資金調達の方法として真っ先に思いつくのは「銀行融資」という方も少なくありません。
しかし借金を増やしたくないという場合、エクイティファイナンスという方法も検討できます。
エクイティファイナンスとは、資本を増やして資金を調達する方法です。
資金調達する理由は、新規事業資金や設備投資、運転資金など様々ですが、目的成功に向けて適切な方法を選ぶことが大切といえます。
そこで、エクイティとはどのような方法なのか、デットファイナンスとの違いやメリット・デメリットを解説していきます。
目次
エクイティファイナンスとは
「エクイティファイナンス」とは、新株を発行して資金を調達することです。
株式資本や自己資本のこと「エクイティ」といいますが、新たに株式発行する増資による資金調達のため、「エクイティファイナンス」といいます。
資金を調達する方法といえば、たとえば銀行からお金を借りるなど融資を受ける方法を思い浮かべる方も少なくありませんが、「借金」が増えます。
「負債」はマイナスなイメージが強いのに対し、エクイティファイナンスなら負債ではなく「自己資本」が増えるため、外部に悪印象を与えることはありません。
資金調達の種類
資金調達には主に次の3つの手法があります。
- エクイティファイナンス
- デットファイナンス
- アセットファイナンス
エクイティファイナンスを含むそれぞれの方法について簡単に説明していきます。
エクイティファイナンス
「エクイティファイナンス」とは上記で説明したとおり、株主資本を増加させて資金を調達する方法です。
原則、返済義務を負わず資金を調達できることと、財務体質を強固にする効果が見込めます。
ただし株式を保有することになる投資家から見れば、調達した資金が中期で利益拡大に貢献できる資金として使われなければ、一株あたりの株式価値が薄まってしまうため、株主に合理的な説明をすることも必要となります。
デットファイナンス
「デットファイナンス」とは、銀行からの借入れ社債など、「他人資本」を増やして返済期限までに返済しなければならない資金調達の方法です。
「デット」とは、英語で「負債」や「借金」を意味する言葉のため、デットファイナンスを通じ資金調達すれば貸借対照表の負債が増え、借入金に応じた利息負担も必要となります。
自己資本ではなく、株主以外から調達した「他人資本」を増やす資金調達の方法であり、資金調達先が多いことはメリットです。
日本政策金融公庫や民間銀行・信用金庫・ノンバンク系金融機関など、それぞれ融資条件などは異なるため、状況に応じて柔軟な選択が可能となります。
アセットファイナンス
「アセットファイナンス」とは、企業が保有している資産が生み出すキャッシュフローを返済原資とした資金調達方法です。
資産の担保価値を利用して資金を調達するため、資産価値を有するときにはアセットファイナンスを使うことができます。
資金調達のもととなるのは、不動産・売掛債権・知的財産などですが、資産を流動化や証券化することで資金を調達します。
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エクイティファイナンスの種類
エクイティファイナンスで資金調達する場合、主に次の4つから選ぶことになります。
- 公募（時価発行増資）
- 株主割当増資
- 第三者割当増資
- 転換社債型新株予約権付社債
それぞれのエクイティファイナンスについて説明していきます。
公募（時価発行増資）
「公募（時価発行増資）」とは、新株を時価や時価に近い価格で発行し、資本を増やす方法です。
「時価」とはその時々の株価であり、高い水準にあれば少ない株式数で多く資金を調達できます。
株主割当増資
「株主割当増資」とは、新株発行の際に、既存の株主に保有株数に応じた割り当ての権利を与える資金調達の方法です。
既存の株主は権利を与えられますが、新株の申し込みや払い込みなどの義務はなく、申し込みがなければ権利を失います。
株主構成を大きく変化させず、新株を発行して資金調達できることはメリットです。
第三者割当増資
「第三者割当増資」とは、株主割当増資と異なり、株主か関係なく特定の関係がある第三者に割り当てを受ける権利を与える資金調達の方法です。
取引先や業務提携先と提携を強めたいときや、株価が低く他の増資方法では期待できないときに利用できる方法といえます。
転換社債型新株予約権付社債
「転換社債型新株予約権付社債」とは、新株予約権の付された社債で、一定価格で発行する株式転換可能な社債です。
新株予約権を行使した上で株式へ転換し、機関投資家などの手に渡れば、資金調達できるだけでなく株価への影響も小さく抑えることができます。
エクイティファイナンスとデットファイナンスの違い
株式を発行することで資金を調達するエクイティファイナンスは、株式を発行するなどで資金を調達します。
それに対し、デットファイナンスは銀行など金融機関からお金を借りて手元の資金を増やすという違いがあります。
エクイティファイナンスは原則、調達した資金を返済する義務はありませんが、デットファイナンスは借りたお金のため、返済義務が発生します。
また、貸借対照表上でみた場合、エクイティファイナンスは資本が増加するのに対し、デットファイナンスは負債を増加させることも違いとして挙げられます。
エクイティファイナンスもデットファイナンスも、どちらも資金調達を成功させるためには経営者の信用度に依存することになると考えられます。
お金の概念は信用そのもののため、調達できる金額も信用力に左右されることになるでしょう。
そのため経営者が信用に値する人物でなければ、ほしいときに希望する金額を調達できないともいえます。
将来的に返済義務を負うデットファイナンスに対し、返済義務が生じないエクイティファイナンスのほうが良いと考えるかもしれません。
しかしエクイティファイナンスの場合、返済義務はないものの、株式発行により経営権を脅かされるリスクを抱えることになります。
また、発行株式数が増加すれば、1株当たり利益や株価下落を招くおそれもあるなど、リスクについて理解した上で選ぶようにしてください。
エクイティファイナンスとアセットファイナンスの違い
エクイティファイナンスで資金を調達することを選ぶ前に、アセットファイナンスとの違いも理解しておきましょう。
アセットファイナンスとは、資産を流動化または証券化するスキームで資金を調達する方法です。
不動産などの資産は証券化しやすく、たとえばオフィスビルなら1年間の賃料収入を担保に証券を発行できます。
売掛債権の場合、売却して現金化する「ファクタリング」などであれば、借入れではないため保有する売掛金の範囲で資金調達が可能です。
他にも債権を担保に融資を受ける売掛債権担保融資などもあります。
資産を証券化・流動化する方法はいろいろありますが、取引先の倒産などで回収不能となる貸倒れリスクを回避する目的でも活用できます。
リスク回避と同時に資金調達できる方法であり、貸借対照表でも負債が増やさず、資産や取引など財務諸表に記載されないオフバランス化が可能となります。
資産がバランスシートから外れるためスリム化を図ることが可能となり、価格減少や回収不能などの保有リスクを回避でき、資産効率改善など期待できる方法ともいえます。
エクイティファイナンスのメリット
エクイティファイナンスのメリットは、原則、返済義務がなく返済負担に追われることがないことです。
デットファイナンスで資金を調達すれば、返済義務を抱え利息を負担することになり、一時的に手元の資金は増えても将来的に資金繰りが悪化するリスクも考えられます。
さらに調達した資金の使途なども限られていることがありますが、エクイティファイナンスなら調達資金がマイナスになることはなく、調達したお金は事業のためであれば自由に使うことができます。
エクイティファイナンスによる資金調達で自己資本が増えれば、財務面で安定性を示す自己資本比率を向上させることができ、財務体質の強化につながります。
自己資本比率が上がれば、取引先や銀行からの評価も高まり、将来的に利益を上げることができる見込みがあると認められるかもしれません。
また、投資家に認められれば、多額の資金を調達できる可能性にもつながります。
エクイティファイナンスのデメリット
エクイティファイナンスのデメリットは、発行した新株の多くを第三者が保有することによって、株主構成が大幅に変わる可能性があることです。
経営権や配当金の支払い方針を左右する可能性があり、株主が増えればそれだけ多くの意見が寄せられることになります。
既存の株主の立場になれば、新株発行により1株あたりの価値が薄まってしまうこともデメリットです。
エクイティファイナンスで資金を調達する場合、既存の株主にしっかりと説明し、理解を得ることができる合理的な説明が必要になることも考えておくべきといえます。
また、手続の煩雑さや時間がかかるため、急な資金調達に対応することは難しいことはデメリットといえます。
まとめ
エクイティファイナンスとは、資本を増やして資金を調達する方法であり、返済義務を負うことなく資金を調達できるため、デットファイナンスのように借金を増やすことはありません。
資金を調達する方法は、エクイティファイナンスや他人資本を増やすデットファイナンス、そして保有する資産価値を担保とするエクイティファイナンスもあります。
どの資金調達の方法がよいのか、種類ごとのメリットやデメリットを十分に理解した上で選ぶことが必要といえるでしょう。
また、エクイティファイナンスとデットファイナンスのどちらが良いか、エクイティファイナンスとの違いについても理解しておくことが必要です。
資金調達する目的や金額、必要なタイミングなどに応じて、一番良い方法を検討することが望ましいでしょう。
