商取引で商品やサービスを販売・提供すれば売上があがります。
ただ、その代金はその場で受け取らず、後日まとめて請求する掛け取引が日本では一般的です。
このとき発生するのが売上債権ですが、多く抱え過ぎることになると企業の財務に影響を及ぼすことになるため、適切に管理していくことが必要となります。
そこで、売上債権の種類や、資金調達に活用できるファクタリングを紹介します。
売上債権とは
会社が保有する債権のうち、売上債権と呼ばれるものは取引先との取引で発生した債権のことで、売掛金や受取手形などが該当します。
売掛債権や営業債権と表現されることもありますが、どれも売上債権と意味は同じです。
商品やサービスを販売・提供し、その代金を渡すことと引き換えに現金で受け取ることは多くありません。
1か月など一定期間の取引分をまとめて請求し、事前に定められた期日に支払ってもらうことが一般的です。
この掛けによる商取引で発生する債権が売上債権であり、信用販売による売上代金のうち、未回収分を請求する権利といえます。
売上債権の種類は主に以下の2つです。
売掛金
現金取引ではなく掛け取引により後日請求を行い、支払ってもらう場合に発生する未回収の代金のことです。
受取手形
即日現金で支払うのではなく、支払いを一定期間延長させることを目的として振り出された商業手形を受け取ると、その手形は受取手形として扱われることになります。
手形を売却し、期日よりも前に現金化させる手形割引や、裏書譲渡することで第三者に対する支払いに充てる方法などで資金繰りに活用することもできます。
売上債権回転率とは
売上債権が発生したら、取引先に請求書を発行し、事前に取り決めた期日にその代金が入金されるまで待つことになります。
複数の取引先や売掛債権がある場合には、どれがいつ入金される予定なのか、期日内に回収できているのか売上債権の状況をしっかり管理することが必要です。
このとき確認したいのは売上債権回転率ですが、これは会社の売上債権がどのくらい効率的に回収できているかを示す指標となる比率です。
売上債権回転率は、以下の計算式で算出できます。
売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権 |
売上高に占める売上債権額が少ないほうが回転率は上がります。
回転率が高いということは、効率よく売上の回収ができているということです。
反対に回転率が低い場合、債権を回収するまでに時間がかかっていることをあらわしています。
発生した売上が売上債権となり資金が拘束される期間が長期に渡っている状態なので、回収に遅れが出ないように取引先に働きかけることや、すでに遅れが出ているものは早めの回収が必要となるでしょう。
同時確認が必要な売上債権回転期間
経営の効率性を分析するときには売上債権回転率を確認しますが、その割合を期間であらわした売上債権回転期間にも注目してみましょう。
売上債権回収期間は、以下の計算式で算出できます。
売上債権回収期間 = 売上債権 ÷ (売上高÷365日) |
売上債権が売上高の何日分存在するのかを示すため、短いほうが効率的に回収できているといえます。
売上債権回収率は高めで、売上債権回収期間は短めであることが、貸し倒れを未然に防ぐためには必要です。
売上債権回転率が低い原因
売上債権回収率が低いということは保有する売上債権が期日内に資金化できる可能性の低さをあらわします。
売上債権の回収が遅れるということは、それまでに発生する支払いに充てる資金が不足してしまう可能性もあるといえます。
資金繰りが悪化してしまうことが予想されますので、どの取引先や売上債権が回転率を下げている原因となっているのか確認し、対策を講じるように進めていきましょう。
売上債権の回収遅延のリスク
売上債権の回収が遅れれば、当然、手元の資金は不足する可能性があります。
もし売上の回収ができないことが原因で支払いが遅れることになれば、支払い相手である取引先からの信用を失うこととなってしまいます。
期日に入金されていないのに放置していると、相手も催促されないことをいいことに、支払いの優先順位を下げてくる恐れもあります。
そのためにも売上債権は適切に管理を行い、期日までに入金されていない場合には、遅れている理由や支払日を確認・催促することも必要です。
銀行から不良債権扱いされるデメリット
売上債権を多く保有していると、銀行から不良債権の存在を疑われる恐れもあります。
融資審査で不利になる場合や、出資を受けることができなくなること、社債や私募債の発行がスムーズに進まないなどのデメリットがあるため、早急に改善させることが必要です。
売上債権回転率の改善に必要なこと
売上債権回転率が低ければ、企業の経営に対する姿勢や意識も低いとみられてしまうことになります。
改善のためにも、取引先ごとの売上債権回転率を計算し、回転率が気になる場合は取引を見直すことが必要です。
売上債権回転率や売上債権回転期間などの指標を用いて毎月分析を行います。
それらに急激な変化がみられた場合、早い段階でどの取引先が影響を及ぼしているのか、経営状況などを内部と外部の調査を用いて確認し、取引の縮小や撤退という対応をしましょう。
また、以下の内容を売上債権の回収マニュアルなどとして作成しておくことも方法の1つです。
- 支払期日を事前に決めた日数経過した時点で取引先にメールで連絡する
- メールで取引先に連絡してからさらに事前に決めておいた日数を経過した場合、今度は電話連絡を入れる
- 電話で連絡を入れてからさらに事前に決めた一定期間を経過した場合は内容証明を送付する
取引先に対して行う連絡とは、なぜ入金が遅れているのか確認することと、催促することです。
最終的には法的手段に移行できるような準備も必要となるでしょう。
支払期日が1日でも過ぎたら、すぐに催促のメールや電話がくると認識付けることによって、早く支払ったほうがよいと意識してもらいやすくなります。
売上債権回転率を上げるコツ
企業経営において売上債権の回収管理を徹底させていくことは時間がかかります。
相手があることのため、いくらこちらが遅れている売上債権を早く入金して欲しいと伝えても、すぐに回収できるとは限らないからです。
そこで、複数存在する売上債権の管理の手間を省き、回収が遅れて資金繰りが悪化する前に講じる対策として利用できる方法を活用しましょう。
ファクタリングを利用する
売上債権回転率を高めるには、売上高を増やすのか、それとも売上債権を減少させるのかいずれかが必要となります。
売上高を増やすには、これまで以上に営業活動に力をいれることが必要です。
ただし商品を多く販売したければ仕入れも増やさなければならず、そのための資金も必要になります。
売上債権を減らすことが必要となるため、支払期日までの期間が長く設定されている売掛金は、取引先と交渉して早期化することも必要です。
しかし取引先次第であり、交渉しても応じてもらえるとは限りません。
この場合、ファクタリングを活用すれば、売上債権をファクタリング会社へ売って現金化できるため、期日よりも先に資金が調達できます。
売買手数料分の金額は少なくなるものの、取引先から入金されるまでの間に資金ショートすれば、事業は継続できなくなります。
資金不足などのリスクを回避できる方法のため、ファクタリングで売上債権の総額を減少させ、売上債権回転率を高めることを検討してみましょう。
売上債権を早期化する場合の注意点
ファクタリングは売上債権を早期化させることで資金調達が可能となるため、一時的な運転資金の不足を補うことができます。
売上債権の管理の手間の軽減にもつながることでしょう。
ただし十分に周知されている資金調達の手法とはいえず、どちらかといえば怪しいネガディブなイメージがつきまとっています。
その背景にあるのが悪徳業者の存在であり、比較的新しい資金調達の方法であるファクタリングに目をつけ、法外な売買手数料を請求します。
法的な規制がない業界のため、貸金業者などのように登録制度などもなく、ファクタリング会社と装って事業者を騙そうとするヤミ金業者も存在しています。
ファクタリングを利用するときは、正規の業者に依頼することが前提であり、特に優良とされる業者を選ぶことが重要です。
ファクタリングは償還請求権のない契約が基本
ファクタリングを利用し、先に現金化した売上債権が売掛先から回収できなくなっても、その責任は利用者が負う必要はありません。
一般的にファクタリングは償還請求権のない契約となっており、売掛先が倒産してしまい売上の代金が回収不能状態に陥ったとしても、その弁済を利用者に求められることはないからです。
ファクタリングで売却の対象となるのは売掛金という売掛債権ですが、同じ売掛債権でも受取手形を買い取ってもらい資金化させる手形割引の場合は、この償還請求権のある契約となります。
割り引いた手形が不渡りになればその弁済の責任を負うことになってしまうので、ファクタリングと手形割引で大きく異なる点であるといえるでしょう。
ファクタリングのように償還請求権なしで契約が可能になる取引においては、利用することで売上債権が完全に譲渡された状態となるため、売上債権回転率を高めることに繋がります。
手形割引も同じく売上債権を譲渡する形とはなるものの、売上債権残高を減少させることにはならないので売上債権回転率を高めることには繋がりません。
売上債権回転率を改善させた上で資金調達を行うことを希望するのなら、同じ売上債権を対象とした方法でも手形割引ではなくファクタリングを利用したほうがよいということです。
なお、ファクタリングは融資を受けるという方法ではなく、あくまでも売上債権の譲渡という形で契約を結びます。
手形割引は受取手形の売買という形でも、融資とみなされる点も理解しておきましょう。
まとめ
売上債権は売掛債権とよばれることもありますが意味は同じで、受取手形や売掛金などを指しています。
売上に対して発生した売上債権は、将来入金される予定のものではあるものの、増えすぎれば資金繰りを悪化させることに繋がってしまいます。
管理を徹底させることが必要ですが、その際には売上債権回転率や売上債権回転期間を取引先ごとに把握するといった分析作業を行うことが必要です。
売上債権の回収が遅れている取引先にはしっかり入金の催促を行うなど、遅れず回収できる管理を徹底しましょう。
また、ファクタリングを利用することで、スムーズな売上債権と資金調達が可能です。
売上債権の管理や回収で悩んでいるのなら、ファクタリングを利用することを検討してみることをおすすめします。