人材マネジメントとは?対象の項目と最適化の手順をわかりやすく解説

人材マネジメントとは、経営戦略や事業計画を実現するために、人材を有効活用するための手法です。

経営資源である人材の管理などを行い、一人ひとりの能力の最大化を図ります。

企業をとりまく環境は変化しているため、競争力強化に向けて限られた人材を有効に活用するために求められるのが人材マネジメントです。

そこで、人材マネジメントについて、対象の項目と最適化の手順をわかりやすく解説します。

人材マネジメントとは

会議

「人材マネジメント」とは、経営戦略を実現するための人材配置や、一人ひとりの能力の最大化を図るなどによって人材を有効活用する仕組みです。

たとえば評価や昇進に関する制度を整備することや、本人が進んで知識や技術を向上できる環境を整えることなどが挙げられます。

人材マネジメントは企業の成長にも寄与するため、しっかりと取り組むことが必要といえますが、以下との違いを説明します。

  1. 人事労務管理との違い
  2. 人的資源管理との違い
  3. ヒューマンキャピタルマネジメントとの違い

人事労務管理との違い

「人事労務管理」とは、従業員に関する管理業務であり、以下の2つを合わせた管理の手法です。

人事管理 採用・評価・配置など適材適所を目指した雇用管理の他、休業・休暇のシステム構築における時間管理。その他、給与体系・退職金・手当などの賃金管理や安全衛生管理も含む
労務管理 勤怠・給与・福利厚生などの管理

従業員が安心して働くことのできる労働環境を整備し、生産性を向上させることを目的とします。

人的資源管理との違い

「人的資源管理」とは、目標達成に向けて経営資源の一つである人材を有効活用するための制度の設計・運用のことです。

組織やリーダーなどが従業員をどのように導くのかマネジメントします。

ヒューマンキャピタルマネジメントとの違い

「ヒューマンキャピタルマネジメント」とは、従業員の能力を経営資本ととらえ、利益の最大化を目指す戦略のことです。

たとえば賃金は従業員に対する人件費ではなく、人的資源への投資と解釈します。

その上で、標準的な人事マネジメントの給与管理・記録管理・パフォーマンス管理・トレーニングなどを活用しつつ、従業員の強みや成長のポテンシャルを最大限に引き出していきます。

人材マネジメントの対象

ステップアップ

人材マネジメントの対象は以下の7つです。

  1. 戦略立案
  2. 採用
  3. 育成
  4. 評価
  5. 処遇
  6. 配置
  7. 休職・復職

それぞれ説明します。

戦略立案

人材マネジメントの対象のうち、「戦略立案」とは会社の将来的なビジョンや目標を達成する上で必要な人材や能力を検討し、戦略を立てることです。

戦略立案は、たとえば「7S」などのフレームワークを活用すると効率的といえます。

  1. 戦略(Strategy)
  2. 組織(Structure)
  3. 社内の仕組み(Systems)
  4. 人材(Staff)
  5. 社内のノウハウ(Skills)
  6. 経営スタイル(Style)
  7. 企業の価値観(Shared Value)

仮に目標が変更されれば戦略や組織構造、運営方法も変えることが必要です。

ハード面に合わせて人材や能力などのソフト面も変更されるため、上記の7Sは人材マネジメントにおける考え方を簡単に構造化したフレームワークといえます。

フレームワークをうまく活用しつつ、戦略を立てるとよいでしょう。

採用

人材マネジメントの対象のうち、「採用」とは必要な人材を雇用することです。

ただし採用は目標を達成するための手段の一つであり、原則、新たな目標達成のために必要な知識や技術が不足しているときに行います。

育成

人材マネジメントの対象のうち、「育成」とは従業員を必要な人材に育てることです。

長期的な事業の成長においては、必要な技術やノウハウを学んでもらうことが必要になります。

知識や技術を獲得する重要な手段の一つとして捉えておくべきです。

評価

人材マネジメントの対象のうち、「評価」とは従業員の業績査定やフィードバックを行うことです。

評価を通じて、理念や戦略を示し、従業員それぞれのモチベーションを向上させることができます。

そのためどのような評価制度が適しているのか、目標達成の実現に向けて最適な方法は何か検討が必要です。

評価制度のより、従業員のモチベーションは大きく左右されると留意しておきましょう。

処遇

人材マネジメントの対象のうち、「処遇」とは役職・報酬・賃金などの待遇を一定レベルで評価し、取り扱い方を決めることの総称です。

たとえば従業員の成果にどのようなインセンティブを付与すればモチベーションを高く保つことができるのか、成果物を生み出すには何が必要か検討します。

なお、インセンティブは賃金に限定せず、仕事の分配なども対象に含むとよいでしょう。

配置

人材マネジメントの対象のうち、「配置」とは部署への割り当てです。

最適な配置ができれば組織全体のパフォーマンス向上につながります。

企業経営では人材の配置が経営を左右するため、重要な場面において最適な人員が配置できている状態をつくるために、常にパフォーマンスが最大化されるような調整が求められます。

休職・復職

人材マネジメントの対象のうち、「休職・復職」とは従業員が一定期間において業務を中断し、その後職場復帰することです。

たとえば体調不良やライフステージが変化したときなど、適切な休暇を設けます。

なお、復職制度は労働基準法などの法令に策定されておらず、設ける義務は特にありません。

しかし働く意欲やモチベーション向上、トラブル防止のためにも策定しておいたほうがよいでしょう。

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人材マネジメントの種類

人材マネジメントには、以下の2つの種類があります。

  1. 日本型
  2. 欧米型

それぞれの特徴を説明します。

日本型

日本型による人材マネジメントは、以下の特徴があります。

  • 年功序列
  • 長期雇用
  • 処遇の格差

賃金などの処遇が職務やパフォーマンスでは決まらず、年功序列によるものであることが特徴です。

定年までの安定雇用の例は少なくなったものの、多くの従業員の継続雇用が確保されています。

出向や転籍なども日本型による人材マネジメントの特徴に含まれます。

また、大企業と中小企業など、会社規模による格差も大きな特徴です。

欧米型

欧米型の人材マネジメントの特徴は以下のとおりです。

  • 同一賃金同一労働
  • 外部人材の調達
  • 経営機能・職種・職務などに分けた採用
  • スペシャリストとジェネラリストの分離
  • 成果主義

同一賃金同一労働は、同じ質・価値で仕事をするなら、同額の賃金を公平に支払うべきという賃金施策です。

また、外部の労働市場から人材を採用することにも積極的であるのは、職種・職務別の採用が一般化しているからといえます。

人材マネジメントの必要性

ポテンシャルの文字とビジネスマン

人材マネジメントは、経営戦略を実行する人材が適切に行動できることが優位性の確保を左右すると捉え、従業員のモチベーション向上やパフォーマンス最大化を目指します。

現場で働く従業員の働く意欲や満足度を高めることができれば、顧客維持率の向上や離職率低減などの効果が期待できます。

少子高齢化により、働き方も多様化する中で、従業員一人ひとりの生産性を上げていくためにも採用・育成・評価・処遇・配置・休職または復職などの管理を行うことは重要なことと考えられます。

限られた人材リソースを有効活用するために、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大限に引き出せる人材マネジメントに注目が集まっているといえます。

人材マネジメントの効果

人材マネジメントは企業成長に欠かせないことといえますが、主なメリットは以下の3つです。

  1. ブランドアップ
  2. 組織力アップ
  3. モチベーションアップ

それぞれ説明します。

ブランド力アップ

人材マネジメントは、企業のブランド力がアップすることがメリットです。

同業他社より魅力のある商品やサービスを開発できることや、マーケットシェアを高めるなどの効果が期待できます。

それにより、企業の競争力を高め、市場の中で存在感を示すことができるでしょう。

組織力アップ

人材マネジメントは、会社の組織力がアップすることがメリットです。

生産性向上・イメージアップ・適材適所の人員配置・円滑な採用活動などが可能になることは、組織全体の力が上がっていることを示します。

人材の採用から研修、定着までの大幅な成長や効果が期待できると考えられます。

モチベーションアップ

人材マネジメントは、組織全体のモチベーションがアップすることがメリットです。

他社と差別化により、よりよい職場環境が構築されれば、職場に対する誇りを持つ従業員が増えてモチベーションやパフォーマンス向上にもつながります。

従業員のスキルだけでなく、メンタリティーにも効果が期待される取り組みのため、積極的に人材マネジメントを取り入れていきましょう。

人材マネジメントの手順

人材マネジメントを実践する場合、以下の手順で進めていきます。

  1. 経営戦略の明確化
  2. 人的資源の可視化
  3. 人的資源の在り方の検討

それぞれの手順を説明します。

経営戦略の明確化

人材マネジメントは、まず経営戦略を明確にすることが必要です。

企業の経営戦略と人材マネジメントの内容の方向性が同じでなければならないため、かかげる目標達成に向けた人材の有効活用を可能とする戦略になっているか確認しましょう。

経営戦略を実現するため、どのような人的課題を抱えているのか、解決するには何をする必要があるのか検討することが目標達成への一歩といえます。

人的資源の可視化

経営戦略を明確にした後は、課題を解決するための人材発掘に向けて既存の従業員の情報を整理しましょう。

既存の従業員の育成により、能力を得てもらうことで解決できるのか、そもそも適した人材がおらず採用活動が必要なのか検討します。

また、適した人材が他の部署にいるのなら、配置の見直しも必要です。

ベストな方法を選択し、課題の解決に向けて取り組んでいきましょう。

人的資源の在り方の検討

経営戦略の達成に向けた育成・採用・人材配置などを実行していきます。

目標達成において適切な配置は、以下の情報をもとに決めます。

  • 従業員個人のプロフィール
  • 保有する資格
  • これまでの経験
  • 将来的なキャリアプラン

など

経営戦略を実現するための中期的な視点を踏まえて検討し、新たに配属する人材のみではなく全体のバランスも踏まえて決めることが必要です。

従業員がパフォーマンスを最大限に発揮できる環境を整備するためにも、目標は従業員が主体となって決めます。

他者が与えた目標より、本人で決めた目標のほうが達成へのモチベーションが上がりやすいとも考えられるからです。

達成できたときのインセンティブや部署異動などの希望を叶えるため、社内FA制度なども効果的に取り入れつつ、希望する形で働ける仕組みへと全体を整えることも必要といえます。

人材マネジメントのフレームワーク

人材マネジメントを実践する上で、取り入れたいフレームワークに「7S」を紹介しました。

他にも次のフレームワークを活用しながら取り入れるとよいでしょう。

  • 組織構造
  • 人事制度
  • 組織文化
  • MVV
  • PEST分析
  • SWOT分析
  • クロスSWOT分析
  • ロジックツリー
  • ビジネスロードマップ

人材の採用・配置・育成・評価・報酬などを通じて、従業員のやる気を向上させ、組織の競争力を高めていきましょう。

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人材マネジメントのポイント

ポイント

人材マネジメントによる目標達成を実践するために、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。

  1. 課題を明確化する
  2. 不足部分を確認する
  3. フィードバックする
  4. 情報を一元化する

それぞれ説明します。

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課題を明確化する

人材マネジメントは、解決したい課題を明確にしておくことが必要です。

会社のビジョンや経営計画と、従業員がかかげる目標や課題には、一貫性を持たせるべきといえます。

従業員から見た会社のビジョンと、本人の目標・課題に統一性が保たれていなければ、何をすればよいかわからなくなってしまいます。

そのため事業部やチーム単位での目標を設定し、解決するべき課題は何か明確にして共有するとよいでしょう。

不足部分を確認する

人材マネジメントは、現状と不足する部分を照合し、確認しておくことが必要です。

従業員の人数や能力が、目標達成に不足するスキルではないか判断します。

仮にマンパワーになっている場合や、スキルが足りていないときには、必要な人材の確保や人事異動、育成などを検討し業務適性化に努めることが必要です。

フィードバックする

人材マネジメントは、実施後のフィードバックをしっかりと行うことが必要です。

適切なフィードバックは、従業員のスキルを向上させる効果も期待できます。

ただし伝えるタイミング・場所・目的などの選び方を誤ってしまうと、効果がリスクになる恐れもあるため注意してください。

情報を一元化する

人材マネジメントでは、目標管理や進捗状況などの情報を一元化することが必要です。

専門的知識や技術が必要な部署ほど、現場部署に人材マネジメントを一任しがちといえます。

しかし該当部署や人事部と連携が十分に取れてなければ、様々な問題が起こってしまいます。

部署内でブラックボックス化を発生させないためにも、情報の一元化を検討することが必要です。

まとめ

人材マネジメントは、日々急速に変化する企業を取り巻く環境への対応に向けても重要なことです。

経営戦略を実現するための人材配置や、一人ひとりの能力の最大化を図るなどによって人材を有効活用できるように、制度の整備や知識・技術を向上できる環境を整えることを検討していきましょう。

人材のアップデートが従業員のモチベーションアップや生産性向上につながり、その結果、企業の競争力を強化できます。

現在の人材マネジメントを見直すことにより、他社に負けない特色や強みの発揮へとつなげることができるでしょう。