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介護報酬ファクタリングとは
「介護報酬ファクタリング」とは介護報酬債権を支払期日より前に現金化することで資金を調達できるサービスです。
通常、介護報酬・診療報酬などは、国民健康保険団体連合会(国保連以下、国保→国保連でも可ですが、いずれかに統一)・社会保険診療報酬支払基金(以下、社保)へ請求してから入金されるまで約2か月はかかります。
しかし、介護現場では突発的な出費なども発生することが少なくないため、2か月先まで入金を待つことが厳しいこともあるといえます。
たとえば設備の故障が起きれば修理にお金がかかりますし、従業員の人件費や水道光熱費、介護人材獲得のための資金など様々な支払いが発生することは珍しくありません。
このようなとき、介護事業者の資金繰り問題を解決できる手段として注目されるようになったのが介護報酬ファクタリングといえます。
介護報酬ファクタリングの仕組み
介護報酬ファクタリングの仕組みは、一般企業が利用しているファクタリングサービスのうち、「3社間ファクタリング」と同じです。
ファクタリングの契約は2種類あり、1つは利用者とファクタリング会社で契約を結ぶ「2社間ファクタリング」、もう1つが利用者とファクタリング会社のみでなく、取引先が関与する「3社間ファクタリング」があります。介護報酬ファクタリングは、原則、利用者(介護事業者)・ファクタリング会社・取引先(国保・社保)で契約する「3社間ファクタリング」の仕組みで契約する場合がほとんどです。
通常、一般企業の「3社間ファクタリング」は、利用者・ファクタリング会社・取引先で契約を結ぶため、取引先に対する通知や承諾を得る流れが必要です。
しかし、取引先が売掛債権をファクタリング会社に使用譲渡されること(支払先がファクタリング会社になること)に難色を示すこともあり、必ずしも協力理解を得られるとは限りません。
そればかりか、ファクタリングで資金調達することを知ってしまうことで知られてしまうため、経営難に陥っているのではないかとの懸念を深めるような事態となれば、その後の取引に影響するケースもあるといえるでしょう。
仮に、取引先にファクタリングに関する合意を得ることができたとしても、説明や調整に時間がかかり、本来のスムーズな資金調達というファクタリングのメリットを活かすことが難しくなります。
その点、介護報酬ファクタリングは、取引先が国保や社保など公共機関のため、風評被害やその後の取引など心配せず利用できることが特徴といえるでしょうます。なお、介護報酬のファクタリングは、2社間ファクタリングで行うことも可能ですが、3社間ファクタリングと比較すると売買手数料が高くなります。前述した通り、公共機関が取引先ですので、債権譲渡通知や譲渡承諾に関するハードルは低いため、介護報酬の場合は売買手数料の低い3社間ファクタリングを利用する利用者がほとんどです。ですので、もし、現在、介護報酬を2社間ファクタリングで利用している場合は、売買手数料の低い3社間ファクタリングに切り替えることをお勧めいたします。
介護報酬ファクタリングの売買手数料
介護報酬ファクタリングを利用するときには、ファクタリング会社に対する「売買手数料」が必要です。
通常の3社間ファクタリングの売買手数料相場は1~9%ですが、介護報酬ファクタリングは取引先が国のため、ファクタリング会社が安心して買い取りできる債権といえます。
そのため、介護事業者に有利な条件で契約しやすくなり、ファクタリング会社によっては、売買手数料も0.25~1%程度と非常に割安で資金調達することができます。
ただし、契約段階では介護報酬債権額面の80%程度(ファクタリング会社によりますが、70~90%の間)が売買の対象になることは注意しておきましょう。
その理由として、国保や社保に対する請求が100%認められるとは限らないからです。
国保や社保の審査で請求額が満額認められず、減額削減される可能性もあるため、ファクタリング会社もその減額を想定している関係から、契約段階では掛け目をみて80%程度の一定額の買取りにとどまることとなり、実際に国保や社保から支払いを受けた後で残りの20%程度が受け取れることになります。
ファクタリング会社による買取り前払い額は介護保険給付費請求額の80%程度が買取対象の上限となり、そこから売買手数料を差し引かれたものが調達できる金額であることを理解した上で、資金調達に活用するようにしてください。
介護報酬ファクタリングの流れ
介護報酬ファクタリングによる資金調達の流れを確認しておきましょう。
介護報酬ファクタリングによる資金調達の流れは次の通りです。
- ファクタリング会社に介護報酬債権の買い取りを申し込む
- 審査に必要な書類を提出する
- 介護事業者とファクタリング会社が契約を結ぶ
- 介護事業者の指定した銀行口座に介護報酬債権の約80%(75~95%)が入金される
- 国保連(または社保)に介護報酬債権を譲渡したことが通知される
- 売掛金支払い期日には売掛先からファクタリング会社に直接支払われる
介護報酬ファクタリングも一般的な3社間ファクタリングと流れそのものに違いはありませんが、取引先が「国」であるため通知や承諾を得る手続に戸惑うことがないことが特徴といえるでしょう。
一般的な必要書類は、法人登記簿謄本「履歴事項全部証明書」と介護保険事業者の指定通知書の写し、介護報酬請求書、決算書、印鑑証明書、通帳履歴(過去の入金実績)などが挙げられます。
設立が浅く決算書が用意できない場合などは、あらかじめファクタリング会社に相談しておくと良いでしょう。
介護報酬ファクタリングのメリット
介護報酬ファクタリングでファクタリング会社に売却するのは「介護報酬」ですが、資金調達に活用するメリットは次の6つです。
- 素早い資金調達が可能
- 初回は報酬2か月分を受け取ることができる
- 審査の難易度が低い
- 有利な条件で契約しやすい
- 売掛先への通知を気にしなくてよい
- 新規開業でも申し込みできる
- 借入れではなく負債にならない
それぞれのメリットについて説明していきます。
①素早い資金調達が可能
介護報酬ファクタリングの一番のメリットは、素早い資金調達が可能であることです。
介護報酬ファクタリングで売却するのは介護報酬ですが、本来の流れで現金化されるまでの期間は、国保や社保に請求してから2か月かかります。
この2か月の間に、事業所の運営費用や人件費なども発生することとなり、入金までの資金繰りに頭を抱える介護事業者も少なくないといえるでしょう。
このようなときにこそ、介護報酬ファクタリングを利用することで、本当なら2か月待たなければ入金されない期日を短縮することができます。
②初回は報酬2か月分を受け取ることができる
介護報酬ファクタリングを利用すると、初回利用のときのみ2か月分の介護報酬を受け取ることができます。
まず介護報酬の前月分を当月10日までに国保に請求すると、翌月25日に入金されます。
9月末〆分の医療報酬を10月10日に請求した場合、11月25日に入金されるという流れです。
10月分を11月10日に請求すると、12月25日に受け取ることができます。
この例で11月10日以降にファクタリングを初回利用すると、ファクタリング会社に譲渡する対象となるのは9月分と10月分の介護報酬債権です。
そのため介護報酬ファクタリングを初回利用する場合には、2か月分が同月に入金されることになります。
ただし、ファクタリング会社によっては、直近の1ヵ月分などに限定するところもありますので、希望する資金調達の額によって、ファクタリング会社を選別する必要があります。
まとまったお金が必要という場合、介護報酬ファクタリングを使うことで、スムーズに手元の資金を増やすことができるでしょう。
③審査の難易度が低い
一般的なファクタリングでも、銀行融資などの審査よりかなりハードルが低めですが、その理由は審査の対象が利用者ではなく取引先の信用力だからといえます。
仮に利用者の財務状況が悪化していても、信頼性の高い取引先の債権なら、回収見込みが高いと判断され現金化できるケースは少なくありません。
さらに融資などと異なり、担保や連帯保証人は必要ないため周囲を巻き込む必要がありません。
介護報酬ファクタリングの場合、取引先は国保や社保などの「国」です。
そのため倒産リスクはなく、売掛金が未回収となる貸し倒れリスクもゼロに近いといえることから、審査はより柔軟なものとなるといえるでしょう。
④有利な条件で契約しやすい
重複しますが、介護報酬ファクタリングの取引先は「国」のため、介護事業者にとって有利な内容で契約できることもメリットです。
ファクタリング会社が安心して買い取ることのできる債権のため、売買手数料も一般的な3社間ファクタリングよりさらに低い相場が適用されることとなります。
ファクタリングを使った資金調達では、必ず売買手数料が発生するため、できるだけ費用を抑えて利用できることは大きなメリットといえます。
⑤売掛先への通知を気にしなくてよい
一般的な3社間ファクタリングを利用するときには、取引先に対する通知や承諾が必要となり、ファクタリングの利用を知られるとどのような反応示すか気になることでしょう。
取引先がファクタリング利用に難色を示せば、その後の取引に影響することとなり、取引停止や取引量削減などの対応を取る可能性も否定できません。
しかし介護報酬ファクタリングは国が取引先なので、通知をされても特に信用が損なわれることもなく、その後の取引にも影響しないため、安心して資金調達に活用することができます。
⑥新規開業でも申し込みできる
介護報酬ファクタリングは、実は新規開業のときでも申し込みが可能です。
開業したばかりですと、まだ信用がありませんので、融資を借りることができない場合があります。しかし、開業したばかりでも介護報酬ファクタリングは、取引先の信用度(介護報酬の場合は「国」)で審査するため、利用することができます。
ですので、融資を借りられなくとも、介護報酬ファクタリングを利用することで、開業当初の様々な出費に充てることができるでしょう。
中には国の補助金などを申請しているケースもあると思いますが、補助金は手元に入金されるまでにはかなりの期間がかかります。
このような場合にも介護報酬ファクタリングを活用することで、補助金が入金されるまでの期間の資金繰りに活用することができます。
開業間もない時期から資金繰りが安定するまでの不安定な期間を、介護報酬ファクタリングを活用し、資金繰りを繋ぐことで、うまく乗り越えることも方法の1つです。
⑦借入れではなく負債にならない
介護報酬ファクタリングは、借入れではないため、決算書の仕訳も借入金ではなく負債になりません。貸借対照表の見栄えも保たれ、オフバランス化ができるのは大きなメリットと言えるでしょう。今後金融機関からの融資などの借入れを検討されているかたは、決算書を提出する際も安心と言えるでしょう。
介護報酬ファクタリングのデメリット
介護事業者にとってメリットが大きい介護報酬ファクタリングですが、次の4つのデメリットは理解した上で利用を検討しましょう。
- 本来受け取る報酬額は少なくなる
- 利用しすぎる可能性がある
- 介護報酬債権額が上限
それぞれのデメリットについて説明していきます。
①本来受け取る報酬額は少なくなる
介護報酬ファクタリングを利用すると、本来受け取ることのできる報酬額は少なくなります。
一般的なファクタリングより、介護報酬ファクタリングの売買手数料はかなり安く、相場も0.25%~です。
しかしどれほど売買手数料が安いといっても、もともとの介護報酬を目減りさせることに変わりはないため、繰り返し利用し続けることはおススメできません。
②利用しすぎる可能性がある
介護報酬ファクタリングは、期日よりも先に介護報酬を現金化できることがメリットです。2か月先まで待つことなく、先に手元の資金を増やすことができる方法で、急な資金ニーズにも対応できるなど大変便利なサービスといえます。
その便利さゆえに、つい利用しすぎてしまう可能性があることはデメリットともいえるでしょう。
先に述べたとおり、介護報酬ファクタリングでは売買手数料がかかるため、利用すればするほど本来の入金額を減少させます。
また、介護報酬ファクタリングを利用後に利用を停止すると、次に介護報酬が国保や社保から入金されるまでかなり時間が空くことになります。
入金を前倒しした分、本来の次の入金までの期間が長くなり、また繰り返し介護報酬ファクタリングを利用するといった悪循環に陥る可能性もあるといえるでしょう。
ファクタリングの売買手数料はコストですので、毎月、そのコスト分の利益が削られることを意味しますから、いつからいつまで利用するのか事前に決めた上で、計画的に活用することが大切です。
③介護報酬債権額が上限
介護報酬ファクタリングで調達できる資金は、介護報酬債権額が上限となります。
融資を受けて資金を調達するのなら、保有する資産を超えた金額でも入金されることもあるでしょう。
しかし介護報酬ファクタリングは債権の現金化であるため、債権額を超えた金額を調達することはできません。
そのため多くの資金が必要なときには金額の多い介護報酬債権をファクタリング会社に売却することが必要となりますが、通常であれば1か月分の介護報酬債権はそこまで大きくないはずです。
多額の資金を調達したいときに介護報酬ファクタリングを活用しても、希望どおりの金額に到達するとは言い切れないことは留意しておきましょう。
これらを踏まえた上で介護報酬ファクタリングを活用する必要があり、想定していたよりも資金調達額が足りなかった場合、別の方法で資金調達を模索しなければならなくなる可能性も出てきます。
どのくらいの金額を必要とするのか改めて見直し、ファクタリングによって実際に調達できる金額で資金繰りが間に合うかなどを検証した上で、活用するようにしましょう。
まとめ
介護報酬ファクタリングは介護事業者の資金繰りを改善するためにも活用できる方法です。
一般的なファクタリングは売買手数料のコスト負担が重い印象がありますが、介護報酬ファクタリングは売掛先が国保や社保など国の機関となるため、売掛債権の信用度が高く、低いコストで資金を調達できることがメリットといえます。
ファクタリングによって実際に調達できる金額で資金繰りが間に合うかなどを検証した上で、活用するようにしましょう。
介護事業者側に有利な内容で契約できるファクタリングのため、介護報酬が入金されるまでの間の資金不足を防ぐためにも、うまく活用するとよいでしょう。
ただし繰り返し利用すると、どれほど売買手数料は安くても本来受け取ることのできるはずだった介護報酬は目減りしてしまいます。
介護報酬ファクタリングの仕組みやメリット・デメリットを理解した上で、計画的に利用することが大切です。