運転資金とは?計算式や必要額の目安・調達方法をわかりやすく解説

運転資金とは、事業を運営する上で必要なお金です。

会社経営では必ず必要となる運転資金の目安とは、月商の3~6か月程度といわれていますが、業種や会社の成長段階によって異なります。

売上や業績に悪影響を及ぼさない、必要な運転資金を確保しておくことが必要といえるため、具体的な目安や調達方法を知っておきましょう。

そこで、運転資金について、計算式や必要額の目安、調達方法をわかりやすく解説していきます。

運転資金とは

資金調達のブロックとフォークリフトのミニチュア

「運転資金」とは、事業を維持するために必要な資金です。

具体的には、商品の仕入れ代金や従業員の給与、家賃に広告宣伝費など事業活動でかかる費用が運転資金といえます。

運転資金が足らなくなった場合、売上が上がっていて販売数を増やしたくても、材料や商品を仕入れることはできません。

従業員に支払う人件費や家賃、光熱費なども払えなくなれば、経営危機に陥るでしょう。

運営上、必要なお金が運転資金であり、手元にプールするか足らないときには調達することが必要です。

運転資金について、以下の3つを説明します。

  1. 運転資金の考え方
  2. 運転資金の内訳
  3. 設備資金との違い

運転資金の考え方

運転資金は、商品を売り上げたタイミングと、信用取引や掛け取引により発生する売掛金のズレにより必要となります。

商品やサービスを販売したとき、その代金をすぐに受け取ることはできません。

一定期間分をまとめて取引先に請求し、後日、指定の口座へ入金してもらう後払いの掛け取引が主流です。

この掛け取引により、発生する売掛金の回収までの期間が長い場合、先行する仕入れ代金や固定費の支払いに充てるお金が不足しやすくなります。

売掛金の入金と、買掛金や固定費などの支払いのタイムラグにより、足りないお金を補うために必要となるのが運転資金です。

そのため運転資金とは、掛け取引による入金のズレに備える資金とも考えられるでしょう。

運転資金とは?考え方や種類・計算方法についてわかりやすく解説

運転資金の内訳

運転資金は、売掛金が入金されるまでの間に備える資金ともいえますが、その内訳は主に次の2つです。

  1. 変動費
  2. 固定費

それぞれ説明します。

変動費

「変動費」とは、売上の増減により変動する運転資金です。

具体的には、次に挙げる費用が変動費に含まれます。

  • 原材料費
  • 仕入原価
  • 外注費
  • 給与(派遣・契約社員など)
  • 販売手数料
  • 荷造運賃

売上高から変動費を差し引くと、固定費をすべて回収できる地点である「限界利益」を算出できます。

限界利益=売上高-変動費

また、売上高の限界利益の割合である「限界利益率」は、以下の計算式を使います。

限界利益率=限界利益÷売上高×100(%)

固定費

「固定費」とは、売上の増減に左右されず、毎月一定で発生する費用です。

具体的には、以下の費用が固定費に含まれます。

  • 事務所・店舗の家賃
  • 給与(毎月定額の社員)
  • 光熱費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • リース料

売上が仮にゼロだった場合でも、固定費の支払いは継続します。

売上と経費がつり合うことで、利益ゼロとなる地点を「損益分岐点売上高」といいます。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

損益分岐点売上高を確認すれば、どのくらい売上高を上げれば固定費を賄うことができる知ることができるため、チェックしておきましょう。

設備資金との違い

運転資金ではなく、会社経営において必要な資金に「設備資金」もあります。

「設備資金」とは、事業で必要となる機械や設備などの資産を購入する資金です。

具体的には、以下の費用が該当します。

  • 製造用設備
  • 工場機械
  • 土地・建物
  • 車両運搬具
  • OA機器
  • システム関連機器
  • サイト構築費

いずれも経常的に必要な資金ではないため、運転資金と区別して考えます。

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運転資金の目安と計算方法

運転資金の目安は、冒頭でも説明したとおり、およそ月商3~6か月分です。

金額は、以下の①または②のどちらかの計算式で算出するとよいでしょう。

  1. おおよその運転資金=売掛債権+棚卸資産-買入債務
  2. 正確な運転資金=平均月商×(売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-買入債務回転期間)

なお、正確な運転資金の目安は、業界・業種・事業形態などにより異なります。

たとえば飲食業であれば、仕入れから資金を回収するまでの回転期間は短期であるため、手元に残す現金もそれほど必要ありません。

しかし不動産開発業などの場合、資金を投じてから回収するまで、年単位でかかることもめずらしくないため多額の運転資金が必要です。

また、売掛金の回収が期日よりも遅れることや、取引先の倒産で不良債権になるリスクなども踏まえ、手元に多く現金を残したほうが安心といえます。

運転資金の目安は?種類ごとの計算方法や不足を防ぐ方法をわかりやすく解説

運転資金の種類

帯付きの札束

会社経営において必要な運転資金とは、事業などによって異なるものの成長段階で次の5つに分けることができます。

  1. 経常運転資金
  2. 増加運転資金
  3. 減少運転資金
  4. 季節運転資金
  5. その他運転資金

それぞれ説明します。

経常運転資金

「経常運転資金」とは、会社経営で毎月など、常時必要となる運転資金です。

具体的には、以下の費用が経常運転資金に含まれます。

  • 人件費
  • 地代家賃
  • 光熱費
  • 広告宣伝費

経常運転資金を算出する場合の計算式は以下のとおりです。

経常運転資金=売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産-仕入債務(買掛金・支払手形)

3〜6か月分の経常運転資金を目安として準備しておきましょう。

増加運転資金

「増加運転資金」とは、現状維持にとどまらず成長段階で必要な運転資金です。

売上が増えれば売掛債権も増え、新たに販売するための材料や商品の仕入れも増やすことが必要となります。

しかしその分、必要な運転資金も増えるため、同じサイクルで売上が増え続ければさらに運転資金が必要となり、資金繰りに注意しなければなりません。

利益が出ているのに手元のお金が足らなければ黒字倒産してしまうため、そのリスクを回避するためにも、仕入れや人員などの増加で必要な増加運転資金を確保することが大切です。

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減少運転資金

「減少運転資金」とは、事業縮小や売上減少で負担の重い固定費に充てる運転資金です。

売上がゼロでも、毎月の固定費は支払うことが必要となります。

売上が多く業績が伸びていた頃に支払っていた仕入代金や人件費、業務委託費などは、業績悪化に転じた後は負担でしかありません。

その負担を補うための運転資金が減少運転資金といえますが、店舗閉鎖など経費削減で発生する費用も含まれます。

季節運転資金

「季節性運転資金」とは、特定の季節や時期に必要な追加の運転資金です。

具体的には、次にかかる費用が含まれます。

  • 従業員の賞与の支払い
  • 季節商品(エアコン・暖房器具・新入学商品など)の販売
  • イベント商品(クリスマス・お正月など)の販売

季節要因の運転資金はある程度の金額や必要なタイミングが予測しやすいため、できるだけ事前に準備をしておくと安心です。

その他運転資金

「その他運転資金」とは、取引先との契約変更などで、一時的な資金不足で必要な運転資金です。

たとえば取引先の都合で、仕入れ代金の支払サイトが短くなったときや、掛け取引から現金決済へと変更されたときなど、すぐに支払うお金が必要となるため手元の資金が不足します。

想定外の事態で発生する臨時的な運転資金であるため、状況が改善されるまで必要となる資金といえるでしょう。

運転資金を調達する方法

無利子無担保の貸付のイメージ

運転資金の調達方法は、必要な金額やタイミング、資金使途などによって変わりますが、主に以下の6つから選ぶことができます。

  1. 日本政策金融公庫から融資を受ける
  2. 地方自治体の制度融資を利用する
  3. 民間銀行から融資を受ける
  4. ビジネスローンを利用する
  5. 補助金・助成金を活用する
  6. ファクタリングを利用する

それぞれどのような方法か説明します。

日本政策金融公庫から融資を受ける

運転資金の調達方法として、「日本政策金融公庫」から融資を受けることが挙げられます。

日本政策金融公庫とは、国運営の政府系金融機関です。

そのため営利目的ではなく、経済の発展や中小企業の活動支援を目的とした運営を行っており、事業目的などに応じて資金を貸し付けています。

融資相談にも積極的に応じてくれることや、低金利で無担保・無保証の運転資金の借入れができるため、相談してみるとよいでしょう。

ただしまずは相談後に、書類を提出した上で審査があります。

手間や時間がかかるため、運転資金を必要とするタイミングに間に合うように、余裕を持って申し込んでください

地方自治体の制度融資を利用する

運転資金の調達方法として、地方自治体の「制度融資」を利用すること挙げられます。

「制度融資」とは、自治体・金融機関・信用保証組合の3つが協力し、事業者などに資金を貸し付ける制度です。

主な目的は小規模事業者や中小企業の資金支援であるため、低金利で融資を受けることができ、自治体によっては保証料や利子の一部を負担してくれます。

ただし上限や金利は自治体によって多少異なり、銀行と保証協会で審査が必要であるため、手続や融資実行まで時間がかかることは理解しておきましょう。

民間銀行から融資を受ける

運転資金の調達方法として、「民間銀行」から融資を受けることが挙げられます。

メガバンクと呼ばれる都市銀行は、大企業や上場企業が主な取引相手です。

そのため中小企業なら、地域密着型の運営を行う地方銀行・信用金庫・信用組合が頼りやすく、企業格付けが良好であれば融資相談にも快く応じてもらえます。

反対に赤字決算や債務超過では審査に通らないと考えられるため、利用者の信用力が審査で大きなダメージにならない「ファクタリング」などの方法を検討したほうがよいでしょう。

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ビジネスローンを利用する

運転資金の調達方法として、「ビジネスローン」を利用することが挙げられます。

「ビジネスローン」とは、一般的な銀行融資で審査に通りにくい事業者向け金融商品です。

必要書類が簡素化されており、審査のハードルも低めであるため最短即日融資を受けることができますが、金利は高く設定されます。

また、金利だけでなく契約基準や融資限度額は、銀行や消費者金融など金融機関の種類によっても異なります。

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補助金・助成金を活用する

運転資金の調達方法として、国や自治体の「補助金」や「助成金」を活用することが挙げられます。

政府の補助金は、経済産業省・中小企業庁の「ミラサポPlus」で紹介されています。

助成金に関しても、厚生労働省の公式サイトの「各種助成金・奨励金等の制度」で内容を確認できます。

返済不要の資金を調達できる方法であるものの、必要書類は詳細な資料を要求されることや、審査に数か月かかる点に注意してください。

ファクタリングを利用する

運転資金の調達方法として、「ファクタリング」を利用することが挙げられます。

「ファクタリング」とは、売掛金を現金化して手元の資金を増やせる金融サービスです。

中小企業などで利用が拡大中の資金調達方法であり、銀行融資の審査に通らない場合でも、信用力の高い売掛債権があれば利用できる可能性は高いといえます。

最短即日に売掛金が現金化されるため、すぐに増加運転資金が必要なケースなどに対応しやすい方法です。

資金繰りが改善した後、将来的に銀行融資など検討しているのなら、負債を増やさず決算書の見た目を悪化させないファクタリングを活用するとよいでしょう。

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まとめ

運転資金とは、事業運営において欠かせないお金です。

資金調達の方法は色々あるものの、そもそも何に使うためのお金なのか、金額やいつまでに準備しなければならないかによって、選ぶ手段は異なります。

運転資金は、不足する直前に急いで資金調達するのではなく、できるだけ早めに対応しておくことが必要です。

会社は手元の資金が足らなくなり、資金ショートすれば倒産してしまいます。

資金不足に気がつかなかったといった状況に陥るよりも前に、最短即日で売掛金を現金化できるファクタリングなどを上手く活用し、手元に十分現金を備えておきましょう。