インボイスファイナンスとは、請求書をもとに資金調達することです。
2023年10月1日から、ついにインボイス制度が導入されたことで、適格請求書を発行するためには消費税の課税事業者になることが必要になりました。
廃業せざるを得なくなる事業者が増える可能性があるなど、問題視されているインボイス制度ですが、インボイスファイナンスに使用する請求書は適格請求書に限りません。
取引先に請求書を発行し、まだ回収していない売掛金を使った資金調達の方法がインボイスファイナンスです。
そこで、短期的なキャッシュフローを改善させる資金調達の方法といえるインボイスファイナンスについて、種類やメリット・デメリットを解説していきます。
目次
インボイスファイナンスとは
「インボイスファイナンス」とは、請求書を活用した資金調達方法のことです。
「インボイス」は英語で「Invoice」と表記し、訳すと「請求書」を意味します。
「ファイナンス」は英語で「finance」と表記し、資金・金融・融資・財源・財政・財政学などの意味を持つ言葉です。
そのため「インボイスファイナンス」は、商品やサービスを販売した取引先に対し、売掛金の支払いを求めるために発行した「請求書」を使って資金を調達することを意味します。
支払い期日までに引先から売掛金を受け取る権利があることを証明する書類が請求書です。
売掛金を受け取る権利を「売掛債権」といいますが、この債権は「資産」に含まれます。
資産は担保にしてお金を借りることや、売ってお金に換えることが可能であるため、インボイスファイナンスでも請求書を担保に融資を受けたり売却して現金化したりという方法が使われます。
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インボイスファイナンスが注目されている理由
インボイスファイナンスは、主流といえる銀行融資などの方法以外で検討できる資金調達の方法です。
中小企業の主な資金調達の方法は銀行融資による借入れといえますが、担保として差し入れることのできる不動産を所有していない場合や、代表者の人的保証が必要になることへの懸念などで利用しにくいといえます。
しかしインボイスファイナンスであれば、取引先に発行した請求書を使って、スムーズに資金調達することができます。
資金繰り悪化を防ぐためにも使いやすい資金調達の方法といえますが、注目されている理由として次の3つが挙げられます。
- 不動産以外の資産を資金調達に使える
- 資金調達に時間がかからない
- 売掛先に知られず利用できる契約がある
それぞれどのような理由で注目されているのか説明していきます。
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不動産以外の資産を資金調達に使える
インボイスファイナンスが注目されている理由として、不動産以外の資産を資金調達に使えることが挙げられます。
中小企業は、資金調達の方法を銀行融資に依存しがちといえます。
しかし実際には、所有する不動産を担保に差し入れることや、代表者の人的保証を求められることで、決して使いやすい方法とはいえないでしょう。
そもそも不動産を所有していなければ担保に差し入れることはできず、銀行から融資を受けることはできない可能性があります。
代表者が連帯保証人になった場合、万一会社が倒産すれば、代表者も連鎖して破産手続することになるため、リスクを背負った状態での借入れとなってしまいます。
しかしインボイスファイナンスは、信用力の高い取引先の売掛金があれば、資金の調達に使えるため不動産担保も人的保証も不要です。
審査で評価されるのは請求書であり、大企業だけでなく中小企業でも取引先に対する請求書を発行し、まだ回収していない売掛金があれば利用できます。
不動産などの不要な資産は排除する企業のほうが外部評価が上がる傾向も見られるため、現代社会の流れに合った資金調達方法とも言えます。
資金調達に時間がかからない
インボイスファイナンスが注目されているのは、たとえば不動産を担保として融資を受けるときなどよりも、資金調達までに時間がかからないからです。
不動産を担保とした借入れでは、資産評価額の算定などに一定の時間がかかります。
しかしインボイスファイナンスは、請求書を参考に評価するため、査定しやすくスピーディな審査で資金調達できます。
急いで資金を調達したいときには、インボイスファイナンスがおすすめです。
売掛先に知られず利用できる契約がある
インボイスファイナンスが注目されている理由は、選ぶ資金調達の種類によって、売掛先に知られず利用できるからです。
たとえばファクタリングのうち「2社間ファクタリング」を利用すれば、売掛先に通知することも承諾を得る流れも必要ありません。
請求書を使って資金調達することについて、すべての売掛先が前向きにとらえてくれるわけではなく、説明した後にその後の取引を断られてしまう可能性もゼロではないといえます。
なぜ銀行融資ではなく請求書を資金調達に使うのか、融資を受けることができないほど資金繰りが悪化しているのかなど、余計な勘繰りや懸念を生み関係が悪化してしまうことは避けたほうがよいでしょう。
しかしインボイスファイナンスでは、種類によって売掛先に知られず請求書を資金調達に活用できるため、自社の信頼度を損ねることやその後の取引に影響を及ぼすことはありません。
インボイスファイナンスの種類
インボイスファイナンスとは請求書を使った資金調達の方法ですが、種類として次の3つが挙げられます。
- ファクタリング
- 売掛債権担保融資
- インボイスディスカウントファイナンス
それぞれのインボイスファイナンスについて、メリット・デメリットもあわせて説明していきます。
ファクタリング
「ファクタリング」とは、保有する売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売って現金化する資金調達の方法であり、次の2つの取引があります。
2社間ファクタリング | 利用者とファクタリング会社の2者で契約 |
3社間ファクタリング | 利用者とファクタリング会社、売掛先の3者で契約 |
お金を借りるのではなく、取引先に送付した請求書をファクタリング会社に提示し、回収していない売掛金を買い取ってもらう仕組みです。
そのため期日に売掛金が確実に入金されるのか、取引先の支払い能力など信用力を重視した審査を行い、リスクの大きさに応じた手数料が買取代金から差し引かれます。
メリット
ファクタリングのうち、2社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社のみの契約で完結します。
3社間ファクタリングのように取引先へ通知したり承諾を得たりという手続が不要であるため、最短即日現金化が可能です。
審査でも取引先の信用力が重視されるため、赤字決算や債務超過などで借入れできない場合でも利用できる可能性があります。
デメリット
ファクタリングは、銀行融資よりも資金調達コストが割高になることがデメリットです。
特に2社間ファクタリングでは、取引先へファクタリング利用に関する通知や承諾を得る手続がないため、手数料は割高に設定されます。
手数料を安く抑えるのなら3社間ファクタリングを選ぶべきといえるものの、取引先に売掛金を売却することについて説明し、承諾してもらう必要があります。
快く承諾してもらえるとは限らず、仮に断られれば資金調達につながらないだけでなく、取引先との関係も悪化するリスクもゼロではありません。
2社間ファクタリングにおいては手数料、3社間ファクタリングでは取引先との関係に注意した上で、利用するか判断するようにしてください。
売掛債権担保融資
「売掛債権担保融資」とは「ABL融資」とも呼ばれる方法で、売掛債権や動産を担保にしてお金を借りる金融サービスです。
「ABL融資」とは「動産担保融資」のことです。
「ABL」とは「Asset Based Lending」の頭文字の略称であり、直訳すれば「資産(Asset)」を「担保にする(Based)」「融資(Lending)」となります。
そのため売掛債権や商品在庫などの流動資産を担保にしてお金を借りる方法が「売掛債権担保融資」や「ABL融資」です。
ただしインボイスファイナンスは請求書による資金調達であるため、「売掛債権担保融資」で「売掛金」を担保にする融資契約を意味します。
ファクタリングは売掛金の売買であるのに対し、売掛債権担保融資は資金の貸し付けとなるため、銀行業や貸金業を登録している事業者でなければ扱うことはできません。
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メリット
売掛債権担保融資のメリットは、不動産を所有していなくても売掛金という資産を融資にして借入れができることです。
創業して間もないスタートアップや、小規模の会社などは、不動産を所有していないこともめずらしくありません。
しかし中小企業が銀行からお金を借りるときは、担保として不動産を差し入れることや、経営者の人的保証を求められることが一般的です。
不動産を所有していないことで資金調達の手段を失いがちといえる中で、売掛債権担保融資であれば、取引先に発行した請求書を使って資金を調達できます。
デメリット
売掛債権担保融資のデメリットは、通常の銀行融資よりも金利が高く設定される傾向があることです。
また、売掛債権の評価は金融機関が独自に行うことや、期日に債権回収ができなかった場合には債務者がその責任を負わなければならない点も注意が必要です。
インボイスディスカウントファイナンス
「インボイスディスカウントファイナンス」は、輸出債権を銀行に売って現金化する資金調達の方法です。
輸出企業が輸出債権を譲渡し、債権を買い取る銀行は債権額から割引した額を入金後、期日に輸出先から輸入代金全額を受け取る仕組みとなっています。
資金調達に活用できる状況が限定されるインボイスファイナンスといえるものの、海外輸出のビジネスはリスク管理が難しいため、インボイスディスカウントファイナンスの利用により輸出先との取引でリスクを避けた海外進出を進めることができます。
メリット
インボイスディスカウントファイナンスは、原則、買戻し請求権なしのノンリコース契約を結びます。
買戻し請求権とは、輸出先が期日に決済できなかったとき、銀行が輸出者にその代金を返すように求める権利です。
仮に買戻し請求権ありのリコース契約を結んでしまうと、債権の支払い期日まで安心できず、万一債務不履行となればその責任を輸出者が負います。
しかしインボイスディスカウントファイナンスはノンリコース契約による3社間ファクタリングの国際版であるため、万一の債務不履行の責任を輸出者が負う必要はありません。
そのため輸入先の信用リスクや相手国のカントリーリスクを回避できることがメリットといえます。
さらに、海外との取引は入金まで時間がかかるため、資金不足を防ぎキャッシュフローを改善できることもメリットです。
フリーキャッシュフローを増やしてキャッシュフローを改善し、オフバランス化の検討もできます。
デメリット
インボイスディスカウントファイナンスのデメリットとして、取り扱う金融機関が少ないことが挙げられます。
資金調達にインボイスディスカウントファイナンスを活用しようと、複数社から相見積もりを取得し、比較・検討したくても比べる銀行が少ない可能性があります。
また、インボイスディスカウントファイナンスでは輸出先の同意がなければ利用できないため、その点にも注意しましょう。
まとめ
インボイスファイナンスとは、請求書を使った資金調達の方法であり、3つの種類があります。
ファクタリングとインボイスディスカウントファイナンスは万一の売掛先の債務不履行で責任を負わされることはないのに対し、売掛債権担保融資は借入れであるため、債務不履行の責任は負わなければなりません。
どの方法も不動産を所有していなくても売掛金を使って資金調達できることがメリットではあるものの、リスクの大きさや使いやすさなどを踏まえた選択が必要です。
ファクタリングなら、請求書をファクタリング会社に提示し、最短即日に売掛金を現金化できます。
急いで資金を調達しなければならない場面でも対応できるため、資金調達やキャッシュフロー改善に悩んでいるのであれば、検討することをおすすめします。