預金利息は、源泉所得税・復興特別所得税・地方税が差し引かれています。
事業用の口座に預金利息が振り込まれたときの仕訳処理は、差し引かれた税金も一緒医仕訳する方法と、入金金額のみ仕訳する方法に分かれます。
「受取利息」とは、たとえば金融機関に預けた預金や会社にお金を貸したときの貸付金に対し、受け取ることができる金銭の貸借の対価です。
一般的には、預金や有価証券の利息、貸付金の利息などを会計処理で計上するときに用いる勘定科目ですが、たとえば受け取るはずの利息から税金が差し引かれていたときにはどのような仕訳処理が必要になるか迷うこともあります。
そこで、受取利息とはどのようなお金なのか、仕訳処理や計算方法についてわかりやすく解説していきます。
目次
受取利息とは
「受取利息」とは、金融機関の預金や会社に対する貸付金に対し、受け取ることができる金銭貸付の対価といえます。
お金を借りた側が貸した側に、借りた元本に追加して支払うのが「利子」で、貸した側が元本に追加して受け取るお金が「利息」です。
そのため金銭貸付の対価として受け取ったお金が「受取利息」といえます。
預金や貸付金以外にも、有価証券や社債発行などでも利息を受け取ることはありますが、受取利息について以下の2つを説明していきます。
- 受取利息で計上する費用
- 受取利息の計上時期
受取利息で計上する費用
受け取った利息が「受取利息」で計上する費用のため、次で発生した利息が該当します。
- 普通預金
- 郵便貯金
- 定期預金
- 貸付金
- 保証金
受け取る利息のうち、損益計算書で表示される科目である受取利息・有価証券利息・受取配当金などをまとめて「受取利息配当金」とする場合もあります。
それぞれの違いは以下のとおりです。
受取利息 | 貸付金や金融機関に対する預金に対して受け取る利息 |
有価証券利息 | 国債や社債など債券を保有しているときに受け取る利息 |
受取配当金 | 株式保有に対して受け取る配当金 |
受取利息の計上時期
受取利息は、原則、受け取る時期が到来していなくても、当期に対応する金額を「未収収益」で計上します。
例外として、継続処理を条件に支払期日ごとに計上することもできます。
受取利息の計算方法
受取利息の計算方法は次の2つです。
- 単利による計算方法
- 複利による計算方法
1年の利率が「年利」であり、1か月の利率が「月利」です。
一般的に利息を計算するときには年利で計算しますが、それぞれの計算方法を説明します。
単利による計算方法
「単利」では、受取利息を組み入れていない元本部分に対してのみ利息がつくため、次の計算式で算出します。
受取利息=元本×利率 |
たとえば、銀行に預けた定期預金100万円の利率が1%、預け入れ期間が1年という場合の単利による利息は次のとおりです。
100万円×1%=1万円
複利による計算方法
「複利」では、利息を元本に組み入れさらに新しい元本とし、運用して利息を計算します。
そのため計算方法は以下のとおりです。
受取利息=(元本+受取利息)×利率 |
たとえば定期預金100万円の利率1%、預け入れ期間1年で福利による利息を計算する場合には、半年ごとに元本と利息を合わせた新しい元本の利息を算出していきます。
半年後の福利による利息は、
100万円×1%×12分の6=5千円
となり、次に1年後の利息を以下のとおり算出します。
(100万円+5千円)×1%×12分の6=5,025円
そのため、1年後の福利による受取利息は、
5,000円+5,025円=10,025円
です。
単利より複利のほうが受け取る利息は増え、1年複利よりも半年複利のほうがさらに多く利息を受け取ることができます。
受取利息の税務上の扱い
受取利息は、税務上、消費税は課税されない非課税として扱われます。
消費税は、国内で事業者が事業として対価を得て行う取引に課税され、課税対象になじまない取引や社会政策的な配慮で課税しない非課税取引が定められいます。
この非課税取引に受取利息も含まれるため、消費税はかかりません。
ただし金融機関の預金や国債・社債などで受け取る受取利息については所得税が課税されるため、預金利息については入金される前に源泉徴収されます。
そこで、受取利息の源泉徴収について、
- 源泉徴収税額の計算方法
を説明していきます。
源泉徴収税額の計算方法
平成28年1月に法人に係る地方税利子割が廃止されたため、個人と法人税では源泉徴収税額の計算方法に違いがあります。
そこで、個人と法人の源泉徴収税額の計算方法について、次の2つに分けて説明していきます。
- 個人の源泉徴収税額
- 法人の源泉徴収税額
個人の源泉徴収税額
利息を受け取るときには、受取利息の金額に対して、一律15.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%)と地方税利子割5%を税率として掛けた税金が源泉徴収されます。
税金が差し引かれることで源泉分離課税の対象となることから、確定申告では対象になりません。
なお、受取利息の手取り額だけ情報しかないときには、源泉徴収税額を次の例のように計算することが必要です。
たとえば源泉徴収後の受取利息が200円のときには、15.315%と5%を差し引いた残りが200円と考えると、100%(1)から15.315%と5%(0.79685)を差し引いた金額が200円と考えられます。
そのため源泉徴収前の受取利息は、割り戻しにより以下のとおりです。
200円÷0.79685=250円(1円未満は切り捨て)
所得税(復興特別所得税含む)は15.315%のため、
250円×15.315%=38円
です。
同様に地方税は5%であるため、
250円×5%=12円
となります。
法人の源泉徴収税額
法人の受取利息は一律15.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%)の税率のみとなるため、たとえば次のように計算します。
源泉徴収された後の受取利息が200円のときは、1から15.315%を差し引いた0.84685を200円と考えるため、受取利息は以下のとおりです。
200円÷0.84685=236円(1円未満切り捨て)
所得税は15.315%のため、
236円×15.315%=36円
となります。
受取利息の仕訳で使う勘定科目
法人が預金利息を受け取ったときには、次の勘定科目を使って仕訳処理を行います。
受取利息 | 法人が利息を受け取った時の勘定科目 |
法人税等 | 受取利息から差し引かれた源泉徴収分の勘定科目 |
個人事業主が預金利息を受け取った場合には、受取利息は事業と関係のない入金となるため、本業の所得と区別して仕訳を立てます。
そのため以下の勘定科目を使って仕訳処理を行います。
受取利息 | 事業主借 |
源泉徴収 | 事業主貸 |
以上のことから、受取利息に関する仕訳処理で用いる勘定科目は以下のとおりです。
- 受取利息
- 法人税等
- 事業主借
- 事業主貸
それぞれ説明します。
受取利息
法人が預金利息を受け取ったときは、「受取利息」の勘定科目で仕訳処理を行います。
普通預金・郵便貯金・定期預金などの預金利息だけでなく、取引先の会社などに対する貸付金や有価証券の利息なども受取利息で処理します。
法人税等
法人税・法人住民税・法人事業税を納めたときの仕訳では、「法人税等」の勘定科目で処理します。
受取利息は、合計15.315%の税率分の所得税と復興所得税が源泉徴収されているため、源泉徴収された税金は「法人税等」の勘定科目を使った仕訳処理を行いましょう。
事業主借
個人事業主に入金されたお金のうち、事業と関係のない入金分は「事業主借」の勘定科目で処理を行います。
そのため個人事業主の預金利息も事業と関係のない入金といえるため、「事業主借」で仕訳処理を行ってください。
事業主貸
個人事業主の支払いのうち、事業と関係のない出金は「事業主貸」の勘定科目で処理します。
預金利息からは源泉徴収税が差し引かれていますが、経費として扱うことはできないため、事業と関係のない支出として「事業主貸」で仕訳処理してください。
受取利息の仕訳方法
預金利息が振り込まれたときの会計処理は、差し引かれた源泉所得税・復興特別所得税・地方税も仕訳する方法と、入金金額のみを仕訳する方法の2種類に分かれます。
税金を仕訳する方法では、差し引かれた税金を「法人税、住民税及び事業税(法人税等)」または「租税公課」の勘定科目で処理します。
利息を受け取ったときの会計処理では、「受取利息」の勘定科目を用いた仕訳処理となります。
処理のタイミングは原則、利息として収受したときに税込額で計上しますが、その基準は「発生主義」に基づいて行います。
しかし期末には収益の繰越処理が必要となるため、未収利息や前受利息などを計算し、収益に加算または減算することが必要です。
そこで、受取利息に関連する仕訳について、次の4つの事例を説明します。
- 利息から税金が控除されて入金された
- 代表者に貸付金の利息が入金された
- 満期を迎えた定期預金と利息が入金された
- 決算期に受取利息を未収収益で計上した
利息から税金が控除されて入金された
銀行に預け入れた預金に対する利息が口座に振り込まれたときには、源泉所得税15.315%と地方税利子割5%が差し引かれます。
ただし法人の場合は、地方税利子割はなく源泉所得税のみの控除です。
そのため、個人か法人かによって利息から税金が控除され入金されたときの仕訳は異なります。
【個人の仕訳処理】 | |
個人の場合、口座に預け入れた預金に対する利息は、国税15.315%と地方税5%が差し引かれた後で入金されます。 そして預金口座に入金された金額は「事業主借」で処理することが必要です。 たとえば普通預金口座の利息900円に対し、税金が差し引かれた後で入金されたときの仕訳処理は以下のとおりです。 |
|
借方 | 貸方 |
普通預金 718 | 事業主借 718 |
【法人の仕訳処理】 | |
法人では、預金に預け入れた利息に対して差し引かれるのは国税15.315%のみです。 また、国税は「仮払法人税等」で処理することになるため、たとえば利息900円に対して税金が控除された後に利息が入金された場合の仕訳処理は以下のようになります。 |
|
借方 | 貸方 |
普通預金 763 法人税等 137 |
受取利息 900 |
代表者に貸付金の利息が入金された
代表者がお金を借りているとき(会社が代表者に対してお金を貸しているとき)には、代表者は会社に利息を支払うことが必要です。
そのため、会社からの借入金はその調達金利とし、複数借入金があれば平均調達金利を計算します。
ただし支払期日1年以内で一定期間ごとに到来するものに限ります。
たとえば会社から代表者に貸し付けていた貸付金300万円が返済され、元金と利息1万円が会社の預金に振り込まれたときの仕訳は以下のとおりです。 | |
借方 | 貸方 |
普通預金 3,010,000 |
短期貸付金 3,000,000 受取利息 10,000 |
満期を迎えた定期預金と利息が入金された
定期預金で受け取る利息も、普通預金と同様に、個人は「事業主貸」の勘定科目で処理し、法人では「受取利息」と「仮払法人税等」を使います。
【個人の仕訳処理】 | |
50万円の定期預金が満期を迎え、税金を差し引いた利息800円とともに普通預金に入金された場合の仕訳では、「事業主貸」の勘定科目で処理します。 | |
借方 | 貸方 |
普通預金 500,800 |
定期預金 500,000 事業主借 800 |
【法人の仕訳処理】 | |
法人が預けていた50万円の定期預金が満期を迎え、税金を差し引いた利息800円とともに普通預金に入金されたときには、普通預金と同様に「受取利息」と「仮払法人税等」を使います。 | |
借方 | 貸方 |
普通預金 500,800 法人税等 144 |
定期預金 500,000 受取利息 944 |
決算期に受取利息を未収収益で計上した
決算の際に、まだ入金されていない利息があれば当期に対応する金額を「未収収益」で計上し、翌期首に振り戻すことが必要です。
未収収益は、提供したサービスの対価であるものの、まだ支払われていない場合に計上するときに用いります。
ただし例外として、継続処理することを条件に、支払期日ごとに計上することも認められています。
たとえば決算にあたり、取引先に貸していた貸付金で発生した利息5万円を未収分として計上したときの仕訳は以下のとおりです。
【期末の仕訳処理】 | |
借方 | 貸方 |
未収収益 50,000 | 受取利息 50,000 |
【翌期首の仕訳処理】 | |
借方 | 貸方 |
受取利息 50,000 | 未収収益 50,000 |
受取利息の仕訳における注意点
受取利息の仕訳における注意点は、以下の3つです。
- 所得税控除は適用されないケースがある
- 受取利息に消費税は課税されない
- 期末に未収分の仕訳が必要である
それぞれ説明します。
所得税控除は適用されないケースがある
法人の預金利息は、源泉徴収済みの金額のみの純額処理で仕訳処理を行う場合、源泉徴収済みの金額をもとに貸方に「受取利息」、借方には「預金」を記載します。
この純額処理で仕訳処理を行う場合、会計処理の手間を省くことができるメリットはあるものの、受取利息の所得税控除は適用されません。
受取利息に消費税は課税されない
預金利息は、消費税が課税されません。
消費税の課税対象になじまない取引は非課税取引とされていますが、受取利息も消費税のかからない非課税取引に該当します。
期末に未収分の仕訳が必要である
期末にまだ受け取っていない預金利息がある場合、「未収収益」の勘定科目で仕訳処理を行います。
未収収益とは、まだ支払われていないサービス対価を計上するときの勘定科目です。
翌期首に、貸方には「未収収益」、借方に「受取利息」の勘定科目で振り戻す処理が必要となります。
まとめ
預金利息は、源泉所得税などの税金が差し引かれているため、振り込まれたときの仕訳処理は、税金も仕訳する方法と入金金額のみを仕訳する方法に分かれます。
受取利息は金銭の預け入れや貸し付けに対して受け取る対価であり、個人と法人ではそこから差し引かれる所得税の計算方法や仕訳処理が異なります。
なお、所得税の課税であるため源泉徴収はされるものの、消費税は非課税取引に該当するためかかりません。
仕訳処理で迷ったときは、紹介した具体例を参考にされてください。