介護報酬ファクタリングとは、介護報酬債権を売却し現金化するファクタリングです。
本来、介護報酬は請求から入金まで2か月かかるのに対し、ファクタリングを利用すれば前倒しで手元の資金を増やすことができます。
そこで、介護報酬ファクタリングについて、流れやメリットとデメリットを徹底解説します。
中小企業経営者向け!

目次
介護報酬ファクタリングとは
「介護報酬ファクタリング」とは介護報酬債権を現金化することで資金を調達できるサービスです。
通常、介護報酬・診療報酬などは、国民健康保険団体連合会・社会保険診療報酬支払基金へ請求してから入金されるまで2か月はかかります。
しかし、介護現場では突発的な出費なども発生することが少なくないため、2か月先まで入金を待つことが厳しいこともあるといえます。
たとえば設備の故障が起きれば修理にお金がかかりますし、従業員の人件費や水道光熱費など様々な支払いが必要です。
このようなとき、介護事業者の資金繰り問題を解決できる手段として注目されるようになったのが介護報酬ファクタリングといえます。
介護報酬ファクタリングの仕組み
介護報酬ファクタリングの仕組みは、一般企業が利用しているファクタリングサービスのうち、「3社間ファクタリング」と同じです。
ファクタリングの契約は2種類あり、1つは利用者とファクタリング会社で契約を結ぶ「2社間ファクタリング」ですが、介護報酬ファクタリングは利用者(介護事業者)・ファクタリング会社・売掛先(国保・社保)で契約する「3社間ファクタリング」の仕組みで契約します。
通常、一般企業の「3社間ファクタリング」は、利用者・ファクタリング会社・売掛先で契約を結ぶため、売掛先に対する通知や承諾を得る流れが必要です。
しかし、売掛先がファクタリングで売掛債権を使用することに難色を示すこともあり、必ずしも協力を得られるとは限りません。
そればかりか、ファクタリングで資金調達することを知ってしまうことで、経営難に陥っているのではないかと懸念を深め、その後の取引に影響するケースもあるといえるでしょう。
仮に合意を得ることができたとしても、説明や調整に時間がかかり、本来のスムーズな資金調達というファクタリングのメリットを活かすことが難しくなります。
その点、介護報酬ファクタリングは、売掛先が国保や社保など公共機関のため、風評被害やその後の取引など心配せず利用できることが特徴といえるでしょう。
介護報酬ファクタリングの売買手数料
介護報酬ファクタリングを利用するときには、ファクタリング会社に売買手数料を支払います。
通常の3社間ファクタリングの手数料相場は1~9%ですが、介護報酬ファクタリングは売掛先が国のため、ファクタリング会社が安心して買い取りできる債権といえます。
そのため、介護事業者に有利な条件で契約しやすくなり、手数料も0.25~1%程度と非常に割安です。
ただし、契約段階では介護報酬債権額面の80%程度の支払いになることは注意しておきましょう。
その理由として、国保や社保に対する請求が100%認められるとは限らないからです。
国保や社保の審査で削減される可能性もあるため、契約段階では一定額の支払いにとどまることとなり、実際に国保や社保から支払いを受けた後で残りが支払われることがほとんどといえます。
前払い額は介護保険給付費請求額の80%程度が上限となることを理解した上で、資金調達に活用するようにしてください。
介護報酬ファクタリングの流れ
介護報酬ファクタリングの利用者は介護事業者ですが、ファクタリング会社に売掛金を売却した後、資金を調達する流れを確認しておきましょう。
まず、通常の3社間ファクタリングの場合は、次の流れで売掛金が現金化され資金調達できます。
- ファクタリング会社に売掛金の買い取りを申し込む
- ファクタリング会社で審査後、買取条件や契約内容などが提示される
- 提示内容に合意後、売掛先に対し債権譲渡通知を出し承諾を得る
- ファクタリング契約を結ぶ
- 利用者の指定した銀行口座に手数料を差し引かれた金額が入金される
- 売掛金支払い期日には売掛先からファクタリング会社に直接支払われる
介護報酬ファクタリングを利用した場合には、次の手順による資金調達の流れです。
- ファクタリング会社に介護報酬債権の買い取りを申し込む
- 介護事業者とファクタリング会社が契約を結ぶ
- 介護事業者の指定した銀行口座に介護報酬債権の75~95%が入金される
- 国保連(または社保)に介護報酬債権を譲渡したことが通知される
- 介護事業者から国保連(または社保)に介護報酬を請求する
- 2か月後、国保連からファクタリング会社に直接介護報酬が支払われる
介護報酬ファクタリングも一般的な3社間ファクタリングと流れそのものに違いはありません。
ただ、売掛先が「国」であるため通知や承諾を得る手続に戸惑わず利用できます。
介護報酬ファクタリングのメリット
介護報酬ファクタリングでファクタリング会社に売却するのは「介護報酬」であり、資金調達に活用するメリットは次の6つです。
- 素早い資金調達が可能
- 初回は報酬2か月分を受け取れる
- 審査の難易度が低い
- 有利な条件で契約しやすい
- 売掛先への通知を気にしなくてよい
- 新規開業でも申し込みできる
- 借入れではなく負債にならない
それぞれのメリットを説明します。
①素早い資金調達が可能
介護報酬ファクタリングの一番のメリットは、素早い資金調達が可能であることです。
介護報酬ファクタリングで売却するのは介護報酬ですが、本来の流れで現金化されるまでの期間は、国保や社保に請求してから2か月かかります。
この2か月の間に、事業所の運営費用や人件費なども発生することとなり、入金までの資金繰りに頭を抱える介護事業者も少なくありません。
しかし介護報酬ファクタリングを利用することで、本当なら2か月待たなければ入金されない期日を短縮できます。
②初回は報酬2か月分を受け取れる
介護報酬ファクタリングを利用すると、初回利用のときのみ2か月分の介護報酬を受け取ることができます。
まず介護報酬の前月分を当月10日までに国保に請求すると、翌月25日に入金されます。
9月末〆分の医療報酬を10月10日に請求した場合、11月25日に入金されるという流れです。
10月分を11月10日に請求すると、12月25日に受け取ることができます。
この例で11月10日以降にファクタリングを初回利用すると、ファクタリング会社に譲渡する対象となるのは9月分と10月分の介護報酬債権です。
そのため介護報酬ファクタリングを初回利用する場合には、2か月分が同月に入金されます。
ファクタリング会社によっては、直近1か月分などに限定する場合もあるため、希望の資金調達額によって業者を選ぶことも必要です。
③審査の難易度が低い
介護報酬ファクタリングは、一般的なファクタリングよりも審査の難易度が低いことがメリットです。
介護報酬ファクタリングの場合、取引先は国保や社保などの「国」です。
そのため倒産リスクはなく、売掛金が未回収となる貸し倒れリスクもゼロに近いといえることから、審査はより柔軟なものとなるといえます。
④有利な条件で契約しやすい
介護報酬ファクタリングの取引先は「国」のため、介護事業者にとって有利な内容で契約できることもメリットです。
ファクタリング会社が安心して買い取ることのできる債権のため、売買手数料も一般的な3社間ファクタリングよりさらに低い相場が適用されます。
ファクタリングを使った資金調達では、必ず売買手数料が発生するため、できるだけ費用を抑えて利用できることはメリットです。
⑤売掛先への通知を気にしなくてよい
一般的な3社間ファクタリングを利用するとき、売掛先への通知や承諾が必要となるため、利用により示す反応が気になりがちです。
売掛先がファクタリング利用に難色を示した場合、その後の取引に影響することとなり、取引停止や取引量削減などの対応を取る恐れも否定できません。
しかし介護報酬ファクタリングは国が売掛先のため、通知で信用が損なわれることはなく、安心して利用できます。
⑥新規開業でも申し込みできる
介護報酬ファクタリングは、実は新規開業のときでも申し込みできます。
開業したばかりでは信用がない状態であり、銀行融資を受けることは難しいといえます。
介護報酬ファクタリングは、国の介護報酬を使ったファクタリングであるため、開業間もない時期から利用できます。
開業から資金繰り安定までの不安定な期間を、介護報酬ファクタリングでうまく乗り越えることも方法の1つです。
⑦借入れではない
介護報酬ファクタリングは、借入れではないため、決算書の仕訳も借入金ではなく負債になりません。
貸借対照表の見栄えも保たれ、オフバランス化ができるのは大きなメリットです。
介護報酬ファクタリングのデメリット
介護事業者にとってメリットが大きい介護報酬ファクタリングですが、次の4つのデメリットには注意しましょう。
- 本来受け取る報酬額は少なくなる
- 利用しすぎる可能性がある
- 税金滞納で利用できない場合がある
- 介護報酬債権額が上限
それぞれのデメリットを説明します。
①本来受け取る報酬額は少なくなる
介護報酬ファクタリングを利用すると、本来受け取ることのできる報酬額は少なくなります。
一般的なファクタリングより、介護報酬ファクタリングの売買手数料はかなり安く、相場も0.25%~です。
②利用しすぎる可能性がある
介護報酬ファクタリングは、2か月先まで待つことなく、先に手元の資金を増やすことができます。
しかし便利さゆえに、つい利用しすぎてしまえば、本来の入金額を減少させます。
また、介護報酬ファクタリングを利用後に利用を停止すると、次に介護報酬が国保や社保から入金されるまでかなり時間が空きます。
入金を前倒しした分、本来の次の入金までの期間が長くなり、また繰り返しファクタリングを長期利用しなければならない事態を作ります。
便利ではあるもののコスト分の利益は削られるため、利用期間を事前に決めた上で計画的に活用しましょう。
③税金滞納で利用できない可能性がある
介護報酬ファクタリングは、税金を滞納していると利用できない可能性があることは留意しておきましょう。
社会保険料などを含む税金を滞納していると、差し押さえに遭う恐れがあるからです。
介護報酬債権は税金差押え対象であるため、税金滞納を理由に差押えが実行されると、債権は未回収になります。
そのため税金を滞納していると、利用できない場合もあると理解しておいてください。
④介護報酬債権額が上限
介護報酬ファクタリングで調達できる資金は、介護報酬債権額が上限です。
融資を受けて資金を調達する場合は、保有する資産を超えた金額でも入金されることもあるでしょう。
しかし介護報酬ファクタリングは債権の現金化であるため、債権額を超えた金額を調達することはできません。
通常であれば1か月分の介護報酬債権はそこまで大きくないため、希望する調達額によってはファクタリング以外の方法も併用するなど、対策を検討しましょう。
まとめ
介護報酬ファクタリングは介護事業者の資金繰りを改善するためにも活用できる方法です。
売掛先が国保や社保など国の機関であるため、低いコストで資金を調達できます。
ただし繰り返し利用すると、どれほど売買手数料は安くても本来受け取ることのできるはずだった介護報酬は目減りします。
介護報酬ファクタリングの流れや仕組み、メリットとデメリットを理解した上で、計画的に利用することが大切です。
中小企業経営者向け!

