金利上昇でどうなる?利上げによる物価・金利等の影響を徹底解説

金利が上昇すると、企業はお金を借りにくくなると考えられます。

その結果、設備投資や新商品開発、新規事業など検討することが難しくなると予想され、さらに個人消費の減少に伴う売上激減で業績も悪化してしまうでしょう。

金利上昇により企業の業績に影響があれば、株価も下落傾向になります。

日銀によるマイナス金利政策を含む大規模緩和の解除によって、利上げによる住宅ローン金利の上昇などを不安視する声も増えていますが、実際に金利上昇によりどのような影響があるのでしょう。

そこで、金利上昇でどうなる?利上げによる物価・金利等の影響を徹底解説していきます。

金利とは

「金利」とは、貸借した金銭に一定の割合で支払われる対価であり、借りた資金に対する手数料の割合といえます。

金銭の貸借で発生する手数料は常に一定ではなく、物の値段と同じくお金に対する需要と供給のバランスにより変わります。

そのため金利はお金を取引する「金融市場」で決まるといえますが、金利に関連する次の2つの項目について理解を深めておきましょう。

  1. 利上げ
  2. 政策金利

それぞれ説明します。

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利上げ

「利上げ」とは、中央銀行(日本銀行)の行う政策金利の引き上げです。

金利を引き上げる目的は、景気の上昇に伴うインフレの抑制であり、経済指標に影響を与える重要な金融政策といえるでしょう。

政策金利

「政策金利」とは、景気動向をコントロールするために、国ごとの中央銀行を定める短期金利です。

引き上げられた場合、企業や個人などはお金を借りることを控えるようになります。

会社は設備投資や新規事業にお金を投資することを抑え、個人消費も下がるため、市場経済は減退の方向へと傾くでしょう。

短期金利の利上げは長期金利に波及するため、加熱傾向にある景気を抑制することや、物価を安定させることにつながります。

なお、2024年4月7日、日本銀行の植田和男総裁はマイナス金利解除に踏み切っています。

7月以降、追加利上げがいつあってもおかしくない状況になったともいえるでしょう。

政策金利を上昇させる理由

中央銀行が政策金利を操作し、上昇させる理由は、景気変動の調整です。

政策金利の引き上げである利上げは、金融引締めにおける重要な施策といえますが、企業の借入れや個人消費を控えさせることでインフレを抑制することを目的とします。

先に述べたとおり、政策金利は以下のとおり国ごとの中央銀行が決定しています。

  • 米国…連邦準備制度理事会(FRB)
  • 英国…イングランド銀行
  • 独国…ドイツ連邦銀行
  • 日本…日本銀行

日本銀行は、日本銀行法により存在やあり方の定められている認可法人で、以下の役割を担います。

  • 通貨の発行
  • 民間銀行の資金管理
  • 国債や外国為替の管理

景気上昇を目的とした金融政策は「金融緩和」、景気動向が加熱することを抑える金融政策は「金融引締め」と呼ばれています。

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日本の金利上昇を抑える政策

中央銀行で行う金融政策は、物価や経済の安定を図るために実施します。

日本銀行(日銀)でも世の中に出回るお金の量や金利について調整しますが、この日銀による操作対象となる金利が「政策金利」です。

政策金利を引き上げることが「利上げ」であり、引き下げることを「利下げ」といいますが、金利上昇を抑えるための政策としてこれまで以下の政策が講じられてきました。

  1. ゼロ金利政策
  2. 金融緩和政策

それぞれ説明します。

ゼロ金利政策

「ゼロ金利政策」とは、政策金利を限りなくゼロに近づけるように誘導する金融政策です。

政策金利をゼロにすることで、銀行は資金をコストなしで調達できます。

お金の流れが活発化することで企業は融資を受けやすくなり、景気を刺激することにつながるでしょう。

日銀が「ゼロ金利政策」を導入したのは1999年であり、この年以降は一貫して金融緩和政策を取っています。

金融緩和策

「金融緩和政策」とは、政策金利の引き下げで市場に出回るお金の供給量を増やし、経済を活発化させて景気回復を図る政策です。

日本が20年以上に渡り超低金利時代が続いているのは金融緩和政策によるものといえます。

2022年12月には日銀による金融緩和策の一部が修正され、長期金利の上限が引き上げられました。

金利上昇がインフレ抑制につながる背景

中央銀行による政策金利の引き上げで金利が上昇することは、インフレ抑制につながります。

インフレとは「インフレーション」を省略した呼称であり、市場経済におけるモノの価値や、全体的な価格水準が高くなる現象です。

お金自体の相対的な価値が下がることにより、反対にモノの価値が高まっている状態といえます。

景気が上昇すれば、賃金も上がり消費動向も活発化します。

商品の需要が供給を上回り、モノの価値は相対的に高くなると考えられます。

そのためインフレが加熱し過ぎてしまうと、物価が継続的に上昇するため、自国通貨の価値は下落してしまいます。

対策として政策金利を引き上げれば、融資を受ける際の利息も増加するため、企業や個人は借入れや支出に消極的になると考えられます。

また、消費より貯蓄へのニーズが高まり、市場に対する通貨の供給量も減少します

その結果、企業の業績が低迷するため賃金も低下し、消費の減退に伴って物価が高騰することを抑制できると考えられています。

金利上昇による影響

金利上昇により、様々なことに影響が及ぶと考えられます。

金利は景気・株価・物価・為替相場と、以下の関係にあるからです。

景気との関係 景気が上昇するときは消費者の購買意欲が高まり、企業は多くモノを生産して設備投資する意欲も上がることが見込まれ、資金需要が高まれば金利も上がると考えられます。不景気の場合は個人消費が減退し、企業もモノの生産を控えるため資金需要も低下し、金利は下がります。
株価との関係 金利が上がるとお金を借りにくくなり、企業は設備投資に消極的な姿勢を見せ、売上や利益は減少し株価も低下します。金利が下がれば融資を受けやすくなり、企業も設備投資や事業拡大を積極的に行うため、売上・利益の増加で株価も上がります。
物価との関係 物価が上がっているときはお金の価値が下がっている状態であり、貯金よりモノを持ったほうが価値を見いだせると考える人が増えて購買意欲が高まり、金利が上がると考えられます。消費者が購買行動を控えれば物価はデフレ状態になりますが、この場合の金利は下がると考えられます。
為替相場との関係 円安ドル高が予想される場合にはドルによる預金・運用を検討する人が増え、円建て預金の解約や金融商品売却が増加することで円の資金供給は減少し、円金利は上昇します。

以上を踏まえて、金利上昇により考えられる影響は以下のとおりです。

  1. 株価の下落
  2. 物価の下落
  3. 住宅ローン金利の上昇
  4. 為替の変動

それぞれ説明します。

株価の下落

金利上昇により、資金調達におけるコストも増大すれば、企業は新規で融資を受けることや設備投資を控えると考えられます。

事業拡大や新規市場参入などが難しくなれば、経営基盤の成長や収益性を向上させることは見込めず、投資家もリスクを懸念し保有している株式を手放す可能性があります。

その結果、株価は下落すると考えられるでしょう。

物価の下落

金利上昇により、商品需要は鈍化し、供給過剰となるため物価は下落すると考えられます。

中央銀行の利上げの目的は、金融引締めによって景気を抑制し、物価を安定することです。

物価は需要と供給の相互作用で決まるため、商品需要よりも供給が多ければ、モノの価値は相対的に下がります。

住宅ローン金利の上昇

金利上昇により、個人が利用している住宅ローン金利も上昇すると考えられます。

住宅ローンの金利は、大きく次の2つに分類できます。

  • 固定金利型…返済期間中に金利が変動しないタイプで、新発10年物国債の利回りを基準に決まる金利
  • 変動金利型…定期的に金利が見直されるタイプで、短期プライムレート(金融機関が貸付期間1年以内の融資を行う際の最優遇金利)に連動する金利

全期間固定金利型なら影響はなくても、変動金利型では返済額が増えるため返済計画の見直しが必要になると考えられます。

固定金利期間選択型の場合でも、固定金利期間終了時点の金利水準で後の金利が決定するため、影響を受けることは留意しておきましょう。

なお、日本の住宅ローン利用者は変動金利型を選択している方がほとんどであるため、短期金利の引き上げで住宅ローン金利の利息負担が増える可能性があります。

為替の変動

金利上昇により、通貨の金利差が為替に影響を及ぼします。

たとえばドル円相場は日米金利差に応じて変動することが多く、大きな相関関係があると考えられます。

一般的に、お金は金利の高い国や通貨へと流れる傾向があるため、日本銀行が利上げに踏み切れば円安に歯止めをかけるきっかけになる可能性はあります

まとめ

金利上昇により、企業は融資を受けにくくなり、個人消費も減少するため業績が悪化する可能性はあります。

業績が悪化すれば、事業拡大や新規事業などのビジネスプランも検討できなくなり、事業縮小や雇用減少につながる恐れもあるといえるでしょう。

米国が政策金利を引き上げれば、米国の債券やドル預金の金利が上昇し、日米金利差の拡大に伴って円の相対的な価値が低下します。

円安は輸出需要を拡大させることがメリットではあるものの、輸入コスト増大につながるデメリットもあります。

日本は工業用の原材料やエネルギー資源を輸入に頼っているため、米国の利上げによる円安進行で、物価上昇と景気後退が同時に進行してしまうスタグフレーションに陥るリスクを含むとも考えられます。

2024年4月7日、日本銀行の植田和男総裁はマイナス金利解除に踏み切ったため、今後も利上げされる可能性はあり、景気や物価にも影響が及ぶことになるでしょう。

業績が悪化すれば、資金繰りにおいて資金調達を融資に頼ることは難しくなると考えられます。

売掛債権を現金化するファクタリングであれば、金利上昇に関係なく資金を調達できるため、融資審査に通らず調達方法に迷っているなら検討することをおすすめします。