ファクタリングを利用するときは注意が必要です。
法規制が十分ではなく、悪徳業者が横行しやすい業界のため、細心の注意を払った上でのファクタリング会社選びも求められます。
そこで、ファクタリングの注意点について、失敗しない契約や業者の選び方をわかりやすく解説します。
中小企業経営者向け!

ファクタリングの種類
ファクタリングには、次の2種類があります。
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
それぞれ説明します。
2社間ファクタリング
「2社間ファクタリング」とは、利用者とファクタリング会社だけで契約を結び、売掛債権や現金のやり取りを行います。
取引先にファクタリングで資金調達することを知られると、資金繰りに難航している危ない会社と不信感を与える可能性もゼロではありません。
取引を続けることに懸念を抱いた取引先が、その後、契約を打ち切ったり取引量を減少したりすれば、ますます資金繰りは厳しい状態となるでしょう。
そのため、2社間ファクタリングなら取引先に知られずファクタリングを利用できるという利便性から3社間ファクタリングよりも多く選ばれています。
- ファクタリング利用の申し込み
- ファクタリング会社による審査
- 契約締結と現金化した買取代金の入金
- 取引先から売掛金を回収
- ファクタリング会社に回収した売掛金の支払い
3社間ファクタリング
「3社間ファクタリング」は、利用者とファクタリング会社、取引先の3社で契約をし、取引をする仕組みです。
先に取引先に対し、ファクタリング利用によって売掛債権をファクタリング会社に譲渡することを伝え、承諾を得ることが必要です。
売掛債権の存在を取引先に確認することができることや、売掛金が直接ファクタリング会社に支払われることなどで、買取手数料は安く設定されます。
ただし取引先に対する通知や合意を得る手続が必要となるため、2社間ファクタリングに比べ、売掛金の現金化まで手間や時間がかかります。
3社間ファクタリング利用の流れは次のとおりです。
- ファクタリング利用の申し込み
- 売掛先に対する通知と承諾を得る手続
- ファクタリング会社による審査
- 契約締結と現金化した買取代金の入金
- 取引先からファクタリング会社が売掛金を回収
ファクタリング利用時の注意点
ファクタリングによる資金調達の仕組みは、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2つの契約形態によって異なります。
いずれにしても、ファクタリングで資金を調達するときにはいくつか注意しておくべきことがありますが、主に次の8つです。
- 暢達コストは審査後にわかる
- 調達金額は売掛債権額面まで
- 取引先に知られることがある
- 売掛金の支払期限を守る
- 売掛金は一括で支払う
- 担保や保証人は必要なし
- 個人は「給与ファクタリング」に注意
- 契約書控えは必ず受け取る
2社間ファクタリング利用の際に注意しておくべきこと、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの共通の注意点などありますが、それぞれ説明します。
①調達コストは審査後にわかる
ファクタリング利用の際には、ファクタリング会社に対し売買手数料を支払うことが必要です。
しかし審査後にどのくらいの調達コストか決まるため、実際に審査を受けてみなければわかりません。
設定される割合に大まかな目安はあるものの、取引先の信用力や売却する売掛債権額面の金額などでも変わります。
そのため複数のファクタリング会社に見積もりを依頼し、かかる費用や利用条件を確認した上で、どのファクタリング会社を選ぶか決めるとよいでしょう。
なお、売買手数料は、主に次の4つを総合的に審査した上で決められます。
- ファクタリングの契約方式(2社間と3社間のどちらで契約するか)
- 売掛債権額面(売掛金の金額)
- 支払期日(売掛先から売掛金が支払われるまでの日数)
- 取引先の信用力(売掛先の財務状況や経営状態など)
期日まで待てば満額入金される予定だった売掛金のうち、売買手数料を差し引いた残りを受け取ることができます。
納得した上で契約するようにしてください。
②金額は売掛債権額面まで
ファクタリングは保有する売掛債権を現金化する方法のため、金額は売掛債権額面までです。
さらにファクタリング会社に対する売買手数料も発生するため、期日に入金される予定だった金額よりも少なくなってしまいます。
③取引先に知られることがある
2社間ファクタリングでは、「債権譲渡登記」を求められることがあるため、この登記制度により取引先に知られることもあります。
債権譲渡登記を行うと債権が譲渡された情報が記載されることとなるため、概要記録事項証明書の交付などでその事実を売掛先や銀行が知ってしまう恐れもあることは留意しておくべきです。
また、次の2つのケースでもファクタリング利用を取引先に知られることになります。
- 2社間ファクタリングで売掛金をファクタリング会社に渡さなかったため取引先に通知が届いたとき
- 3社間ファクタリングで売掛先から承諾を得るため説明をしたとき
前者は、支払期限を守ってファクタリング会社に売掛金を支払えば、取引先に通知されることはありません。
しかし後者の場合、取引先に対する通知や承諾を得る手続は必ず必要となるため、説明段階で知られることになります。
また、承諾してもらえるとも限らないことも、留意が必要といえるでしょう。
④売掛金の支払期限を守る
2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社に対して売掛金を支払うことが必要ですが、必ず「支払期限」を守るようにしてください。
仮に取引先から売掛金を回収したタイミングで、資金繰りが厳しい状態であったとしても、回収代金はファクタリング会社にすでに譲渡されています。
期日を延期してもらうことはできず、支払期日は必ず守ることを原則とし、別の支払いに流用しないでください。
万一、支払いが遅れるときには、必ずファクタリング会社に連絡することが必要です。
何の連絡もせずに支払いしないまま放置すると、ファクタリングを利用できなくなるだけでなく、取引先に通知が届きファクタリング利用を知られます。
また、ファクタリング会社に渡った債権の使い込みで、横領罪など罪に問われる可能性もあるため必ず期限を守って支払いましょう。
⑤売掛金は一括で支払う
2社間ファクタリングでファクタリング会社に売掛金を支払うときには、原則、一括払いです。
「分割」による支払いや「ジャンプ」などを行うと金銭の貸し付けとなるため、ファクタリング会社は貸金業登録が必要になります。
そのため正規のファクタリング会社では、分割による支払いは受け付けていません。
必ず一括で支払うようにしてください。
⑥担保や保証人は必要なし
ファクタリングは売掛金を現金化するサービスのため、融資を受けるときのように「担保」や「保証人」は必要ありません。
契約において担保や保証人を求められた場合、ファクタリングを装い資金を貸し付けようとする「ヤミ金融業者」の恐れがあるため契約しないでください。
⑦個人は「給与ファクタリング」に注意
個人の場合、「給与ファクタリング」には注意しましょう。
給与ファクタリングで対象となるのは事業者ではなく、勤務先から給料を受け取っている一般「個人」です。
勤務先から受け取る給料を「賃金債権」として扱い、給料日を支払期日として金銭を貸し付けるサービスとされています。
貸金業登録がなければ提供できないサービスであるものの、未登録のヤミ金融業者が、法外な金利による請求や悪質な取り立てを行う例が相次いでいる状態です。
金融庁から注意喚起されていることと、事業者向けのファクタリングとは異なるサービスであるため、間違って利用しないでください。
⑧契約書控えは必ず受け取る
ファクタリング会社と契約を結ぶと、必ず契約書が作成され一般的にはその控えを渡してもらえます。
しかし経費削減などの理由により契約書を作成しようとしないケースや、仮契約であることを理由に控えを渡さないというケースなどもあるようです。
後でトラブルになったとき、手元にどのような契約を結んだか証明する契約書がなければ、正当な主張ができません。
関係書類の控えを渡すことを拒むケースや、そもそも契約書を作成しないケースなど、控えを受け取れないときには契約しないでください。
ファクタリング会社の選び方
ファクタリングは、うまく活用すればスムーズな資金調達につながる便利な手段ですが、悪徳業者に騙されないことが基本です。
そのためファクタリング会社を選び方が重要となりますが、主に次の6つを比較しながら選ぶようにしましょう。
- 売買手数料の高さ
- 現金化までのスピード
- 必要書類の量
- 売掛債権の買取可能額
- 償還請求権の有無
- オンライン対応の有無
それぞれどのようなことに注意して選べばよいか説明します。
①売買手数料の高さ
ファクタリングの売買手数料の相場は以下のとおりです。
- 2社間ファクタリング 10~20%
- 3社間ファクタリング 1~9%
この相場よりもかけ離れた売買手数料を設定してくるケースは、悪徳業者である可能性があるため注意してください。
また、売買手数料は限りなく安く設定し、後で様々な追加費用を請求してくるケースもあるため、安すぎる売買手数料にも注意が必要です。
②現金化までのスピード
ファクタリングは銀行融資よりも資金を調達できるまでの期間はかなり短いといえます。
ただし現金化のスピードは、ファクタリング会社により異なります。
最短即日の現金化を可能とするファクタリング会社や、手続をオンラインで完結させることができるファクタリング会社なら、よりスムーズな資金調達が可能となるでしょう。
③必要書類の量
ファクタリング利用の際には、ファクタリング会社に求められた書類を提出することが必要ですが、必要書類の量にも注意しましょう。
一般的には次の書類を揃えておくと手続がスムーズです。
- 登記簿謄本(法人の場合)
- 印鑑証明書
- 本人確認書類
- 決算書(確定申告書)
- 取引履歴の確認できる銀行口座通帳
- 取引先との基本契約書
- 取引先との売買契約書(3社間ファクタリングの場合必要)
- 売掛金の存在を証明する請求書・発注書・納品書など
なお、必要書類があまりに少なく、書類も確認せずに即現金化可能とするケースは悪徳業者の可能性が高いため注意してください。
④売掛債権の買取可能額
ファクタリング会社によっては、買い取りできる売掛債権に下限や上限を設けている場合もあります。
仮に下限が300万円のファクタリング会社では、100万円や数十万円の少額債権で資金を調達することはできませんので注意しましょう。
⑤償還請求権の有無
金銭債権などが支払われないとき、さかのぼって償還を求める権利を「償還請求権」といいます。
もしも償還請求権ありのリコース契約におけるファクタリングを利用すると、売掛先の倒産で売掛金が回収できなくなったとき、利用者が弁済しなければなりません。
そのためファクタリングで資金を調達するときには、償還請求権の有無は必ず確認しておくようにしてください。
⑥オンライン対応の有無
一般的なファクタリング会社でも、オンライン対応を可能とするケースが増えています。
できるだけ人に会いたくない方や、窓口まで出向く時間がない多忙な経営者でも、面談や書類の受け渡しをオンライン対応で完結できれば便利です。
遠方で直接ファクタリング会社まで出向けない場合なども、オンライン対応できるか事前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
ファクタリングは、個人事業主や中小企業にとって大変便利な資金調達のサービスとして多く活用されるようになりました。
しかし利用の際には注意しておくべきことがいくつかあり、特にファクタリング会社選びは、悪徳業者に騙されない見極めが重要です。
なお、ファクタリング会社と契約を結ぶと、必ず契約書が作成されその控えを渡してもらえます。
後にトラブルになったとき、契約内容を証明する契約書がなければ正当な主張もできなくなります。
控えを渡さないファクタリング会社とは絶対に契約しないようにしましょう。
中小企業経営者向け!

