資金調達に金融機関からの融資を検討している場合に気になるのは金利ですが、銀行の金利がどのように決まるのか、詳しく理解できている経営者はそれほど多くありません。
融資を受けて資金調達すれば利息を支払うことが必要になるため、少しでも負担を軽くするためにも金利が決まる仕組みを理解しておくと良いでしょう。
そこで、銀行から資金を借入れて調達するときの金利相場や、計算方法と低金利で資金調達するポイントについて解説していきます。
目次
銀行融資の金利とは
銀行融資の金利とは、借りたお金に対する利息の割合のことです。
債務者の信用力や貸付条件、金融市場もの状況や事業計画の内容などで決まり、以下の2種類があります。
- 変動金利
- 固定金利
それぞれ説明します。
銀行融資の金利はいくら?個人・法人の金利相場と計算方法を解説
変動金利
「変動金利」とは、借入期間中の適用金利が、市場金利によって変わる金利です。
適用金利は半年一度の頻度で見直しが行われますが、変動した場合でも毎月の返済額は5年間変わることはありません。
また、見直し後の返済額は、適用金利が大幅に上昇した場合でも、直前の返済額の最大1.25倍までとされています。
そのため見直し後の返済負担が大幅に増えることはなく、5年後の元金残高や返済期間、金利から返済額が再計算されます。
固定金利
「固定金利」とは、借入期間中は金利が固定される金利です。
ただし固定金利には、以下の2種類があります。
- 完済まで同じ利率で金利が固定される全期間固定金利
- 借入開始から一定期間のみ固定される当初固定金利
固定期間は2年、3年、5年、10年、20年などから選ぶことになり、期間が長いほど適用金利は高めです。
固定期間中は返済額が一定になるため返済計画が立てやすい反面、固定中の期間見直しや金利タイプ変更はできません。
固定金利終了のときには、その後の金利タイプを選び直すことができます。
融資の金利相場
銀行から融資を受けて資金調達するときの金利相場は、借入先である金融会社によって異なります。
また、民間の銀行以外にもノンバンクなど貸金業者や、日本政策金融公庫などの政府系金融機関から融資を受ける場合もあるため、金利相場は一律ではありません。
金利の低さを順番にあらわすと、
- 日本政策金融公庫の金利
- 民間銀行の金利
- ノンバンクの金利
となります。
それぞれの金利とその相場について解説していきます。
日本政策金融公庫の金利
「日本政策金融公庫」とは、政府が100%出資・運営している公的な金融機関であり、事業者向けの資金の貸し付けも行っています。
どの融資制度で借入れるかにより金利は異なるものの、民間の銀行よりも低く設定されるため、利用しやすいことが特徴といえます。
一般的な相場は年率1~3%程度であるものの、申し込みから融資実行まで1か月程度かかることや、必要書類などが多いため事前の準備が必要です。
民間銀行の金利
地方銀行や信用金庫、メガバンクなど「民間銀行」などは、中小企業の資金調達先として真っ先に思い浮かべる経営者も少なくありません。
民間銀行の金利は、どの金融機関からお金を借りるかによって幅があることや、借入期間・融資金額・返済能力などでも変わってきます。
また、不動産担保融資や保証付き融資であれば、担保・連帯保証なしの融資よりも金利は低く設定されやすいといえます。
一般的に中央銀行が民間銀行に資金を貸すときに設定される「政策金利」が下がっているときには、銀行融資の金利相場も低めに設定されると考えられますが、目安としては年率2~9%程度です。
ノンバンクの金利
「ノンバンク」は預金業務を行わない貸金業者のことです。
民間銀行が貸し付ける資金は、預金者から預かったお金や、中央銀行から調達した資金ですが、ノンバンクは預金機能がないため民間銀行から資金を借入れて貸付用の資金にしています。
そのため設定される金利は、民間銀行から資金を借入れたときに設定される金利よりも高くなるといえるでしょう。
日本政策金融公庫や民間銀行よりも審査のハードルが低く、申し込みから融資実行までの期間も短いことはメリットですが、担保の差し入れなどである程度金利を下げることができたとしても年率6~18%が相場です。
利息負担が大きくなるため、長期の借入れには不向きであるものの、小口の緊急資金を一時的に借りたいときには利便性が高いといえます。
金利を決める要素
主に銀行から融資を受けるときの金利は、次の4つの要素で決まります。
- 銀行の資金調達コスト
- 運営経費
- 貸し倒れリスク
- 利益の見込み
どのような要素なのかそれぞれ説明していきます。
銀行の資金調達コスト
銀行から融資を受けるときの金利を決める要素の1つ目は、銀行の「資金調達コスト」です。
銀行は資金を調達するときにかかったコストと経費を支払った上で、許容できる貸し倒れリスクと利益の見込みを踏まえて金利を設定するため、銀行がリスクを負担しても利益を出せる水準で金利が設定されることなります。
また、銀行が貸し付ける資金は自己資金ではなく、預金者から預け入れられたお金や中央銀行など資金市場から借りたお金です。
預金者には利息、借入金には利子を支払っているため、融資資金に充てるお金を調達するときにかかったコストを補填できる金利を設定すると考えられます。
地銀よりもメガバンクのほうが資金市場から安い金利で資金調達できるため、融資金利も安く設定される傾向が高いといえます。
運営経費
銀行から融資を受けるときの金利を決める要素の2つ目は、銀行の「運営経費」です。
金融機関も事業を運営するために、家賃や人件費など様々な経費を負担しています。
メガバンクは貸し出し規模も大きいため、一件に対する貸し付けの経費率も低く抑えることが可能となり、金利も低く設定されます。
しかし地方の信用金庫などの場合、貸出先が小規模事業者や中小企業であるため、取引金額も小さく経費率も高めであることから、メガバンクより金利は高く設定されやすいといえます。
貸し倒れリスク
銀行から融資を受けるときの金利を決める要素の3つ目は、銀行の「貸し倒れリスク」です。
貸したお金を返すことができない相手に資金を貸し付けてしまうと、銀行は利益を得ることができないだけでなく、損失を被ることになります。
そのため資金を貸し付けてよい相手か審査を行うものの、信用力が十分でない相手にお金を貸すときにはその貸し倒れリスクを見込んで金利を高めに設定します。
期日に遅れることなく確実に返済されると判断すれば金利は低く設定されるでしょう。
しかし、決算書をもとに設定した「信用格付け」が十分でなければ、審査で断れる可能性も高くなり、審査に通ったとしても金利は高めに設定されます。
利益の見込み
銀行から融資を受けるときの金利を決める要素の4つ目は、銀行の「利益」の見込みです。
民間の銀行は日本政策金融公庫のような非営利組織ではなく、事業活動で得た利益を社員や株主など組織構成員に分配する営利組織であるため、どのくらい利益を見込んでいるかによって金利を設定します。
金利に影響する評価の種類
銀行から資金調達するときには、金利に影響する評価の種類についても理解しておきましょう。
融資の申し込みの際には、以下の書類提出を求められることになります。
- 商業・法人登記簿(登記事項証明書)
- 印鑑証明書
- 納税証明書
- 決算書(確定申告書)
- 試算表
- 事業計画書
- 資金繰り表
- 借入状況一覧表
これらの提出書類から申込者を評価し、資金を貸し付けてもよいか融資可否を判断します。
貸付可能である場合には、設定する金利・返済期間・返済方法などを決めることになりますが、評価は次の2つの査定が行われます。
- 定量評価
- 定性評価
それぞれの評価について説明していきます。
定量評価
定量評価では、次の4つを査定していきます。
- 収益性(売上高経常利益率・総資本経常利益率)
- 安全性(負債と自己資本の比率)
- 成長性(経常利益増加率・売上高)
- 債務償還能力(債務償還年数やキャッシュフロー額)
定性評価
定性評価では、決算書などの書類では数値化することができない以下の項目を査定していきます。
- 経営者の能力
- 人柄
- 経営方針
- 市場の成長性
- 従業員のモラル
など
査定に基づいて、以下に分類されることになり、正常先以外では融資審査に通ることが厳しくなります。
- 正常先
- 要注意先
- 要管理先
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
金利の計算方法
銀行から融資を受けて資金調達した場合、「元金」と設定された金利による「利息」を返済することになります。
そのため金利を算出する方法についても理解を深めておきたいところですが、次の銀行融資の返済方法により計算方法は異なります。
- 一括返済
- 元金均等返済
- 元利均等返済
それぞれの計算方法について簡単に説明します。
一括返済
銀行から融資を受け、借入残高と利息を一括で返済する「一括返済」するときの利息は、次の計算式で算出できます。
利息額=借入残高×金利率×借入期間
一括返済は、分割による返済よりも総支払額を抑えられることがメリットです。
元金均等返済
「元金均等返済」は、元金返済に充てる金額が毎回一定である返済方式で、残高に対する利息が加算されます。
そのため毎月の利息は残高が多い返済開始初期ほど高額になる傾向が見られ、返済が進めば利息負担も軽減されます。
元金均等返済による利息は次の計算式で算出できます。
毎月の元金返済額=借入金額/返済回数
利息返済額=直前の残高×月利(年利/12)
毎月の返済額=毎月の元金返済額+直前の残高の利息返済額
元利均等返済
「元利均等返済」とは、元金返済額と利息支払額の合計額が毎回一定である返済方式で、先に毎月の返済額が計算されます。
直前の残高に金利をかけて利息が計算されることとなり、返済額から利息返済額を差し引いた金額が元金返済額になります。
元利均等返済の利息は以下の計算式で算出できます。
毎月の返済額=借入金額×月利×(1+月利)返済回数/(1+月利)返済回数-1
利息返済額=直前のローン残高×月利
元金返済額=毎月の返済額-利息額
返済開始当初の返済額を少なくすることができることや、返済計画が立ていやすいことがメリットであるものの、元金均等返済と同じ借入期間の場合には元金均等返済より総返済額が多くなってしまうことがデメリットです。
低金利で資金調達するコツ
銀行から融資を受けて資金調達するとき、できるだけ金利は低く抑えたいものですが、そのコツとして次の5つが挙げられます。
- 格付けを上げる
- 長期金利で申し込む
- 取引実績をつくる
- マル経融資や不動産担保融資を利用する
- 高金利の借り入れはしない
それぞれのコツについて説明します。
格付けを上げる
銀行も営利企業なので、自己資本比率が一定値を割り込むと金融庁に業務停止を命令されるといった事態に追い込まれます。
そのため調達金利や経費、貸倒れなどを差し引いてもプラスになって利益を出せるような金利で設定されます。
貸倒れによる損失も金利から負担することになるので、格付けが低ければ貸倒れリスクが高いと判断され高い金利を要求されます。
金利を下げたいのなら、銀行からの格付けを改善することが必要になると言えるでしょう。
格付けを改善する方法として、
- 帳簿を改ざんできない会計ソフトを使用する
- 書面添付を実践する
- 会計事務所に記帳適時性証明書を発行してもらう
- 経営計画書の作成・予算管理を徹底する
- 企業防衛対策を実施する
などが挙げられます。
銀行が金融庁の支配下にあり、厳しい会計管理を行っていることを理解しておきましょう。
今後企業の会計体制のあり方を改善することが、銀行からの格付けランクをアップさせ資金調達を有利に運ぶことへ繋がると考えられます。
長期金利で申し込む
銀行から低金利で融資を受けたいなら、長期金利で申し込みましょう。
資金受取の際に返済終了までの借入金利と返済額が確定すれば、たとえ市中金利や物価が上昇した場合でもすでに確定した借入金利で返済を継続できます。
取引実績をつくる
銀行から低金利で融資を受けたいなら、保証付き融資などで取引実績をつくりましょう。
借入金を遅れず返済した実績をつくることで、銀行独自の責任で貸し付けを行うプロパー融資を提案される可能性も広がります。
マル経融資や不動産担保融資を利用する
「マル経融資」は、原則6か月以上に渡り商工会議所から経営指導を受ければ利用できる融資制度です。
日本政策金融公庫に商工会議所経由で申し込みでき、令和5年3月1日現在では年率1.30%の特別利率が適用されます。
他にも不動産担保融資を利用することで、差し入れた不動産が信用を補完し、金利を引き下げた状態で融資を受けることができるでしょう。
高金利の借り入れはしない
高金利の借り入れがあれば、銀行は高い金利でお金を借りなければならない状態であると取引を懸念します。
そのため銀行から低金利で融資を受けたいのなら、高金利の借り入れはしないことが大切です。
ビジネスローンなどは即日融資可能で急な資金ニーズに対応可能であるものの、銀行にリスクの高い企業という印象を与えかねません。
もし急いで資金を準備しなければならないときには、最短で即日売掛金を現金化できるファクタリングの利用をオススメします。
ファクタリングとはどのような資金調達の方法?その内容をわかりやすく解説!
まとめ
銀行など金融機関からの融資を受けて資金調達するときには、できるだけ金利が低い調達先を選ぶことで、返済負担に追われずに済みます。
ただ、金利が低い方法を選んだとしても、借金であることは変わりないため、借りたお金は返済しなければなりません。
融資を受けて資金調達すれば元金だけでなく利息も支払うことが必要になるため、金利を決める要素や金利相場を事前に把握しておき、調達後の返済負担が重くならないようにしておきましょう。
もしも借金を増やさずに資金調達したい場合には、ファクタリングなどを方法として選ぶことをおすすめします。