創業融資とは、起業や開業の際に事業者が利用できる融資制度です。
初期投資や運転資金など、起業においては様々な費用がかさむため、実績などがなくてもお金を借りられる創業融資は強い味方といえます。
ただし起業・開業の資金調達に創業融資を活用するのなら、まずは金融機関の審査に通ることが必要です。
そこで、創業融資の審査の基準や落ちてしまう原因、通過のコツを解説します。
中小企業経営者向け!

目次
創業融資とは
創業融資とは、起業する際に必要な資金を借りることができる金融商品です。
起業するときや創業直後は、売上や利益も十分ではなく、むしろ初期投資がかさみ運転資金不足に陥りがちです。
サラリーマン時代に起業資金をコツコツと貯めていた場合でも、事務所や店舗の賃料に備品・設備にかかる費用が不足することはめずらしくありません。
事業実績がない状態では、民間銀行から通常の融資による借入れは困難といえるものの、創業融資なら起業段階や創業間もない事業者でも借入れできます。
なお、会社設立時の資金調達方法については、以下の記事も参考にしてください。
会社設立時の資金調達方法10選|各種類のメリット・デメリットを解説
創業融資の種類
創業融資は一般的に日本政策金融公庫の融資制度を指すことが多いものの、実際には地方自治体や民間銀行などの提供もあります。
金融機関ごとに審査基準は異なるため、次の3つの創業融資を簡単に紹介します。
- 日本政策金融公庫
- 地方自治体
- 民間銀行
なお、法人の資金調達方法について、以下の記事も参考にしてください。
法人の資金調達方法とは?種類と会社設立前後で活用できる手段を紹介
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、国が100%出資し運営している政府系金融機関の1つです。
小規模事業者や中小企業などへ、資金の貸し付けを積極的に行います。
一般的な民間銀行の場合、事業実績がなければ資金の貸し付けは行いません。
しかし日本政策金融公庫では、民間の金融機関を補う目的で運営しているため、民間銀行から融資を受けにくい事業者も支援しています。
また、民間の銀行よりも借入れにおける金利が低いことも魅力といえます。
なお、銀行融資の金利相場については、以下の記事を参考にしてください。
銀行融資の金利相場とは?計算方法と低金利で資金調達するポイントを解説
地方自治体
地方自治体の創業融資制度も、起業する方に対して低金利・無担保・無保証での必要資金の貸し付けをメインとしており、融資以外でも支援を行っています。
創業融資で発生した利子相当額や全額が補助される制度を設けておる自治体もあるため、利子負担が気になる場合など利用するとよいでしょう。
たとえば東京都の創業融資では、創業資金や創業後の事業資金を融資限度額3500万円で貸し付けています。
申し込み対象となるのは、東京都内に事業所があり、東京信用保証協会の保証対象業種を営んでいる中小企業者のうち、次のいずれかに該当する方です。
- 現在事業を営んでいない個人で創業に関する具体的な計画がある方
- 創業日から5年未満の中小企業者等
- 分社化予定の会社または分社化による設立日から5年未満の会社
自治体により制度内容が異なる場合もあるため、詳しくは直接問い合わせることをおすすめします。
民間銀行
民間の銀行でも創業融資を行うことばあるものの、どの金融機関でも実施しているわけではないため、取引銀行などに問い合わせてみましょう。
なお、民間銀行の創業向け融資の場合、原則、信用保証付き創業融資制度の取り扱いとなります。
創業融資の審査に落ちる原因
創業融資は、起業段階や創業間もない事業者でも申し込みが可能です。
そのため一般的な銀行融資よりも、利用しやすいと考えられます。
しかし申し込めばお金を借りられるわけではなく、審査に落ちてしまうケースも少なくありません。
その原因として考えられるのは次の5つです。
- 返済能力が低い
- 資金使途が不明
- 事業計画が不透明
- 起業家の業務経験が低い
それぞれ説明します。
返済能力が低い
創業融資の審査に落ちる原因として、返済能力が低いことが挙げられます。
たとえば信用情報に支払いの滞納履歴が残っているときや、以下の支払いが遅れている場合は、返済能力が不十分と判断され審査に落ちます。
- 税金
- 公共料金
- 家賃
- ローン返済
- 携帯電話料金
- 奨学金返済
創業融資でお金を借りる際には、上記を含め費用の支払いは遅れず行うことが必要です。
資金使途が不明
創業融資の審査に落ちる原因として、資金使途が不明であることが挙げられます。
借りたお金を何に使うのか、事業資金であれば運転資金と設備資金のいずれかですが、使い道が明確でないと返済にも影響します。
事業用の資金として融資を受けたものの、実際には生活費や遊興費など事業とは関係のない用途で使用されることは許されません。
たとえ審査が通り借入れが可能となった場合でも、不要な備品や不相応な事務所家賃など事業と関係が薄いと判断され、その分の資金は限度額から減額されます。
事業計画が不透明
創業融資の審査に落ちる原因として、事業計画が不透明であることが挙げられます。
申し込みの際には創業・事業についての計画を記した事業計画書を提出します。
新事業に関する計画の策定・遂行する能力が十分であることが、融資を受ける際の条件であり、その内容を記載した計画書の提出は必須とされています。
また、事業計画書を提出するだけでなく、面談の際に担当者からの質問に事業内容を明確に説明できることも必要です。
あいまいな内容が記載されている場合や、実現不可能な事業計画では審査に通らない可能性が高くなるといえます。
起業家の業務経験が低い
創業融資の審査に落ちる原因として、起業家の業務経験が低いことが挙げられます。
審査では、創業者の斯業経験の有無が重視されるため、実際に始める事業に関する業務経験は豊富であるほうが有利です。
創業で開始する事業に関連する業務経験が浅いと、審査では経営能力に欠けると判断され、通過できない可能性が高くなります。
事業に関連する業務経験が豊富以外にも、マーケティング能力・戦略策定・経理会計などの能力があればさらにアピールにつながるでしょう。
創業融資の審査基準
創業融資を申し込んでも落ちてしまうことに不安を感じるのなら、先に何を基準に審査が行われるのか知っておくと安心です。
たとえば日本政策金融公庫の創業融資の場合、次の審査基準で返済能力や事業の将来性など確認しています。
- 返済能力
- 資金使途
- 事業・資金計画の内容
- 起業家の信頼性
- 業務経験
それぞれ説明します。
返済能力
創業融資の審査基準として、多額の資金を貸し付けても遅れず返すことができる返済能力が十分であることが挙げられます。
審査では信用情報機関に照会をかけられ、創業者の信用情報の調査を行います。
信用情報機関では、借入れなどの滞納があれば、その情報が履歴として登録されています。
税金や公共料金の支払い状況に関する情報は登録されないものの、通帳の履歴や請求書・領収書、納税証明書などの提出により、延滞がないか確認されます。
複数回の滞納がある場合や、カードローン残高が残っていれば、返済能力が低いと判断されて審査では不利になります。
納税が義務化されている税金や、公共料金の支払いは、生活に必要な固定費であるため、支払いが遅れれば借金返済も遅れると判断されてしまいます。
資金使途
創業融資の審査基準として、調達したお金の資金使途が明確であることが挙げられています。
たとえば開始する事業に関連のない設備の購入資金や、必要な設備であっても購入費用が相場を大きく上回っている場合は、融資希望額が減額されやすくなります。
事業計画書に記載されている資金の使いみちが妥当ではないときや、創業資金総額に対する自己資金割合が低い場合などは、借入に依存した計画と判断されるからです。
融資額を希望通り借りることは難しくなるでしょう。
事業・資金計画の内容
創業融資の審査基準として、実現・成功できる事業や資金の計画を立てていることが挙げられます。
魅力のある内容の事業計画を策定していた場合でも、実現できなければ調達した資金は無駄になります。
そのため事業計画書に記載されている内容が本当に実現できるものであり、将来性を見込めるか確認した上で融資可否が決まると考えられます。
創業後の売上高や、原価・経費などが実際よりも甘い場合には審査に不利になると留意しておいてください。
起業家の信頼性
創業融資の審査基準として、起業家が信頼できる人物であることが挙げられています。
担当者との面談において、策定した事業計画に関する内容を質問されますが、説明できるような準備が大切です。
これから始める事業に関する計画であり、創業者が思いえがく将来的な戦略などを書面化したものが事業計画書です。
質問にこたえられない場合や返答があいまいな場合には、信頼できないと判断される可能性があります。
概要や記載された内容の根拠、詳しい経緯など深掘りされる可能性があるため、スムーズにこたえられる準備をしておきましょう。
業務経験
創業融資の審査基準として、起業家にこれから始める事業に関する十分な業務経験があることが挙げられています。
これから始める事業に関連する業種での経験があることで、思いつきではなく、以前から創業準備を進めてきたと判断してもらえます。
創業融資の審査に通過するためのコツ
創業融資を活用して、起業や創業期の資金不足を補いたいという場合、審査に通るために次の4つのコツを押さえた上で申し込みましょう。
- 実現できる事業計画・資金計画を立てる
- 資金使途を明確に示す
- 税金・ローン等滞納しない
- 業務経験・実績を伝える
それぞれ説明します。
実現できる事業計画・資金計画を立てる
創業融資の審査に通過するために、実現できる事業計画・資金計画を立てましょう。
事業計画書には、具体的な事業内容や創業後に取引できる取引先一覧など、現実的な内容を記載することがコツです。
客観的に見て妥当性が認められる事業内容について、具体的に示す計画書を作成するようにしてください。
資金使途を明確に示す
創業融資の審査に通過するために、資金使途を明確に示しましょう。
資金用途が不透明な場合、融資額が減額されたり審査に落ちたりする可能性が高くなります。
売上・仕入れ・経費などお金の流れを明確に示し、見積書や資金繰り表など資金使途を証明できる書類も用意しましょう。
その上で、返済見込みに関して説得力のある資金計画を立てることがコツといえます。
税金・ローン等滞納しない
創業融資の審査に通過するために、税金やローンなどは滞納しないようにしましょう。
審査では創業者の信用情報は必ず確認されるため、ローンやカードの支払い履歴なども知られます。
仮に支払いを滞納している場合や、過去に自己破産や任意整理など債務整理をしており、金融事故情報が登録されていれば審査には通らないでしょう。
また、税金や公共料金などの支払いに関する情報は信用情報機関には登録されません。
納税証明書や支払い・引き落としが確認できる領収書や通帳を提示するように求められます。
特に税金の支払いが遅れている場合などは、資金を貸し付けても回収不可能と判断されることになり、審査には通りません。
未払いや滞納している支払いがある場合には解消した上で創業融資を申し込んだほうがよいでしょう。
なお、自身の信用情報については以下の信用情報機関に開示請求することで、現在記録されている内容を確認できます。
請求方法は主にWebサイトまたは郵送となり、手数料として1,000円程度必要です。
業務経験・実績を伝える
創業融資の審査に通過するために、業務経験や実績をしっかり伝えアピールしましょう。
これから起業・創業する場合、スタートする事業と同業種の仕事をした経験など確認されます。
事業計画書に記載された内容を、創業者自身の言葉で具体的に説得力のある内容で伝えられるかがポイントです。
創業し社会貢献につなげる本気度や熱意なども面談で確認されることとなり、業種によっては店舗など訪問される場合もあります。
創業後に成功できると認めてもらえる対応と準備が必要です。
まとめ
創業融資は起業段階や創業間もない時期で、事業実績がない状況でも必要な資金を借りることができる資金調達方法です。
一般的な銀行融資では、事業実績や利益が出ていることが重視されるのに対し、創業融資なら実績がなく利益がなくても審査に通る可能性はあります。
ただし自己資金や業務経験、事業計画に経営者の信頼性などが総合的に審査されるため、面談でも説明できるようにしておきましょう。
創業融資を資金調達に活用する際には、審査で何を重視されるのか事前に理解し、申し込みまでの準備が大切です。
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