銀行借入以外の資金調達の一つの手段として、ファクタリングを利用する法人は非常に増えており、その背景には、4つの要因があると考えております。
1つ目は、ゼロゼロ融資の元利金返済の開始です。
2020年頃から、コロナ禍の影響により経営危機に陥る法人が続出し、多くの法人がコロナ対策用のゼロゼロ融資を利用しました。
ゼロゼロ融資は、当初は元本返済が猶予されておりましたが、2023年後半から本格的に元利金の返済が開始されたことで、法人の資金繰りの圧迫要因となっております。
2つ目は、追加借入が困難な状況にある点です。
ゼロゼロ融資は、返済が厳しい場合は、借り換えや返済猶予など、金融機関は柔軟に対応してくれます。
しかし、返済猶予期間中は原則、追加の借入はできない場合がほとんどです。
3つ目は、「2社間」ファクタリングの利便性が市場で評価され浸透したことです。
従来のファクタリングは3社間契約が主流でした。
しかし、売掛先の承諾を必要とするため、売掛先の信用不安リスクを懸念し、利用する法人は限定的でした。
その点、「2社間」ファクタリングは、利用する法人とファクタリング業者の2社間のみで成立するため、資金化までのスピードも速く、非常に使いやすい資金調達方法として市場に認知されたと言えます。
4つ目は、「2社間」ファクタリングの競争激化による顧客サービスの向上です。
ここ数年で新規参入するファクタリング業者も増え、競争が激化してきたことにより、売買手数料率の低下、対応可能額の高額化、資金提供のスピード化、審査や契約の簡素化など、利用する法人にとって利用しやすい条件や環境が整ってきたといえます。
ただ、ファクタリングをまだ利用したことがない法人は、本当に安全・安心な資金調達の方法か不安を抱えていることも少なくありません。
そこで、経営の舵取りに欠かせない資金調達の悩みを解決する方法として、法人向けにファクタリングを活用するメリットとデメリットについて解説していきます。
目次
ファクタリングを法人が活用する5つのメリット
ファクタリングを法人が活用するメリットはいろいろあります。
支払いに充てるお金が必要でも運転資金に余裕がないときや、予定外の出費で資金が足りなくなってしまったときにも対応できる方法です。
売上が伸び、仕入れを増やしたいけれどまとまった資金を準備できないときや、大口の受注案件があったのに仕入れ資金がなくビジネスチャンスを逃してしまいそうなときにも活用できます。
銀行から融資を受けたくても、担保として差し入れる不動産を所有していないときや、保証人が立てられない場合、創業したばかりで実績がなく融資を受けることが難しいときにも申し込み可能です。
以上のことから、法人がファクタリングを活用するメリットとして、次の4つが挙げられるでしょう。
- 資金調達のスピードがはやい
- 赤字でも利用できる
- 未回収リスクを回避できる
- 決算書のオフバランス化が可能
- 売掛先に利用を知られる心配がない
それぞれ説明していきます。
①資金調達のスピードがはやい
ファクタリングは銀行から融資を受ける方法よりも審査に時間がかからず、資金調達のスピードがはやいことがメリットといえます。
銀行融資の場合、申し込んで実行されるまで3週間から1か月かかることが多いのに対し、ファクタリングなら最短即日というはやさです。
審査時間も短いのが特徴ですが、銀行融資の審査には多くの提出資料が求められますが、ファクタリングの場合は、提出資料も少ないため、申込の準備に時間がかからない点もスピードがはやい要因の一つです。
②赤字でも利用できる
ファクタリングは融資を受けるときと違って、赤字でも利用できることがメリットです。
ファクタリングの審査では売掛先の信用力を重視するため、利用者が赤字決算のときや債務超過の場合でも利用できることがメリットといえます。
ただし、税金や社会保険料などの未納[1]がありますと、銀行融資と同じでファクタリングでも審査が通らない場合があります。
[1] 2社間ファクタリングの審査は、売掛債権の売買であるため、原則、売掛先の信用を重視し、利用者(譲渡人)の信用は銀行融資ほど重視されませんが、税金や社会保険料の未納がある場合、売却した売掛債権をファクタリング業者よりも税務署や日本年金機構が優先して回収してしまう場合があるため、ファクタリング業者もその点をリスクと考えます。
③未回収リスクを回避できる
ファクタリングで売掛金をファクタリング会社に譲渡することにより、万一支払いがされない未回収リスクを回避できます。
仮にファクタリング利用後、売掛先が倒産して売掛金を回収できなくなっても、その責任を利用者が負うことはありません。
ただし、銀行などの金融機関が取り扱うファクタリングの場合、未払いリスクを負う契約[1]もありますので、注意が必要です。
[1] 銀行などが行うファクタリングは、売掛先を含めた3社間契約が原則であるうえ、かつ、売掛先が倒産した場合でも利用者(譲渡人)がその責任(買戻義務)を負う契約もあります。
④決算書のオフバランス化が可能
銀行から融資を受けると貸借対照表の負債を増やしてしまいますが、ファクタリングは売掛金の現金化であり借金を増やしません。
そのため、決算書のオフバランス化が可能です。
⑤売掛先に利用を知られる心配がない
ファクタリングの契約形態には2社間と3社間の2種類があり、このうち2社間契約では利用者とファクタリング会社のみで契約を交わす為、売掛先や取引先にファクタリング利用を知られる心配はありません。
ファクタリングを法人が活用する際に知っておきたい6つのデメリット
法人がファクタリングを活用するメリットはいろいろあるといえますが、その一方で次の6つのデメリットには注意が必要です。
- 手数料が割高
- 調達金額が売掛金の範囲内
- 売掛先が一般消費者・個人事業主だと利用できない
- 銀行融資に影響する場合がある
- 設備投資等の長期的な資金使途には使えない
- 売掛債権が確定していないと利用できない
それぞれのデメリットについて説明していきます。
①売買手数料が割高
ファクタリングを利用するときには、ファクタリング会社に対し売買手数料を支払うことになりますが、融資を受けるときの金利と比較すると割高です。
そのため長期に利用し続けると、資金繰りを悪化させることになるため、緊急時の繋ぎ資金的な使い方や事前に計画を立てた上で活用するようにしましょう。
②調達金額が売掛金の範囲内
ファクタリングは売掛金を現金化する資金調達の方法のため、調達金額は売掛金額の範囲内にとどまります。
③売掛先が一般消費者・個人事業主だと利用できない
ファクタリングの対象となるのは、売掛先が法人であることが原則となっており、売掛先が一般消費者ですと、ファクタリングとしては取り扱えない点はデメリットといえます。
また、売掛先が個人事業主の場合も、ファクタリングは売掛先の信用を重視しますので、審査が通らない場合がほとんどです。
④銀行融資に影響する場合がある
ファクタリングを利用したことが、万が一、銀行に知られた場合、銀行融資の審査に影響する場合があります。
ただし、債権譲渡登記などを設定しない場合は、銀行には知られることはまずありません。
ファクタリングの利用情報は銀行とは共有しておりませんのでご安心下さい。
ただし、銀行や貸金業者が行うファクタリングの場合、それが貸付け(売掛債権担保融資)として取り扱われた場合は、信用情報に登録され情報が共有される場合があります。
⑤設備投資等の長期的な資金使途には使えない
ファクタリングは、あくまで短期の繋ぎ的な資金使途で使用するものです。ですので、設備投資等の返済期間が長期に渡るような資金使途には向いておりません。
⑥売掛債権が確定していないと利用できない
ファクタリングは、原則、対象の売掛金が確定していないと買取りの対象になりません。
工事代金であれば工事完了後、商品の販売代金であれば商品の納品後、といったように売掛の元となる仕事や役務が完了していることが前提となります。
ただし、最近では、発注段階でも将来債権として買い取るファクタリング会社もあります。
法人向けファクタリング会社を選ぶときのコツ
法人がファクタリングを活用することにはメリットもあればデメリットもあります。
その上で、ファクタリング会社を選ぶときには次の6つをコツとして押さえておきましょう。
- 複数社から相見積もりを取る
- 売買手数料の妥当性や費用を確認する
- 資金化までの期間が早いファクタリング会社を選ぶ
- 資金調達可能上限額を確認する
- 償還請求権の有無を確認する
- 信頼性の高いファクタリング会社を選ぶ
それぞれのコツについて説明していきます。
①複数社から相見積もりを取る
ファクタリングで資金調達する場合、一社だけに限定せずに複数社から相見積もりを取り比較したほうがよいといえます。
複数社を比較することで、どのファクタリング会社の売買手数料が安いか知ることができます。
保有する売掛金を売ったときの買取代金の相場も把握することができるため、売買手数料引き下げの交渉にも利用することができるでしょう。
②売買手数料の妥当性や費用を確認する
資金繰りが逼迫しているとき、高い売買手数料のファクタリング会社と契約してしまうと、資金調達コストが財務状態を圧迫します。
2社間ファクタリングより3社間ファクタリングの方が売掛先の承諾を得なければならないというハードルはあるものの、売買手数料は割安になります。
ですので、売掛先の承諾が得られるのであれば、2社間ではなく3社間ファクタリングを選択した方が良いと言えます。
また、ファクタリング会社によっては、売買手数料以外に、事務手数料、調査料、登記費用、郵送費用、交通費又は出張費など、売買手数料以外の費用が多額にかかる会社もあります。
よって、表面的な売買手数料や手数料率のみでなく、契約にかかる費用も含めて確認することが必要です。
③資金化までの期間が早いファクタリング会社を選ぶ
事業をしていると、突発的な支出や想定外の入金ズレなど、「今日、明日までに!」といったように、すぐに資金を調達しなければならない状況が発生することもめずらしくありません。
そのため、即日対応など資金化までの期間が早いファクタリング会社を選んだほうが、よりスムーズに資金を調達できるでしょう。
しかし、初めて利用するファクタリング会社より、過去に一度でも利用実績があるファクタリング会社の方が迅速に資金調達が行える場合が多いと言えます。
これは、ファクタリング会社としても初めて取引する利用者の場合、「この会社と取引して良いか?」という基本的な審査があるため、その分、審査に時間がかかるからです。
その点、過去に利用実績があると、ファクタリング会社からの信用度が初回利用の場合より高い状態といえ、迅速に対応してもらえます。
ですので、いざという時に備えて、それほど緊急性のない場面で、信用・信頼のできるファクタリング会社を選定しておき利用実績を積んでおけば、緊急性の高い資金調達の場合で心強いといえます。
④資金調達可能上限額を確認する
保有している売掛債権額が一般的には個人事業主より、法人の方が大きくなるケースが多いため、保有範囲内であればいくらでも資金調達が出来るのでは、と考える法人もいるかもしれません。
しかし、ファクタリングを利用し資金調達出来る上限金額は会社ごとに異なります。
オンラインで契約完結出来るファクタリング会社では、個人事業主や小口専門の会社が比較的多いため、利用できる上限額が数十万円までなど、非常に少ない場合があります。
特に大口での資金調達を考えている場合は、対応できるファクタリング会社は限られてくるため、事前に上限金額を確認しておくなど、早めに相談するようにしてください。
⑤償還請求の有無を確認する
リコースファクタリング(償還請求権付き=売掛先から回収不能の場合、買い戻す義務がある契約)は、主に銀行や貸金業者などの扱うファクタリングに多く見られ、「償還請求権特約」や「買い戻し特約」などが特約で付されている場合があります。
この場合、売掛金が回収できなかったときには、売却した売掛債権を買い戻さなければならないため、売掛債権を売って資金を調達するというよりは、実質的には売掛債権を担保にした借入れ(貸付け)という扱いになります。
また、リコースファクタリング(償還請求権付き)は、法律上は「貸付け」という扱いになることから、銀行免許や貸金業登録を有している金融機関しか取り扱いができません。
よって、銀行や貸金業者以外のファクタリング会社との契約に、償還請求権が付いていた場合、その業者は違法業者(いわゆるヤミ金融業者)の可能性がありますので、契約は絶対にしないようにご注意下さい。
なお、ノンリコースファクタリング(償還請求権のない契約)は、特に許認可は不要で、銀行免許又は貸金業登録がないファクタリング会社の方が数は多く、その中から良質な会社を選択する、ということになります。
⑥信頼性の高いファクタリング会社を選ぶ
ファクタリングで資金調達するとき、銀行からの融資を受けることができないなど、他に資金調達方法がないケースもあるでしょう。
急いでお金を準備しなければならないといった状況でも、相手の言うがままの条件をのみ、契約してしまうことは避けてください。
中には、「契約書が存在しない」、「契約書の控えを渡さない」、「契約内容の説明をしない」、「買取明細と実際の受取金額が違う」などの悪質な違法業者も存在するため、本当に信頼できるファクタリング会社か十分に見極めることが必要です。
常識の範囲を超える法外な売買手数料を請求する業者を選んでしまうと、手元に入金される現金が少なくなり、資金繰りを改善させるどころか悪化させます。
表向きはファクタリング会社を装い、金銭を貸し付けようとするヤミ金融業者も存在することも留意しておいてください。
審査を通過するために!審査必須の理由とは
ファクタリング会社は、ファクタリング利用の申し込みがあったとき、必ず審査を行います。
現金化の後で売掛金を回収できるのか、利用者や売掛先を審査しなければファクタリング会社が経営上高いリスクを負うことになるからです。
ファクタリングで審査が必須である理由として、主に次の3つが挙げられます。
審査に通るために知っておくべき重要ポイントです。
- 審査をしないと、売掛金の買取可否を判断できない
- 審査をしないと、売買手数料を決めることができない
- 審査をしないと、詐欺などのリスクを回避できない
それぞれ説明していきます。
①審査をしないと、売掛金の買取可否を判断できない
ファクタリング会社が売掛金を買い取ろうとするとき、リサーチ会社などの信用情報を基に審査を行い、売掛先の倒産リスクなど確認します。
審査を行わないと、買取可否を判断することはできません。
もし未回収リスクの高い売掛金をファクタリング会社が買い取ってしまうと、買取後に売掛先が倒産し、その損害をファクタリング会社が負うことになってしまいます。
リスクが高いと判断された売掛金は、仮にファクタリング会社が買い取ると決めた場合でも、売買手数料など割高に設定される可能性があります。
②審査をしないと、売買手数料を決めることができない
ファクタリングを利用するときには、ファクタリング会社に売買手数料を支払うことが必要です。
売買手数料は、ファクタリング会社が負うリスクの高さによって決まります。
安心して買い取りできる債権であれば売買手数料は安く設定されますが、過去に遅延や不渡りなどが発生し、リスクの高い取引と判断されれば売買手数料は高く設定されることになります。
売掛先の信用力により売買手数料は左右されるため、審査を行わなければ売買手数料を決めることはできないといえます。
③審査をしないと、詐欺などのリスクを回避できない
ファクタリングを利用するときには、契約しようと考える相手が悪徳業者ではないか不安を感じるものですが、それはファクタリング会社も同じです。
例えば利用者と売掛先が結託し、架空の請求書を作ってファクタリング会社に売ろうとする詐欺行為などもゼロではありません。
また、すでに別のファクタリング会社に売却された売掛金を持ち込まれる二重譲渡の可能性や、すでに不良債権化している債権を持ち込まれるといったリスクもあるため、
審査を行わなければ詐欺などのリスクを回避することができないといえます。
まとめ
近年、中小企業に注目されているファクタリングですが、法人が利用することにはメリットもあればデメリットもあります。
どちらも意味を理解した上で活用することが必要ですが、それ以上にファクタリング会社選びが重要といえます。
売買手数料の安さや現金化までのスピードなど、様々なことを考慮して選ぶことが必要ですが、何よりも信頼できるファクタリング会社選びが最も大切といえるでしょう。
もしファクタリングを資金調達に活用したいけれど、ファクタリング会社選びに迷ったときや利用に不安があるときには、一度お気軽にご相談ください。
最後に……
ファクタリングとは
「ファクタリング」とは、企業などが保有している「売掛金」をファクタリング会社に売却し、現金化する資金調達サービスです。
商取引において、商品やサービスを販売してもすぐにその代金の受け渡しは行われず、後日請求書を発送し指定の口座に入金してもらう「掛け」による支払い方法が一般的といえます。
「掛け」による取引で発生するのが「売掛金」であり、商品や役務提供完了後、1~2ヶ月経ってから入金されることが多いです。
ファクタリングの目的を分かりやすくいえば、その売掛金が入金されるまでの間の資金不足の補填です。
利用することによって期日前の売掛金を前倒しで受け取ることができるようになり、入金までの間の資金繰りを改善しやすくなります。
ファクタリングと融資との違い
ファクタリングは銀行から融資を受けるときのように、お金を借りる資金調達方法ではありません。
資金調達しても借金が増えないことはファクタリングのメリットですが、銀行から融資を受けるときには経営状態や財務状況に問題があると審査に通りにくくなります。
しかしファクタリングは、利用者ではなく売掛先の信用力を重視した審査が行われるため、経営状態や財務状況に不安がある場合でも申し込みできることが銀行融資との違いです。
ただしファクタリングは銀行融資と違って、調達できる金額は売掛債権額面の範囲に留まります。また、売掛金が入金されるまでの繋ぎ的な資金調達手段です。
そのため財務状況に特に問題がなく、保有する資産以上の多額の資金が必要なときや、長期の運転資金や設備資金が必要なときには銀行からの借入れを頼ったほうがよいといえるでしょう。
ファクタリングと銀行融資の最も大きな違いは審査のハードルの高さであり、中小企業などが融資を受けようとすれば不動産など担保を差し入れるか、信用保証協会の保証を求められることも少なくない上に、審査が終わるまで相当な時間もかかります。
ファクタリングであれば早ければ即日、遅くても3営業日には売掛金を現金化でき、赤字決算や債務超過などでも利用できるため中小企業も利用しやすいことが銀行融資との違いといえます。