契約書には、契約を締結した日付を記載しなければなりません。
口頭でも契約は成立するものの、契約書を作成し交わしておくことで、契約締結日や条件などの内容を確認できます。
しかし、契約書の末尾に必ず記載が必要となる契約締結日の欄は、誰がいつ記入すればよいのでしょう。
そこで、契約書の締結日はいつが適切なのか、候補として挙げられるパターンや、決め方と注意点を解説します。
目次
契約締結とは
「契約締結」とは、契約を結ぶことです。
「契約」とは、売買・贈与・貸借・請負・寄託など、複数の当事者が意思の合意をして成り立つ法律行為といえます。
「締結」とは、協定や契約を結ぶことを意味します。
そのため契約締結は、法的な約束をとり決めることといえるでしょう。
契約当事者が約束し、合意することで契約が成立・締結に至ります。
契約書の契約締結日とは
契約書に記載する「契約締結日」とは、当事者間で契約を結んだ日です。
多くのケースで、契約締結日はすべての契約当事者の署名・押印が完了した日などを記載します。
契約の法定効力が発生する日(効力発生日)と同じ日付けになることがほとんどであり、この日が契約開始日となります。
2者による契約であれば、一方が契約書を作成し、署名・押印のもとでもう一方の当事者へ郵送し、受け取った当事者が署名・押印を完了させた日を契約締結日とすることが多いといえます。
作成日と締結日の違い
契約書の作成日と締結日は意味が異なります。
「作成日」は契約書を作成した日であるのに対し、「締結日」はすべての契約当事者が署名・押印した日です。
紙の契約書では当事者の一方が署名・押印後にもう一方の当事者へ郵送するため、契約作成日と契約締結日に違いが発生します。
なお、契約書の作成方法については以下の記事を参考にしてください。
契約書の作成方法とは?雛形を使った書き方のコツわかりやすく解説
契約自由の原則とは
「契約自由の原則」とは、当事者の自由な意思で契約を結び、内容を尊重する原則です。
民法上の基本原則であり、私的自治の原則の一内容として、個人主義的・自由主義的な原則とされています。
公の秩序や強行法規に反しなければ、自由に契約を締結することができると考え、以下の項目を自由に決めることができます。
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契約締結の自由は契約自由の原則の内容の一部であり、契約の締結を強制されずに自由に決めることができる原則であり、私人関係の基本を身分から契約へと変更するべきと考えられています。
契約締結日の候補のパターン
契約書に記載する契約締結日を決めるとき、多くの場合において以下の5つの候補から選ぶことになります。
- 契約期間の初日
- 一方の当事者が署名・押印した日
- すべての当事者が署名・押印した日
- 合意形成の日
- 承認完了の日
それぞれのパターンを説明します。
なお、契約書の契約当事者に関する記載については、以下の記事を参考にしてください。
契約書の甲乙とは?読み方や意味・優劣の有無などわかりやすく解説
契約期間の初日
契約書に記載する契約締結日のパターンとして、契約期間の初日が挙げられます。
契約の履行期間の開始日と揃うため、多くのビジネスにおける契約で採用されている契約締結日のパターンといえます。
一方の当事者が署名・押印した日
契約書に記載する契約締結日のパターンとして、契約当事者の一方が署名・押印した日が挙げられます。
一方の契約当事者が契約書を作成し、もう一方の契約当事者へ郵送で送付するときなどに用います。
後で契約書を受け取った契約当事者は、契約締結日を記入する必要はありません。
先に契約書に署名・押印をした契約当事者は、相手に日付を書き換えられないメリットがある反面、後で署名・押印する契約当事者は相手の署名・押印日に締結日が左右されるデメリットはあります。
なお、契約書の印鑑ルールについては以下の記事を参考にしてください。
契約書と印鑑ルールとは?必要性や種類・タイミングをわかりやすく解説
すべての当事者が署名・押印した日
契約書に記載する契約締結日のパターンとして、すべての当事者が署名・押印した日が挙げられます。
複数いる契約当事者のうち、最後の当事者が署名・押印をした日付を契約締結日とする方法ですが、先に署名・押印をする当事者は契約締結日を記入できません。
そのため最後に署名・押印する当事者に契約締結日を左右されることになり、トラブルを招く恐れがあるため注意が必要です。
合意形成の日
契約書に記載する契約締結日のパターンとして、すべての当事者で合意が形成された日が挙げられます。
当事者間で事前に話し合いを行い、合意をしていればトラブルが発生する可能性も抑えることができます。
承認完了の日
契約書に記載する契約締結日のパターンとして、すべての契約当事者の承認が完了した日が挙げられます。
社内承認が完了した日を契約締結日とするため、確認方法などを事前に決めておくとよりトラブルを防ぐことができます。
契約締結日を決める場合の注意点
契約書に記載する契約締結日を決めるときは、以下の4つに注意しましょう。
- 日付を空欄にしない
- 縁起担ぎの日付は記載しない
- バックデートを使用しない
- 日付を改ざんしない
それぞれ説明します。
日付を空欄にしない
契約書の日付を記入せず、空欄にすることは避けてください。
仮に契約書の日付に何も記載されていなくても、契約自体が無効になるわけではありません。
しかし日付の記されていない契約書は、契約当事者双方のトラブルを拡大させる恐れがあります。
トラブルを回避するために、すべての契約当事者が日付を確認し、日付のない契約書が送付されてきたときは速やかに連絡をとって日付を確認・記入しましょう。
縁起担ぎの日付は記載しない
契約締結日として、「吉日」など縁起担ぎの表現を日付として記載しないほうがよいでしょう。
たとえば結婚式の招待状などで縁起の良い日にするために記す日付の方法といえますが、契約書に縁起担ぎの日付を記してしまうと、正確な契約締結日が把握できなくなります。
後で大きなトラブルになる恐れもあるため、正確な日付を記入しましょう。
バックデートを使用しない
バックデートとは、契約締結日よりも前の日付を契約締結日に記載することです。
たとえば月の半ばが契約締結日の場合において、1日付けの契約開始にするため、日付を1日に変更することがバックデートといえます。
バックデートを使用すると、正確な契約日がわからなくなってしまい、状況によっては企業の評判を大きく損なう恐れもあります。
コンプライアンス上の問題が生じることや、不正な行為として私文書偽造罪に問われる可能性もあるため、行わないようにしてください。
日付を改ざんしない
契約当事者の署名や押印のある契約書の契約締結日を改ざんした場合、刑法第159条の「私文書変造罪」に問われます。
「私文書」とは、公文書以外のすべての文書のことであり、私人や民間企業などが作成した文書です。
事実の証明や権利義務を発生させることを目的として作成されますが、私人間や企業間で締結する取引契約書は私文書として扱われます。
署名や押印のある契約書を偽造した場合は「有印私文書偽造」となり、3か月以上5年以下の懲役の対象です。
反対に署名や押印のない契約書の偽造は「私文書偽造」として、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処されます。
いずれの場合でも刑法の罪に問われる行為であるため、契約書の日付の改ざんはしてはいけません。
まとめ
一般的な契約書に記載する契約締結日は、すべての契約当事者の署名・押印が完了した日です。
契約を締結するときに契約開始日が決められていなければ、契約締結日を契約開始日とします。
仮に契約書の契約締結日が空欄の場合や、記入漏れなどがあった場合には、後から不利な条件となる日付で書き加えられてしまう恐れもあるため注意しましょう。