運送も行う物流・倉庫業の経理担当者が知っておきたい会計処理の特徴

物流・倉庫業は様々な業務を行うことになりますが、運送業務もその1つであり、多岐に渡る業務から経理担当者は会計処理に手間取ることもあります。

そこで、具体的に運送業務も行う物流・倉庫業の会計処理にはどのような特徴があるのか、経理担当者が把握しておきたいその内容についてご説明します。

 

売掛債権が貸し倒れになったときの債権回収手段

物流・倉庫業では、売掛債権が貸し倒れになったとき、その債権を回収する手段として留置権を行使できます。

留置権には、

  • 民法第295条で定める民事留置権
  • 商法第521条で定める商事留置権

の2つがあります。

民事留置権とは

他人のモノについて発生した弁済期にある弁済を受けるまで、そのモノを留置できる権利民事留置権といいます。

商事留置権とは

債務者と債権者のどちらも商人のときには、商行為により発生した債権の弁済を受けるまでは、債権者が商行為により占有する債務者所有のモノや有価証券を留置できる権利商事留置権です。

民事留置権では債権とモノとの間に個別の関連性が必要ですが、商事留置権では債権とモノとの間に個別の関連性は必要ではありません。そのため、物流・倉庫業の債権回収では商事留置権を行使することが有効な手段となると考えられるでしょう。

 

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燃料費に係るヘッジ取引

物流・倉庫業では、運送トラックの燃料となる軽油などの市場価格が変動してしまうリスクを回避するため、原油スワップなどのデリバティブ取引を利用することもあります。

デリバティブ取引とは、将来売買することを事前に約束する先物取引や、将来売買する権利を事前に売買するオプション取引などがあります。

リスク低下やリスク許容による高い収益性を追及する手法として用いられていますが、運送業は費用に占める燃料費割合が比較的高くなるため、このようなリスクヘッジ取引が取られることが少なくありません。

ヘッジ取引については平成27年4月14日、「金融商品会計に関する実務指針」の改正により、異なる商品間でのヘッジも認められ明確化されています。

石油関連商品の価格変動のリスクヘッジを目的とし、流動性の高い価格変動が類似している原油関連のデリバティブ取引を用いるときなども該当します。

軽油購入取引価格の変動リスクを原油デリバティブ取引でヘッジするときの取引も、ヘッジ会計の要件を満たせば適用が可能と考えられるでしょう。

ただ、軽油と原油の価格変動の相関関係は一定程度認められると考えられるものの、ヘッジ有効性の評価で必要とされる高い相関関係があるとはいいがたいため、ヘッジ会計の適用要件を満たさなくなる可能性も留意しておくべきです。