建設業の会計は一般会計と異なり特殊なものとなっており、たとえば買掛金は工事未払金という勘定科目で表示されます。
この一般会計での買掛金を示す工事未払金とは、建設業者が発注者から請け負った工事にかかった費用のうち、まだ支払っていない未払分を示す負債の勘定科目です。
そこで、様々な買掛分が表示される建設業の工事未払金について解説していきます。
目次
工事未払金の計上のタイミング
工事未払金には、建設業では必ず発生するといえる労務費や外注費だけでなく、工事原価に算入される材料貯蔵品購入代金なども含まれます。
ただし販売費及び一般管理費の支払い・固定資産取得や建設のための未払金などは含まれません。
材料などを掛けにより仕入れたときには工事未払金を計上しますが、計上する金額は一般会計での買掛金と同じく、税抜方式でも取引に対する消費税額など含みます。
その後、工事未払金は現金や手形などで代金を支払ったとき減額する流れです。
未払いの発生原因が完成工事と未成工事のどちらかであるのかに関係なく、確定債務を計上します。仮に決算のときに工事は完成していても工事支払額が確定できていない完成工事があっても、金額を見積もり工事未払金として計上する必要があります。
税務処理の方法
法人税法上、原則、決算日に債務が確定している費用は損金算入が可能です。
債務が確定しているかを判断するときには、次の3つの要件を満たてしているか確認しましょう。
- 当該事業年度終了日までに当該費用にかかる債務が成立している
- 当該事業年度終了日までに当該債務に基づく具体的な給付を行う原因となる事実が発生している
- 当該事業年度終了日までにその金額を合理的に算定できること
完成工事原価となる費用の全部または一部が事業年度終了日までに確定していないときには、現況によってその金額を適正に見積もることが必要とされています。
材料を掛けで仕入れたときと決済したときの仕訳
たとえば設備工事一式(契約金額10,000千円(消費税別))を、翌月末日現金6割・手形4割の支払条件で外注し、当月に工事を完了させたとします。
契約の際の仕訳は、
借方 未成工事支出金 10,000千円 貸方 工事未払金 10,500千円
仮払消費税等 500千円
となります。
設備工事は資産譲渡に該当するため、消費税のかかる課税取引です。
さらに翌月末、契約条件どおり現金6割・手形4割で決済を行ったときには、
借方 工事未払金 10,500千円 貸方 現金・預金 6,300千円
支払手形 4,200千円
という仕訳になります。
なお、現金・預金での決済代金は「工事未払金10,500千円×0.6=6,300千円」となり、支払手形での決済代金は「工事未払金10,500千円×0.4=4,200千円」です。