ファクタリングによるオフバランス化により、銀行からの評価を上げることができます。
そのため売掛金を現金化する手法であるファクタリングで、なぜオフバランス化ができるのか、その仕組みを理解しておきましょう。
そこで、ファクタリングによるオフバランス化について、要件や効果、注意点を解説します。
オフバランスとは
「オフバランス」とは、資産を貸借対照表から切り離すことを意味します。
オフバランスの「バランス」は、貸借対照表を意味する「バランスシート(BS)」のことです。
貸借対照表(バランスシート)は、財務諸表の1つであり、資産・負債・純資産(資本)の状態を示します。
オフバランス化とは
「オフバランス化」とは、貸借対照表の資産を会計上問題のない方法で記載させない取引です。
重要なのは、どのように総資産を活用し利益に結びつけているか、その効率性といえます。
効率性を確認するために使うのが「総資産利益率(ROA)」であり、以下の計算式で算出できます。
総資産利益率(ROA) = 当期純利益率 ÷ 総資産 |
オフバランス化で総資産利益率(ROA)を上げることは、企業価値を向上させることにつながります。
ファクタリングの活用で保有する売掛金を現金へ換え、借入金を返済すれば負債を減らすことも可能です。
事業に使用する現金を増やし、利益を効率的に伸ばすことができるでしょう。
資金調達方法による総資産利益率(ROA)の違い
ファクタリングと銀行融資のどちらで資金を調達するかによって、総資産利益率(ROA)の上昇傾向は異なります。
そこで、以下の2つに分けてそれぞれの総資産利益率(ROA)の上がりの程度を説明します。
- ファクタリングによる資金調達の総資産利益率(ROA)
- 融資による資金調達の総資産利益率(ROA)
ファクタリングによる資金調達の総資産利益率(ROA)
たとえば次の貸借対照表の会社が、売掛金100万円を10%の手数料でファクタリングにより現金化したとします。
借 方 | 貸 方 |
現金 500万円 | 借入金 100万円 |
売掛金 100万円 | 資本金 500万円(内利益100万円) |
借方合計 600万円 | 貸方合計 600万円 |
売掛先から支払いのある期日まで待てば、売掛債権額面の100万円が入金され利益となります。
ファクタリングを利用するため、売買手数料を支払えば10万円差し引いた90万円が利益となるため、以下の貸借対照表に変化します。
借 方 | 貸 方 |
現金 590万円 | 借入金 100万円 |
資本金 490万円(内利益90万円) | |
借方合計 590万円 | 貸方合計 590万円 |
利益は90万円となり、総資産合計は590万円となるため、算出できる総資産利益率(ROA)は以下のとおりです。
総資産利益率(ROA)15.25% = 利益90万円 / 総資産額590万円 × 100(%) |
融資による資金調達の総資産利益率(ROA)
銀行から融資を受けて100万円資金を調達した場合は、ファクタリングと異なり借方と貸方のどちらも以下のとおり100万円分増えます。
借 方 | 貸 方 |
現金 600万円 | 借入金 200万円 |
売掛金 100万円 | 資本金 500万円(内利益100万円) |
借方合計 700万円 | 貸方合計 700万円 |
借入れによる資金調達では、利益は100万円のまま変化せず、総資産額は100万円プラスした700万円に増えます。
そのため総資産利益率(ROA)は、以下のとおりです。
総資産利益率(ROA)14.28% = 利益100万円 / 総資産額700万円 × 100(%) |
以上により、ファクタリングと銀行融資のそれぞれで100万円を資金調達した場合を比べると、総資産利益率(ROA)がより上昇するのはファクタリングであるといえます。
ファクタリングにおけるオフバランス化のメリット
ファクタリングでオフバランス化するメリットは、主に次の2つです。
- 企業格付けを向上できる
- 融資による資金調達しやすくなる
それぞれどのようなメリットか説明していきます。
企業格付けを向上できる
ファクタリングで資産をオフバランス化すると、貸借対照表を「スリム化」し経営状態を良好に見せることができます。
それにより銀行の「企業格付け」が向上することが予想されますが、その理由として次の3つが挙げられます。
- 健全経営の状態を保てる
- ROAを改善できる
- 自己資本比率を改善できる
それぞれの理由を説明していきます。
健全経営の状態を保てる
ファクタリングで資産がオフバランス化されれば、貸借対照表をすっきりとスリム化でき、経営状態を良好に見せることができます。
売掛金は時期が来れば現金化されますが、回収できるまでの一定期間、貸借対照表上の資産を大きくします。
そこで、貸借対照表から切り離すためにオフバランス化すれば、資産額を抑えることができ、「健全経営」の状態を保つことができます。
ROAを改善できる
ファクタリングによるオフバランス化では「総資産利益率(ROA)」を改善できます。
売掛金を現金化し借入金返済に充てることもできるため、それにより総資産利益率(ROA)を改善させることが可能です。
総資産利益率(ROA)による財務分析の指標を向上させることで、効率的な経営ができていることをアピールできます。
自己資本比率を改善できる
ファクタリングによりオフバランス化することで、「自己資本比率」も改善できます。
自己資本比率とは純資産と資産との割合のことですが、自己資本の資本調達に対する割合を示す数値です。
純資産は自らが稼いだ返済義務のないお金であり、言い換えれば「資本金」です。
自己資本比率が高いということは、誰に返す必要もない自己資本による経営ができていることを意味し、安定した会社であることを証明できます。
仮に自己資本比率が低ければ、銀行からの借入れなど他人資本による影響が高く、経営が不安定と判断されてしまいます。
ファクタリングで保有する売掛金の現金化は、売掛債権という資産を現金へ換えただけのため、総資本には影響を与えることはありません。
増えた現金で借入金を返済すれば、資産と負債のどちらも減少させることができ、自己資本比率を高めることが可能となります。
融資による資金調達しやすくなる
ファクタリングによるオフバランス化で、銀行の企業格付けが向上すれば、銀行から融資を受けたい場面にもプラスに働くことが考えられます。
オフバランス化で貸借対照表がスリム化され、総資産利益率(ROA)や自己資本比率も改善できれば、決算書を見た銀行も信用力の高い会社という印象を抱くからです。
また、銀行から融資を受けて資金を調達する以外にも、たとえば株式発行による出資を受けるときの投資家からの評価も上がります。
出資による方法が可能となれば、多額の資金を調達できるだけでなく返済負担に追われることもなくなり、経営がスムーズになることでしょう。
オフバランス化は安定した会社であることをアピールし、評価を高めるために有効です。
銀行から融資を受けやすくなったり投資してもらえたりなど、様々なメリットを生むといえます。
ファクタリングによるオフバランス化の注意点
ファクタリングによるオフバランス化には様々なメリットがある反面、以下の2つには注意しましょう。
- 調達コストに注意
- 悪徳業者に注意
調達コストに注意
ファクタリングを利用すると、調達コストとして売買手数料が発生します。
3社間ファクタリングは1~9%が割合の相場であるのに対し、2社間ファクタリングでは10~20%となります。
中小企業では、売掛先にファクタリング利用を伝えることを避けたい理由で、多くが2社間ファクタリングを選択します。
おおまかに計算すると、仮に500万円の売掛金を20%の売買手数料で現金化すれば、400万円まで減少します。
入金期日まで待てば500万円入金されるはずだった売掛金が、400万円まで減ってしまうことになるため、繰り返しの長期利用で資金繰りは悪化する恐れがあります。
数か月先に現金化される売掛金が、前倒しで手元に入ることは大きなメリットであるものの、売買手数料が高めであることは留意してください。
悪徳業者に注意
ファクタリング業界は、法整備が不十分であるため、悪徳業者に注意が必要です。
オフバランス化を目的でファクタリングを利用する場合、業者選びが重要になります。
契約予定のファクタリング会社が信頼できる業者なのか、公式サイトなどの実績で確認することも必要です。
仮に悪徳業者と契約した場合、法外な費用を請求され、オフバランス化どころではなくなります。
良心的な対応をする信頼性の高いファクタリング会社か見極め、悪徳業者に騙されないように注意してください。
まとめ
ファクタリングは単なる資金の調達方法ではなく、オフバランス化による経営の改善に活用できます。
オフバランス化とは、資産を貸借対照表(バランスシート)から切り離すことであり、健全経営を示す財務指標の改善につながります。
銀行や投資家などの評価も上がり、融資を受けやすくなったり投資してもらいやすくなったりなど、資金調達のメリットを生みます。
オフバランス化を目的としてファクタリングを利用する場合は、改善見込みの効果と売買手数料を考慮し、どのように活用するかしっかりと検討しましょう。