プロパー融資とは、銀行が独自の責任のもと資金を貸し付けることです。
信用力が高くなければ利用できず、プロパー融資を申し込んでも信用保証付融資を勧められたり審査に通らなかったりなど多く見られます。
プロパー融資は銀行と直接取引となるため、返済困難になったリスクはすべて金融機関が負うことになるからです。
実績が高く信頼されていなければ利用することができないといえますが、そのプロパー融資について、金利や条件・保証付融資との違いを分かりやすく解説します。
目次
プロパー融資とは
「プロパー融資」とは、保証協会が保証しない状態での資金の貸し付けです。
銀行は、事業者の決算書や事業計画書などから、返済能力などを判断して融資契約を結びます。
返済が滞った場合の損失は銀行が被ることになるため、信用保証付融資や不動産担保ローンなど、保証や担保のついた貸し付けよりも審査は厳しくなります。
そもそもプロパー融資は、業績が好調で銀行とも取引実績があり、高い信用力で返済能力が担保されているような格付け優良な企業でなければ利用できません。
また、決算書の数値から以下の状態であることが確認できれば、審査では有利になりやすいといえます。
- 負債を抱えているものの上回る大きな資産がある
- 「税引後利益+減価償却費」が0または0を超える(大きいほどよい)
- 「借入金残高÷(税引後利益+減価償却費)」が10未満(小さいほどよい)
創業すぐの場合はプロパー融資の利用は難しいため、まずは信用力を向上させるための信用保証付融資による借入れなどを検討することになります。
プロパー融資と保証付融資の違い
プロパー融資は銀行独自の責任による資金の貸し付けであるのに対し、「信用保証付融資」は信用保証協会が保証した上での貸し付けです。
信用保証協会とは、「信用保証協会法」に基づき中小企業者などの金融を円滑にするため設立された公的機関であり、信用保証をする役割を担います。
事業者が融資を受けて資金調達しやすくすることを目的に運営されており、たとえば事業者が借入金を返済できなくなったときには、信用保証協会が代わりに返済を行う仕組みです。
信用保証を利用する対価として、信用保証協会に対して所定の信用保証料を支払うことになっていますが、信用保証料は経営状況などで決定されます。
銀行は貸し倒れになったときの損失を大きく被ることがないため、安心して資金を貸し付けることができます。
ただし信用保証付融資での借入れは、金融機関と信用保証協会の2機関での審査に通る必要があることと、保証料が発生することは留意が必要です。
また、信用保証協会に返済を立て替えてもらっても、肩代わりしてもらって返済終了ではなく、立替分を信用保証協会に返すことになります。
銀行融資の流れとは?申し込みや審査の必要書類などわかりやすく解説
プロパー融資の特徴
プロパー融資は、保証協会の保証なしで契約するため、仮に債務者が返済不能となった場合には銀行が100%その損失を負担します。
そのためプロパー融資は、保証協会の保証付融資と異なる特徴があるといえますが、以下の項目ごとに説明していきます。
- 審査
- 金利
- 保証人・担保
- 手数料
- 融資限度額
- 借入期間
審査
プロパー融資は、銀行と事業者が直接契約を結んで取引を行います。
保証や担保のない資金の貸し付けとなるため、審査は厳しくなると留意しておきましょう。
銀行との取引実績があり、決算書などの数値が良好で、銀行の信用格付けが上位の場合のみ利用できます。
初めてプロパー融資を利用する場合の審査にかかる時間は3週間から2か月程度、追加融資なら2週間から1か月半程度と見込んでおきましょう。
金利
プロパー融資は、都市銀行・地方銀行・信用金庫・信用組合などどの銀行からお金を借りるのか、債務者の信用リスクによって設定される金利は異なります。
金融機関が貸し倒れリスクを負って資金を貸し付ける点から、信用保証付融資よりは金利が高くなることもあるでしょう。
ただ、プロパー融資の資金調達コストは銀行に支払う利子であるのに対し、信用保証付融資では利子だけでなく保証料も発生します。
そのため仮にプロパー融資のほうが金利は高くても、トータルコストでは信用保証付融資よりも安くなることもあります。
保証人・担保
プロパー融資では、保証人をつけることや担保を差し入れる必要はありません。
中小企業が銀行から融資を受けるときは、経営者が保証人になることや、不動産を担保に差し入れることを求められます。
しかしプロパー融資では原則、保証人や担保を求められることがないため、万一の倒産した後の責任などに不安を感じることがありません。
手数料
プロパー融資では、銀行に保証料などを支払う必要はありません。
信用保証付融資の場合、保証してくれる信用保証協会に保証料を支払うことが必要となるため、調達コストを抑えた借入れを希望するのならプロパー融資がよいでしょう。
融資限度額
プロパー融資の場合、融資限度額がありません。
信用保証付融資では、信用保証協会の保証限度額によって融資限度額が決まります。
無担保なら8千万円、担保を差し入れれば2億8千万円と決まっており、限度額を超えて融資を受けることはできません。
しかしプロパー融資では、財務状況以外の理由で銀行から貸し付けが停止することはないといえます。
銀行の判断で設定された金額が融資限度額となるため、信用力が高ければ大きな額を調達できます。
借入期間
プロパー融資は、借入期間が3~5年と比較的短期の設定になることが多いといえます。
信用保証付融資の場合、長期の借入期間でも信用保証協会が保証するため、利息収入を増やすためにも5~10年で設定されます。
しかしプロパー融資では、長期の借入期間中に融資先の財務状況などが変わり返済不能状態に陥るリスクが高まるため、短期の設定になることが多いといえます。
プロパー融資のメリット
プロパー融資は、保証協会の保証なしで資金を借入れるため、銀行独自の責任での貸し付けとなります。
そのためプロパー融資による借入れには、以下の4つのメリットがあると考えられます。
- 低金利で借入れできる
- 多額の資金を調達できる
- 調達コストを抑えられる
- 信用力が向上する
それぞれのメリットについて説明します。
低金利で借入れできる
プロパー融資は、信用格付けや審査書類で高い信用力が認められれば、低金利での借入れが可能です。
そもそも優良企業でなければ利用できないことと、多額の資金需要にこたえることが多いため、銀行が設定した金利が低くても十分な利息収入になります。
そのため信用保証付融資よりも、低金利で借入れできることはめずらしいことではありません。
多額の資金を調達できる
プロパー融資は、融資限度額がないため多額の資金を調達できます。
経営状態が優良と判断され、融資額の使い道や返済計画に納得してもらうことができれば、事業拡大や大規模プロジェクトに立ち上げなどにかかる多額の資金でも借入れ可能です。
調達コストを抑えられる
プロパー融資は、トータルでの資金調達コストを抑えることができます。
信用保証付融資では、信用保証協会へ保証料を支払うことが必要であるのに対し、プロパー融資には手数料はありません。
融資実行の支払い金額を抑えることができることはメリットといえるでしょう。
信用力が向上する
プロパー融資による借入れができることは、銀行からの高い信頼を受けている証であるため、社会的な信用力が向上します。
取引の実績や業績などを評価されていなければ、プロパー融資を受けることはできません。
そのためプロパー融資を受けることで、取引先からの信頼が上がり、その後の資金調達も有利になるでしょう。
プロパー融資のデメリット
プロパー融資は、融資限度額もなく低金利での借入れが可能であるため、事業資金の調達には活用したい方法です。
しかし次の2つのデメリットは踏まえた上での申し込みが必要といえます。
- 審査が厳しい
- 毎月の返済額が大きい
それぞれどのようなデメリットがあるのか説明します。
審査が厳しい
プロパー融資は、銀行独自の責任での資金貸し付けとなるため、審査が厳しいことはデメリットです。
信用力が高く、決算書の数値が良好で、資金使途や返済計画などの内容に納得できる限られた企業のみが利用できます。
起業して間もないの企業やベンチャー企業などは、プロパー融資を受けることは難しいでしょう。
毎月の返済額が大きい
プロパー融資は融資限度額が設けられておらず、多額の資金を調達できるものの、返済期間が短く設定されやすいため毎月の返済額が大きくなります。
毎月の返済額が大きければ資金繰りにも影響するため、業績が悪化しない取り組みや工夫を徹底することも必要です。
プロパー融資を成功させるコツ
銀行のプロパー融資による借入れを成功させるには、厳しい審査をクリアするための次の4つのコツを押さえた上で申し込みましょう。
- 保証付融資で実績を積む
- 信用格付けを上げる
- 決算書・事業計画書を見直す
- 専門家に相談する
それぞれのコツについて説明します。
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保証付融資で実績を積む
プロパー融資による借入れを成功されたいなら、信用保証協会の保証付融資でまずは実績を積みましょう。
保証付融資で決められた期限に遅れず返済をし続けることで、信用力を高めることができます。
また、信用保証協会保証付融資とプロパー融資を抱き合わせるなど、同時または近い時期に融資実行してもらうといった相談もしてみるとよいでしょう。
信用格付けを上げる
プロパー融資を成功させないなら、銀行の信用格付けをアップさせましょう。
事前に銀行との信頼関係を築くため、保証付融資で返済実績を作りつつ信用格付けを上げておきましょう。
また、銀行担当者が会社の理念や将来設計、経営者の人柄などで応援したいと感じてもらえるアピールも大切です。
決算書・事業計画書を見直す
プロパー融資を成功させたいなら、決算書や事業計画書を見直しましょう。
決算書の内容が悪ければ、審査に通ることはありません。
負債を上回る資産が大きければ、仮に返済困難になっても資産売却で賄うことができます。
また、税引後利益と減価償却費を合わせた利益が大きいほど、返済原資を捻出しやすいと判断されます。
また、返済期間も短期設定できるほうが、借入期間中の経営悪化による返済不能リスクを回避できるため、短期借入れのほうが好まれるといえるでしょう。
専門家に相談する
プロパー融資を成功させたいなら、専門家に相談しましょう。
資金調達に関する相談は、たとえば顧問税理士などでも可能です。
ただし税理士にも得意・不得意の分野があり、必ずしも資金調達や融資に特化しているとは限りません。
この場合、税理士のみならず、資金調達などに関するアドバイザーとして活躍する経営コンサルタントに相談することも検討しましょう。
資金調達に精通しているコンサルタントなら、事業計画書の作成や適した資金調達方法など、様々な方向からのアドバイスやサポートを依頼できます。
まとめ
プロパー融資は、銀行独自の責任による資金の貸し付けであるため、審査はかなり厳しいことが特徴です。
もしもプロパー融資を成功させたいなら、まずは信用保証協会の保証付融資で取引実績を積み、決算書や事業計画書などを見直した上での申し込みが必要といえます。
取引銀行でプロパー融資を受けられない場合でも、資金調達の方法は借入れだけではありません。
中小企業は資金調達の方法を銀行融資に依存しがちといえますが、他にも方法はたくさんあります。
資金調達の方法で迷ったときや、誰に相談してよいかわからないときなどは、資金調達に詳しい経営コンサルタントなどを頼ることで、適切なアドバイスを受けることができます。