組織とは、共通の目的を目指して、役割や機能が分化・統合されている集団です。
社会には、地域の自治会や学校、そして企業などいろいろな組織がありますが、その中でも会社組織は利益を上げて社会貢献するための集団であり、他とは特性が異なります。
組織を強固にすれば、人材不足解消や生産性向上につながる可能性もあるため、DX化や人材募集の前に状況を見直すことから始めましょう。
そこで、組織とは何なのか、役割や目的・理想の集団作りと強固化で必要なことを解説していきます。
目次
組織とは
組織とは、目的を達成するために構成される集団のことです。
共通の目的を達成するため、活動する集団が組織であるため、属するメンバーではなく仕組みを指す言葉といえます。
たとえば会社組織は、利益を追求することを目的とした集団・団体です。
ビジネスにおけるプロジェクトを発足し、組織に属する従業員で遂行・完了するために作られる仕組みやシステムといえるでしょう。
組織の役割
経営学者のピーター・ドラッカーは、会社組織を経営陣が運営する上で、次の3つの役割を必要とする組織論を提唱しています。
役割 | 概要 |
組織に特有の目的と使命を果たすこと | 企業独自の商品・サービスの開発・提供につなげる |
生産的活動で成果をあげさせること | 働くことで生きがいを感じられる環境づくりにつなげる |
社会に与えるインパクトの処理と社会的に貢献すること | 社会活動におけるネガティブ部分を処理して社会貢献する |
組織構成における3つの要素
アメリカの経営学者のチェスター・バーナードが、組織を成立させる要素について、以下の3つを挙げています。
- 共通目的
- 協働意思
- 意思疎通
それぞれ説明していきます。
共通目的
組織を構成する共通目的とは、集団で達成するべきとされることです。
そもそも組織を構成した理由やゴールとも言い換えることができ、それぞれのメンバーが同じ方向を見ながら協調性を持ち、主体性を持った活動ができるようになります。
協働意思
組織を構成する協働意思とは、メンバーそれぞれが互いの役に立ちたいと思うことです。
貢献意欲ともいわれることであり、前向きな意欲が組織を突き動かし、モチベーションや生産性を向上させるため売上を高めることにもつながります。
意思疎通
組織を構成する意思疎通とは、メンバー同士のコミュニケーションにより、組織を円滑に機能させることです。
会社経営においては、社員同士や部下と上司の意思疎通ができていないことで、業務の生産性に悪影響を及ぼします。
定期面談など相談の場を設けることや、気軽にコミュニケーションを取れる雰囲気の職場づくりが大切です。
組織の目的
組織は、同じ目的を達成するための集団といえますが、会社組織では従業員が集まり、構成・維持し続けることが必要といえます。
ビジネスにおける会社組織は、プロジェクトを達成する上での売上額や契約数などの数値化・可視化した部分を目的と考えがちです。
しかし組織の目的は、本来次の3つといえるでしょう。
- 意義目標の達成
- 成果目標の達成
- 行動目標の達成
それぞれ説明していきます。
意義目標の達成
組織の目的として、意義目標を達成することが挙げられます。
意義目標とは、達成することで現状を打破し、課題などを解決できる突破口を見つけるための目標といえます。
会社経営においては、企業理念や経営目標などを設定し達成に向けて活動しますが、そのために設定する目標が意義目標です。
社会において存在し続けるための目標であり、会社がどうすれば社会へ貢献できるか、そのための活動ともいえるでしょう。
成果目標の達成
組織の目的として、成果目標を達成することが挙げられます。
成果目標とは、部署や社員などが達成するべき具体的な数値などであり、目に見える目標です。
どの程度達成できたのか、可視化しやすいことがメリットといえるものの、数字を追うことを追及しすぎる恐れもあります。
行動目標の達成
組織の目的として、行動目標の達成が挙げられます。
設定した目標を達成するために何をするべきか、その行動は部署や担当する業務によって一人ひとり異なります。
それぞれの部署や業務において、目標を意識しながら、日々行動することが必要です。
組織構造の種類
組織構造は、組織を成立させる構成を分類したものといえます。
たとえば会社組織における組織構造の種類が異なれば、それぞれの業務・責任・権限などの違いを把握できるでしょう。
組織構造を明確にすれば、意思決定のフローを把握しやすくなり、円滑なコミュニケーションや生産性向上につながります。
組織構造の種類は主に以下の5つであるため、それぞれの特徴など確認しておきましょう。
- 事業部制
- 機能別
- マトリックス型
- チーム型
- カンパニー型
事業部制
組織構造の種類として、事業別に分ける事業部制の組織が挙げられます。
事業ごとに組織を分けるときには、以下の分類を用いることが多いといえます。
- 商品別
- 顧客別
- 地域別
それぞれの事業部には、開発や営業などの異なる職種の担当者が所属することになります。
そのため事業部ごとが意思決定権を持つため、業務を円滑に進めることができます。
ただし別々の事業部で業務が重複すれば、人件費の負担が重くなる恐れもあるため注意しましょう。
機能別
組織構造の種類として、職務ごとに部門を分ける機能別の組織が挙げられます。
機能別に分ける場合は、以下のとおり組織を区切ることが多いといえるでしょう。
- 研究部門
- 商品開発部門
- 生産部門
- 営業部門
- 広告部門
- 経営部門
主力の商品やサービスに注力し、事業を営む企業が活用することの多い組織構造であり、専門性や独自ノウハウを向上させやすいことがメリットです。
事業部制と違って業務が重複しにくいため、余計な人件費が発生せず、生産性も向上します。
ただし部署ごとに独立してしまい、幅広い視野を持った人材が育ちにくくなることはデメリットといえます。
マトリックス型
組織構造の種類として、事業部制組織と機能別組織の特徴を兼ね備えた組織構造であるマトリックス型の組織が挙げられます。
従業員1人が事業部制組織と機能別組織の部門で仕事を兼務します。
事業部制の組織でメリットとされる業務の円滑化と、機能別の組織のメリットである専門性向上の2つを掛け合わせた組織になることがメリットです。
ただし2種類の部門で業務を兼務するため、優先順位の付け方など注意が必要といえます。
チーム型
組織構造の種類として、プロジェクト遂行に向けて色々な部門に所属する人材が集まるチーム型の組織が挙げられます。
プロジェクト遂行の期間のみチームを作り、完了後は解散して元の所属部門で通常業務を行います。
知識や技術などの能力や専門性が高い人材が集まってチームとなるため、プロジェクトを円滑に進めることができるでしょう。
また、色々な部門の人材が集まるため、新たな技術やサービスが発見されたり思いついたりすることもメリットです。
しかし通常業務と並行しながらチームの一員として活動するため、プロジェクトチームに招集された社員の負担が重くならないように配慮も必要といえます。
カンパニー型
組織構造の種類として、事業部制組織の事業部を分社化したカンパニー型の組織です。
分社化することにより、事業部を独立性の高い会社にすることができます。
そのため事業部制の組織より、意思決定権がそれぞれの会社に認められるため、業務スピード向上につながります。
ただし会社同士のコミュニケーションが少なくなることで、連携が弱まるリスクがあることは留意しておきましょう。
理想的な組織の特徴
会社経営においては、理想的な組織づくりが売上や利益につながるといえます。
よい組織や理想的な組織といわれる集団の多くは、主に次の特徴があると考えられます。
- 資金面に余裕がある
- 社会的な価値が高い
- 居心地がよい
それぞれ説明していきます。
資金面に余裕がある
理想的な組織の特徴として、資金面に余裕があることが挙げられます。
社会や市場の情勢などの変化や流行に左右されてしまい、苦境に立たされ事業継続が難しくなる企業がある中で、余剰資金など資金面に余裕がある会社は強いといえます。
余剰資金があれば、事業へ再投資することや資産運用も可能です。
財務状況が悪化していれば改善させることもでき、何よりも社員の雇用を守ることができます。
組織が存続し続けることは、組織内に所属するメンバーの生活を守ることに繋がるため、資金面に余裕があることは理想的といえるでしょう。
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社会的な価値が高い
理想的な組織の特徴として、社会に提供する価値が高いことが挙げられます。
販売する商品やサービスを購入・利用した人が豊かな生活を送れることや、企業活動のサポートにつながることなど、社会に貢献できることが理想といえるでしょう。
居心地がよい
理想的な組織の特徴として、組織に所属するメンバーが、居心地よく過ごせることが挙げられます。
組織内のメンバー同士の関係が良好であり、互いの意見を尊重できる環境にあれば、社員も働きやすさを感じることでしょう。
また、有給休暇や育児休暇なども取得しやすいなど、ワークライフバランスが整備されている会社は、離職率も低めです。
仕事とプライベートをしっかり分けて、それぞれ充実させることができる職場環境であることは理想といえます。
組織強固で必要なこと
会社経営においては、組織を強固にすることが重要といえますが、そのために必要なことは次の4つです。
- 人事評価の制度化
- 教育制度の確立
- 理念・ビジョンの共有
- 協働システムの構築
それぞれ説明します。
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人事評価の制度化
会社経営において強固な組織を作るためには、従業員それぞれを公平に評価できる人事評価を制度化しましょう。
企業の役に立ち、貢献したいと思う協働意思は、組織を構成する上で必要不可欠な要素です。
従業員が協働意思を持ち、会社に貢献したいと思い働くためには、仕事や業務の成果や結果を正しく評価し、認めてくれる環境が必要といえます。
目標として設定した数字をクリアしても、賃金にも反映されず、役職などポジションも変化しなければ、働いても無駄と感じてモチベーションも上がりません。
仕事に関して公正に評価する人事評価制度があれば、働いて成果を上げても無駄と感じることはなく、むしろさらにモチベーションを上げて生産性の高い仕事ができるでしょう。
意欲を持って仕事に励むためにも、何が会社にとって貢献したことにつながるのか明確にしておき、公平に評価する制度を設けるべきといえます。
何が企業に対する貢献なのか、組織内で周知した上で制定した人事評価制度であれば、従業員のモチベーションの維持・向上、理想の組織づくりにつながることが期待できます。
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教育制度の確立
会社経営において強固な組織を作るためには、従業員一人ひとりの知識や技術など、能力を上げるために教育制度を確立させましょう。
企業が業績を上げ、社会に貢献し続けるためには、組織内で働く従業員それぞれのスキルが高いことが望まれます。
教育制度を確立し、従業員のスキルを向上させることができれば、キャリアアップなどを目標に仕事にやりがいを感じることも可能となるでしょう。
働く意欲ややりがいを大きく持つことができれば、より高い知識や技術を習得することや、磨かれたスキルによる質の高い商品・サービスの販売・提供も期待できます。
そのためにも企業は、従業員が意欲を高めつつ、学ぶことのできる教育環境を整えることが必要です。
どのような教育制度を設けるべきか迷ったときには、従業員の所属する部署や担当業務により、何の資格があれば有利ななど洗い出すことからはじめましょう。
資格取得に向けた教育制度を充実させ、実際に合格し習得できたときには、賃金や役職などに反映させる仕組みをつくることで、よりモチベーションは上がります。
業務における専門的知識に加え、仕事をする上で必要な幅広いスキルなども含めた教育制度を確立し、企業全体として成長させていくことが必要です。
理念・ビジョンの共有
会社経営において強固な組織を作るためには、理念やビジョンを従業員同士で共有できるようにしましょう。
従業員が、会社の理念やビジョンを共有することで、組織を構成する要素の1つ共通目的にもつながります。
企業は社会でどのように貢献するべきなのか、明確化すれば従業員それぞれの仕事の方向性も定まります。
設定した目標を達成するため、自発的に行動しやすい環境をつくることにもつながるでしょう。
特に従業員の数が増えれば、組織全体がまとまって同じ方向を向いて動くことは難しくなりがちです。
しかし組織が団結し、同じ目標を目指して進むためにも、基本となる企業理念やビジョンを念頭においた活動が重要といえます。
経営者が従業員に向けて、企業理念やビジョンをわかりやすい言葉で伝え、共有することにより同じ方向を目指して業務に従事できます。
その結果、生産性の高い団結した組織を作ることができるでしょう。
協働システムの構築
会社経営において強固な組織を作るために、組織を構成する要素を仕組みとした協働システムを構築しましょう。
共通目的を達成するため、組織内の複数人が協力しつつ、コミュニケーションをとって円滑に活動するための仕組みです。
仕組みを円滑に動かすためには、会社への貢献度合いに応じた賃金や評価などが必要であり、先に述べた人事評価制度を設けることで組織内の貢献意欲も維持できます。
協働システムを構築することは、強い組織を継続する上で欠かせないといえるでしょう。
まとめ
組織とは、共通の目的に対し、達成に向けて活動する集団のことです。
中小企業では組織が構成されていないケースや、脆弱で機能していない場合も少なくありません。
しかし会社組織を強固にすれば、離職率の改善に繋がり人手不足も抑えることができます。
その結果、生産性向上につながる可能性もあるため、現場のDX化や新規人材募集で人手不足を解消させる取り組みと並行して、現在の状況を見直すことを検討しましょう。
会社組織では、業績を上げて社会で発展・成長するための、理念やビジョンの共有や意思疎通を可能とする風土づくりを見据えた体制確立が欠かせません。
従業員一人ひとりが日々、主体的に業務に取り組むことができるように、会社は社会における自社の目的を意識しつつ、従業員が安心して働ける組織づくりに向けた制度を整えていきましょう。