書を作成しておきましょう。

そこで、契約書について、法的な効力や流れ、書き方とポイントなどわかりやすく解説します。

契約書とは

契約書

「契約書」とは、契約が締結されたことを証明する書面です。

取引で当事者となる方同士で結んだ契約の内容について、双方が確認した上で文書化したものといえます。

取り決めた内容や条項を精査するときや、社内のコンプライアンス意識を向上させる上でも契約書は必要といえます。

透明性や法令遵守に対する意識の高さを、消費者や取引先にアピールできるため、信用獲得にもつなげやすくなります。

取引において契約書を作成する重要性を知る上で、以下の4つに関する理解を深めておきましょう。

  1. 覚書・誓約書との違い
  2. 口頭契約との違い
  3. 電子契約との違い
  4. 個人契約書との違い

それぞれ説明します。

覚書・誓約書との違い

「覚書」とは、契約書作成の前段階で合意した内容の取りまとめや、既存の契約書を補足するための文書です。

文書の性質は契約書に近いため、表題が覚書の場合でも法的に見れば契約書とみなされることもあります。

「誓約書」は一方が他方に差し入れる文書であるため、合意を示す書類ではありません。

契約書は双方合意のもとで作成するため、覚書は性質が近く共通する部分が多いのに対し、誓約書は一方が作成して署名・押印して相手方に差し出す性質の異なる文書です。

口頭契約との違い

多くの契約は、契約書を作成せずに口頭のみの約束でも成立します。

口約束のみで成立する契約を「諾成契約」といいますが、一定の要式が必要とされる契約は「要式契約」です。

たとえば保証契約の場合、民法で書面でなければ効力は発生しないとされているため、契約書の作成が必要となります。

契約を成立させるためには、当事者間で意思を表示し、合意を得ることが必要です。

そのためどのような取り決めをしたのか、口約束のみではなくその内容を書面に落とし込んだ契約書を作成したほうがよいといえます。

電子契約との違い

インターネットによる取引が増えた現在では、電子契約を取り入れる企業も増えています。

電子契約であれば当事者が直接対面することなく、書面を郵送する手間もコストもかからず、遠隔地であっても瞬時に契約を締結できます。

電子契約とは、電磁的記録で契約書を作成し、締結する契約です。

PDFファイルなどの電子データで契約書を作成し、当事者同士で電子署名などを行って契約を結びます。

遠方にいる者同士や、何らかの事情により、対面による契約締結が難しい場合でも、リモートによる契約締結と管理・保存が可能となります。

書面契約では紙媒体での契約書を作成するのに対し、電子契約は電子データを使用するといった違いがあります。

個人契約書との違い

「個別契約書」とは、取引の具体的な内容に関する約束ごとを定めた契約書です。

新規契約において最初に一度のみ締結・作成する「基本契約書」と補完し合う関係にある文書であり、たとえば発注書・注文書などが挙げられます。

基本契約書で継続取引に関する共通ルールを取り決めておき、個々の案件ごとの取引に関しては個別契約書で対応します。

「法人契約」や「個人契約」など、会社と個人事業主では契約当事者が異なるケースはあるものの、基本契約書や個別契約書を作成することに大きなルールの違いはありません。

そのため個人契約書と法人契約書のどちらも口頭・書面・電子のいずれの方式でも締結は可能とされています。

ただし法人は個人事業主よりも事業規模が大きく、社会的信用を失ったときのダメージも強いため、コンプライアンスを徹底する上でも契約書作成のもと契約締結することがほとんどです。

また、法人と個人との間での契約締結においては、消費者契約法などにより消費者保護を目的とする法令規制が適用されることもあるため、契約書は必ず作成しておきましょう。

契約書を作成する理由

契約書を確認する人

契約書を作成せず、口約束で契約を結んだとしても、一部を除いて契約は成立します。

しかし発注書や注文請書を含め、多くの契約書が作成されていますが、その理由は以下の3つの機能が関係するといえます。

  1. 確認機能
  2. 紛争予防機能
  3. 証拠機能

それぞれ説明します。

確認機能

契約書を作成する理由として、契約内容を理解した上で締結するのか熟考できる機会を得ることが挙げられます。

利益を得ることができる契約でも、許容できるリスクに関しても判断が重要です。

取引することにおけるメリットやデメリットを確認し、契約を結ぶべきか慎重に判断するためにも、契約内容を書面化することによりその中身を目で見て確認できます。

判断ミスを防ぐ上でも、契約書の作成は必要と考えられます。

紛争予防機能

契約書を作成する理由として、当事者間で契約内容を巡る紛争を防ぐことが挙げられます。

口頭のみの契約であれば、契約内容が曖昧になり、「言った」「言わない」といった水掛け論による紛争が起こりがちです。

しかし契約書に内容を記載しておくことで、口頭では曖昧になりがちな事項も明確にできます。

双方の認識に相違がないか、改めて確認する上でも契約書を作成しておくとよいでしょう。

証拠機能

契約書を作成する理由として、契約内容を証拠として残せることが挙げられます。

仮に当事者間で紛争が起こった場合でも、契約書があれば訴訟における重要な証拠となります。

契約書には署名または押印があるため、民事訴訟法でも真正に成立したものと推定されることになり、書面に定められたことが重視されます。

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契約書作成の法的な効力

契約書を作成し、書面化された内容については、原則、当事者を拘束することになります。

記載された内容に関する権利を取得できる反面、義務や責任を負うことにもなるため、当事者間でトラブルが発生すれば内容に沿った手順やルールで処理されます。

ただし契約書に記載されている内容が、公序良俗に反する場合や法律上の強行規定に反するときには、民法により無効として扱われます。

また、消費者の利益を一方的に害する場合も、消費者契約法により条項無効となるため注意しましょう。

錯誤・詐欺・強迫などによる契約についても契約自体が取り消しとなるため、法的効力が認められない条項は定めないようにしてください。

契約書を作成し、双方が納得のもとで締結する段階において、条項を精査することが大切です。

契約書作成の流れ

契約書の署名と捺印

取引において契約書を作成する場合には、主に以下の5つの流れで手続を進めていきます。

  1. 取引内容の確認
  2. ドラフトの作成
  3. ドラフトの修正
  4. 契約内容の確定・作成
  5. 契約書の調印

それぞれ説明します。

ファクタリング契約が締結されるまでの流れとは?

取引内容の確認

取引において契約書を作成する場合、まずは当事者間でどのような取引を行うのか、その内容を確認しましょう。

新規事業の取引などの場合、従来までの事業にはない特徴などがあれば、より注意して取り決めを行う必要があります。

契約事項に別途定めておくべき内容はないか、事前に確認しておきましょう。

ドラフトの作成

取引において契約書を作成する場合、契約内容を正式に書面化する前段階のドラフトを作りましょう。

ドラフトは、最終的に契約書として仕上げる準備段階の書面であり、下書きともいえる文書です。

当事者同士の合意した内容を明確にするため、契約の基本的な枠組みや条項などを取り決めやすくなります。

ドラフト作成後に、具体的な表現や細部を詰めていくとよいでしょう。

ドラフトの修正

取引において契約書を作成する場合、前段階として作ったドラフトの修正を行いましょう。

当事者双方の合意のもとで最終的に契約を結びますが、細かな部分を詰めることが必要です。

いずれか一方が納得できず、修正を希望する箇所があれば、理由を付した上で修正案を提案することになります。

契約内容の確定・作成

取引における契約書の作成では、契約交渉を経てドラフト全体の修正がなくなった時点で契約内容を確定させます。

その上で最終的な契約書を作成しますが、文章に表記のゆれや条ズレなどがないか校正を行いましょう。

契約書の調印

取引における最終的な契約書を作成した後は、当事者双方で調印します。

紙媒体の契約書であれば、自署と押印を直接行います。

法人が当事者の場合は、印字された名称箇所に押印することが一般的です。

電子契約書であれば、電子契約サービスなどを通じた電子署名で契約を結びます。

調印した後は、当事者それぞれが控えを保管しますが、電子契約書では電子帳簿保存法に従った保存が必要となるため注意しましょう。

契約書の書き方

契約書を作成するときには、以下の7つの項目に書き方についてコツを押さえておくとよいでしょう。

  1. 構成
  2. 表題
  3. 前文
  4. 本文
  5. 後文
  6. 契約締結日
  7. 署名・捺印

それぞれ説明します。

構成

契約書を作成するときには、まずは文書の構成を決めます。

構成では、表題・前文・本文・後文などが例として挙げられます。

契約締結日の記載や、署名・捺印も忘れないようにしましょう。

表題

契約書を作成するときには、何に関する内容を記した文書なのか、タイトルを決定します。

表題はいわゆる書面のタイトルであり、契約内容を端的に表現したほうがわかりやすいでしょう。

複数の契約を含む契約書の作成については、メインの契約を表題にし、業務委託契約書等と記載したほうがよいといえます。

前文

契約書を作成するときには、誰が当事者でどのような契約を結ぶのか、前文として端的に記載が必要です。

権利義務が発生する書面である以上は、誰が当事者なのか明確にすることが大切です。

契約内容の「甲」と「乙」のそれぞれを定義しますが、3名以上の当事者が関与する契約においては「丙」「丁」を定義します。

本文

契約書を作成するときには、具体的な契約内容を本文に記載しましょう。

具体的な契約内容を記載していきますが、規定を複数設定する場合は「条」ごとの内容を括弧書きで端的に記します

さらに「項」や「号」で細かく分けて、規定する内容を記載しましょう。

後文

契約書を作成するときには、契約書が何通作成され、誰が何を所持するのか後文で記載しましょう。

法的効果に影響を与える内容ではないものの、誰が原本を持っているのか、何通作成されたのか把握できるため、偽造による作成などのトラブルを防ぐことができます。

契約締結日

契約書を作成するときには、いつ契約書が作成されて締結されたのか、契約締結日を記載しておきましょう。

口頭のみの契約でも成立するため、実際に口約束で契約が成立した日と契約書作成日が合わないケースもあるといえますが、多くは同日で作成します。

署名・捺印

契約書を作成するときには、当事者間の署名・捺印が必要です。

法人が当事者の場合は、代表者や委任された担当者の署名・捺印が必要となりますが、委任者の場合はどのような立場の者かを明確にしておきましょう

代表者の場合も、「代表取締役〇〇」との記載がされます。

連帯保証人・媒介業者・立会人など、当事者が複数に渡り関与する者が増えるときには、それぞれの立場を記載しておくことを忘れないようにしてください。

契約書作成におけるポイント

契約書に記載する人

契約書を作成するときには、以下の8つのポイントを意識するとよいでしょう。

  1. 言葉を省略しない
  2. 曖昧な表現は避ける
  3. 取引の目的・背景を理解する
  4. 当事者双方の権利・義務を洗い出す
  5. トラブルを洗い出す
  6. 法的な効果を確認する
  7. 法令違反の有無を確認する
  8. 妥当な内容か確認する

それぞれ説明します。

言葉を省略しない

契約書を作成するときには、言葉を省略しないようにしてください。

業界用語や社内用語など、一部にしか理解できない言葉を使うのではなく、正式名称での記載が必要です。

言葉を省略したことにより、意図が正しく伝わらず、異なる意味で捉えられたことでトラブルに発展するとも考えられます。

万一紛争が起こったときの証拠書類として役立てることのできる契約書を作成しましょう。

曖昧な表現は避ける

契約書を作成するときには、曖昧な表現は避けて明確に内容をあらわしましょう。

いろいろな解釈が可能となる表現や、様々な意味で捉えられる言葉は、トラブル発展のもとです。

共通の認識だった場合でも、実際に訴訟になったとき、異なる解釈をしていたと主張される恐れもあります。

解釈が曖昧であれば取引にも支障をきたすため、表現方法にも工夫が必要です。

取引の目的・背景を理解する

契約書を作成するときには、取引の目的や背景・事情を理解することが大切といえます。

取引の目的や背景次第で、相手に譲れない事項や妥協できないラインが変わります。

当事者双方の権利・義務を洗い出す

契約書を作成するときには、当事者双方がそれぞれどのような権利を獲得し、義務を負うのか洗い出してみましょう。

互いの権利と義務に関する認識が一致していなければ、取引においてトラブルや紛争が起こる恐れがあります。

そのため契約書に記しておくことで、取り決めた内容の証拠となり、トラブル発生を未然に防ぎやすくなるでしょう。

トラブルを洗い出す

契約書を作成するときには、想定されるトラブルを洗い出しておくことも必要です。

発生したときにダメージが大きく、不利益となるトラブルに関しては、防御策を前もって記載しておくと安心です。

直接取引する相手との取引において、継続中と終了後に起こり得るトラブルと、第三者間で起こり得るトラブルなども想定し、防ぐ上で何が必要か検討しておきます。

物損・人的な損害や営業利益などの逸失利益の喪失など、様々なリスクなどを想定した上での取り組みが必要です。

法的な効果を確認する

契約書を作成するときには、規定として定めておくことによる法的な効果を確認しましょう。

契約書に定めておけば、取引においては契約内容による規定が適用されます。

ただし契約書の定めが法律の強行法規に反していれば、法律の定めが適用されるため、契約書の内容すべてが有効になるとは限りません。

また、契約に関する紛争で裁判になった場合、多くは過去の判例に従った判決となります

作成した契約書が無効として扱われないためにも、必ず記載するべき条文は盛り込んでおくことが必要です。

法令違反の有無を確認する

契約書を作成するときには、契約内容が法令違反の有無を確認しましょう。

契約書に定めるべき事項が法令に沿った内容になっているか、その他、法令で規制されていることの有無などを確認します。

妥当な内容か確認する

契約書を作成するときには、取引の重要性や取引相手とのパワーバランスを踏まえた上での、妥当な内容か確認しましょう。

妥当な内容か確認しておくことで、契約交渉が格段に早く進むことがあります。

取り扱いの商品やサービスの種別・業界で契約締結までのスピードは異なるでしょう。

ただし多くのビジネスでは迅速な決断・交渉が求められるため、ビジネスチャンスを失わないためにも素早く確認・行動することが重要です。

法律違反した契約書の有効性

契約を結ぶ当事者同士で取り決めたルールを契約書としてまとめることになります。

仮に法律に違反した契約書を作成した場合の有効性について、以下の3つに分けて説明します。

  1. 強行規定
  2. 任意規定
  3. 取締規定

それぞれ説明します。

強行規定

「強行規定」とは、当事者の意思で異なる法律効果を生じさせない規定です。

たとえばある条項が強行規定の場合、当事者が条項と異なる契約を結んだとしても無効となります。

公の秩序に関する法規などは強行規定であることが多いものの、個々の規定の趣旨などに照らした判断がされます。

そのため仮に契約書で強行規定に反する内容を定めていたとしても、法律による内容が強制的に適用されるため、一方のみが有利になる契約などはできません。

社会的秩序を守らない規定や、立場の弱い当事者を追い込む規定を取り決めたとしても、強行規定に反する契約内容として無効になります。

任意規定

「任意規定」は当事者の意思で異なる法律効果を生じさせられる規定です。

たとえば任意規定の当事者が、この規定と異なる内容の契約をしても無効とはならず、当該法規定よりも優先されます。

ルールを定めているものの、異なる内容を定めることができるため、自由な契約で独自ルールを設定できます。

民法上の請負契約では、目的物の引渡と報酬の支払いは同時と定められていますが、後払いや分割払いにできるのは任意規定であるからです。

取締規定

「取締規定」とは、行政上の目的で一定行為を禁止・制限する規定です。

たとえば営業免許のないタクシー営業を禁止する道路運送法は取締規定ですが、取締規定は行政上の目的に基づくため、取締規定に違反して行政上の罰則の対象にはなっても契約の効力まで否定されません。

ただし契約は無効にならない場合でも、行政法規に違反するべきではないため、強行規定と同様に従うことは必要です。

まとめ

契約書は、当事者間で契約が結ばれたことを証明する書面です。

一部の場合を除いて、必ずしも作成が義務付けられているわけではなく、口約束であっても契約は成立します。

しかし、トラブルが起こったとき、どのような内容で契約締結したのか証明するためにも作成しておきましょう。

特にルールや決まりごとの多い契約においては、抜けや漏れを防ぐためにも契約書を作っておくべきです。

また、契約書を作成するときには言葉を省略せずに曖昧な表現も避け、法令違反に該当しない内容か確認した上で作成してください。